コンテンツにスキップ

重力インスタントン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

重力インスタントン(じゅうりょく - )とは、以下の3つの性質を持つ4次元リーマン多様体のことである。

  1. リッチ平坦
  2. 自己双対(self-dual)なリーマン曲率テンソルをもつ
  3. 無限遠で局所的に平坦(asymptotically locally flat)である

(しかし実は、2. ならば 1. が言える。)

あるいは、もっと広い意味で、3. を満たしリッチ曲率計量に比例している(いわゆる宇宙定数がある)ものを言う。

ヤン・ミルズ理論のインスタントンとの類似から、そう呼ばれる。ALE(Asymptotically Locally Euclidean)空間とも呼ばれる。

性質

[編集]

(4次元)重力インスタントンは次の3つの言い方ができる。

  1. リーマンの曲率テンソルが自己双対
  2. リッチ平坦かつケーラー多様体(= カラビ・ヤウ多様体
  3. 超ケーラー多様体

高次元にいくと、これら3つはすべて異なる条件になる。

[編集]

重力インスタントンは3次元球面の左不変な1-形式をσi (i = 1, 2, 3) を用いて書くのが便利であり、それらはオイラー角を用いて、

のように表される。

ユークリッド化されたターブ・ナット(Euclidean Taub-NUT)計量

[編集]

ユークリッド化されたターブ・ナット計量英語版

によって与えられる。

江口・ハンソン(Eguchi-Hanson)計量

[編集]

江口・ハンソン計量英語版

のように表現される。ここで、座標の範囲は ra1/4 である。

この計量がいたるところ滑らか、つまりregularな計量であるためには、ra1/4, θ= 0, π のところで錐特異点(conical singularity)がないことである。この条件はパラメーター a がゼロかそうでないかで場合分けされ、

  • a = 0 のとき座標 ψ の周期が 4π
  • a ≠ 0 のときは座標 ψ の周期が 2π

とならなければならない。

別の座標系を用いて、

と表現されることもある。ここで、

である。

ギボンズ・ホーキング(Gibbons-Hawking)計量

[編集]

ギボンズ・ホーキング計量英語版[1]

と定義され、ここに、

である。 は、多重ターブ・ナッツ計量に対応し、 では平坦空間であり、 では、(異なる座標で)江口・ハンソン解である。

出典

[編集]
  1. ^ Gibbons, G. W.; Hawking, S. W., Gravitational Multi-instantons. Phys. Lett. B 78 (1978), no. 4, 430–432; see also Classification of gravitational instanton symmetries. Comm. Math. Phys. 66 (1979), no. 3, 291–310.

参考文献

[編集]
  • Eguchi, Tohru; Hanson, Andrew J., Asymptotically flat selfdual solutions to Euclidean gravity. Phys. Lett. B 74 (1978), no. 3, 249–251; see also Self-dual solutions to Euclidean Gravity. Ann. Physics 120 (1979), no. 1, 82–106 and Gravitational instantons. Gen. Relativity Gravitation 11 (1979), no. 5, 315–320.