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銀坊主

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
銀坊主
イネ属 Oryza
イネ O. sativa
亜種 ジャポニカ O. s. subsp. japonica
品種 銀坊主
開発 石黒岩次郎
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銀坊主(ぎんぼうず)は、1907年明治40年)に石黒岩次郎が育成したイネ(稲)の品種である[1]。「愛国」の中から施肥過多でも倒れない株を選抜して育成された[1]。品種名の由来は、芒の赤い「愛国」の中で、無芒で籾が白っぽく見えたためとされる[2]

品種特性

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熟期は晩生で、強稈[2]。粒は中粒ながら株張りが良く穂数も多く多収[2]。耐肥性に優れ、いもち病に強く、短日感応度もかなり高い[2]。食味はそれほど良くはないが、市場では搗精歩合の高さが評価された[2]

歴史

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育成

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富山県婦負郡寒江村(現在の富山市)の石黒岩次郎が、1907年(明治40年)に初めて施肥過多で栽培した「愛国」の中から、ただ1株だけ倒れていないイネを見つけた[1]。稈は太く穂数も多く、同年流行したいもち病にもかかっていなかった[1]。翌年に栽培してみると、株張りも良く多収であった[2]。石黒は「銀坊主」と名付けて栽培を続けつつ、近隣の農家にも広めていった[2]

発展

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「銀坊主」は1921年大正10年)に富山県の奨励品種となったことで急速に普及した[2]昭和になって化学肥料の使用が広まり始めたことも、耐肥性に優れる「銀坊主」が普及する一因となった[2]。また、日照不足や冷水による灌漑でも育つ「銀坊主」は、特に北陸山陰など日本海側の農家に歓迎された[2]1939年(昭和14年)には、作付面積は142,472haで全国4位となっている[2]

朝鮮半島から中国北部にも広まり、天津周辺では昭和30年代になっても栽培されていたとされる[2]

影響

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1919年(大正8年)以降、純系選抜によって、熟期が約半月早い「銀坊主中生」などが育成された[2]人工交配による育種でも、「農林8号」など多くの品種が生み出され、「コシヒカリ」や「ササニシキ」などの優良品種につながっている[2]

JR富山駅から西に約4km進んだ北陸本線の線路沿いに、石黒を顕彰する「石黒岩次郎翁碑」がある[2]

関連品種

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純系選抜種

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  • 銀坊主中生[2]
  • 銀坊主38号[2]
  • 銀坊主88号[2]

突然変異種

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  • 短銀坊主[2]

子品種

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  • 農林8号[2]
  • 農林13号[2]
  • 農林15号[2]

孫品種

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  • 農林43号」(種子親を「農林8号」、花粉親を由来不明の「早生銀坊主」として交配。「早生銀坊主」が「銀坊主」の純系分離であるかは不明)[2][3]
  • 農林22号」(「農林6号」を花粉親、「農林8号」を種子親として交配)[4]
  • ササシグレ」(「東北24号」を花粉親、「農林8号」を種子親として交配)[5]

ひ孫品種

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  • コシヒカリ」(「農林1号」を花粉親、「農林22号」を種子親として交配)[6]
  • ササニシキ」(「ササシグレ」を花粉親、「農林1号」を花粉親・「農林22号」を種子親として交配した「ハツニシキ」を種子親として交配)[7]
  • 中生新千本」(「隼」を花粉親、「農林22号」を種子親として交配)[8]
  • ひより[要曖昧さ回避]」(「ササシグレ」を花粉親、「山田錦」を種子親として交配)[5]

玄孫品種

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  • 日本晴」(「幸風」を花粉親、「農林22号」を花粉親・「中京旭」を種子親として交配した「ヤマビコ」を種子親として交配)[9]

脚注

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  1. ^ a b c d 西尾 & 藤巻 2020, p. 32.
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w 西尾 & 藤巻 2020, p. 33.
  3. ^ イネ品種 データベース 検索システム  「 北陸38号( 農林43号 ) 」 品種情報 ”. ineweb.narcc.affrc.go.jp. 2022年2月3日閲覧。
  4. ^ 副島 2017, p. 13.
  5. ^ a b 副島 2017, p. 72.
  6. ^ 副島 2017, p. 36.
  7. ^ 副島 2017, p. 41.
  8. ^ 副島 2017, p. 58.
  9. ^ 副島 2017, p. 60.

参考文献

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  • 副島, 顕子『酒米ハンドブック』(改訂版)文一総合出版、2017年7月31日。ISBN 9784829981535 
  • 西尾, 敏彦、藤巻, 宏『日本水稲在来品種小事典-295品種と育成農家の記録-』農山漁村文化協会、2020年3月20日。ISBN 9784540192203 

関連項目

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