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高速マリン・トランスポート

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
高速マリン・トランスポート株式会社
High-speed Marine Transport Co., Ltd.
登記上の本社は双日東京本社である。
登記上の本社は双日東京本社である。
種類 株式会社
市場情報 非上場
本社所在地 日本の旗 日本
100-0011
東京都千代田区内幸町2-1-1
飯野ビル
設立 2016年平成28年)2月19日 [1]
法人番号 8010001173794 ウィキデータを編集
主要株主 双日
日本通運
リベラ
津軽海峡フェリー
東洋マリーンサービス
新日本海フェリー
ジャパン・マリタイム・トランスポート
ゆたかシッピング
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高速マリン・トランスポート株式会社(こうそくマリン・トランスポート)は、防衛省PFI事業「民間船舶の運航・管理事業」の実施主体として2016年2月19日に設立された特別目的会社(SPC)[2]

双日日本通運リベラ津軽海峡フェリー東洋マリーンサービス新日本海フェリージャパン・マリタイム・トランスポートゆたかシッピングの8社が同事業に入札するにあたって設立した[3]。「ナッチャンWorld」と「はくおう」の2隻の高速フェリーを保有し、自衛隊および在日米軍の輸送業務(訓練や災害派遣の輸送)を請け負う他、一般向けのクルーズなど観光船としても運航する。登記上の本社住所は双日東京本社が入居する飯野ビルディングであり、独自のオフィスは構えず双日東京本社に間借りしている。

設立の経緯

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自衛隊が保有している外洋航海が可能な揚陸艦は、2020年現在、おおすみ型輸送艦3隻、輸送艇1号型2隻の計5隻のみであり、1961年アメリカから供与されたLST-1級戦車揚陸艦であるおおすみ型輸送艦から始まった海上自衛隊輸送艦部隊は、海外派兵能力が付与されていないなど自衛隊の脅威を周辺諸国へ与えない政治的配慮がされた非常に能力が限定されたものであった[4]

1990年以降、国際協力での自衛隊海外派遣や相次ぐ自然災害への災害派遣など稼働率が高いにもかかわらず増強計画は後回しであったため、いずも型護衛艦に多目的能力を持たせている[4]

2011年3月11日東日本大震災の際には、「しもきた」および「くにさき」は定期検査のためドック入り、「おおすみ」は海外共同訓練のためインドネシアに向けて航海中であり、いずれも即応できる状態ではなかった。このため、おおすみは訓練を中止して引き返させた他、くにさきは工事を切り上げて深夜に東北沖へ向け出港させているが、しもきたは4月1日までドックを出ることが出来なかった[4]

この他、尖閣諸島を含めた南西諸島有事への対応や、在日米軍の輸送任務も想定して[3]、防衛省では2014年以降、新日本海フェリー所有の「はくおう」と津軽海峡フェリー所有の「ナッチャンWorld」を借り上げることで、有事の際に自衛隊の要請から72時間以内に出航可能な体制を確立した[3]

しかしその後、民間の乗組員が所属する全日本海員組合は輸送協力について「演習や災害派遣に関し協力を行うが、有事の際など戦争協力に関してはこれを行わない」と方針を変更[4]した。この事から、有事の際に輸送を民間の協力に頼るのではなく、防衛省自身のPFI事業として実施する方針が定められ、2016年2月19日に高速マリン・トランスポートが設立された。設立にあたって従来使用していた「ナッチャンWorld」(防衛省では1号船舶と呼称)と「はくおう」(同2号船舶)を2隻合計250億円で買い上げたうえ[3]、自衛隊専用として各種改修を施した[3]。乗組員には「有事における民間人の動員」を避けるため、予備自衛官を充当することで対応した[4]

なお、高速マリントランスポート設立直前である2016年2月に発生した北朝鮮による弾道ミサイル発射実験において、全日本海員組合はミサイルの飛行経路にあたる石垣島へのパトリオットミサイル配備輸送[4][5]要請(往路2月7日)を有事協力として拒否、防衛省は他社の定期航路を利用した輸送のみ協力という形だけで対応した[6]。2月10日に予定された復路輸送についても交渉が決裂し2月15日に新日本海フェリー側に運行の断念[7]させた事案が発生している。

実運用

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2016年4月に発生した熊本地震の際には、「はくおう」を利用して熊本県八代港への陸上自衛隊の災害派遣が行われた[8]。5月下旬まで被災者向けホテルシップとして利用されたが、元が民間のフェリーで大浴場やレストランを備えるなど居住性に優れていたため被災者からは好評であった[3]

2020年新型コロナウイルス感染症への対応では「はくおう」が、チャーター機武漢から退避した民間人の一時隔離施設として検討・実施された[9][10]ほか、横浜港にて客船ダイヤモンド・プリンセスにおける集団感染に対しての支援拠点として用いられた[11][12]

2024年1月発生の能登半島地震では、はくおうが石川県七尾港に入港して被災地への緊急物資輸送を実施、14日からは船内に於いて被災地住民への入浴支援、洗濯支援、船室内ベッドでの一時休息等にも使用される[13]


「ナッチャンWorld」は函館港、「はくおう」は相生港母港としており、平時は一般向けクルーズで運航されるなど、民間で利用することも可能である[14]

事業管理分担

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各社の業務分担
社名 担当業務 担当船舶
双日 全般管理(財務等)
日本通運 全般管理(調整等)
津軽海峡フェリー 船舶改修等 ナッチャンWorld
リベラ 船舶維持管理
東洋マリーンサービス 船員雇用・運航
新日本海フェリー 船舶改修等 はくおう
ジャパン・マリタイム・トランスポート 船舶維持管理
ゆたかシッピング 船員雇用・運航

脚注

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  1. ^ 国税庁法人番号サイト”. 国税庁. 2020年2月2日閲覧。
  2. ^ 防衛省 有事輸送、民間の2隻確保 船員予備自衛官化”. 毎日新聞 (2016年3月17日). 2020年2月2日閲覧。
  3. ^ a b c d e f 自衛隊で第二の人生 北海道と本州をつないだフェリーの「はくおう」「ナッチャンWorld」”. 産経ニュース (2017年2月1日). 2020年2月2日閲覧。
  4. ^ a b c d e f 有事用予備役輸送船舶会社『高速マリン・トランスポート』とは”. サバゲ―アーカイブ (2018年6月1日). 2020年2月2日閲覧。
  5. ^ 船員組合に運行が左右される自衛隊の海上輸送”. Wedge infinity (2016年10月6日). 2020年2月2日閲覧。
  6. ^ “自衛隊輸送 契約船使えず”. 讀賣新聞. (2016年9月6日) 
  7. ^ 防衛大臣が自衛隊に「破壊措置命令」を発動” (PDF). 船員しんぶん (2016年2月25日). 2016年5月10日閲覧。
  8. ^ 熊本地震で「初物」も多い自衛隊の災害派遣”. サンケイスポーツ. 産業経済新聞社 (2016年5月1日). 2020年2月2日閲覧。
  9. ^ 新型肺炎 第3便149人が帰国”. 東京新聞 (2020年1月31日). 2020年2月2日閲覧。
  10. ^ 防衛省、武漢帰国者の滞在先に契約フェリーを検討”. サンケイスポーツ. 産業経済新聞社 (2020年1月30日). 2020年2月2日閲覧。
  11. ^ “防衛省がクルーズ船「はくおう」を横浜港に 新型コロナウイルス対策の拠点に”. 横浜経済新聞. (2020年2月8日). https://www.hamakei.com/photoflash/4365/ 
  12. ^ 新型コロナウイルス感染拡大を受けた防衛省・自衛隊の取組 (PDF) - 防衛省
  13. ^ “石川県 七尾港で大型フェリーで避難者受け入れへ 県内はまだ約2000人の孤立状態”. 日テレNEWS. (2024年1月13日). https://news.ntv.co.jp/category/society/kteaaa840e858b4f3e8772a465ded05b6d  
  14. ^ 自衛隊員や物資輸送の民間船を公開 横浜港で性能披露”. 産経フォト (2017年2月28日). 2020年2月2日閲覧。

関連項目

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