黒祠の島
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著者 | 小野不由美 |
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国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
出版社 | 祥伝社 |
出版日 | 2001年 |
ISBN | 4-396-20708-5 |
『黒祠の島』(こくしのしま)は、小野不由美の推理小説、またそれを原作とした山本小鉄子の漫画。
あらすじ
[編集]調査事務所を営む式部剛は、懇意にしていた作家の葛木志保が行方不明になったことから、九州北西部にある彼女の故郷・夜叉島を訪れることになる。しかし閉鎖的な村人からは情報を得ることが出来ず、一旦は島を出ようとするが、何か異様なものを感じ村に留まることにする。その後、村の医師・泰田の協力を得られることとなったが、泰田から伝えられたことは「葛木志保は死んだ」という言葉であった。明らかに他殺体であるのに、真相を調べようとしないことに不信感を抱いた式部は、村の事情や過去に起こった出来事を調べていく。
登場人物
[編集]主要人物
[編集]- 式部 剛(しきぶ たける)
- 石井探偵事務所の所員であったが、オーナー亡き後、石井調査事務所と名前を変え、作家やライターなどから依頼された取材などを代行する。30代。
- 葛木 志保(かつらぎ しほ)
- ノンフィクション作家。式部の事務所にたびたび取材を依頼していた。故郷の話などは一切しなかった。
- 伊 東輝(い とうき)
- 大学生。式部の助手として石井調査事務所でアルバイトをしている。名字は伊なのだが、葛木には伊東君と呼ばれている。
- 永崎 麻理(ながさき まり)
- 葛木志保の友人。法律事務所に勤める。故郷の話などは一切しなかった。
夜叉島の人々
[編集]神領家
[編集]- 神領 明寛(じんりょう あきひろ)
- 神領家・現当主。50代半ば。5人兄弟の頭。
- 神領 須磨子(じんりょう すまこ)
- 明寛の妻。50代くらい。
- 神領 康明(じんりょう やすあき)
- 故人。明寛の長男。悪性リンパ腫で亡くなる。
- 神領 英明(じんりょう ひであき)
- 故人。明寛の次男。熊本県の大学を卒業後、地元に戻り、水産加工会社の顧問に納まる。溺死(23歳没)。死亡の4日前に島を出ていた。
- 神領 浅黄(じんりょう あさぎ)
- 故人。明寛の長女。12歳の時、風邪をこじらせて亡くなる。
- 神領 浅緋(じんりょう あさひ)
- 神領家・現守護(下記参照)。本当に実在するのかは不明。
- 神領 寛有(じんりょう ひろあり)
- 故人。神領家・先代当主。
- 神領 民江(じんりょう たみえ)
- 先代当主の妻。明寛の母。島民からは「大奥さん」と呼ばれている。
- 神領 杜栄(じんりょう もりえ)
- 神霊神社の宮司。先代の守護。寛有の三男。明寛の2番目の弟。
- 神領 安良(じんりょう やすら)
- 神霊神社の先代宮司。先々代の守護。寛有の2番目の弟。作業着を着た痩せた老人。本人曰く、明寛に小遣いをせびって生きている人間と言うが、高い洞察力と公正な感覚を持つ。人が住んでいるとは思えない廃屋で、島内で世捨て人のような生活を送っている。非協力的な者が多い島内で、主人公に、島の歴史にはじまり、神領家の事など多くの情報を与える人物。
- 神領 忠有(じんりょう ただあり)
- 故人。寛有の弟。
- 神領 博史(じんりょう ひろし)
- 忠有の息子。加工会社を営む。
- 神領 光紀(じんりょう こうき)
- 博史の長男。加工会社に勤める。
- 神領 泉(じんりょう いずみ)
- 博史の長女。高校生。
- 高藤 孝次(たかとう こうじ)
- 神領家の雑務などを取り仕切る。島民からは「番頭さん」と呼ばれている。
- 高藤 圭吾(たかとう けいご)
- 孝次の息子。
- 松江(まつえ)
- 神領家のお手伝い。守護のお世話をする。
大江荘
[編集]- 大江 忠二(おおえ ちゅうじ)
- 民宿・大江荘の主人。中学卒業後、島を出たが、宿を継ぐために妻子と戻ってきた。
- 大江 博美(おおえ ひろみ)
- 大江荘の主人の妻。
- 大江 昌也(おおえ まさや)
- 大江荘の主人の息子。
- 大江 兼子(おおえ かねこ)
- 大江荘の主人の母。迷信深い。
永崎家
[編集]- 永崎 麻理(ながさき まり)
- 父親が誰か分からない。小学生の時、母親が首を吊っている現場を発見する。
- 永崎 弘子(ながさき ひろこ)
- 故人。麻理の母親。島を出る時には身ごもっていた。夫の死後、島へ戻ってきた。
- 永崎 幸平(ながさき こうへい)
- 故人。弘子の父親。
- 永崎 篤郎(ながさき あつろう)
- 故人。弘子の兄。
- 永崎 登代恵(ながさき とよえ)
- 篤郎の妻。篤郎の死後、子供を連れて島から逃げ出した。
- 永崎 均(ながさき ひとし)
- 篤郎の息子。
- 永崎 洋治(ながさき ようじ)
- 篤郎の息子。均の弟。
- 永崎 寧子(ながさき やすこ)
- 篤郎の娘。均の妹。
羽瀬川家
[編集]- 羽瀬川 志保(はせがわ しほ)
- 子供の頃、船から落ちて太腿に大怪我を負う。小学生の時、惨殺された父親を発見する。父親が存命中は、父とともに漁へ出かけ、父の代わりに船を操舵していた。父親を亡くした後、母親の実家の宮下家に引き取られるが邪険にされる。15歳で中学卒業と同時に島を離れる。
- 羽瀬川 信夫(はせがわ のぶお)
- 故人。志保の父親。元々は熊本で役所勤めをしていて、島とはなんの縁故もなかったが、慎子について島に渡り、漁師をしていた。志保をとても可愛がっていた。
- 羽瀬川 慎子(はせがわ みつこ)
- 故人。志保の母親。旧姓は宮下。島を嫌い島外に嫁いだが、病気を患い大手術を受けてから弱っていき、島に戻るが、2年後に死亡する。子供は志保一人だが、他に男児を死産している。
診療所
[編集]- 泰田 均(やすだ ひとし)
- 僻地派遣医師として夜叉島に派遣された医師。式部に協力する。20代後半。式部は彼の診療所を拠点とし、彼との対話により、事件を整理していく。
- 竹之内(たけのうち)
- 診療所で働く看護婦。本土から通ってくる。
- 津山(つやま)
- 診療所で働く看護婦。本土から通ってくる。
その他
[編集]- 野村(のむら)
- フェリー乗り場で働く男性。
- 瀬能(せのう)
- 野村の同僚。切符売り場担当。
- 太島(たじま)
- 島で宅急便屋を営む青年。
- 三好(みよし)
- 弁護士。神領家の代理人として、資金面で麻理に援助をしていた。
- 小瀬木(おぜき)
- 永崎麻理が勤める法律事務所長。麻理の父親代わりだった。
用語解説
[編集]- 黒祠(こくし)
- 明治政府が行った祭政一致政策によって、全国の神社は位階制で編成され、祭神も正統な神典に記載される神々に改められた。地方の小祠も統合されたり、弾圧されるなどしたが、その中で統合されなかったものを「黒祠」と言う。いわゆる邪教である。
- 神霊神社(じんりょうじんじゃ)
- 神領家の分家が代々宮司を務める神社。神領家で守護の役目を終えた人が宮司になる。
- 主神は「カンチ」、祀られている神像は馬頭夜叉と呼ばれ、馬首で角を持ち全身青色である。
- 起源は、大昔に村人を喰らっていた鬼を旅の行者が鎮め、祀ったのが始まりである。
- 守護(しゅご)
- 馬頭夜叉を鎮めるための存在。大抵、神領家(本家)の三男もしくは長女が務める。
- 守護は賓客として扱われ、たとえ親であってもその命令には逆らえない。
- 守護でいる間は蔵座敷で過ごし、決して外に出る事はない。戸籍すら与えられないが、役目を終えて外に出ると、戸籍がきちんと存在している。
- 解豸(かいち)
- 青い毛を持ち、熊のように大きな羊に似た中国の伝説上の神獣。額から一本の角が伸びている。公正を見分ける霊力を持ち、偽りの方をその角で指し示すという。
- 馬頭夜叉(めずやしゃ)
- 悪いことをすると刑罰を下す。決裁が下る時には社に白羽の矢が立つ。
- アシハライ
- 夜叉島に残る風習の一つ。浄めの神事。忌み事があると、海に牛を流し、死骸が戻ってくるかどうかで吉凶を占う。
- 風車・風鈴
- 馬頭夜叉の決裁が下った後に馬頭夜叉を鎮めるための風供養。
刊行情報
[編集]小説
[編集]- 2001年2月、祥伝社ノン・ノベル、ISBN 4-396-20708-5
- 2004年6月、祥伝社文庫、ISBN 4-396-33164-9
- 2007年7月、新潮文庫、ISBN 978-4-10-124028-2
漫画
[編集]山本小鉄子の作画でコミカライズされた。描き下ろしの形で幻冬舎バーズコミックスから発売された。『屍鬼』とは対照的に、原作をほぼ忠実に漫画化している。
- 2005年11月、ISBN 4-344-80648-4
- 2005年12月、ISBN 4-344-80680-8
- 2006年2月、ISBN 4-344-80693-X