聖シェナーンと竜
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聖シェナーンと竜(せいシェナーンとりゅう)はアイルランドに伝わる聖人伝説である。
概要
[編集]アイルランドのカヒー島[注釈 1]には1つ眼の凶暴な竜が棲んでいたという。その腹はふいごのようであり、口から吐く息は炎となった。大きな2本の脚を持ち、歩くたびに鉄のような大きな爪が地面をえぐった。海に入れば、全身から放つ熱と毒気によって海水は煮え立った。この恐ろしい竜と会って逃れ得た者はいなかった[1]。
ある時、聖シェナーン (Senán mac Geirrcinn)[注釈 2]が大天使ミカエルのお告げを受け、カヒー島に来て教会を建てようとした。彼の到着を知った怪物は怒りまくった。しかし聖シェナーンは慌てることなく、怪物に言った。「この島を去り、途中では誰をも、着いた先でも誰をも傷つけるな」。すると怪物はシェナーンの言葉に従い、そうしてスリアブ・コランのドゥーロッホに着いてもそこで無害な怪物として過ごしたという[2]。
アイルランドやスコットランドの伝承に登場する竜には、ワームのように蛇に似た毒を吐くものと、ドラゴンのように翼を持ち炎の吐くものがいる。この地域では、前者の竜が多くの伝承にみられるが[3]、シェナーンとまみえたこの竜はドラゴンに近い怪物だと考えられる[4]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ 岩瀬 (1998a)、145頁。
- ^ 岩瀬 (1998a)、145-146頁。
- ^ 岩瀬 (1998b)、146-147頁。
- ^ 岩瀬 (1998b)、148頁。
参考文献
[編集]- 竹原威滋・丸山顯德編著 編『世界の龍の話』(初版)三弥井書店〈世界民間文芸叢書 別巻〉、1998年7月10日。ISBN 978-4-8382-9043-7。
- 岩瀬 (1998a):岩瀬ひさみ「ウエールズ、スコットランド 7 聖シェナーンと龍」145-146頁
- 岩瀬 (1998b):岩瀬ひさみ「ウエールズ、スコットランド 解説」146-148頁
資料
[編集]- Whitley Stokes: Lives of Saints from The Book of Lismore, Oxford 1890, pp.213-214(「リスモールの書からの聖者伝」、『世界の龍の話』出典10頁)