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秘密の花

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

秘密の花」(ひみつのはな)は、西村朗作曲、大手拓次作詞の女声合唱組曲である。1986年(昭和61年)出版。

概説

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女声合唱団・彩の会の委託により、1985年(昭和60年)12月2日、同団の第五回定期演奏会(練馬文化センター大ホール)で初演された。指揮は栗山文昭、ピアノは田中瑤子

西村朗の大手拓次三部作の第三作[1]にあたる。第一作は「まぼろしの薔薇」、第二作は「そよぐ幻影」である。いずれも大手拓次の詩集『藍色の蟇』のテクストを用いている。西村朗が「旋律、和声、リズム、動機等、さまざまの点で有機的な結びつきを持ち、私にとっては本来分かち難いもので、いつの日かこれら三作が一夜のコンサートにおいてまとめて上演されることを今は夢見ております」[1]と語るように、三部作は音楽的・内容的関わり合いが強い。

同作は”妖しく耽美な愛とエロスの音詩”と説明されており、

この特異な詩人の本領は性の悩ましいエロチズムとある怪しげな夢をもつたアラトニックの恋愛詩に尽きるのである。童貞のやうに純潔で、少女のやうに夢見がちなこの詩人は、彼の幻想の部屋の中で、人に隠れた秘密をいたはり育てて居た。彼のエロチズムと恋愛詩は、いつも阿片の夢の中で、悪魔の激昂のやうに縹渺して居た。それは全く常識の理解できない、不思議な妖気にみちたポエヂイである。 — 萩原朔太郎、「大手拓次君の詩と人物」

との萩原朔太郎による大手拓次の作風についての評価を引用し、そのイメージを語っている[1]

曲目

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全5楽章からなる。いずれも『藍色の蟇』収録の連作詩「黄色い接吻」から。

  1. くちびる(夜の脣)
    1988年(昭和63年)の第41回全日本合唱コンクールで女声合唱の課題曲の一つとして選ばれた[2]
  2. 道化服を着た死(道化服を着た骸骨)
  3. 髪(ひとすぢの髪)
  4. ゆびⅠ(春の日の女のゆび)
  5. ゆびⅡ(頸をくくられる者の歓び)

なお、各曲はそれぞれ原題から改題されている[1]。()内は原題である。また、作曲の都合上、詩に変更・省略が加えられているものがある。

楽譜

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  • 「秘密の花」(カワイ出版、1986年(昭和61年)7月1日)ISBN 9784760914661
  • 合唱名曲シリーズ No.17(1988年2月25日) - 「くちびる」のみ収録[2]

レコード・CD

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発売日 レーベル ASIN JAN
日本合唱曲全集「まぼろしの薔薇」西村朗作品集(1) 2005/10/21 日本伝統文化振興財団 B000B84PSE 4519239010460

脚注

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  1. ^ a b c d 秘密の花. カワイ出版. (1986年7月1日) 
  2. ^ a b 合唱名曲シリーズ 過去の収録曲

関連項目

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参考文献

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  • 大手拓次「藍色の蟇」(1965年(昭和40年)10月25日)

外部リンク

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