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潮寒二

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
潮 寒二うしお かんじ
ペンネーム 紅東一
城崎龍子
浅山健二
飯田武
海野三平
潮寛二
飯田武州
堀井赤万
誕生 飯田 実
1910年8月15日
東京市豊多摩郡淀橋町十二社
(現在の東京都新宿区西新宿
死没 1981年????
職業 小説家
国籍 日本の旗 日本
文学活動 おめがクラブ
代表作 『義賊の春』
デビュー作 『逃亡した死体』(1932年)
ウィキポータル 文学
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(うしお かんじ、1910年8月15日 - 1981年)は、日本の小説家推理作家[1]

経歴・人物

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本名:飯田実[2]東京市西新宿十二社生まれ[2]。父は西新宿の大地主であった[2]。戦前には逓信省に勤めていたが、戦時中に横浜高射砲部隊(高射砲第117連隊)に一兵卒として入隊[2]。これを機に以降、軍需産業に勤使し、30代で課長となり名古屋に転勤している[2]

作家としては、1932年に「逃亡した死体」を『漫談』誌に発表。これがデビュー作となる[3]。デビュー後5年間は少年小説などを執筆するが、戦時中には筆を折る[3]。戦後、「猿人の血型」(1949年)で復活[3]。1952年、『富士』誌に掲載された「義賊の春」が、「流転」のタイトルでラジオ・ドラマ化され、ニッポン放送系から4夜連続で放送された[2]。1955年ごろにはSF同人グループおめがクラブのメンバーとなる。1958年には「おめがクラブ」メンバーであった矢野徹と合作で、堀井赤万名義の「惑星から来た少女」を『探偵実話』誌に発表。1961年ごろには作品発表が途絶えている[3]。別名に紅東一城崎龍子浅山健二飯田武州海野三平潮寛二などがある[2]

1981年、肺癌のため死去。

作品リスト

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単行本

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  • 『高遠惜春賊』(私家版、1980年8月)[4]
  • 『午前零時の男 他三編』(紅東一名義、盛林堂ミステリアス文庫、2018年8月)[5]
  • 『ハルピンお龍行状記 姿なき脅迫者』(城崎龍子名義、東都我刊我書房、2020年3月)[6]

雑誌発表作品

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戦前および戦中

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(潮寒二 名義)

  • 「逃亡した死体」 - 『漫談』1932年7月号(漫談社
  • 「額縁騒動」 - 『週刊小学生新聞』第61号 - 64号(全4回、1932年10月)
  • 「天晴れ蒙古男児」 - 『週刊小学生新聞』第65号 - 68号?(全4回?、1932年11月?)
  • 「日本魂は踊る」 - 『週刊小学生新聞』第69号 - 72号?(全4回?、1932年12月?)
  • 「天晴れ蒙古少女」 - 『週刊小学生新聞』第73号 - 76号?(全4回?、1933年1月?)
  • 「世界怪奇探偵譚」 - 『週刊小学生新聞』第77号 - 80号?(全4回?、1933年2月?)
  1. 「魔の沼」
  2. 「豹の槍先」
  3. 「蜘蛛人」
  4. 「蝙蝠の森」
  • 「露満国境の赤い狼」 - 『週刊小学生新聞』第?号 - ?号(全4回?、193?年?月)
  • 「魔のジャンク」 - 『週刊小学生新聞』第?号 - ?号(全4回?、193?年?月)
  • 「赤道直下の洞窟」 - 『日本少年』1935年7月号 - 12月号連載(全6回、実業之日本社
  • 「砲隊鳥」 - 『新青年』1940年3月号(博文館

戦後

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  • 「猿人の血型」 - 『奇談と小説』1949年4月号(文化宏談社)[7]
  • 「悪食」 - 掲載誌不明[8]
  • 「踊る白骨」 - 掲載誌不明[8]
  • 「乳房の蜘蛛」 - 『探偵よみもの』40号(1950年8月15日、協和出版)
  • 「賭場の暴風」 - 『探偵実話』1951年1月号(世界社)
    • 『探偵実話』1956年5月増刊号(世文社)再録
  • 「舞姫の秘密」 - 『妖奇』1951年2月号(オール・ロマンス社)
  • 「蠢く女体」 - 『妖奇』1951年4月号(オール・ロマンス社)
  • 「蛞蝓と淫臭」 - 『妖奇』1951年8月号(オール・ロマンス社)
  • 「淫獣を孕んだ女」 - 『千一夜』1951年12月号(千一夜出版社)
  • 「ミス・オッパイの失踪」 - 『読切ロマンス』1952年2月号(睦書房)
  • 「義賊の春」 - 『富士』1952年2月号(世界社)
  • 「爬虫人間(ホモ・レプチリア)」 - 『妖奇』1952年4月号(オール・ロマンス社)
    • 『探偵実話』1956年8月増刊号(世文社)再録
  • 「蛆」 - 『探偵実話』1952年9月号(世界社)
    • 『探偵実話』1955年3月増刊号(世文社)再録
    • 幻影城』1975年8月号(絃映社)再録
    • 『妖異百物語 第2夜』(出版芸術社ふしぎ文学館、1997年2月)収録
  • 「大陰茎人(ホモ・ステエト)」 - 『妖奇』1952年8月号(オール・ロマンス社)
  • 「狂痴の告白」 - 『探偵実話』1952年11月号(世界社)
  • 「射たぬ拳銃」 - 『トリック』1952年12月号(オール・ロマンス社)
  • 「訣別の朝霧」 - 『トリック』1953年1月号(オール・ロマンス社)
  • 「犬畜生」 - 『探偵実話』1953年1月号(世界社)
  • 「無頼漢」 - 『トリック』1953年2月号(オール・ロマンス社)
  • 「明神礁の謎」 - 『トリック』1953年3月号(オール・ロマンス社)
  • 「針ノ木地蔵」 - 『探偵クラブ』1953年6月号(共榮社)
  • 「涎」 - 『探偵実話』1953年9月号(世界社)
  • 「魔虫」 - 『探偵クラブ』1953年11月号(共榮社)
  • 「演技賞は誰?」 - 『読切小説集別冊・捕物小説まつり記念号』(1953年11月15日、荒木書房新社)
  • 「ブラックの谷」 - 『探偵クラブ 怪奇』1954年1月号(共榮社)
  • 「マリと三人の男」 - 『オール読切』1954年2月号(共榮社)
  • 「コント―2つのコントリーグ戦」(夢座海二と) - 『捕物倶楽部』1954年2月号(荒木書房新社)
  • 「碧い眼」 - 『探偵実話』1954年4月号(世文社)
    • 『「探偵実話」傑作選』(光文社、2003年5月)収録
  • 「異郷の涯」 - 『宝石』1954年5月号(岩谷書店)
  • 「蛞蝓お由」 - 『探偵クラブ 怪奇』1954年5月号(共榮社)
  • 「私は知らない」 - 『探偵実話』1954年6月号(世文社)
  • 「角膜乾燥症」 - 『探偵実話』1954年7月号(世文社)
  • 「軟体人間」 - 『探偵クラブ 怪奇』1954年9月号(共榮社)
  • 「蛞蝓妄想譜」 - 『宝石』1954年10月号(岩谷書店)
    • 『探偵実話』1956年4月増刊号(世文社)再録
    • 『怪奇探偵小説集 幻の傑作ミステリー 続』(双葉社新書、1976年)収録
    • 『怪奇探偵小説集 2』(双葉文庫、1984年7月 / ハルキ文庫版、1998年6月)収録
  • 「壁を這う虫」 - 『探偵実話』1954年10月号(世文社)
  • 「影は消せるか」 - 『探偵クラブ 怪奇』1954年11月号(共榮社)
  • 「私の好きな人々」(エッセイ) - 『読切小説集別冊・捕物小説祭号』(1954年11月15日、荒木書房新社)
  • 「忍耐力コンテスト」 - 『探偵実話』1955年1月号(世文社)
  • 「干からびた幸福」 - 『探偵クラブ 怪奇』1955年2月号(共榮社)
  • 「足」 - 『探偵クラブ 怪奇』1955年3月号(共榮社))
  • 「淪落の舗道」 - 『探偵実話』1955年4月号(世文社)
  • 「白い腋毛」 - 『探偵実話』1955年6月号(世文社)
  • 「阿片と拳銃」 - 『オール読切』1955年7月特大号(共榮社)
  • 「昆虫王国」 - 『探偵クラブ 怪奇』1955年10月号(共榮社)
  • 「蚯蚓の恐怖」 - 『探偵実話』1955年11月号(世文社)
    • 『こんな探偵小説が読みたい 幻の探偵作家を求めて』(晶文社、1992年9月)収録
  • 「怨念」 - 『探偵実話』1955年12月号(世文社)
  • 「ぼく知ってるよ」 - 『探偵実話』1956年1月号(世文社)
  • 「姿なき殺人者」 - 『探偵実話』1956年1月増刊号(世文社)
  • 「ジェット機」 - 『探偵クラブ 怪奇』1956年2月号(共榮社)
  • 「狢の財布」 - 『オール読切』1956年5月特大号(共榮社)
  • 「嬰児」 - 『探偵実話』1956年9月号(世文社)
  • 「女狐」 - 『オール読切』1956年9月特大号(共榮社)
  • 「青岩鍾乳洞」 - 『探偵実話』1956年11月号(世文社)
  • 「姐御の誕生日」 - 『オール読切』1956年12月特大号(共榮社)
  • 「月の雫」(ロバート・マクレア/著、潮寒二/訳) - 『探偵クラブ 怪奇』1957年2月号(共榮社)
  • 「臀舐の島」 - 『探偵実話』1957年5月号(世文社)
  • 「帰らざる刑事」 - 『宝石』1957年7月号(宝石社)
  • 「どぶ鼠」 - 『探偵実話』1957年9月号(世文社)
  • 「ホモ・ハイメノプテラ」 - 『科学小説』第1号(おめがクラブ、1957年11月)
  • 「千里眼と殺人者」 - 『探偵クラブ 怪奇』1957年12月号(共榮社)
  • 「悪夢の宿」 - 『耽奇小説 裏窓臨時増刊5』(久保書店、1958年2月)
  • 「悪魔の申し子」 - 『探偵実話』1958年5月号(世文社)
  • 「性悪女」 - 『探偵実話』1958年6月号(世文社)
  • 「ロケット地球に帰る」 - 『宝石』1958年9月号(宝石社)
  • 「氷壁の宙吊り死体」 - 『探偵クラブ 怪奇』1958年9月号(共榮社)
  • 「人狐」 - 『EQ』1989年8月号(光文社)[9]

(潮寛二 名義)

  • 「金色の地獄」 - 『耽奇小説』1958年9月号(久保書店)
  • 「鱗」 - 『探偵クラブ 怪奇』1958年12月号(共榮社)
  • 「消え失せたオッパイ」 - 『探偵クラブ 怪奇』1959年1月号(共榮社)
  • 「美胡の足」 - 『裏窓』1959年2月号(久保書店)
  • 「砂漠の白髪鬼」 - 『探偵実話』1959年12月号(世文社)
  • 「裏切者」 - 『探偵実話』1960年2月号(世文社)
  • 「肉体は知っている」 - 『探偵実話』1960年12月号(世文社)
  • 「殺人の譜」 - 『探偵実話』1961年2月号(世文社)
  • 「係蹄」 - 『探偵実話』1961年5月号(世文社)

(城崎龍子 名義)

  • 「ハルピンお龍行状記」(全10回)
  1. 「奇妙な義侠心」 - 『探偵実話』1952年10月特大号(世界社)
  2. 「贋札使い」 - 『探偵実話』1952年11月号(世界社)
  3. 「無代進呈」 - 『探偵実話』1952年12月号(世界社)
  4. 「名宝紛失」 - 『探偵実話』1953年新年特大号(世界社)
  5. 「姉御の敗北」 - 『探偵実話』1953年2月号(世界社)
  6. 「"126"の秘密」 - 『探偵実話』1953年3月号(世界社)
  7. 「天保探偵登場」 - 『探偵実話』1953年4月号(世界社)
  8. 「姿なき脅迫者」 - 『探偵実話』1953年5月号(世界社)
  9. 「天保探偵失踪す」 - 『探偵実話』1953年6月号(世界社)
  10. 「姉御の幸福」 - 『探偵実話』1953年7月号(世界社)

(紅東一 名義)

  • 「地獄の番人さん」 - 『耽奇ミステリーよみもの オール読切増刊』第10巻第11号(1958年8月15日、共榮社)
  • 「深夜の対決」 - 『探偵クラブ 怪奇』1958年10月号(共榮社)
  • 「午前零時の男」 - 『探偵クラブ 怪奇』1958年11月号(共榮社)
  • 「無国籍者」 - 『探偵クラブ 怪奇』1959年1月号(共榮社)
  • 「地獄への階段」 - 『探偵クラブ 怪奇』1959年2月号(共榮社)

(浅山健二 名義)

  • 「啜り泣く河」 - 『オール読切』1957年2月号(共榮社)

(海野三平 名義)

  • 「3年目に捕った列車強盗」 - 『探偵クラブ』1958年3月号(共榮社)

(堀井赤万 名義)

  • 「惑星から来た少女」 - 『探偵実話』1958年1月号(世文社)

編纂書

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(飯田武州 名義)

  • 『福岡縣企救郡企救甼土地寶典 地番地積地目賃貸價格等級入圖』(帝國市町村地圖刊行會、1936年)
  • 『静岡縣富士郡富丘村土地寶典 地番地積地目賃貸價格等級入圖』(帝國市町村地圖刊行會、1936年6月)
  • 『愛知縣葉栗郡木曾川甼土地寶典 地番地積地目賃貸價格等級入圖』(帝國市町村地圖刊行會、1937年7月)

脚注

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  1. ^ 『日本幻想作家事典』東雅夫/石堂藍 編、国書刊行会、2009年10月 より。
  2. ^ a b c d e f g 鮎川哲也「実直なグロテスキスト」(『EQ』1989年8月号(光文社)掲載 / 鮎川著『こんな探偵小説が読みたい 幻の探偵作家を求めて』(晶文社、1992年9月) 収録)の記述に拠る。
  3. ^ a b c d 『幻影城』1975年8月号、9頁に拠る。
  4. ^ 古希記念出版。『幻の探偵作家を求めて 完全版 上』(論創ミステリ・ライブラリ、2019年6月)掲載情報に拠る。
  5. ^ 収録作品:「深夜の対決」「午前零時の男」「無国籍者」「地獄への階段」
  6. ^ 収録作品:城崎龍子名義の「ハルピンお龍行状記」全10作に加え、登場人物が共通する潮寒二名義の「女狐」「狢の財布」「姐御の誕生日」「阿片と拳銃」を収録している。善渡爾宗衛/編纂
  7. ^ 『幻影城』1975年8月号、9頁では、掲載誌は『犯罪実話』1949年4月号(駿南社)であったとされる。しかし鮎川哲也「実直なグロテスキスト」(1989年)では、潮寒二による自筆の掲載誌メモを確認した上で『奇談と小説』誌に掲載されたと述べている。
  8. ^ a b 鮎川哲也「実直なグロテスキスト」(1989年)にて、「猿人の血型」と「乳房の蜘蛛」の間に発表されたと述べられている作品。
  9. ^ 同誌によると1955年6月20〜21日に執筆(この時点まで未発表)。

関連項目

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