PINO (ロボット)
PINO(ピノ、Open PINO Platform)は、GNU Free Documentation LicenseとGNU General Public Licenseに準拠して公開されたヒューマノイド・プラットフォーム[1]、およびゼットエムピーで製造された二足歩行ロボット。
Linuxのように[1]、多くの人の貢献でロボット工学のプラットフォームに育っていくことを目指している[2]。
コストの観点から、モータには市販のラジコン模型用サーボモータを使用した結果、トルクの観点から従来の二足歩行の制御則を適用することは出来ず[3]、制御則にロボットの構造パラメータを組み込み、必要とされるトルクを減らすことで、少ないトルクでも様々な行動を生成することを可能としている[4]。
外部にホストコンピュータ (ホストPC) を持ち、当初はPINOから得られるセンサ情報を直接PC上のA/Dボードに取り込んでホストPCがリアルタイムに各関節の角速度を計算した結果を RS-232C を介して動作に必要な時系列データをすべてPC上から逐次SH2ボードに転送していたため、ホストPCにリアルタイムOS(RT-Linux)を必要としていたが[5]、SH2上に動作に必要なすべての時系列データを保存し、ホストコンピュータからは抽象度の高いコマンドのみを送るよう改めてリアルタイム性は要求されなくなった[6]。
ロボットが一般家庭で人間と共存する将来にふさわしいサイズや素材、ふるまいといった、メカニックありきで起こしたデザインではなくロボットの存在そのもののデザインを基礎研究段階から研究し[7]、 親近感を持てるよう、PINO の大きさは人間の 1歳児の平均的な寸法から全長とプロポーションを採り、外装はポリウレタン製で曲面の多い形状を光造形システムを用いて、転倒時にも壊れない軽く強度の高いものを製作した。外装を含めて全長約70cm、重量約4.5kg[8]。
ロボットデザイナーの松井龍哉により、ピノキオをモチーフにしてデザインされ、「ロボットデザイン」という新領域を創造した[9]。玩具の PINOは、PINOの意匠のみをツクダオリジナルへ[2]ライセンス供与したもので、その機構や機能はまったく独自のもの[10]。 ピノッキオの冒険におけるpinocchioとは松の種子を意味し、イタリア語でpinoとは松の木を[11]、ピノと読めばスペイン語で松を意味する[12]。
外装デザイン、意匠、商標は、占有的権利が設定されており、GPLは適用されない[13]。
PINOの販売を行う会社ゼットエムピーが2001年1月30日に設立され事業活動を行っている[14]。2003年頃、マーケットニーズをもとに関節を駆動する専用モーターやギア、センサー、CPU ボードなど、すべてを一からオリジナルで開発して全体最適をめざし、外装デザインはそのまま内部を一新したPINO バージョン2を完成させ[15]、2006年8月8日には「PINO ver.3」の開発を発表した[16]。
大学や研究機関向けに販売された他、イベントのマスコットとしてレンタルされ、マスメディア的な注目としては[2]宇多田ヒカルのシングル『Can You Keep A Secret?』のプロモーションビデオやペプシコーラのコマーシャルにも出演した[17]。
脚注
[編集]- ^ a b 北野宏明 2002, p. 11.
- ^ a b c 科学技術振興機構 2009, p. 10.
- ^ 山崎文敬 2001.
- ^ 山崎文敬 et al. 2001, p. 827.
- ^ 山崎文敬 et al. 2000, p. 2.
- ^ 北野共生プロジェクト 2001.
- ^ 松井龍哉 & Atsushi Watanabe 2011, p. 37.
- ^ 山崎文敬 et al. 2000, p. 1.
- ^ 科学技術振興機構 2005, p. 8.
- ^ 北野共生プロジェクト & 2003-5-20.
- ^ 野呂芳男 2001, p. LXI-XC.
- ^ スタジオグリーン編集部 2020, p. 200.
- ^ 北野共生プロジェクト & 2001-11-26.
- ^ 科学技術振興機構 2009, p. 36.
- ^ 科学技術振興機構 2005, p. 9.
- ^ 森山和道 2006.
- ^ 中村尚樹 2020, p. 245.
外部リンク
[編集]- http://www.zmp.co.jp/
- 山崎, 文敬. "PINO The Humanoid". 北野共生プロジェクト. 2008年4月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月4日閲覧。
- 北野共生プロジェクト. "Open PINO Platform". 北野共生プロジェクト. 2008年5月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月4日閲覧。
- 山崎文敬、宮下敬宏、松井龍哉、北野宏明「ヒューマノイドPINO -ヒューマノイドプラットホームとしての外装と構造-」『ロボット学会学術講演会』第18号、立命館大学、2000年、1-2頁、CRID 1521136279940778240、NAID 40004031323、OCLC 835702324、国立国会図書館書誌ID:5990061、2024年1月3日閲覧。
- 山崎文敬「概要」『PINO The Humanoid』、ERATO、2001年、2024年1月3日閲覧。
- 北野共生プロジェクト「ホストコンピュータ」『Open PINO Platform』、ERATO、2001年、2024年1月3日閲覧。
- 北野共生プロジェクト「OpenPINO Platformの理念」『PINO The Humanoid』、ERATO、2001年11月26日、2024年1月3日閲覧。
- 北野共生プロジェクト「FAQ」『Open PINO Platform』、ERATO、2003年5月20日、2024年1月3日閲覧。
- 山崎文敬、遠藤謙、北野宏明、浅田稔「ダイナミクスを用いた二足歩行による歩速可変制御」『日本ロボット学会学術講演会予稿集』第19号、日本ロボット学会、2001年、827-828頁、CRID 1570009749759860736、NAID 10008212970、OCLC 835702324、国立国会図書館書誌ID:000000075307、2024年1月3日閲覧。
- 北野宏明「ロボットデザインとOpenPINO」『北野共生システムプロジェクトの研究成果』、科学技術振興機構、2002年、11-13頁、2024年1月3日閲覧。
- 科学技術振興機構「「夢の結晶」を商品に ゆたかな生活時間を生み出すパーソナルロボット」『JSTnews』第2巻第3号、科学技術振興機構総務部広報課、2005年、8-9頁、doi:10.1241/jstnews.2.3_8、ISSN 13496085、NAID 130007983508、OCLC 852250885、CRID 1390287142241759232、2024年1月3日閲覧。
- 森山和道「ZMP、二足歩行ロボット「PINO」をバージョンアップ」『Robot Watch』、Impress Watch、2006年、2024年1月3日閲覧。
- 科学技術振興機構「北野共生システムプロジェクト (1998-2003)」『(独)科学技術振興機構 創造科学技術推進事業 追跡評価用資料』、研究プロジェクト推進部、2009年、1-36頁、2024年1月3日閲覧。
- 野呂芳男「女神信仰と『ピノッキオの冒険』」『黎明』第5号、松鶴亭出版部、2001年、LXI-XC、CRID 1130282268617424000、NCID AA11559003、OCLC 852458932、国立国会図書館書誌ID:000000163688、 オリジナルの2005年5月23日時点におけるアーカイブ、2024年1月7日閲覧。
- 松井龍哉、Atsushi Watanabe「Think! Meets X 異才との遭遇(FILE NUMBER 8)使う人の喜ぶシーンをイメージしてロボットと、その市場をつくり出す」『Think! = シンク!』第37号、東洋経済新報社、2011年、38-43頁、CRID 1523951029714223488、NAID 40018821512、NCID AA11647519、OCLC 5174577628、国立国会図書館書誌ID:000000413590、2024年1月7日閲覧。
- 中村尚樹『日本一わかりやすいMaaS & CASE : ストーリーで理解する』プレジデント社、2020年、245頁。ISBN 9784833423588。OCLC 1158040235。国立国会図書館書誌ID:030341428 。2024年1月3日閲覧。
- スタジオグリーン編集部『13ヶ国語を収録!異世界ネーミング大辞典』スタジオグリーン、2020年、73頁。ASIN B08M5F6GSF 。2024年1月7日閲覧。