言語接触
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言語接触(げんごせっしょく)とは、二種類以上の言語が互いに影響を及ぼしあうことである。
概要
[編集]それぞれの言語の使用者が同じ社会の中で棲み分ける場合と、異なった社会に暮らす異なる言語の使用者が接触し、交易などを通じて深い関係を結ぶ場合がある。どちらの場合でも接触する言語間ではお互いに語彙の借用が行われる。接触の度合いが進むにつれ借用語の流入は一時的、表面的なものから恒久的な言語そのものに関わる次元にまで達する。また時には文法、語法の借用も行われる。又交易などを通じ言語接触が起こった場合は、ピジン言語が成立する事例も多い。ピジンが母語話者を獲得し、完成された自然言語となったのがクレオール言語である。
また、言語接触状況において、威信の高い言語を上層言語、威信の低い言語を基層言語という。
地理的に隣接した言語同士が、接触を通して共通の音韻的・文法的特徴を獲得する場合も見られる。ある地域において、系統にかかわらず一定の類似性を示すようになった言語群は、言語連合と呼ばれる。
系統論における言語接触
[編集]言語は語族という分類単位が存在するが、生物のように世界中の全言語を系統分類できていない。この原因として言語接触による混合言語化、クレオール化が考えられる[注 1]。言語は拡散と混合を繰り返してきており、祖語自体が混合言語である場合はそれより上位の系統を決定できないためである。
言語接触と言語変化
[編集]他言語との接触は、借用語の流入のみならず、音韻論・形態論・統語論・意味論といった広範な領域における変化を誘発する[2]。
音韻論
関連項目
[編集]- アイヌ語と日本語の言語接触
- 混合言語
- 基層言語
- ピジン言語、リンガ・フランカ、コイネー言語
- クレオール言語、クレオール化
- 混血
- 方言、言語変種
- 混種語
- 借用語
- コードスイッチング
- マカロニック
- 小笠原方言
- Engrish、フランポネ
- 新方言
- 言語交替
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ 村脇有吾 (2016), p. 163.
- ^ Aikhenvald (2007), pp. 15–26.
- ^ Trudgill 1974.
参考文献
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- Aikhenvald, Alexandra Y. (2007), “Grammars in Contact: A Cross-Linguistic Perspective”, in Aikhenvald, Alexandra Y.; Dixon, R. M. V., Grammars in contact: A cross-linguistic typology, Oxford University Press, pp. 1-66, ISBN 9780199207831
- Trudgill, Peter (1974), “Linguistic Change and Diffusion: Description and Explanation in Sociolinguistic Dialect Geography”, Language in Society 3 (2): 215-246, doi:10.1017/S0047404500004358
- 井上史雄「言語接触の経済言語学:絶滅危機言語と日本語」『日本語学』第29巻第14号、明治書院、2010年11月、208-219頁。
- 管啓次郎「クレオールな存在、ピジンな生き方」『言語』第36巻第9号、大修館書店、2007年9月、60-67頁。
- 工藤真由美「複数の日本語という視点から捉えるアスペクト」『言語』第36巻第9号、大修館書店、2007年9月、32-39頁。
- 崎山理「日本語の形成過程と言語接触」『日本語学』第29巻第14号、明治書院、2010年11月、18-31頁。
- 市之瀬敦「言語接触からクレオール語へ」『言語』第36巻第9号、大修館書店、2007年9月、16-23頁。
- 渋谷勝己「言語接触研究の動向」『日本語学』第29巻第14号、明治書院、2010年11月、6-15頁。
- 村脇有吾「言語変化と系統への統計的アプローチ」『統計数理』第64巻第2号、統計数理研究所、2016年12月、161-178頁。
- 池田佳子「言語接触とアイデンティティ」『日本語学』第29巻第14号、明治書院、2010年11月、196-206頁。
- 中村誠「クレオール化をシミュレートする」『言語』第36巻第9号、大修館書店、2007年9月、40-47頁。
- 朝日祥之「ニュータウンにおける言語接触」『日本語学』第29巻第14号、明治書院、2010年11月、84-97頁。
- 林徹「エイヌ語に見る言語接触の様相」『言語』第36巻第9号、大修館書店、2007年9月、48-55頁。