Xディスプレイマネージャ
Xディスプレイマネージャ(英: X display manager)は、X Window System 上のプログラムの1つで、ローカルあるいはリモートのXサーバでセッションを開始させる機能を持つ。単にディスプレイマネージャとも呼ばれる。
ディスプレイマネージャは、ユーザに対してログイン画面を提示し、ユーザ名とパスワードを入力可能である。ユーザが正しく入力するとセッションが開始される。
ディスプレイマネージャがユーザが操作するコンピュータ上で動作する場合、ログイン画面を表示する前にXサーバを起動し、オプションでログアウトの際にもログイン画面を表示する。この場合、ディスプレイマネージャは X Window System において、テキスト端末での init
、getty
、login
の役割を果たす。ディスプレイマネージャがリモートのコンピュータで動作する場合、telnet サーバのように機能して、ユーザ名とパスワードを要求し、リモートセッションを開始させる。
1988年10月、X11R3 でディスプレイマネージャが導入された。これは当時登場し始めていたX端末をサポートするためであった。多くのディスプレイマネージャがスタンドアロン型のXの動作するワークステーションでも、グラフィカルなログイン画面を提供するのに使われている。1989年12月、X11R4 では X11R3 での実装上の問題を解決すべく X Display Manager Control Protocol(XDMCP)が導入された。
ローカル/リモートの画面管理
[編集]ディスプレイマネージャは、ユーザが直接操作するコンピュータ上で動作する場合もあるし、リモートのコンピュータで動作する場合もある。前者の場合、ディスプレイマネージャは1つ以上のXサーバを起動し、最初にログイン画面を表示し(オプションで)ログアウトの度にログイン画面を表示する。後者では、ディスプレイマネージャは XDMCP プロトコルに従って動作する。
XDMCP プロトコルは、Xサーバの自律的起動とディスプレイマネージャへの接続を指示する。X Window System では、Xサーバはディスプレイ(画面)と入力機器のあるコンピュータ上で動作する。サーバは XDMCP プロトコルを使って他のコンピュータ上のディスプレイマネージャと接続でき、セッション開始を要求できる。この場合、Xサーバはグラフィカルな telnet クライアントのように振る舞い、ディスプレイマネージャが telnet サーバのように振舞う。ユーザはディスプレイマネージャが動作しているコンピュータ上でプログラムを起動でき、その入出力はXサーバ経由でユーザが直接操作しているコンピュータが行う。
Xサーバは特定のディスプレイマネージャに接続するよう設定することもできるし、接続可能なXディスレプイマネージャの動作しているホストの一覧を表示してユーザが選択するようにもできる。後者の場合、XDMCP Chooser プログラムを使い、次のいずれかの状態で機能する。
- 事前に定義されたホストとそのネットワークアドレスの一覧を表示する。
- ブロードキャストが届く範囲(ローカルなTCP/IPサブネット)でXDMCPサーバの動作しているホストの一覧を表示する。
ユーザがこのホスト一覧からホストを選択すると、ローカルマシンで動作しているXサーバが選択されたリモートコンピュータのXディスプレイマネージャと接続を行う。
X Display Manager Control Protocol
[編集]X Display Manager Control Protocol(XDMCP)はUDPポート 177 を使う。Xサーバはディスプレイマネージャに対して Query
パケットを送信することでセッション開始を要求する。そのディスプレイマネージャがそのXサーバにアクセスを許可する場合、Willing
パケットで応答する。Xサーバは Broadcast Query
パケットや IndirectQuery
パケットでセッション開始を要求することもできる。
ディスプレイマネージャはサーバに対して自身を認証しなければならない。そのため、Xサーバはディスプレイマネージャに Request
パケットを送信し、応答として Accept
パケットを受信する。Accept
パケットにXサーバが期待した内容が記されていれば、ディスプレイマネージャが認証されたことになる。正しい応答を行うには、例えはディスプレイマネージャが秘密鍵にアクセスできなければならない。認証が成功するとXサーバはディスプレイマネージャにそれを伝えるため Manage
パケットを送る。すると、ディスプレイマネージャは、そのXサーバに対してXクライアントとして接続し、ログイン画面を表示する。
セッションの間、サーバは一定間隔で KeepAlive
パケットをディスプレイマネージャに送信できる。ディスプレイマネージャがそれに対してある時間内に Alive
パケットで応答できない場合、Xサーバはディスプレイマネージャが動作できない状態であると推定し、接続を終了させることもできる。
XDMCP の問題として telnet とも似た問題がある。それは、認証処理のパケットが暗号化されておらず、悪意ある者がそれを見て攻撃できる点である。そのため、X の通信にはSSHトンネルを使う方が安全である[1]。
歴史
[編集]XDM(X Window Display Manager)は X11R3 で登場した。この版にはいくつかの問題があり、特に有名な問題としては、X端末の電源を入れなおしたときに発生した。X11R3 では、XDM は Xservers
ファイルにあるX端末だけを認識し、しかもXDMが起動したときだけそのファイルを読み込むようになっていた。従って、ユーザーがX端末の電源を入れなおしたときは、システムアドミニストレータが XDM に SIGHUP シグナルを送り、Xservers
を読み直させなければならなかった。
XDMCP は X11R4(1989年12月)で導入された。XDMCP では、Xサーバがディスプレイマネージャに対して能動的に接続を要求しなければならない。したがって、XDMCP を使ったXサーバの場合、Xservers
に記述しておく必要がない。
利用可能なディスプレイマネージャ
[編集]X Window System の標準ディスプレイマネージャとしては、XDM がある。
他にもフリーなものも商用製品としても、様々なXディスプレイマネージャが開発されており、単なる画面管理以上の機能を持つものが多い。
- GNOME ディスプレイマネージャー (GDM)
- LightDM - Ubuntuにて標準採用
- KDM (KDE) - ウィンドウマネージャやデスクトップ環境をログイン時にグラフィカルに選択可能
- SDDM - LXQtにて標準採用
- dtlogin - CDEの一部
- WINGs Display Manager - Window Maker のウィジェットセット WINGs を使用
- Entrance - Enlightenment v.17 のアーキテクチャを使用
- 独立したディスプレイマネージャ
- SLiM - デスクトップ環境と独立したディスプレイマネージャ
- Nodm - デスクトップ環境と独立したディスプレイマネージャ
関連項目
[編集]参考文献
[編集]- XDMCP documentation (PostScript形式をgzipで圧縮したファイル)、freedesktop.org の X.Org CVS リポジトリより
xdm(1)
– X Japanese Documentation Project Commands マニュアル- Linda Mui and Eric Pearce, X Window System Volume 8: X Window System Administrator's Guide for X11 Release 4 and Release 5, 3rd edition (O'Reilly and Associates, July 1993; softcover ISBN 0-937175-83-8)