生活扶助
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生活扶助(せいかつふじょ)とは生活保護制度で定められている生活保護の8種類のうちの一つである。
概要
[編集]生活保護法による保護のうち、衣食その他日常生活の需要を満たす目的で行われる(生活保護法第12条)。
生活扶助は、個人の経常的な需要を満たす目的の第1類[1]、世帯の経常的な需要を満たす目的の第2類[1]、障害者、高齢者等の事情により生じる経常的な需要を満たす目的の加算、入院患者・施設入所者の経常的な需要を満たす日用品費、その他一時的な需要を満たす目的の各種一時扶助などの種類がある。
年表
[編集]- 1946年(昭和21年) - 生活扶助基準を標準生計費方式にする[2]
- 1948年(昭和23年) - 生活扶助基準をマーケットバスケット方式に改定[2]
- 1949年(昭和24年)
- 1951年(昭和26年) - 冬季加算創設[5]
- 1952年(昭和27年)5月 - 障害者加算、障害者本人に対して加算するよう改める[4]
- 1961年(昭和36年) - 生活扶助基準をエンゲル方式に改定[2]
- 1965年(昭和40年) - 生活扶助基準を格差縮小方式に改定[2]
- 1984年(昭和59年) - 生活扶助基準を水準均衡方式に改定[2]
- 2009年(平成21年)
生活扶助基準算定方式
[編集]国民の生活水準は時代とともに変わり、最低限度の生活の水準も変化することから、合わせて算定方式も絶対的な最低生活費を算出する方式から、一般国民と比較する相対的な決め方に移ってきた[6]。
- 標準生計費方式[2]
1946年(昭和21年)から1947年(昭和22年)採用。当時の経済安定本部が定めた世帯人員別の標準生計費を基に算出し、生活扶助基準とする方式である[7]。
- マーケットバスケット方式[2]
1948年(昭和23年)から1960年(昭和35年)採用。最低生活を営むために必要な飲食物費や衣類、家具什器、入浴料といった個々の品目を一つ一つ積み上げて最低生活費を算出する方式である[7]。
- エンゲル方式[2]
1961年(昭和36年)から1964年(昭和39年)採用。栄養審議会の答申に基づく栄養所要量を満たし得る食品を理論的に積み上げて計算し、別に低所得世帯の実態調査から、この飲食物費を支出している世帯のエンゲル係数の理論値を求め、これから逆算して総生活費を算出する方式である[7]。
- 格差縮小方式[2]
1965年(昭和40年)から1983年(昭和58年)採用。一般国民の消費水準の伸び率以上に生活扶助基準を引き上げ、結果的に一般国民と被保護世帯との消費水準の格差を縮小させようとする方式である[7]。
- 準均衡方式[2]
1984年(昭和59年)以降採用。当時の生活扶助基準が国民の消費実態との均衡上、ほぼ妥当な水準に達したことから、その均衡した水準を維持・調整する方式である[7]。
第1類
[編集]個人単位の経費[1]。
第2類
[編集]世帯単位の経費と冬季加算[1]。
冬季加算
[編集]冬季における光熱費等の増加需要に対応するため、11月から翌年3月まで生活扶助基準に上乗せして支給しており、1951年(昭和26年)に創設された。都道府県単位の冬季加算地域区分を設定して、世帯人員別、級地別に設定している[5]。
地域区分は、平均気温が最も低い月の気温、積雪量、積雪期間、暖房が必要な日数などを総合的に勘案し設定している[8]。2014年(平成26年)11月の厚労省会議資料によると、1966年(昭和41年)以降見直しは行っていない[8]。
具体的には、電気代、ガス代、灯油代。使用用途は制限されていないので被保護者の裁量に任されている[9]。
1974年(昭和49年)以降は前年度の基準額に生活扶助改定率を乗じて設定している[10]。
- 地域区分(2014年<平成26年>10月現在)[5]
- I区:北海道、青森県、秋田県
- II区:岩手県、山形県、新潟県
- III区:宮城県、福島県、富山県、長野県
- IV区:石川県、福井県
- V区:栃木県、群馬県、山梨県、岐阜県、鳥取県、島根県
- VI区:その他の都府県
- 支給期間(2024年11月現在)
冬季加算の支給期間は地域区分によって違い、
- I区:10月から翌年4月まで
- II区:10月から翌年4月まで
- III区:11月から翌年4月まで
- IV区:11月から翌年4月まで
- V区:11月から翌年3月まで
- VI区:11月から翌年3月まで
となっている[11]。
- 引き下げ
2015年(平成27年)10月に約15~25%の引き下げが行われた[12]。
加算
[編集]本体の基準には反映されない被保護世帯の特別な需要に着目して設定されたものである。歴史的経緯や他制度の見合いによって設定されたものも多い[13]。
- 加算の種類
- 妊産婦加算[13] - 栄養補給等妊産婦の特別な需要に対応[14]
- 母子加算[13] - 一方の配偶者が欠ける状況にある者等が児童を養育しなければならないことに伴う特別な需要に対応[14]
- 障害者加算[13] - 障害を抱えることによって生じる特別な需要に対応[14]
- 重度障害者加算[13]
- 放射線障害者加算[13] - 原爆放射能による負傷、疾病の状態にある者などに係る特別な需要に対応[14]
- 児童養育加算[13] - 中学校修了前の児童の教養文化的経費等の特別需要に対応[14]
- 介護保険料加算[13] - 被保護者が負担すべき介護保険料第1号保険料に対応[14]
- かつてあった加算
問題点
[編集]埼玉弁護士会によると、加算認定漏れ等が起きる状況という[16]。
脚注
[編集]- ^ a b c d 生活保護基準の体系等について" 厚生労働省社会・援護局保護課 2011年5月24日開催第2回社会保障審議会生活保護基準部会 資料3 2011年 p.2
- ^ a b c d e f g h i j "生活保護制度の概要等について" 厚生労働省社会・援護局保護課 2001年4月27日開催第38回社会保障審議会生活保護基準部会 参考資料 2021年 p.12
- ^ a b c d "生活保護基準の体系等について" 厚生労働省社会・援護局保護課 2011年5月24日開催第2回社会保障審議会生活保護基準部会 資料3 2011年 p.14
- ^ a b "生活保護基準の体系等について" 厚生労働省社会・援護局保護課 2011年5月24日開催第2回社会保障審議会生活保護基準部会 資料3 2011年 p.16
- ^ a b c 厚生労働省社会・援護局保護課(編)"冬季加算について" 2014年 2014年10月21日開催 第19回社会保障審議会生活保護基準部会 資料2 p.3
- ^ "貧困と生活保護(53) 低所得化に合わせて基準を下げてよいのか" 原昌平 ヨミドクター 読売新聞社 2018年1月19日更新 2024年12月26日閲覧
- ^ a b c d e 水準均衡方式導入以前における第1・十分位に関する記述について 厚生労働省 令和4年6月30日開催 第45回社会保障審議会生活保護基準部会 参考資料2 2022年
- ^ a b "生活保護基準部会検討作業班における作業について(冬季加算関係)" 厚生労働省社会・援護局保護課 2014年 第20回社会保障審議会生活保護基準部会 資料2 p.5
- ^ "生活保護の「冬季加算」とは?冬季加算が支給される目的や冬季加算地域を解説" p.1 LIMO/Yahoo!JAPANニュース 2024年11月1日5:26更新 2024年12月22日閲覧
- ^ 厚生労働省社会・援護局保護課(編)"冬季加算について" 2014年 2014年10月21日開催 第19回社会保障審議会生活保護基準部会 資料2 p.5
- ^ "生活保護の「冬季加算」とは?冬季加算が支給される目的や冬季加算地域を解説" p.2 LIMO/Yahoo!JAPANニュース 2024年11月1日5:26更新 2024年12月22日閲覧
- ^ "灯油代も削られ厳しい冬に!過酷化する北海道の生活保護の現実" みわよしこ ダイヤモンド・オンライン 2015年10月16日5:00更新 2024年12月22日閲覧
- ^ a b c d e f g h "生活保護基準の体系等について" 厚生労働省社会・援護局保護課 2011年5月24日開催第2回社会保障審議会生活保護基準部会 資料3 2011年 pp.14-17
- ^ a b c d e f "生活保護基準の体系等について" 厚生労働省社会・援護局保護課 2011年5月24日開催第2回社会保障審議会生活保護基準部会 資料3 2011年 p.2
- ^ "生活保護における老齢加算廃止に関する最高裁判決に関する会長談話" 日本弁護士連合会 2012年3月8日更新 2024年12月1日閲覧
- ^ "生活保護法に基づく保護費の支給漏れ等を是正し、実効的な再発防止策を講ずることを求める会長声明" 埼玉弁護士会 2020年1月8日更新 2024年12月2日閲覧