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PzB M.SS.41

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Panzerbüchse M.SS.41/ZB Vz.41
Panzerbüchse M.SS.41/ZB Vz.41
種類 対戦車ライフル
製造国 チェコスロバキアの旗 チェコスロバキア
設計・製造 ブルーノ造兵廠[注釈 1]
年代 1940年代
仕様
種別 ブルパップ方式ボルトアクションライフル
口径 7.92mm
銃身長 114.5 cm[注釈 2]
ライフリング 4条右回り
使用弾薬 7.92x94 Patr.318
装弾数 5/10発
作動方式 回転閉鎖方式ボルトアクション
全長
  • 137.2 cm ※床尾版展開時[注釈 2]
  • 128.0 cm ※床尾版収納時[1]
  • 151.1 cm ※銃身部最大前進時[4]
重量 13.1kg
発射速度 20発/分 ※最大値
銃口初速 1,175 m/s
最大射程 500 m
実用最大射程 300m
(角度0度の20mmの装甲板を貫通可能)
有効射程 100m
(角度0度の30mmの装甲板を貫通可能)
歴史 
設計年 1941年
製造期間 1941-1943年
配備期間 1942年-
配備先 ナチス・ドイツの旗 ナチス・ドイツ武装親衛隊
関連戦争・紛争 第2次世界大戦
バリエーション PzB 42
製造数 2,000 丁
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PzB M.SS.41ドイツ語: Panzerbüchse Modell.SchutzStaffel.41 [注釈 3]):「対戦車銃41型,親衛隊向け」の意)は、ナチス・ドイツ武装親衛隊第二次世界大戦で使用した対戦車ライフルである。

PzB 41 (t)(Panzerbüchse 41(tschechoslowakei):対戦車銃41型(チェコスロバキア製)の意)とも呼ばれる。開発元のブルーノ造兵廠(Zbrojovka Brno(チェコ・スロバキア語版)[注釈 1]による名称は、ZB Vz.41チェコ語: Protitanková puška Zbrojovka Brno Vzor.41:ブルーノ造兵廠製 41年式対戦車銃)である。

概要

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チェコスロバキアブルーノ造兵廠が、ナチス・ドイツによる併合以前より開発を進め、1938年には試作品が完成していた対戦車ライフルを、武装親衛隊兵器局の要求に応じてドイツの7.92x94 Patr.318弾を使用するものとして改めて設計し直したもので、装弾部と弾倉が引き金より後方に位置する、いわゆる“ブルパップ方式”のボルトアクションライフルである。

銃把と引金の後方に弾倉と作動機構を配置することにより、ドイツ国防軍が開発した他の7.92x94 Patr.318弾を使用する対戦車銃、PzB38(全長1,651mm)及びPzB39(全長1,620mm)に比べ、銃身長がほぼ同じであるにもかかわらず、全長を約30cm短縮することに成功している。

ボルトアクション機構を持つライフルでは、通常は銃身は固定されており、槓桿を操作して遊底を後方に引くことによって薬室の開放を行い、再び遊底を前進させて薬室への装弾と閉鎖を行うが、PzB M.SS.41は銃把を槓桿として用い、薬室を含む銃身部全体を前方に押し出すことによって薬室を開放し、再び後方に引く事によって装弾と閉鎖を行う。この機構により、本銃は手動連発式ながら銃を構えて照準器を覗いたまま装填・排莢が可能な速射性の高い構造となっており、試験時には20発/分という高い発射速度を示した。

発射される7.92x94mm弾は、100mの距離で90度垂直に立てられた装甲鋼板30mmを貫通することが可能で、300メートルの距離では同条件で20mmの貫通力を示した。

PzB M.SS.41は少数が部隊配備されたものの、第二次世界大戦開戦後の戦車の急速な重装甲化の前には威力不足であり、高品質な鋼材を使用して製造に削り出し加工を多用したために製造コストが高く、配備が進まない上に、部品の精度が高く繊細な構造から泥や砂埃に弱いため、野戦で使用するには問題が多かった。1941年から1942年にかけ、本銃の設計を元に口径を15mmに拡大し、15x104mm弾仕様とした“15mm PzB42(Br)”も開発されたが、威力不足と判断されて試作のみに終わっている。

なお、本銃は軍隊に実際に制式採用されたものとしては、世界最初の“ブルパップ”方式の小火器である。

開発・配備

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PzB M.SS.41は、ドイツ軍制式とされたPzB 38対戦車ライフルが複雑な構造故に生産がはかどらず、また軍需生産を巡るドイツ国防軍と武装親衛隊の対立により親衛隊向けへの配備が滞ったことから、親衛隊作戦本部により、ドイツの併合下にあり、高い銃器開発技術を持ち、生産力に余裕のあるブルーノ造兵廠[注釈 4]に対し、1939年12月16日付で親衛隊兵器局(Waffenamt)と共同しての開発を命じたものである[注釈 5]

この命令に対し、ブルーノ造兵廠ではW / 7.92の計画名で対処に当たり、チェコスロバキアがドイツに併合される以前、1937年より開発を進め、1939年の時点で試作品が完成している一連の対戦車ライフルの中から、7.92x145mm弾を使用するZK382を親衛隊兵器局に提示した。ZK382は銃床部に弾倉があり、その前方に槓桿と引金がある、という構成になっており、弾倉が引き金より後方に位置する、いわゆる“ブルパップ方式”のボルトアクションライフルであった。この提示に対し、親衛隊兵器局からは、ZK382の使用弾薬を7.92x94 Patr.318弾に変更したものを製作して提出することが命じられた。

1940年1月23日には、ブルーノ造兵廠より、ZK382の使用弾薬を変更したものを基に、W / 7.92計画下での試作品の一つであるZK404の特徴を採り入れて装弾方式等を修正し、改めて設計し直した新型対戦車銃の詳細な仕様書が提出された。親衛隊兵器局からは同年2月24日にこの仕様書を承認する旨が通達され、試作銃の製作が命じられた。1941年1月18日には1001の製造番号を持つ試作品、「Vz.41」が完成して実射試験が行われ、1941年1月付で「PzB M.SS.41」の名称で制式採用された。

ブルーノ造兵廠に対しては直ちに生産に取り掛かることが命じられ、若干の仕様変更[注釈 6]が行われて生産が開始されたが、試作品の実射試験を継続した結果、銃身に問題があり、累計発射数が600発を超えると途端に発射される弾丸の弾道が不安定になり、命中しても弾丸の旋転が発生して標的を貫通できなくなり、更に、銃身が破損する事例が発生した[5][注釈 7]

これに対処するには、銃身に用いる金属に試作品よりも高価、かつ加工が困難な素材が必要であり、現行の予算規模と予定された期間では当初の発注数を調達できないことが判明した。1941年6月25日から1942年9月14日にかけて、最初の製造分である150丁が銃本体と付属品を合わせてオラニエンブルクの武装親衛隊本部に納入されたが、この時点で既に当初の調達予定期間を大幅に超過していた。

武装親衛隊ではチェコスロバキアより対戦車銃6,000丁の調達を予定しており[6]、第1次調達分として対戦車銃2,000丁の生産と弾薬200,000発の調達を予定していたが、1941年6月には国防軍は親衛隊兵器局が独自に対戦車銃とその弾薬を発注したことに不快感を示し、計画の中止を求めないまでも、今後の対戦車銃用弾薬の融通については消極的な意思を示した。1942年に入ると、戦車の重装甲化に伴って「対戦車ライフル」という兵器が急速に有効性を失っていることが認識されたため、同種の兵器に対するドイツ軍の方針は転換されることになり、同年8月には7.92x94 Patr.318弾の生産が打ち切られた。1943年2月17日には、PzB M.SS.41について、当初の予定より大幅に遅れている生産/配備計画を見直し、同月の時点で製造が完了しているのものを最後に第1次発注分をもって生産を中止し、この最終生産分58丁を同年3月15日付で実戦部隊に配備することをもって生産と配備を中止することが決定され、PzB M.SS.41は少数の生産と配備に終わった。

備考

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PzB M.SS.41は上述のようにチェコスロバキア製であるが、書籍等によっては「スイス製の対戦車銃」として記述されていることがあり、製造会社もスイスのSolothurn社[注釈 8]とされていることがある。

これは、本銃がSolothurn社が開発しドイツ軍が使用したS-18対戦車ライフルに形状が近似していることと、「ドイツ以外の国で開発・製造されドイツ軍が導入した」という同様の経緯を辿っていることからの混同と推測される。

また、作動形式についても「半自動方式」と記述されていることがあるが、この点についてもS-18対戦車ライフルとの混同が見られる。本銃はS-18同様に5発もしくは10発装填の弾倉を使用するが、前述のように変則的ではあるがボルトアクション方式の手動連発式で、半自動発射機構はない。

登場作品

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ÜberSoldier』(英語版)
B-41”の名称で登場。装弾数は4発に設定されている。

脚注

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  1. ^ a b チェコ語の“Brno”の発音はカタカナ表記であれば「ブルンノ」が原発音に近いが(listen)、日本では慣例的に「ブルーノ」もしくは「ブルノ」と表記されることが多い。銃器製造元の名称としては「ブルーノ」が多く用いられているため、当項目では「ブルーノ」と表記する。
  2. ^ a b 全長及び銃身長は参考にした書籍やwebサイト等により数値にばらつきがあり、複数の実物を取材したというVALKA.czのページ[1]では床尾板を含めない全長に1,372mmと1,353mmのものが、銃身長に1,145mmと1,132mmのものが存在した、としている。
    Wikipediaロシア語版を始め、多くのwebサイトや書籍では全長を1,360mmとしており[2](1,339mmとしているwebサイトもある[3])、銃身長に関しては1,100mm[2]としている(『WAFFEN REVUE』誌では「1,102mm」としている)[4]
  3. ^ ドイツ語で“Panzer”は「装甲」、転じて「戦車」を、“Büchse”とは「ライフル銃」(原意としては「片方の開いた筒状のもの」を示す言葉で、ドイツ語としては通常「拳銃を除いた手持ち火器」「軍事用途ではないライフル銃」を指す。日本語の訳語としては「ライフル銃」、もしくは「猟銃」とされることが一般的である)を意味する単語で、“Panzerbüchse”は日本語では通常「対戦車銃」もしくは「対戦車ライフル」と訳される。
  4. ^ なお、ナチス・ドイツによる併合下では“ ドイツ語: Waffenwerke Brünn”および“Waffenfabrik Brünn”(ドイツ語で「ブリュン兵器生産所」および「ブリユン兵器工場」の意)と改称されて存続していた。
    当項目ではナチス・ドイツ併合下の期間についての事象であっても「ブルーノ造兵廠」で記述している。
  5. ^ 親衛隊作戦本部からは7.92mm口径の対戦車銃2,000丁と、15mm口径の対戦車銃117丁が発注された。
    ドイツ併合下のブルーノ造兵廠において、15mm口径の対戦車銃は“W / 15”の計画名で研究が進められ、15x104mm弾使用の対戦車銃、“Panzerbüchse 244”(チェコスロバキア名称“ZK416”)として1942年5月には完成したが、この時点では既にドイツ軍は対戦車銃に対して「いずれの口径のものも威力不足である」として方針を転換していたため、採用されずに終わった。
  6. ^ 量産品は試作品に比べ、銃口制退器が丸形から角型に変更されていること、チークパッドが大型化されている、といった差異がある。
  7. ^ ドイツ軍における対戦車銃の想定銃身命数は600発であったが、銃器における「銃身命数」とは「本来の性能値(射撃精度)を発揮できる発射数」であり、この実射試験の結果はVz.41の銃身命数が600発より遥かに短いことを示す。
  8. ^ 日本におけるカタカナ表記としては通常“ソロトゥルン”または“ゾロトゥルン”が用いられる[7]。日本では英語での発音に近い「ソロサーン」という表記も見られる。
    大日本帝国陸軍では、ゾロターンと表記している[8][9]

出典

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  1. ^ a b PT PUŠKA ZB 41
  2. ^ a b WORLD GUNS>Anti-tank rifles>PzB M.SS.41※一例
  3. ^ "The SS Anti-Tank Rifle M.SS.41"
  4. ^ a b 『WAFFEN REVUE』Nr.45 p.7258
    ※『WAFFEN REVUE』誌の頁数表記は通算番号制となっており、個別の頁数表記はない
  5. ^ Protitanková puška ZB vz. 41 (Pz. B. M. SS 41)
  6. ^ 『WAFFEN REVUE』Nr.46 p.7329
  7. ^ ソロトゥルン(ゾロトゥルン)Solothurn”. スイス政府観光局. 2016年10月29日閲覧。
  8. ^ JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.C01006768200、大日記乙輯昭和11年(防衛省防衛研究所)”. 2016年10月29日閲覧。
  9. ^ JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.C01006866000、大日記乙輯昭和12年(防衛省防衛研究所)”. 2016年10月29日閲覧。

参考文献・参照元

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書籍
  • 『WAFFEN REVUE』
    • Nr.45 「Deutsche Panzerbüchsen im kaliber 7,92 mm」 1982年 p.7249-7271
    - 「9.Panzerbüchse M SS 41」p.7258-7259
    • Nr.46 「Deutsche Panzerbüchsen, Nachtrang」 1982年 p.7329-7344
    ※『WAFFEN REVUE』誌の頁数表記は通算番号制となっており、個別の頁数表記はない
Webサイト

関連項目

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外部リンク

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