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画家マルテン・リカールト

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『画家マルテン・リカールト』
スペイン語: El pintor Martin Ryckaert
英語: The Painter Martin Ryckaert
作者アンソニー・ヴァン・ダイク
製作年1631年ごろ
種類板上に油彩
寸法148 cm × 113 cm (58 in × 44 in)
所蔵プラド美術館マドリード

画家マルテン・リカールト』(がかマルテン・リカールト、西: El pintor Martin Ryckaert: The Painter Martin Ryckaert)は、フランドルバロック期の巨匠アンソニー・ヴァン・ダイクが1631年頃にキャンバス上に油彩で制作した肖像画で、モデルの人物はヴァン・ダイクと同時代のフランドルの風景画マルテン・リカールト英語版 (1587-1631年) である[1][2]。おそらくヴァン・ダイクがイングランドに赴く前に描かれ[2]、一時ヴァン・ダイクの姉に所有されていた[1]。作品は1651年にロンドンスペインのフエンサルダーニャ (Fuensaldaña) 伯爵により購入されたが、1666年にマドリード旧王宮英語版のスペイン王室コレクションに記録された[1]。現在、マドリードプラド美術館に所蔵されている[1][2]

作品

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マルテン・リカールト『製鉄所のそばに人物がいる風景』 (個人蔵)

本作のモデルの人物マルテン・リカールトは、1611年にアントウェルペン聖ルカ組合に「片腕の画家」として登録されている[3]。彼の数少ない現存作品は、森や、しばしば滝、岩、遺跡、建築物、小さな人物を描いた空想上の風景画である。それらの作品は、アントウェルペンの画家ヨース・デ・モンペル[4]パウル・ブリルヤン・ブリューゲル (父) らの作品に類似している[5]

ヴァン・ダイクは、独特の個性で肖像画を描く画家であった[2]。画面で椅子に腰かけ、赤い衣服と毛皮のコートを身に着けているマルテン・リカールトはほぼ全身像で描かれている[1]。本作はリカールトの左腕のない障害を隠すどころか、あえて露わにし[1][2]、彼のたくましい生命力を真正面からの姿で表現した[2]アントニス・モル (1519-1576年) [2]ウィレム・ケイ英語版 (1515/1520年ごろ-1568年) によって確立されたネーデルラント肖像画の伝統に則り、ヴァン・ダイクはモデルを深い暗色の背景[1]に配置し[1][2]、光、色彩、正面向きの構図で人物の心理を見事に捉えている[1]。また、色彩や素早い筆遣い、モデルの姿勢においては、ティツィアーノ (1485年ごろ-1576年) の影響も見て取れる[1][2]

脚注

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  1. ^ a b c d e f g h i j The Painter Martin Ryckaert”. プラド美術館公式サイト (英語). 2024年9月15日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i 国立プラド美術館 2009, p. 368.
  3. ^ Biographical details at the Netherlands Institute for Art History (オランダ語)
  4. ^ Landschap, Marten Rijckaert Archived 10 May 2017 at the Wayback Machine. at Het Gulden Cabinet (オランダ語)
  5. ^ Hans Vlieghe (1998), Flemish Art and Architecture 1585-1700; Yale University Press, New Haven, 1998 ISBN 0-300-07038-1

参考文献

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外部リンク

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