コンテンツにスキップ

Wikipedia:著作権侵害を避けるための注意点

この文書は、ウィキペディアで編集する人たちが気を付けるべき、著作権侵害を避けるための主な注意点を一通りまとめたものです。特に初心者の方が混乱したり、誤解しやすい点を中心に説明しています。

著作権に関するルールは複雑でわかりづらい側面もあります。自分がやりたいことが問題ないのかわからないときは、まずはWikipedia:利用案内などで質問をしてみてください。

この文書は各種の正式な方針やガイドライン、実態としての運用などを踏まえて書かれていますが、方針やガイドライン自体ではありません。もし関連する方針やガイドラインと違う点がある場合には、方針やガイドラインの方を優先してください。この文書は日本あるいはアメリカの著作権法の基礎を踏まえて書かれていますが、この文書と実際の法律で違う部分があれば、もちろん法律を優先してください。Wikipedia:免責事項で述べられている通り、利用者に対して何ら保証はできません。

文章編

[編集]

記事を執筆するとき

[編集]

自分の言葉で書く

[編集]

ウィキペディアで記事に加筆したり、記事を新規作成するとき、Wikipedia:独自研究は載せないWikipedia:検証可能性といった方針に沿って、執筆した内容を裏付ける出典を示す必要があります。ただし、これは「出典中の記述を引き写し(丸写し・コピー)しなさい」ということではありません。このような引き写しは、その出典の著作権(特に複製権)の侵害となりえます[1]。ウィキペディアで記事を書くときは、出典に書かれていることが実質的に意味している内容、事実関係、情報と共通な内容を持つ、自分の言葉で表現した文章を書いてください。その自分の文章とともに、元になった出典を示してください。これがウィキペディアでの記事の基本的な書き方となります。Wikipedia:原典のコピーはしないも参照ください。

特に、出典を見ながら記事を書くときは、自分の言葉による言い換え(パラフレーズ)をしっかり行うように注意してください。言い換えし難い内容であれば、可能な範囲で自分の言葉に書き改めた上で、出典の記述から単純な事実や要旨のみを簡潔に抜き出すように書いてください。記事の一行と出典の一行を対応させる必要もありません。出典中の数行にわたる説明を一行にまとめるのも、出典中の数段落・数ページにわたる説明を数行程度にまとめるのも、適正な方法です。

記事に書くべきことが頭に入っているならば、いったん何も見ずに文章を作ってみて、整合性が取れるように修正しながら後から出典を付け加えて完成させるといった方法もあります。この方法であれば、出典の表現に引きずられ過ぎることなく、自分の言葉で表現した文章を用意しやすいです。

記事の構成も自分で作る

[編集]

一文一文は自分の言葉で書くことができていても、例えば単一の出典から詳細で大きな記事を書いたときなど、記事が出典を読まなくてもその主要な部分がわかるような、出典自体の要約(ダイジェスト版)となってしまう可能性があります。このような要約も著作権(翻案権)の侵害となりえますので注意してください[2]

翻案権の侵害を避けるためには、個々の文を自分の言葉で書くのに加え、出典の全体あるいは少なくない部分の「話の流れや構成」や「話題の選択や配列」についても強く似通ったものとならないようにする必要があります。翻案権の侵害を避けるためには、記事の執筆ではできるだけ複数の出典から情報を得るようにするのがいいでしょう。単一の出典に頼ると、その出典の構成と同じになったり、その出典中に書かれた話題と記事中に書かれる話題が全く同一になったりします。複数の出典の情報を整理し、自分なりに要点をまとめ直し、記事を構成していってください。

できるだけ複数の出典に当たって記事を書くことは、ウィキペディアの方針であるWikipedia:中立的な観点に沿うことにも繋がります。もう一つの方針であるWikipedia:独自研究は載せないで述べられているのは、「編集者が独自に生み出した内容、あるいは情報合成にもとづく独自主張」の禁止です。出典にもとづいた一つ一つの内容をより合わせ、主題にふさわしい百科事典記事を構成することは、ウィキペディアの編集者自身が考えて行うことです[3]。記事の基本的な書式についてはWikipedia:スタイルマニュアルを参照ください。

どうしてもうまく構成できないときは、ウィキプロジェクトによっては記事のひな型を用意している場合がありますので、それを基にするとよいでしょう。あるいは、似た主題を取り扱った、別の記事を読んでみるのもよいかもしれません。論争がある主題の記事では、Wikipedia:中立的な観点の方針がどの話題や意見をどのように書くべきか教えてくれるはずです。

引用する

[編集]

記事を執筆するとき、主題の説明に的確な出典中の記述を引用(引き写し)したいというときがあるかもしれません。適切な形での引用は著作権を侵害することはありませんし、ウィキペディア上でも問題ありません。ただし、適切な引用であるためには、「地の文を作った上で必要最小限な量を引用する」「鍵括弧や字下げなどで引用であることを明確にする」「出典を引用文の直近に示す」など、いくつかの条件があることに注意してください。引用を用いたとしても、記事の大部分は、上記のような自分の言葉で書いたものとなるはずです。詳しくはWikipedia:著作権で保護されている文章等の引用に関する方針を参照ください。

やや専門的な補足

[編集]

前提として、著作権法が保護するのは「示されている表現」であって、「示されている事実や考え」ではありません。端的に言えば、出典によって示されている事実や考えに依拠しながらも、出典によって示されている表現に依拠しないように、ウィキペディアの記事は書かれます。

既存の著作物を利用して記事を作るとき、江差追分事件(最高裁平成13年6月28日判決)が判示するように「既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴を維持し」ているときに、元の著作物への著作権侵害が成立します。アンコウ行灯事件(京都地裁平成7年10月19日判決)によると、既存の著作物を利用して他の作品を作るとき、その利用形態は次の4つに分類できます。

  1. 既存の著作物と全く同一の作品を作出した場合
  2. 既存の著作物に修正増減を加えているが、その修正増減について創作性が認められない場合
  3. 既存の著作物の修正増減に創作性が認められるが、原著作物の表現形式の本質的な特徴が失われるに至っていない場合
  4. 既存の著作物の修正増減に創作性が認められ、かつ、原著作物の表現形式の本質的な特徴が失われてしまっている場合

著作権法上は、1番と2番が元の著作物の複製、3番が元の著作物の翻案となり、いずれも著作権侵害です。ウィキペディアで出典にもとづきながら自分の言葉で記事を書くとは、4番に相当するものを作るということです。

1番は単純なコピペの類に相当します。2番は、元の著作物の文を並び替えただけ、敬体を常体に変更しただけ、句読点の変更を行っただけといった、軽微な違いのみがある状態に相当します。3番は、元の著作物に対する表現の違いがもう少し大きくなり、新たに作られた記事に独自性(著作権法の言葉で言えば創作性)が生まれたものの、まだ、元の著作物の独自性(著作権法の言葉で言えば表現上の本質的な特徴)が残っている状態です。4番は、表現上の違いがさらに進んで、元の著作物と内容は共通するものの著作物としては別物になったといえる状態です。

1番と2番は、まじめに自分の言葉で書き直すことを心がければ、おおむね避けれるでしょう。3番と4番の違いになるとやや難しくなります。しかし、上記の注意点に気を付けながら書くことで、4番、すなわち「内容は出典(既存著作物)にもとづきつつも、自分の言葉によって書かれ、著作権を侵害していない記事」を作ることは十分可能です。この辺りの考え方についてより正確に理解したい場合は、専門書の解説[4]や実際の判例[5]を参考にしてください。

ウィキペディア内の他のページから転記するとき

[編集]

記事に執筆された文章は著作権が放棄されているわけではなく、CC BY-SAGFDLのフリーライセンスが付与されて公開されます。これによって、いくつかの使用条件を満たせば自由な利用が誰でもできるようになります。その使用条件の中に帰属表示というものがあります。ウィキペディア内の他のページから別のページへ記述を転記するとき、この帰属表示に注意してください。帰属表示にはいくつかの方法がありますが、具体的には、Wikipedia:ウィキペディア内でのコピーに書かれているように転記するときの要約欄[[コピー元の記事名]] から転記 などと書くだけです。同じ記事に執筆を重ねるときは編集履歴によって帰属表示は行われますので、このような要約欄記述をする必要はありません。

この帰属表示は、通常の記事から通常の記事への転載に限らず必要なことに注意してください。「記事を加筆のために各利用者の下書きページへコピーする」「方針やガイドラインのようなプロジェクト関連文書の記述をコピーする」といったときも必要です。またコピーだけでなく、一部を改変したものを書くときも帰属表示は必要です。例外として、自分しか著作権を持たない文章や著作物として保護されないものをウィキペディア内から他ページへ転記しても帰属表示の必要はありませんが、確信を持てない限りは常に転記するときは帰属表示を行うようにするのがいいでしょう。

他言語版のウィキペディアから翻訳するとき

[編集]

上記と同じ理由からに、他言語版のウィキペディアの記事を翻訳して日本語ウィキペディアに投稿するときも、帰属表示が必要です。Wikipedia:翻訳のガイドライン#要約欄への記入に書かれているように、翻訳した文章を投稿するときの要約欄に [[:言語用プレフィックス:翻訳した記事]] (翻訳した版の日付) を翻訳 などと書いてください。

メディアファイル編

[編集]

自分が著作者でない(自分が製作していない)ファイルをアップロードするとき

[編集]

可能な範囲

[編集]

ウィキペディアでは記事中に掲載したりするために、画像、動画、音声などのメディアファイルをアップロードすることができます。しかし、最初にはっきり言いますと、自分が著作権を持たないファイルをウィキペディアにアップロードすることはほとんどの場合で著作権侵害となり、できないと考えてください。他者の著作物でありながら、その著作者に許諾を得ることなくウィキペディアにアップロードできるのは、

  • そのファイルがCC BY-SAのようなフリーライセンスで公開されている。ただしファイルの商業利用を禁ずる非営利という条件が付くものはアップロード不可。
  • そのファイルの著作権保護期間が過ぎており、パブリックドメインの状態になっている。
  • そのファイルが極めて単純な図形などであるため、著作物として保護されず、パブリックドメインとして扱うことができる[6]
  • そのファイルがパブリックドメインとして公開されている。

といったような限られたケースだけです。これはウィキペディア日本語版にアップロードするときだけでなく、ウィキメディア・コモンズにアップロードするときも同じです。

引用は不可

[編集]

法律上では、文章と同じように、画像の引用は不可能ではありません。適切な条件を満たせば、他者の画像でも著作権侵害することなく自分の著作物に取り込むことはできます。しかし、ウィキペディア日本語版では引用を理由としてファイルをアップロードすることは現在のところできません。ウィキペディアのシステムと照らし合わせて法律上問題ないという合意に達しておらず、アップロード可とするルールは制定されておりません。

英語版ウィキペディアでは、アメリカ合衆国著作権法上のフェアユースを根拠として上記のケースに該当しない他者の著作物(CDのジャケットなど)がアップロードされて記事に掲載されていますが、ウィキペディア日本語版では、アメリカの著作権法に加えて日本の著作権法においても適法である必要があります。このため、アップロード可否の範囲に違いがあります。また、ウィキメディア・コモンズはフェアユース自体を受け付けていないので、コモンズにアップロードすることもできません。

許諾を得る

[編集]

著作者からファイルをアップロードしてもいいという許諾を得ることができれば、ウィキメディア・コモンズにアップロードすることができます。コモンズのOTRSというシステムにメールを送り、任命されたボランティアが著作者とメールをやり取りすることで許諾を確認してファイルを受け入れます。詳しくはc:Commons:OTRS/jaを参照ください。

自分が著作者である(自分が製作した)ファイルをアップロードするとき

[編集]

自分が著作権を持つファイルは、当然ながらアップロード可能です。ただし、以下のようなケースに注意してください。

  • ライセンスを付けることを忘れないでください。利用者ページへ注意がされてもなおフリーライセンスが付けられない場合は削除されることもあります。Wikipedia:アップロードされたファイルのライセンスで述べられているように、アップロードされたファイルは記事本文とは別にライセンスを設定する必要があります。そのため、何もライセンスを設定されていないファイルはフリーな状態にありません(いわゆるAll Rights Reservedな状態にあるともいえます)。ウィキペディアではフリーでないファイルは基本的に受け入れません。具体的なライセンスの選択についてはHelp:画像などのファイルのアップロードと利用を参照ください。
棚田の写真。OTRSによって本人によるアップロードであることが確認されたファイル
  • アップロードしようとする著作物を他のウェブや書籍などで既に公開している(していた)ときは、Wikipedia:自著作物の持ち込みに沿った処置をしてください。このようなときに、ウィキペディア上で「私は確かにその著作者だ」と宣言されても本当かどうか判断不可能です。本人確認がきちんと取れない場合は削除されることもあります。コモンズへアップロードしたい場合は、上記と同じようにOTRSを通じて、本人確認がされてファイルが受け入れられます。
  • 元々存在する作品(例えば、テレビ番組や書籍、ポスター、像、アプリケーション等のスクリーンショット)を被写体として、撮影・録画された写真をアップロードする際は、ほとんどの場合、被写体とした作品の著作権者からの許諾を得る必要があります。ただし、許諾を得ずにアップロードできる、次のような例外が存在します。
    • 自分が著作者でないが、アップロードできる作品として上で示されているものを被写体とした場合。ただし、被写体が継承を要するライセンスで提供されていた場合は、あなたも同じライセンスで提供しなければなりません。
    • その作品が偶然に写りこんでしまっただけの場合。街並みを撮影したら、路地に貼られていた映画の宣伝ポスターが移りこんでしまった場合などが該当します。この場合は、その作品の著作権状況にかかわらず、アップロードすることができます。ただし、移りこんでしまった被写体を切り抜いてアップロードしたり、移りこんでしまった被写体を説明するために、当該写真を利用することは認められていません。
    • 日本国内の屋外美術品を被写体とした写真を、ウィキペディア日本語版にアップロードする場合。屋外美術品とは、「街路、公園その他一般公衆に開放されている屋外の場所、または建造物の外壁その他一般公衆の見やすい屋外の場所」に「恒常的に」設置された一点物の作品を言い、広場の銅像などがこれに当たります。ウィキメディア・コモンズへのアップロードは認められておらず、また、ウィキペディア日本語版にアップロードする際も、満たすべきいくつかの条件があります。詳しくはWikipedia:屋外美術を被写体とする写真の利用方針を参照ください。
  • 職務上で製作した著作物は職務著作という扱いになることがあります。この場合は、自分のみが製作に携わったようなものでも、会社などの法人が著作者となりますので、自身だけの意思では自由にアップロードはできません。

注釈

[編集]
  1. ^ 極めてありふれた表現を用いた単純な一行の文章などでは創作性が認められず著作権保護されない場合があるため、そのようなものであれば引き写しを行ったとしても著作権侵害とはならないこともあります。しかし創作性の有無の判定は誰にでも明確に判断できるほど簡単ではありませんし、民法上の不法行為として結局問題となった例もありますので、常に引き写しは避けることを心掛けて下さい。
  2. ^ コムライン・デイリー・ニュース事件(東京地裁平成6年2月18日判決)では、著作権法上の翻案に相当する要約のことを「これに接する者に、原著作物を読まなくても原著作物に表現された思想、感情の主要な部分を認識させる内容を有しているもの」と判示しています。江差追分事件(最高裁平成13年6月28日判決)では、言語の著作物の翻案を「既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為」と判示しています。
  3. ^ そして、それはウィキペディアにおける編集の最も楽しい部分の一つのはずです。
  4. ^ 類似性・依拠性に応じて「複製物 → 翻案物 → 著作権的に独立した作品」と変化する論理を解説したものとしては、次のものが参考となる。
    • 髙部眞規子『実務詳説 著作権訴訟』金融財政事情研究会、2012年、240-266頁。
    • 『著作権法コメンタール2 26条~88条』半田正夫・松田政行(編)、勁草書房、2015年、第2版、48-89項。
    • 『著作権判例百選』中山信弘・大渕哲也・小泉直樹・田村善之(編)、有斐閣〈別冊ジュリスト 198号〉、2009年、第4版、54-55頁。
  5. ^ 文章(言語の著作物)に関する翻案権侵害の境目としては、前掲した以下の判例が参考となる。
  6. ^ 創作性を欠き、著作物の対象とならないもの。

関連項目

[編集]