音盤紀行
音盤紀行 | |
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漫画 | |
作者 | 毛塚了一郎 |
出版社 | KADOKAWA |
掲載誌 | 青騎士 |
レーベル | 青騎士コミックス |
発表号 | Nr.1 - |
発表期間 | 2021年4月20日[1] - |
巻数 | 既刊2巻(2023年10月20日現在) |
テンプレート - ノート | |
プロジェクト | 漫画 |
ポータル | 漫画 |
『音盤紀行』(おんばんきこう)は、毛塚了一郎による日本の漫画作品。
『青騎士』(KADOKAWA)にて、Nr.1(創刊号)より連載中[1]。レコードをテーマにした短編漫画[2]。
世界各国、いろんな時代を舞台に、レコードと音楽の紡ぐオムニバス連載[3]。作者の毛塚にとって、初の連載作品である[4]。
作風
[編集]『PHILE WEB』(音元出版)によると、「レコード屋独特の空気感、臭いのようなものが濃く伝わってくる」作品である[5]。ライターの島田一志によると、本作は「レコード愛」に満ちた漫画である[6]。
短編作品がオムニバス形式で進行していく本作では、「レコードという形のあるものだからこそ生まれた物語ばかり」のストーリーが展開されている[7]。
制作背景
[編集]きっかけ
[編集]作者の毛塚は「音楽自体が昔から好き」であったため、家の近所にあった江古田の「おと虫」という店で中古のCDを購入していた[5]。おと虫は「どちらかといえばレコードがメインのお店」であったが、毛塚は当初、CDしか見ていなかった[5]。1990年生まれであり、レコード世代ではないが、大学生になったころにビートルズなどの音楽を聴くようになり、「こういう音楽をレコードで聴いたらどうなんだろう」と考え、「レコード棚を覗くようになった」ことがレコードを聴くきっかけとなった[5]。
連載まで
[編集]2015年から2016年ごろ、「ストーリーを描くことを意識し始めた」毛塚は好きな題材を選ぼうと考え、レコード屋をテーマに執筆したところ、自身の中で好感触であった[5]。同人誌でレコードの漫画を制作し続けたところ、担当編集者から声をかけられた[5]。2020年10月には連載の話がもちかけられた[8]。担当編集者はレコードの同人誌以前より毛塚の漫画を読んでいたため、『青騎士』の創刊にあたり、ぜひ毛塚に描いてほしいと考えたのである[5]。担当編集者も音楽が好きで、雑誌で「何を描くかとなったとき、やっぱりレコードかな」と考えたと話している[5]。毛塚はこの担当編集者であれば「音楽やレコードのこともディープなところまで突っ込んで話せる」と思い、商業誌での執筆を決意している[5]。本作のタイトルは「色々な場所にどんどん動いていくようなストーリーが作りたい」と思い、「紀行」とつけられている[5]。
制作
[編集]読者に「漫画として面白い」と思われることが1番嬉しい毛塚は、「音楽ファン、レコードファン以外の方にも楽しんでいただけるような作品」を意識して制作している[5]。担当編集者がマニアックであるからこそ、難解な用語の調整ができるといい、「うんちくやマニアックなネタ」は1話に1ネタくらいの登場となっている[5]。「やろうと思えばディープでマニアックな話も描ける」が、「漫画にとってはキャラクターの魅力が大事な要素」であると毛塚は考えているため、「レコードは共通したテーマとして据えて、キャラクターのストーリーをメイン」にして多くの読者に楽しんでもらうようにしている[5]。毛塚は「マニアックさはほどほどにして、レコードを聴かない人にも通じるドラマを描きたかった」とも話している[8]。「お店に並んだレコードのジャケット」や「壁に貼られたポスター」など、細かい部分では「マニアポイントを発散」させている[5]。
「毎回乗り物を描く」が裏のテーマとして存在しているため、本体表紙では「作中に登場した乗り物をデザイン」して描かれている[5]。乗り物へのこだわりの理由は「青騎士という熱量ある雑誌の中で生き残るためには、自分が熱量を持って描けるものを選ばないといけない」からである[5]。
「同人誌のときはひとつのレコード屋を軸に話を展開していた」が、それでは描けない話があった[5]。そんなころに担当編集者から声をかけられたこともあり、「同人誌ではできなかったいろんな国、いろんな場所の話を描きたい」という思いから、オムニバス形式となっている[5]。第1巻では「バラバラな中にもレコードという共通の軸を通して、その中でストーリーを作っていく」がコンセプトであったが、読者からの感想ではそこが伝わっている点がよかった、と毛塚は話している[5]。
デザイン
[編集]当初毛塚は「単行本のデザインはすごく古い感じにしてほしい」と担当編集者に意見を出したが、却下されている。しかし「レトロに振り切って懐古趣味にはならないよう気をつけて」いるという[5]。単行本では紙にこだわっており、表紙のタイトルとジャケットでは、「UV厚盛」という「UVインクを紫外線で固めて立体感を持たせる加工」がなされており[5]、装丁は「レコード特有の質感」がある[7]。本棚で長く置けるよう、制作されている[5]。目次では「レコードの帯のようなデザイン」が描かれている[7]。
反響
[編集]作者の毛塚は、生粋のレコードファンである[9]。それもあり、2022年5月20日に単行本第1巻が発売されると、レコード界隈で反響を得た[2][9]。毛塚にとって初の商業誌作品での単行本であったが、2022年7月時点で既に重版が決定されていた[5]。同年8月には、好評により再重版がかかった[8]。
評価
[編集]漫画ライターのちゃんめいは、本作について「ずらっと並んだレコードの棚などの、細部まで美しい描写」であり、「レコードから流れる音楽や歌詞ではなく、あくまでも”レコード”が主題となっているところが面白い」と評している[10]。
書誌情報
[編集]- 毛塚了一郎『音盤紀行』KADOKAWA〈青騎士コミックス〉、既刊2巻(2023年10月20日現在)
- 2022年5月20日発売[2][11]、ISBN 978-4-04-737090-6
- 2023年10月20日発売[3][12]、ISBN 978-4-04-737090-6
コラボレート
[編集]2022年9月、作者の毛塚が「大のアナログレコードファン」であることから、東洋化成とコラボレートを展開[13]。コラボTシャツが販売されている[13]。
出典
[編集]- ^ a b “新マンガ誌・青騎士創刊、第1号には森薫「シャーリー・メディスン」の新作も”. コミックナタリー (ナターシャ). (2021年4月20日) 2023年10月21日閲覧。
- ^ a b c “時代も国境も越えて心を震わせるレコード、そこに込められた思いをたどる「音盤紀行」”. コミックナタリー (ナターシャ). (2022年5月20日) 2023年10月21日閲覧。
- ^ a b “「音盤紀行」2巻タワレコ特典に“描くときに聴いてる洋楽ガイド” 梅田でサイン会も”. コミックナタリー (ナターシャ). (2023年10月20日) 2023年10月21日閲覧。
- ^ 第2巻 2023 そでより。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w 杉山康介 (2022年7月2日). “マニアに“刺さる”レコード漫画『音盤紀行』はどうやって生まれたのか。作者・毛塚了一郎さんインタビュー”. PHILE WEB. 音元出版. 2023年10月21日閲覧。
- ^ 島田一志 (2022年6月23日). “漫画短編集『音盤紀行』が描くレコードの魔法 過去と現在を紡ぐ“時空旅行””. リアルサウンド. blueprint. 2023年10月4日閲覧。
- ^ a b c あんどうまこと (2022年10月10日). “『RECORD』『音盤紀行』『緑の歌』……色褪せないレコードの魅力を伝える漫画3選”. リアルサウンド. blueprint. 2023年10月4日閲覧。
- ^ a b c “3か月で再重版「音盤紀行」作者・毛塚了一郎氏 〝聴かない世代〟にも刺さる人間ドラマの原点”. 東スポWEB (東京スポーツ新聞社). (2022年8月7日) 2023年10月21日閲覧。
- ^ a b 杉山康介 (2023年10月6日). “レコード漫画『音盤紀行』第2巻が10/20発売。現代アメリカ、戦後横浜など世界/世代を超える音楽オムニバス”. PHILE WEB. 音元出版. 2023年10月21日閲覧。
- ^ ちゃんめい (2022年5月29日). “『ツワモノガタリ』『ブスなんて言わないで』『音盤紀行』……漫画ライター・ちゃんめい厳選! 5月のおすすめ新刊漫画”. リアルサウンド. blueprint. 2023年10月4日閲覧。
- ^ “「音盤紀行 1」毛塚了一郎 青騎士コミックス”. KADOKAWA. 2023年10月21日閲覧。
- ^ “「音盤紀行 2」毛塚了一郎 青騎士コミックス”. KADOKAWA. 2023年10月21日閲覧。
- ^ a b “音楽ファンの間で話題のコミック『音盤紀行』と東洋化成のコラボTシャツが発売!”. TOWER RECORDS ONLINE. TOWER RECORDS. 2023年10月21日閲覧。
参考文献
[編集]- 毛塚了一郎『音盤紀行』 2巻、KADOKAWA、2023年10月20日。ISBN 978-4-04-737090-6。