音霊
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音霊(おとだま)は、軍記物語『曽我物語』巻第十一にある曾我兄弟の怨霊。「音霊」の名称は妖怪漫画家・水木しげるの命名によるもので、音で怪異をもたらしたことが由来[1]。妖怪研究家・村上健司の著書では単に「曽我兄弟の怨霊」と題されている[2]。
概要
[編集]曾我十郎祐成と曾我五郎時致の兄弟は、源頼朝が富士の裾野で巻狩を行っていた場で、父の仇・工藤祐経を討ったが、兄の十郎は命を落とし、弟の五郎も死罪となった。
その後、富士の裾野は一旦は静けさを取り戻したかに見えたが、命を落とした曾我兄弟の瞋恚執心(この世に遺した怒りと怨念の意)が怨霊となり、その地に残った。その怨念はすさまじく、昼も夜も戦いの物音が絶え間なく聞こえ、時には空から「十郎祐成」「五郎時致」と名乗る声が聞こえるようになった。
事情を知らずにその地を訪れた者は、音を聞くだけでその場で死んでしまった。かろうじて逃げ延びた者もまた、ある者は精神に異常をきたし、曾我兄弟の霊魂が乗り移ったかのように「瞋恚執心」の言葉を語って苦しみ続けた。
事態を重く見た源頼朝は、高僧に曾我兄弟の霊を弔うことを依頼し、兄弟の霊を「照明皇神宮」として祀ることにした。以来、怪異はなくなったという[3][4]。
脚注
[編集]- ^ 水木しげる『妖鬼化』 2巻、Softgarage、2004年、34頁。ISBN 978-4-86133-005-6。
- ^ 村上健司編著『日本妖怪大事典』角川書店〈Kwai books〉、2005年、193頁。ISBN 978-4-04-883926-6。
- ^ 池田彌三郎『日本の幽霊』中央公論新社〈中公文庫〉、2004年、64-65頁。ISBN 978-4-12-204463-0。
- ^ 阿部正路『日本の幽霊たち 怨念の系譜』日貿出版社、1972年、121-122頁。 NCID BN05832800。