2S7ピオン 203mm自走カノン砲
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性能諸元 | |
---|---|
全長 | 13.12 m[1] |
車体長 | 10.50 m |
全幅 | 3.38 m[1] |
全高 | 3.0 m[1] |
重量 | 46.5 t(戦闘重量)[1] |
懸架方式 | トーションバー[1] |
速度 |
50 km/h(路上)[1](整地) (不整地) |
行動距離 | 650 km[1] |
主砲 | 2A44 52口径203mmカノン砲[1] |
装甲 | 最大10mm |
エンジン |
V-46-I 4ストロークV型12気筒液冷スーパーチャージド・ディーゼル[1] 840hp[1] |
乗員 | 7名(3名+装填手4名)[1] |
2S7ピオン 203mm 自走カノン砲(2S7ピオン 203ミリじそうカノンほう、ロシア語: 2С7 «Пион»)は、ソビエト連邦(ソ連)が開発した自走砲。軍名称はSO-203、NATOコードネームはM1975。ピオンとはシャクヤクのことである[1]。
開発
[編集]1967年12月、最大射程27kmの自走カノン砲の開発要求が提出された。口径に180mmから210mmが検討された結果、1969年暮れに203mm砲が選定され、オブイェークト216の名称で開発が始まった。車体はレニングラード(現・サンクトペテルブルク)のキーロフスキー工場で、主砲と砲架はボルゴグラードのティターン・バリカディで試作され、1975年に採用された。同年のうちに部隊配備が始まり、西側諸国にも存在が知られることとなった[1]。
設計
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車体
[編集]駆動部はT-64を元にしているが、車体は新規に設計されている[1]。車両の部品のうち相当数がT-80と共通であると言われている。また、トランスミッションはT-72と共通である。車両はS-300V(SA-12)地対空ミサイルのMT-T装軌車と同じであるとの情報もある。
装甲を有する車体前部に、操縦手と車長、砲手の3名が搭乗する[1]。エンジンルームを挟んで後部コンパートメントに操砲要員4名が搭乗する。前後のコンパートメント間の通信用のシステムが搭載されている。なお操砲には7名必要なため、車内に搭乗できない3名は別の車両などで随行しなければならない。前部操縦室のフロントガラスはシャッター型装甲で覆うことが可能で、潜望鏡が搭載されている。暗視装置も搭載されているが、操縦用で砲撃の際に使用するものではない。与圧式NBC防護装置を搭載しており、NBC汚染環境下でも行動は可能だが、砲撃準備は外で作業しなければならないため、汚染環境下での操砲は不可能である。
主砲
[編集]2S7ピオンの搭載する2A44 302.2mmカノン砲は、車体後部の巨大な砲架にむき出しのまま搭載される。車体の尾部には、砲撃の際の反動を受け止める油圧駆動の駐鋤を備える。俯仰角0~60度で動力は水圧、旋回角は左右各15度で電動駆動である。操砲のための電力供給のために、24馬力の補助ディーゼルエンジンが搭載されている。装填補助装置を搭載しているが、緊急時の手動装填も可能である。発射の際に砲手は砲の左側に配置する。照準にはパノラマ式照準器を使用。直接照準用の照準器も搭載されている。
2A44カノン砲の射程は、通常弾(ZOF-40榴弾)使用の時最大で37.5 km、RAP弾(ロケット推進弾、主にZOF-43榴弾)使用の時47.5 kmとなり[1]、この距離は野砲の中では最大級である。この長大な射程を生かして敵野砲の射程外から攻撃出来るうえ、敵が攻撃に気づく前に移動の準備をすることも可能である。砲口初速は最大960m/s、砲身寿命は約450発である。発射速度は最大で1分あたり1.5発。ただし、発射には下の5つの形式がある。
- 5分で8発
- 10分で15発
- 20分で24発
- 30分で30発
- 1時間で40発
通常の榴弾の他にもクラスター弾、対コンクリート砲弾、化学砲弾も発射可能である。計画通り核砲弾も発射可能で原子砲の役割も果たすことが出来る。車内には4発の砲弾しか搭載されておらず、弾薬輸送にあたり専用に開発された給弾車は無いため、砲弾は随行するトラックなどで輸送する。
運用
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1,000門超が生産され、ソ連地上軍ではドイツ駐留ソ連軍を中心に配備されていたほか、ポーランド陸軍とチェコスロバキア陸軍が採用した。冷戦の間は実戦で一度も使用されず、冷戦終結後にロシア陸軍の2S7はヨーロッパ通常戦力条約(CFE)締結に伴い本土に配備替えされた。チェコスロバキアの2S7はビロード離婚後にチェコ陸軍とスロバキア陸軍に継承されたが、チェコ陸軍の車両はすぐに退役した。
2S7ピオンが初めて実戦で使用されたのは、2008年の南オセチア紛争で、ジョージア陸軍が6門の2S7を投入した。
2022年に始まったロシアのウクライナ侵攻にも、2S7のどの型かは不明だが、ロシア軍・ウクライナ軍双方において使用されている。
派生型
[編集]- 2S7N
- 後期生産型
- 2S7Mマルカ
- 最新型。脆弱だった通信機能が強化されており、8発の砲弾を搭載可能。新型の装填装置も搭載されている。また、1分あたり2.5発まで発射可能。エンジン出力も840hpまで向上されている。1983年に出現。
採用国
[編集]登場作品
[編集]ゲーム
[編集]- 『コンバットチョロQ』
- アリーナのボスクラスの10番目に登場。ただし、名前は「ピオーン」となっている。