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AMD Phenom

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Phenom 9シリーズから転送)
Phenom
生産時期 2007年11月から
生産者 AMD
プロセスルール 65nm
アーキテクチャ x86
マイクロアーキテクチャ K10
命令セット AMD64
コア数 3から4
(スレッド数:3から4)
ソケット Socket AM2+
コードネーム Toliman
Agena
前世代プロセッサ Athlon 64 FX
次世代プロセッサ Phenom II
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Phenom(フェノム)は、アドバンスト・マイクロ・デバイセズが2007年11月19日に発表した[1]x86_64互換のマイクロプロセッサである。名前の由来は「驚異的な・目を見張る」といった意味の「Phenomenal」より。稀に「ペノム」とも呼称されるが、正しくは「フェノム」である[2]。2009年1月より Phenom II を発売した。

登場までの経緯

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Intel の Core 2 Quad によるクアッドコア ブームの折、AMD にも早急にクアッドコア CPU の発売が求められていた。Kentsfield がデュアルコアの 2ダイによる「なんちゃってクアッドコア」(インテル日本法人担当談)[3]であるのに対し、Phenom は 4つのコアを 1ダイに収めた「真のクアッドコア」「ネイティブクアッドコア」である点を強調。「Are you "ネイティブ"?」のキャッチコピーで、対抗感を滲ませていた[4]。また、なかなか出荷に漕ぎ着けないまま、威勢の良い事を発言するAMDに対して、見掛け倒しであることを揶揄して「Phenomは張り子のクアッド」(インテル日本法人担当談)などと命名し、煽っていた。

当初はクアッドコア製品が「Phenom X4」、デュアルコア製品が「Phenom X2」と名付けられていた。しかし、出荷直前の2007年9月に急遽トリプルコア製品をラインナップに加えると発表し、クアッドコア製品は「Phenom 9000」、トリプルコア製品は「Phenom 8000」、デュアルコア製品は開発中止となり、代わりに「Athlon X2 7x50」 (Kuma) が発表された。

この世界初の x86 トリプルコア採用 CPU はPhenom 9000 シリーズのコアを 1個無効化したものとされ、歩留まりが向上すると共に価格や消費電力が低下する点をセールスポイントとした。PhenomIIの方が有名だが、一部において、無効化されているコアを復活できると話題になった[5]

発売後の状態

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後発だけあって Core 2 Quad の対抗馬として大きく注目され、発売後は各種メディアでベンチマーク比較が数多く行われたが、その結果 Core 2 Quad を超えるものではないとする評価が多勢を占めた。要因としては、完全なマルチスレッド処理となっているアプリケーションやゲームがまだ僅かしかなく、Phenom が得意とする処理は従来プログラマーにとって避けるべき処理とされていたことや[6]、絶対的なクロック数の低さ、消費電力の高さなどが挙げられている。これにより、新製品にもかかわらず高値を付けることができず、TLB のエラッタ(後述)が発覚してからは更に値が下がる窮状となった。なお、このエラッタが解消された2008年3月からは、再び Phenom 9000 が Phenom X4 9000 に、Phenom 8000 が Phenom X3 8000 に改称された。

TLBのエラッタ問題

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K10マイクロアーキテクチャでの最初のリビジョンである B2 では、全 CPU モデルで L2 キャッシュの不具合が原因で、L3 キャッシュ内容が特定の条件で破壊されるという、エラッタの存在が公表されている。L2 / L3 キャッシュと Translation Lookaside Buffer (TLB) に関わる問題であり、最悪の場合、OS がフリーズしたりデータが破損したりする可能性があるが、通常使用によるエラッタによっての問題の発生確率は低い[7]

このエラッタを回避するには、BIOS や OS によってモデル固有レジスタ (MSR; Model Specific Register) の設定で TLB のキャッシュを無効化するしかないが、TLB のキャッシュを無効化した場合はアプリケーション レベルで性能が 5% から 10% 低下する[7]。このエラッタは同じ K10マイクロアーキテクチャを採用する Opteron でも発生し、Barcelonaの一時販売停止から大量出荷の延期に繋がると共に、高価格で販売できる新製品の出足を挫いた。

Phenom の発売後まもなく TLB のキャッシュを無効化するための MSR の変更を行うコードを含んだ BIOS や OS での対策が始まり、2008年3月からはエラッタを解消した B3 ステップが順次発売されている。通常、ステッピングの更新でモデルナンバーが変更されることはないが、B3 ステップの Phenom はモデル ナンバーが 50 増加しており異例の差別化が図られた。

デスクトップ向けラインナップ

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K10 世代

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Agena
Agena
ブランド 型番 CPU TDP
(W)
対応メモリ HT
(MHz)
コア数
(スレッド数)
クロック
(GHz)
キャッシュ (MB)
L2 L3
Phenom X4 9950 BE 4 (4) 2.6 2 2 140 DDR2-1066 2000
9850 BE 2.5 125
9850
9750 2.4 1800
9650 2.3 95
9600 BE
9600
9550 2.2
9500
9450e 2.1 65
9350e 2.0
9150e 1.8 1600
9100e
Toliman
Toliman
ブランド 型番 CPU TDP
(W)
対応メモリ HT
(MHz)
コア数
(スレッド数)
クロック
(GHz)
キャッシュ (MB)
L2 L3
Phenom X3 8850 3 (3) 2.5 1.5 2 95 DDR2-1066 1800
8750 BE 2.4
8750
8650 2.3
8600
8550 2.2
8450 2.1
8450e 65
8400 95
8250e 1.9 65 1600

脚注

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関連項目

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外部リンク

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