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2S7ピオン 203mm自走カノン砲

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
2S7ピオン
203mm 自走カノン砲
性能諸元
全長 13.12 m[1]
車体長 10.50 m
全幅 3.38 m[1]
全高 3.0 m[1]
重量 46.5 t(戦闘重量)[1]
懸架方式 トーションバー[1]
速度 50 km/h(路上)[1]整地
不整地
行動距離 650 km[1]
主砲 2A44 52口径203mmカノン砲[1]
装甲 最大10mm
エンジン V-46-I
4ストロークV型12気筒液冷スーパーチャージドディーゼル[1]
840hp[1]
乗員 7名(3名+装填手4名)[1]
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2S7ピオン 203mm 自走カノン砲(2S7ピオン 203ミリじそうカノンほう、ロシア語: 2С7 «Пион»)は、ソビエト連邦(ソ連)が開発した自走砲。軍名称はSO-203、NATOコードネームM1975。ピオンとはシャクヤクのことである[1]

開発

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1967年12月、最大射程27kmの自走カノン砲の開発要求が提出された。口径に180mmから210mmが検討された結果、1969年暮れに203mm砲が選定され、オブイェークト216の名称で開発が始まった。車体はレニングラード(現・サンクトペテルブルク)のキーロフスキー工場英語版ロシア語版で、主砲と砲架はボルゴグラードティターン・バリカディで試作され、1975年に採用された。同年のうちに部隊配備が始まり、西側諸国にも存在が知られることとなった[1]

設計

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車体後部
弾道計算機および照準器

車体

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駆動部はT-64を元にしているが、車体は新規に設計されている[1]。車両の部品のうち相当数がT-80と共通であると言われている。また、トランスミッションT-72と共通である。車両はS-300V(SA-12)地対空ミサイルのMT-T装軌車と同じであるとの情報もある。

装甲を有する車体前部に、操縦手と車長、砲手の3名が搭乗する[1]。エンジンルームを挟んで後部コンパートメントに操砲要員4名が搭乗する。前後のコンパートメント間の通信用のシステムが搭載されている。なお操砲には7名必要なため、車内に搭乗できない3名は別の車両などで随行しなければならない。前部操縦室のフロントガラスはシャッター型装甲で覆うことが可能で、潜望鏡が搭載されている。暗視装置も搭載されているが、操縦用で砲撃の際に使用するものではない。与圧式NBC防護装置を搭載しており、NBC汚染環境下でも行動は可能だが、砲撃準備は外で作業しなければならないため、汚染環境下での操砲は不可能である。

主砲

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2S7ピオンの搭載する2A44 302.2mmカノン砲は、車体後部の巨大な砲架にむき出しのまま搭載される。車体の尾部には、砲撃の際の反動を受け止める油圧駆動の駐鋤を備える。俯仰角0~60度で動力は水圧、旋回角は左右各15度で電動駆動である。操砲のための電力供給のために、24馬力の補助ディーゼルエンジンが搭載されている。装填補助装置を搭載しているが、緊急時の手動装填も可能である。発射の際に砲手は砲の左側に配置する。照準にはパノラマ式照準器を使用。直接照準用の照準器も搭載されている。

2A44カノン砲の射程は、通常弾(ZOF-40榴弾)使用の時最大で37.5 km、RAP弾(ロケット推進弾、主にZOF-43榴弾)使用の時47.5 kmとなり[1]、この距離は野砲の中では最大級である。この長大な射程を生かして敵野砲の射程外から攻撃出来るうえ、敵が攻撃に気づく前に移動の準備をすることも可能である。砲口初速は最大960m/s、砲身寿命は約450発である。発射速度は最大で1分あたり1.5発。ただし、発射には下の5つの形式がある。

  • 5分で8発
  • 10分で15発
  • 20分で24発
  • 30分で30発
  • 1時間で40発

通常の榴弾の他にもクラスター弾、対コンクリート砲弾、化学砲弾も発射可能である。計画通り核砲弾も発射可能で原子砲の役割も果たすことが出来る。車内には4発の砲弾しか搭載されておらず、弾薬輸送にあたり専用に開発された給弾車は無いため、砲弾は随行するトラックなどで輸送する。

運用

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ウクライナ陸軍第43独立砲兵旅団で運用される2S7(2016年10月21日)

1,000門超が生産され、ソ連地上軍ではドイツ駐留ソ連軍を中心に配備されていたほか、ポーランド陸軍チェコスロバキア陸軍チェコ語版英語版が採用した。冷戦の間は実戦で一度も使用されず、冷戦終結後にロシア陸軍の2S7はヨーロッパ通常戦力条約(CFE)締結に伴い本土に配備替えされた。チェコスロバキアの2S7はビロード離婚後にチェコ陸軍スロバキア陸軍英語版に継承されたが、チェコ陸軍の車両はすぐに退役した。

2S7ピオンが初めて実戦で使用されたのは、2008年南オセチア紛争で、ジョージア陸軍が6門の2S7を投入した。

2022年に始まったロシアのウクライナ侵攻にも、2S7のどの型かは不明だが、ロシア軍・ウクライナ軍双方において使用されている。

派生型

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2S7N
後期生産型
2S7Mマルカ
最新型。脆弱だった通信機能が強化されており、8発の砲弾を搭載可能。新型の装填装置も搭載されている。また、1分あたり2.5発まで発射可能。エンジン出力も840hpまで向上されている。1983年に出現。

採用国

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退役国

登場作品

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ゲーム

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コンバットチョロQ
アリーナのボスクラスの10番目に登場。ただし、名前は「ピオーン」となっている。

脚注

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 日本兵器研究会 編『世界の装軌装甲車カタログ』三修社、2001年、147頁。ISBN 4-384-02660-9 
  2. ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 205. ISBN 978-1-032-50895-5 

関連項目

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外部リンク

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  • [1]
  • [2] (英語)
  • [3] (英語)
  • [4](写真) (英語)
  • [5](写真) (英語)