蒼き狼 (小説)
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『蒼き狼』(あおきおおかみ)は、井上靖の歴史小説。『文藝春秋』に1959年10月号から1960年7月号にかけて連載された。
概要
[編集]モンゴル帝国を築いた初代ハーンのチンギス・カン(成吉思汗、鉄木真)の生涯を描いた作品で、『天平の甍』よりはじまる一連の西域小説に属する。
あとがき「『蒼き狼』の周囲」によれば、井上靖は大学時代に当時のベストセラーである小谷部全一郎『成吉思汗ハ源義経也』(大正13年)と同著に対する史学者の反論を載せた「中央史壇」に触れ、戦後には那珂通世訳注『 成吉思汗実録』(『元朝秘史』、昭和18年)を入手し、チンギス・カンに関心を持ち、資料を集めて構想をはじめたという。執筆した時点では、モンゴルに行ってはいなかった。
1980年のテレビ朝日のドラマ『蒼き狼 成吉思汗の生涯』の原作となっている。
大岡昇平によるテキスト批判
[編集]大岡昇平は雑誌「群像」の連載文芸時評『常識的文学論』(1961年1月号~12月号、のちに1962年1月、講談社より単行本化される)第一回の連載より数度にわたってこの作品を批判している。
論旨は『元朝秘史』の記述をもとに、「狼」を「頭口(明初の俗語で「家畜」の意)を害う狼」とすべきところを、井上靖は「頭を害う山犬」とする(故意に真意を歪めた解釈をしている)など、蒙古民族の狼に関する解釈と違うもので物語を作っており、その他の例を含めて「昭和三十年代の歴史小説家が、どんなに非歴史的な粗雑な頭の持ち主だったかの記録として、後世に残るであろう」(成吉思汗の秘密)としている。
関連項目
[編集]- 蒼き狼
- 純文学論争
- 蒼き狼と白き牝鹿・ジンギスカン - 光栄(現・コーエー)から発売された歴史シミュレーションゲーム。本作にて井上靖が創作した、成吉思汗と忽蘭の間に出来た子という設定のガラウンという人物が登場する。