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LM-57

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
LM-57
ЛМ-57
基本情報
製造所 車両修理工場
製造年 1957年 - 1969年
製造数 1,038両
運用終了 1986年レニングラード市電
主要諸元
編成 ボギー車(単車)
軌間 1,524 mm
電気方式 直流550 V
架空電車線方式
最高速度 65 km/h
車両定員 着席37人
定員170人(乗客密度5人/m2時)
最大207人(乗客密度8人/m2時)
車両重量 18.5 t
編成長 15,000 mm
全幅 2,500 mm
全高 3,080 mm
車輪径 700 mm
固定軸距 1,940 mm
台車中心間距離 7,500 mm
主電動機 DK-255(ДК–255)、DK-257(ДК–257)
主電動機出力 45 kw
歯車比 7.17
出力 180 kw
制御方式 間接制御
制動装置 発電ブレーキ空気式ディスクブレーキ
備考 主要数値は[1][2][3][4][5][6]に基づく。
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LM-57ロシア語: ЛМ-57)は、かつてソビエト連邦(現:ロシア連邦)各地の路面電車で使用されていた電車。多数の新要素を導入した事から、主要な導入先であったレニングラード(現:サンクトペテルブルク)では「スティリヤガ英語版(Стиляга)」と言う愛称で呼ばれていた[1][2][3][4][5][7]

この項目では、LM-57を基に製造された試作車のLM-67(ЛМ-67)についても解説する[2][8]

概要

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レニングラード(現:サンクトペテルブルク)の輸送用機器メーカーであった車両修理工場(→ペテルブルク路面電車機械工場)は、1930年代の創設以降地元のレニングラード市電を始めソ連各地に向けて多数の路面電車車両を製造し続けていた。だが、LM-49で車体の軽量化や強度の増加がなされた一方、主要部品や電気機器については旧来の構造のままであり、レニングラード市当局からは抜本的な近代化が求められていた。その要望に応える形でレニングラード路面電車修理工場が開発したのがLM-57である[2][5][6]

ループ線が終端に存在する路線での運用を前提とした片運転台のボギー車で、折戸式の乗降扉が右側3箇所に設けられていた。設計当初は連結運転を行う事が想定されていたが、当時レニングラードでは地下鉄レニングラード地下鉄)の建設が行われており、将来的な路面電車の利用客の減少が予想されていた事から連結器の設置が行われず、1両(単車)での運用を前提とする方針へと変更した[注釈 1]。そのため車両に連結器は設置されていなかった。後述するディスクブレーキに加え、乗降扉やワイパー、集電装置(菱形パンタグラフ)の可動には圧縮空気が用いられた。車内には発電ブレーキの熱を利用した温水式のヒーターが設置されており、従来の車両よりも暖房効果が高く乗客から好評を得た[2][3][5]

LM-57は連結器の有無に加え、従来の電車から以下のような車体・機器の刷新が行われた[1][2][3]

  • 車体デザイン - LM-57の車体形状は従来の車両のような直方体から一変し、インダストリアルデザイナーのI.A.ヴァクソン(И. А. Ваксом)が手掛けた、丸みを帯びた流線形のデザインが取り入れられた[8][6][5]
  • 台車 - LM-57の台車には防振ゴムを挟んだ弾性車輪が用いられ、騒音が大幅に削減された[2][3][6][5]
  • 速度制御 - 従来の車両は、運転台からの速度制御方法として主電動機に流れる電流を直接制御器で操作する直接制御が用いられていた。この方法は構造が簡素となる反面、ハンドルの動作が重くなる欠点があり、更に安全性の面でも難があった。そのため、LM-57は制御用の回路(24 V)を独自に設けた間接制御が導入された[2][3]
  • 制動装置 - LM-57の制動装置には発電ブレーキ空気式ディスクブレーキに加え、電磁吸着ブレーキが非常用として初めて採用された[2][6][5]

運用

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1957年から量産が始まり、後述する後継形式のLM-68の製造が本格化した1969年までに1,038両が製造された。大半はレニングラードレニングラード市電[注釈 2]に導入されたが、ゴーリキーゴーリキー市電)やタシュケントタシュケント市電)など他都市への導入も実施された。その後、レニングラード市電からは1986年に引退し、ゴーリキー(現:ニジニ・ノヴゴロド)を始めとする他都市でも1980年代に営業運転を終了している[1][3][4][10]

LM-57が導入された都市は以下の通りである。都市名はソビエト連邦時代のものを記す[1][3][4]

LM-57 導入都市一覧[2][3][4]
都市 導入車両数
レニングラード
(レニングラード市電)
711両
ゴーリキー
(ゴーリキー市電)
75両
タシュケント
(タシュケント市電)
75両
マグニトゴルスク
(マグニトゴルスク市電)
70両
ニジニ・タギル
(ニジニ・タギル市電)
55両
サラトフ
(サラトフ市電)
30両
アルハンゲリスク
(アルハンゲリスク市電)
13両
カザン
(カザン市電)
9両

保存

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5148(右)(2007年撮影)
  • サンクトペテルブルク - サンクトペテルブルク市電に導入されたLM-57のうち、5148は引退後原型を維持したままペテルブルク電気車両博物館(Ретро-трамвай — петербургская классика)で動態保存されている。また、博物館は架線検測車に改造された5733に加えて、1980年代以降観光用に使用されたものの1990年代に一部が解体された5422も収蔵している[3][10]
2567(2016年撮影)

LM-67

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LM-57のうち、1967年に製造された1両(5120)については、新型電車開発に向けた試験車両として車体形状を変更した「LM-67(ЛМ-67)」として製造された。電気機器や側面の形状はLM-57と同型であった一方、前面窓は大型ガラス1枚窓に変更され、先頭形状も直線的なものに改められた。前照灯・尾灯の位置も変わり、前面窓下部の左右に設置されたケース内に取り付けられた。レニングラード市電1983年まで試験や営業運転が行われ、その実績は1968年から製造が始まったLM-68以降の形式に活かされた[2][8]

関連形式

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脚注

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注釈

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  1. ^ 実際は1960年代以降も郊外への路線拡張によってレニングラード市電の利用客は増加し、後継車両となるLM-68以降は総括制御による連結運転が可能な設計となった[9][8]
  2. ^ 当初は連結運転を想定し先頭に立つ奇数番号の車両が製造されたが、後に計画が変更された事で偶数番号も使用されるようになった。

出典

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  1. ^ a b c d e ЛМ-57”. Музей городского электрического транспорта. 2020年3月28日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k ЛМ-57 и ЛМ-67”. Трамвайные вагоны. 2020年3月28日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j 1961 Трамвайный вагон ЛМ 57”. 360carmuseum.com. 2020年3月28日閲覧。
  4. ^ a b c d e f Трамвай ЛМ-57 №5148 («Стиляга»)”. Ретро-трамвай — петербургская классика. 2020年3月28日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g ПТМЗ 2004, p. 6.
  6. ^ a b c d e ПТМЗ 2004, p. 5.
  7. ^ «Слон» из трамвайного парка приветствует Всемирный день дикой природы”. Горэлектротранс (2020年3月3日). 2020年2月12日閲覧。
  8. ^ a b c d ПТМЗ 2004, p. 7.
  9. ^ Трамвай ЛМ-68 («Аквариум»)”. Ретро-трамвай — петербургская классика. 2020年3月28日閲覧。
  10. ^ a b 名取紀之 (2012年5月10日). “ロシア、知られざる二都のレトロ・トラムバイ。(2)”. ネコ・パブリッシング. 2020年3月28日閲覧。
  11. ^ Музей трамваев и троллейбусов в Нижнем Новгороде”. МП «Нижегородэлектротранс». 2020年3月28日閲覧。
  12. ^ В Петербурге представили модернизированные трамваи”. Горэлектротранс (2014年3月7日). 2020年3月28日閲覧。
  13. ^ Petrohrad se pochlubil novými vozidly, retrotramvaje mu dodá Uraltransmaš”. Československý Dopravák (2022年7月15日). 2022年7月16日閲覧。
  14. ^ Полина Лемешева (2022年7月11日). “Новинки городского электротранспорта: «Петроградка», «Коломна», «Синара» и «Троицкий»”. TR.ru. 2022年7月16日閲覧。

参考資料

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