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Inspiro

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
シーメンス Inspiro
基本情報
運用者 ポーランドの旗 ワルシャワ地下鉄
ドイツの旗 ミュンヘン地下鉄
ドイツの旗 ニュルンベルク地下鉄
マレーシアの旗 ラピドKL
サウジアラビアの旗 リヤド・メトロ
タイ王国の旗 バンコク・スカイトレイン
など
製造所 シーメンス・モビリティ
製造年 2012年 -
運用開始 2013年 -
主要諸元
軌間 1,435 mm(標準軌
電気方式 第三軌条方式直流750V
架空電車線方式直流1,500V(ソフィア)
第四軌条方式直流630V(ロンドン)
最高運転速度 80-100km/h
主電動機 かご形三相誘導電動機
永久磁石同期電動機(ロンドン)
制御方式 IGBT素子VVVFインバータ制御
制御装置 シーメンスSIBAC
保安装置 ATPATO
備考 主な共通事項のみ記載
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Inspiroドイツシーメンスグループの輸送部門シーメンス・トランスポーテーション・システムズ(現シーメンス・モビリティ)が開発した都市高速鉄道メトロラピッド・トランジット地下鉄)向けの汎用コンセプトモデルによる鉄道車両1990年代から2000年代にかけての同社のブランドであるモジュラー・メトロの後継型にあたり、ポーランドワルシャワ地下鉄で導入されたのを皮切りに、ドイツブルガリアなどの欧州各国、サウジアラビアタイ王国マレーシアなどで採用されている。2015年iFデザイン賞を受賞[1]

仕様

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模式図(Mcは制御動力車、Mは動力車、Tは無動力車を示す)。図にはないが2両編成も可能

20世紀末の設計だったモジュラー・メトロの概念を更にブラッシュアップさせた。客室照明にLEDを採用、客室座席は片持ち式となっている[2]

標準的な6両モデル[3][2]

4M2T(MT比66%)、アルミニウム、直流750Vの第三軌条方式、全幅2.77メートル、車体長20.1メートル(先頭車)/19.4メートル(中間車) ドア幅1.4メートルの4ドアで編成中の座席はロングシートで256席、定員1,450人(立席は1平米あたり7人)、営業最高速度は80km/hとなっている。 部材のリサイクル可能率は94.8%[4]

オプション[2]

1列車2-8両編成に対応し、全車電動車にもできる。車体をステンレス鋼に、集電方式は直流1,500Vの架空電車線方式、車体長は18.6-22メートル、全幅を2.63-3.0メートルに対応できる。 ドアはプラグドアの変更や1両当たりのドア数を3つに減らすこと、座席配置はセミクロスシートへの変更、運行面では後付けも可能なCBTCによる完全自動運転(GoA4)、最高速度も100km/hとフレキシブルにアレンジできる。

例として制御装置は同社のIGBT製品のうちSIBAC、台車は同社のSF1000(ミュンヘン[5]、リヤド[6]、ワルシャワ[7])またはSF3000(ラピドKL[8])など足回りも路線の特性によってアレンジが可能。

エクステリアおよびインテリアデザインは同国BMW系の米国法人デザイン・ワークスUSA英語版が手掛けたことで知られている[9][10]

派生

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ノルウェーのオスロ地下鉄「T-bane」で使用されているOS MX3000型は2005年以降に同社から調達されたモジュラー・メトロだが、2010年に追加発注された[11]。この時期はモジュラー・メトロからのモデルチェンジに至る過渡期だったが、シーメンス側はInspiroとしても分類している[12]

導入例

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一覧

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  • 編成数のM=動力車、T=無動力車でモーターの有無を示す
  • 集電方式の三=第三軌条方式(四:ロンドンは第四軌条方式)、架=架空電車線方式
  • UTO[注釈 1]:有=対応、準=将来的に無人化アップグレード可能

現在、以下の列車はすべて標準軌(1,435mm)と直流電化を使用しています。

事業者 路線 出典 運行開始 UTO 編成数 編成両数 座席数 定員 編成長 全幅 速度 電化電圧 集電方式
m m km/h DC V
ポーランドの旗 ポーランド ワルシャワ地下鉄 1号線、2号線 [7] 2013年 35 4M2T 234 1,502 117.8 2.74 90 750
ドイツの旗 ドイツ ミュンヘン地下鉄 U6、U3 [5] 2013年-2015年 21 6M 220 [注釈 2]940 115.06 2.9
マレーシアの旗 マレーシア ラピドKL カジャン線英語版 [8] 2016年 58 2M2T 174 1,554 90.18 3.1 100
タイ王国の旗 タイ バンコク・スカイトレイン スクムウィット線 [13] 2019年 22 2M2T 112 1,208 86.6 3.12 80
バンコク・メトロ ブルーライン [14][15] 35 2M1T 126 1,119 65.1 2.65 90
ドイツの旗 ドイツ ニュルンベルク地下鉄 U1英語版 [16] 2020年- 34 4M 128 604 75.885 2.9 80
サウジアラビアの旗 サウジアラビア リヤド・メトロ 1号線 [6] 2022年(予定) 45 3M1T [注釈 3]129 522 75.712 2.74
2号線 29 2M [注釈 4]63 251 37.856 2.74 90
 ブルガリア ソフィア地下鉄 3号線 [17] 2020年 30 2M1T 110 617 60.008 2.65 80 1,500
 オーストリア ウィーン地下鉄 1-4号線 [18] 2022年(予定) 34 4M2T 200 928 111.25 2.85 750
5号線 2025年(予定) 未公表
イギリスの旗 イギリス ロンドン地下鉄 ベーカールー線
セントラル線
ピカデリー線
ウォータールー&シティー線
[19][20] 2023年
-2030年
(予定)
94 4M4F1T 248 814 113.7 2.648 100 630
750

ワルシャワ

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2010年に1号線用に15編成、2号線用に20編成が13.5億ズウォティで発注され、製造はシーメンスと国内メーカーのネヴァグ英語版社が分担した[21]2012年イノトランスでコンセプトとモックアップが発表され、2013年に営業運転を開始した[22]

ミュンヘン

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アレクサンダー・ノイマイスターによるデザインが採用された先代C1(アドトランツ製)をベースにしているためInspiroとしての特徴は少ないが[5][23]、尾灯やドアランプがLED化されていることや事業者MVGのロゴ位置などがC1と異なる。2013年のレッド・ドット・デザイン賞、ユニバーサル・デザイン賞およびコンシューマー・フェイバリット賞を受賞[5]

C2のLED式ドアランプと尾灯 アドトランツ製の先代C1

クアラルンプール

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建設中だったスンガイ・ブロー-カジャン線用として2012年に4連58編成を13.65億リンギットで受注。製造はシーメンスと中国の南京浦鎮車輛廠が分担した[24]、2016年末の第1期開業時に投入された[25]

リヤド

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1号線は追加発注で41編成から45編成に、2号線は26編成から29編成へとなり、第1編成は2016年に落成した[26]

ソフィア

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2016年、3号線用に3連20編成+オプション10編成が発注された[27]。シーメンスとネヴァグが製造し、第1編成が2017年に落成した[28]。2018年のイノトランスで展示され、その後2019年にオプション10編成も正式に発注された[29]

バンコク・スカイトレイン

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2016年、スクムウィット線の延伸用にモジュラー・メトロEMU-A型の後継モデルとしてEMU-A2型が4連22編成が109億バーツで発注され[30]、2018年6月に第1編成が納入された[31]

バンコク・メトロ

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2017年、ブルーライン英語版用に3連35編成が10年間の保守契約と一括で発注され[14]、2019年4月に第1編成が納入された[32]

ニュルンベルク

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既存のDT1型置き換えを目的として2015年に4連21編成が発注され、2019年に第1編成が納入された[33]。オプション13編成も2018年に発注された[34]

ウィーン

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2024年開業予定の自動運転路線の5号線用のほか、半自動運転に対応予定の1号2号3号4号線まで6連34編成計204両が2017年に発注され[35]、2018年にコンセプトデザインが発表された[36]

ロンドン

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既存車両の置き換え用として2018年に94編成が発注され[37]、2023年から2030年にかけて順次投入される[38]。エクステリアおよびインテリアデザインは地元のアトランティック・デザイン社が担当している[39]

ギャラリー

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脚注

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註釈

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  1. ^ UTO (unattended train operation/無人運転)
  2. ^ 立ち席は1平米あたり4人で算出。
  3. ^ 折りたたみ6席含む
  4. ^ 折りたたみ8席含む

出典

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  1. ^ (英語)Siemens Inspiro / Train iF Design Guide
  2. ^ a b c (英語)Inspiro The metro platform from Siemens”. シーメンス・モビリティ. 2019年6月29日閲覧。
  3. ^ (英語)Inspiro Product Environmental Declaration according to ISO 14021 Type II”. シーメンス・モビリティ. 2019年6月29日閲覧。
  4. ^ ワルシャワ地下鉄のシーメンス新型車、営業運転認可…次世代車「Inspiro」の第一弾”. Response. (2013年10月2日). 2019年6月29日閲覧。
  5. ^ a b c d (英語)Metro Munich”. シーメンス・モビリティ. 2019年6月29日閲覧。
  6. ^ a b (英語)Riyadh Metro Project”. シーメンス・モビリティ. 2019年6月29日閲覧。
  7. ^ a b (英語)Warsaw Metro Line 2”. シーメンス・モビリティ. 2019年6月29日閲覧。
  8. ^ a b (英語)Metro Klang Valley Kuala Lumpur”. シーメンス・モビリティ. 2019年6月29日閲覧。
  9. ^ Metro Inspiro”. 阪神BMW公式ブログ (2011年2月5日). 2019年6月29日閲覧。
  10. ^ (英語)Siemens Inspiro: BMW Designworks USA helps Metro Design 2010年11月24日 BMW Blog
  11. ^ (英語)“Oslo orders more metro cars”. メトロ・レポート・インターナショナル英語版 (レールウェイ・ガゼット・インターナショナル). (2010年12月22日). https://www.railwaygazette.com/oslo-orders-more-metro-cars/35587.article 
  12. ^ (英語)Rail >Solutions > Metros > Inspiro > Reference Mobility: Metro Oslo”. シーメンス・モビリティ. 201f9-6-29閲覧。
  13. ^ (英語)Bangkok BTSC Green Line”. シーメンス・モビリティ. 2019年6月29日閲覧。
  14. ^ a b (英語)“Siemens to supply trains for Bangkok Blue Line extension”. メトロ・レポート・インターナショナル (レールウェイ・ガゼット・インターナショナル). (2017年9月19日). https://www.railwaygazette.com/modes/siemens-to-supply-trains-for-bangkok-blue-line-extension/45180.article 
  15. ^ (英語)Extending Bangkok’s Blue Line”. シーメンス・モビリティ. 2022年9月14日閲覧。
  16. ^ (英語)Metro Nuremberg”. シーメンス・モビリティ. 2019年6月29日閲覧。
  17. ^ (英語)Inspiro Sofia”. シーメンス・モビリティ. 2019年6月29日閲覧。
  18. ^ (英語)Metro “Wiener Linien”34 six-car Type X metro vehicles”. シーメンス・モビリティ. 2019年6月29日閲覧。
  19. ^ (英語)New Tube for London Feasibility Report”. TfL(ロンドン交通局. p. 37 (2014年10月). 2019年6月29日閲覧。
  20. ^ (英語)Inspiro London - 94 nine-car metro trains for the Piccadilly line”. シーメンス・モビリティ. 2022年7月6日閲覧。
  21. ^ (英語)Warszawa metro selects Siemens Inspiro”. レールウェイ・ガゼット・インターナショナル (2010年10月15日). 2019年6月29日閲覧。
  22. ^ (英語)New trains enter service on Warsaw metro”. インターナショナル・レールウェイ・ジャーナル (2013年10月8日). 2019年6月29日閲覧。
  23. ^ (英語)Munich Metro C1”. N+P Industrial Design GmbH. 2019年6月3日閲覧。
  24. ^ (英語)Siemens wins Klang Valley driverless train contract”. レールウェイ・ガゼット・インターナショナル (2012年9月14日). 2019年6月29日閲覧。
  25. ^ (英語)Malaysian PM inaugurates Klang Valley MRT”. インターナショナル・レールウェイ・ジャーナル (2016年12月16日). 2019年6月29日閲覧。
  26. ^ (英語)First Riyadh metro trainset unveiled by Siemens”. レールウェイ・ガゼット・インターナショナル (2016年2月23日). 2019年6月29日閲覧。
  27. ^ (英語)Sofia awards metro contract to Siemens and Newag”. インターナショナル・レールウェイ・ジャーナル (2016年3月15日). 2019年6月29日閲覧。
  28. ^ (英語)Newag and Siemens unveil first Inspiro for Sofia”. インターナショナル・レールウェイ・ジャーナル (2017年11月24日). 2019年6月29日閲覧。
  29. ^ (英語)Sofia orders additional Inspiro metro trains”. インターナショナル・レールウェイ・ジャーナル (2019年3月4日). 2019年6月29日閲覧。
  30. ^ (英語)Bangkok orders two metro train fleets”. インターナショナル・レールウェイ・ジャーナル (2016年5月24日). 2019年6月29日閲覧。
  31. ^ (英語)First Inspiro for Bangkok unveiled”. インターナショナル・レールウェイ・ジャーナル (2018年6月19日). 2019年6月29日閲覧。
  32. ^ (英語)Siemens delivers trains for Bangkok Blue Line extension”. インターナショナル・レールウェイ。ジャーナル (2019年4月25日). 2019年6月29日閲覧。
  33. ^ (英語)“First G1 metro train arrives in Nürnberg”. メトロ・レポート・インターナショナル. (2019年5月7日). https://www.railwaygazette.com/modes/first-g1-metro-train-arrives-in-nurnberg/48476.article 2019年6月29日閲覧。 
  34. ^ (英語)“Nürnberg orders Siemens U-Bahn trainsets”. メトロ・レポート・インターナショナル (レールウェイ・ガゼット・インターナショナル). (2018年11月27日). https://www.metro-report.com/news/single-view/view/nuernberg-orders-siemens-u-bahn-trainsets.html 
  35. ^ (英語)“Wien selects Siemens for automated U-Bahn contract”. メトロ・レポート・インターナショナル. (2017年9月12日). https://www.railwaygazette.com/wien-selects-siemens-for-automated-u-bahn-contract/45158.article 2019年6月29日閲覧。 
  36. ^ (英語)“Wien U-Bahn Type X trainset design unveiled”. メトロ・レポート・インターナショナル (レールウェイ・ガゼット・インターナショナル). (2018年3月8日). https://www.railwaygazette.com/modes/wien-u-bahn-type-x-trainset-design-unveiled/46088.article 
  37. ^ シーメンス、ロンドン地下鉄の新車両受注”. NNAヨーロッパ (2018年6月19日). 2019年6月29日閲覧。
  38. ^ (英語)Transport for London awards Deep Tube contract to Siemens”. インターナショナル・レールウェイ・ジャーナル (2018年6月15日). 2019年6月29日閲覧。
  39. ^ (英語)INSPIRO LONDON Designing the future of London”. Atlantic Design UK. 2019年6月29日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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