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類似中線

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
三角形の中線(青)、角の二等分線(緑)、類似中線(赤)。3本の類似中線は類似重心(ルモワーヌ点)で交わる。

類似中線(るいじちゅうせん、Symmedian)は任意の三角形に対して定義される3本の直線である。

類似中線は、三角形の角の二等分線を対称軸として、中線と対称の位置にある直線である(すなわち、中線と等角共役である)。三角形における3本の類似中線は1点で交わる。この点は重心の等角共役点であり、特に類似重心またはルモワーヌ点と呼ばれる。

歴史

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フランスのエミール・ルモワーヌは、1873年に3本の類似中線が1点に交わることを証明した。それよりも前にエルンスト・ヴィルヘルム・グリーブドイツ語版1847年に論文を発表している。スイスのサイモン・アントワーヌ・ジャン・リュイリエ1809年にこの点について言及している。

性質

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  • 円ABCの点B,Cにおける接線の交点をXとすると、AXは三角形ABCの角A内の類似中線である。Y,ZをB,Cに対してXと同様に定義する。△XYZは接線三角形で△ABCと△XYZは類似重心を中心に配景的である(AX,BY,CZは類似重心で交わる)。
  • 三角形ABCの角A内の類似中線と辺BCの交点をS(≠A)とすると が成り立つ。
  • 三角形ABCの角A内の類似中線と円ABCの交点をK(≠A)とし、辺BCの中点をMとする。このとき以下が成り立つ。
    • 三角形ABKと三角形AMCは同じ向きに相似である。
    • KAは三角形KBCの角K内の類似中線である。
    • 四角形ABKCはAB×KC=BK×CAを満たす(調和四角形である)。

類似重心

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3本の類似中線の交点は類似重心またはルモワーヌ点と呼ばれる。ドイツではグリーブ点とも呼ばれる。

三角形の3辺の長さを a, b, c とすると類似重心の三線座標a : b : c重心座標a2 : b2 : c2 となる。

内接円と辺の接点を D, E, F としたとき、三角形 DEF の類似重心は元の三角形のジェルゴンヌ点になる。

ルモワーヌ点を通り、各辺に平行に引いた直線と辺との6つの交点は同一円周上にある。この円のことを第一ルモワーヌ円と呼ぶ。また、ルモワーヌ点を通り、各辺に逆平行に引いた直線と辺との6つの交点は同一円周上にある。この円のことを第ニルモワーヌ円と呼ぶ。それぞれの中心はブロカール円の中心、ルモワーヌ点である。

他の図形との関係

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2つのブロカール点を焦点とし、3辺に接する楕円をブロカール楕円という。この楕円が辺と接する点は、辺と類似中線の交点である[1]

重心とルモワーヌ点を焦点に持つ内接円錐曲線をルモワーヌ内接楕円という。また、ルモワーヌ内接楕円のPolar triangle、Polar triangleの外接円はそれぞれルモワーヌ三角形、第三ルモワーヌ円と呼ばれる[2]

脚注

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  1. ^ 岩田至康『幾何学大辞典』(1971年初版)II P.497
  2. ^ Weisstein, Eric W. "Lemoine Inellipse". mathworld.wolfram.com (英語).

参考文献

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  • Ross Honsberger, "The Symmedian Point," Chapter 7 in Episodes in Nineteenth and Twentieth Century Euclidean Geometry, The Mathematical Association of America, Washington, D.C., 1995.

外部リンク

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