死のロングウォーク
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『死のロングウォーク』(しのロングウォーク、The Long Walk)は、リチャード・バックマン(スティーヴン・キングの別ペンネーム)の小説。1979年に出版された。キングによると、彼が大学1年生のときに書いた初めての小説だという。
あらすじ
[編集]この節にあるあらすじは作品内容に比して不十分です。 |
近未来のアメリカ合衆国では、年に一度ロングウォークという競技が開催されていた。16歳の少年レイ・ギャラティは母親に引き止められながらも、ロングウォークへの参加を決める。競技が進むにつれて多くの競技参加者(ウォーカー)達は次々に射殺され、競技中は空腹や怪我などによる肉体的な苦痛、また精神的な苦痛に襲われるため、競技は過酷になる。参加した少年のほとんどはロングウォークへの参加を後悔し、ギャラティは家族や恋人との再会を果たすべく優勝を狙う。ロングウォークの競技中では少年同士が友好関係を育み、中には妬みあうような関係になる参加者たちもいる。最終的に主人公のギャラティは優勝するも、すでに精神面で異常をきたしていたため優勝してもなお、競技を続けてしまう。
ロングウォーク
[編集]- 12歳以上18歳までの男子の大半がロングウォークに出場する為のテストを受けるが、パス出来るのは50人に1人。
- 最終的にウォーカー100人、補欠100人の計200人が残される。これは抽選で選ばれ、テレビ中継される。
- ウォーカーと補欠、どちらに選ばれたかは取消日(ロングウォーク開始日前日)が来るまで不明。
- 参加者は5月1日にアメリカとカナダの国境を示す印の石の標柱前(メイン州)に集合。
- 観客の観覧はオールドタウンから規制が解かれる。それまでの沿道の住人は除外。
- オーガスタからはテレビ中継される。
- ルール
- 最低速度は時速4マイル(時速6.4キロメートル)。これを下回ると警告を受ける。休憩は無し。
- 警告は3回まで。4回目には射殺などによりロングウォークから外される。
- 警告を受けてから1時間次の警告を受けなければ、1回分の累積が消滅する。
- 競技はウォーカーが最後の一人になる(99人が死亡する)まで続く。
- 優勝者はどんな賞品でも受け取ることができる。
- ヒント
- その他
登場人物
[編集]ロングウォーク参加者
[編集]- レイ・ギャラティ(47番)Raymond Davis Garraty
- 本作の主人公。もじゃもじゃの髪をした、大柄な少年。16歳でメイン在住。現在は母親との2人暮らし。
- 母親や恋人のジャンに再会したい一心で、仲間たちと共にロングウォークを耐える。
- ピーター・マクヴリーズ(61番) Peter McVries
- 黒髪で浅黒い張り詰めた日焼けした顔に、茶色い瞳が特徴。ギャラティと親しくなり行動を共にし、何度か彼を助ける。片頬の傷跡は恋人とのトラブルで出来たもの。98番目の脱落者。
- ステビンズ(88番)Stebbins
- 金髪の少年でいつもしんがりを歩く。ロングウォーク開始時は無口且つ無表情であった。ロングウォークについて詳しい。
- 実は少佐の実子(私生児)である。本人曰く、ロングウォークの参加者たちの目標になる為に、見せしめとして参加したという。もしも優勝したら、私生児がたくさんいる少佐の正体を暴くべく、「父親の元へ連れていってくれ」と要求するつもりだった。マサチューセッツ州ダンヴァーズまで歩くがギャラティに敗れる。99番目、最後の脱落者。
- アート・ベイカー(3番)Arthur Baker
- 南部出身。いわゆる「赤っ首」と呼ばれる、貧乏白人。優勝したときの賞金を夢見ている。ギャラティと親しくなり、行動を共にする。ゆったりとした、足を引きずるような歩き方で、長い時間を歩き続ける。
- 終盤に転倒し頭を打ったため、鼻血が止まらなくなり、ついに力尽きた。97番目の脱落者。
- ハンク・オルソン(70番)Hank Olson
- 巻き毛で黒鉱石のような目が特徴。口達者。
- ロングウォークの開始前は少佐に冗談を言うなどスタート時は余裕がありそうだったが、徐々に足の不調を訴え、口数が少なくなっていく。ギャラティたちからはすぐに離脱するかと思われていたが、中盤までほぼ意識のないまま執念で歩き続け、最期は何度撃たれても歩こうと身体だけは動いていた。ロングウォーク53番目の脱落者。
- アーロンソン (1番) Aaronson
- 日焼けした、背が低いずんぐりした農家の少年。両足がこむら返りを起こしたため白線上で立ったまま撃たれた。ロングウォーク43番目の脱落者。
- エイブラハム(2番)Abraham
- 背が高いが低音の陰気な声が特徴の少年。非常に丈夫な靴を履いている。終盤まで生き残るが、最期は悪天候の中でなぜかシャツを捨てて歩き、体調を崩して力尽きた。ロングウォーク90番目の脱落者。
- ジェイムス・ベイカー(4番)James Baker
- ギャラティ達が雑談している最中に脱落したウォーカー。13番目の脱落者。
- ゲイリー・バーコヴィッチ(5番)Gary Barkovitch
- ワシントンD.C.出身。小柄で焦げ茶色の目に、尖り気味の鼻で浅黒い張りつめた顔が特徴。口が悪く、「(脱落者たちの)墓の上で踊ってやる」と公言し、憎しみを糧に歩き続ける。特にマクヴリーズからは嫌われている。ロングウォーク68番目の脱落者。
- カーリー(7番)Curley
- 痩せてひょろひょろと細く、真面目そうな角ばったニキビだらけの顔が特徴。頬髯を生やそうとしている。右足の筋肉が硬直し、ロングウォークで最初の脱落者になる。
- デイヴィッドソン (8番) Davidson
- 灰色の目で顔立ちは良いが、額がニキビだらけの少年。25番目の脱落者。
- ユーイング(9番) Ewing
- テキサス出身。アフロヘアーが特徴の黒人。ベイカーと同じバスに乗って来た。
- スニーカーを履いていたばかりに足にまめが出来てしまい、ロングウォークの2番目の脱落者となる。
- フェンター(12番) Fenter
- ロングウォークの6番目の脱落者。
- ロージャー・フェナム (13番) Roger Fenum
- 不運な13番。ロングウォークちょうど50番目離脱の名誉を担った。
- ジョージ・フィールダー George Fielder
- マサチューセッツ州まで歩いたが、精神に異常をきたし力尽きた。ロングウォーク94番目の脱落者。
- パーシー(31番)Percy
- パーシーはファーストネーム。金髪の少年。過保護な母親を持つ。ロングウォークから脱け出そうとコースから離れるが、射殺されてしまう。ロングウォーク32番目の脱落者。
- グリブル(48番) Gribble
- 丸顔で切り上げた黒い前髪がひものように垂れているのが特徴。ギャラティのグループでは過激派の少年。ロングウォーク中、少佐を罵倒する。ロングウォーク30番目に脱落した。
- ハークネス(49番) Harkness
- 眼鏡をかけたクルーカットの少年。ロングウォーク終了後、本を書くために、出場者の名前と番号を尋ねて回っている。脚が硬直し、何とか回復したものの、ロングウォーク31番目に力尽きる。
- ビル・ハフ Bill Hough
- 読みにくい名前を持つ。ロングウォーク95番目の脱落者。
- ジェンセン Jensen
- 雹に見舞われた際にパニックを起こして路肩に出てしまい、撃たれた。ロングウォーク48番目の脱落者。
- クリンガーマン(59番) Klingerman
- フリーポート近くで突然の腹痛に見舞われたが、悲鳴をあげながら歩き続けた。
- ラーソン(60番) Larson
- 最初の急坂で座り込み、兵士に撃たれた。ロングウォークの7番目の脱落者。
- フランク・モーガン(64番) Frank Morgan
- ニコニコして明るい眼鏡をかけた少年。ギャラティが緊張感が無くなっていた時に殺され、彼に正気を取り戻すきっかけを作る。
- スクラム(85番) Scramm
- フェニックス出身。16歳。髪はクルーカットのまん丸い顔立ちで、身体の大きさはヘラジカや牡牛のようと評される。ロングウォーク開始当初から優勝候補と目されていたが、不運にもロングウォーク中に風邪を拗らせて肺炎になってしまう。
- 14歳で学校を中退し、1つ歳上のキャシーという女性と結婚。妻は現在妊娠している。
- コリー・パーカー Collie Parker
- イリノイ州ジョリエット出身。金髪で筋骨隆々の少年。初めはギャラティに嫌味ばかり言っていたが、徐々に友情が芽生える。ロングウォーク終盤で、兵士の隙をついて襲いかかり一人を殺害、ハーフトラックに飛び乗るが、他の兵士にあえなく射殺された。
- ブルース・パスター Bruce Pastor
- ニューハンプシャー州に入った処で力尽きた。ロングウォーク92番目の脱落者。
- ピアソン Pearson
- 長身で、コーラの瓶底のような厚いレンズのはまった、べっこう縁の眼鏡が特徴の少年。ギャラティと親しくなり、更に中盤過ぎまで生き残る。バーコヴィッチが撃たれた後に体調を崩し、脱落した。
- ジョー Joe
- ニューメキシコ出身。ホピ族であり、マイクとは同性愛関係と噂されるが、実際は兄弟である。マイクと共に常に先頭を歩いていたが、ギャラティが脚の硬直から復活した直後に撃たれ、61番目の脱落者となる。
- マイク Mike
- ニューメキシコ出身。ホピ族であり、ジョーとは兄弟である。ジョーと共に常に先頭を歩いていたが、突然の腹痛に見舞われ、既に瀕死だったスクラムと共に脱落する。
- ランク Rank
- ずんぐりした醜い少年。バーコヴィッチに罵倒されたことに逆上し殴りかかったものの、ふらついて倒れ、兵士に殺される。ロングウォーク14番目の脱落者。この一件以降、バーコヴィッチは他の少年たちから、「人殺し」と呼ばれるようになった。
- ボビー・スレッジ Bobby Sledge
- 雨と闇に紛れて群衆の中に逃げ込もうとしたが撃たれた。ロングウォーク84番目の脱落者。
- トーランド Toland
- ロングウォーク最初の坂道で気絶して撃たれた。9番目の脱落者。
- トラヴィン Travin
- ロングウォーク中に下痢をする。ロングウォーク5番目の脱落者。
- タビンズ Tubbins
- 眼鏡をかけ、顔中そばかすだらけで、口数は多くないが感じの良い少年。フリーポートを出たあとで発狂してしまう。ロングウォーク80番目の脱落者。
- マーティ・ワイマン (97番) Marty Wyman
- ギャラティと同じように、おじを分隊に連れて行かれた過去がある。83番目の脱落者。
- ヤニック (98番) Yannick
- ロングウォーク28番目の脱落者。
- ザック (100番) Zuck
- 古い線路跡を渡った際に転んで怪我をする。ロングウォーク4番目の脱落者。
その他
[編集]- 少佐 The Major
- 本作のアメリカの絶対的権力者。
- ジム・ギャラティ
- ギャラティの父親。政府系のトラックの運転手をしていたが、反体制的な発言を隠せない性格だったため、ギャラティが5歳の時に分隊に連行され、それきり消息を絶った。
- ジャン(ジャニス)
- レイ・ギャラティのガールフレンド。恋人のギャラティがロングウォークに参加することを最後まで反対していた。
- プリシラ
- ピーター・マクヴリーズの元ガールフレンド。彼の頬に喧嘩の末に傷をつけた。事件以降、マクヴリーズとは疎遠になっている。
実写映画
[編集]2018年4月にニュー・ライン・シネマより実写映画化の制作が発表された。2007年まではフランク・ダラボンが映画権を持っていたが立ち消えとなり、その後ジェームズ・ヴァンダービルトとブラッドリー・J・フィッシャーのタッグに引き続がれた。
2019年5月にはジェームズ・ヴァンダービルトが製作・脚本、アンドレ・ウーヴレダルが監督を務めることが発表された。しかしその後ウーヴレダルも降板、2023年にフランシス・ローレンスが監督を務めることが発表され、製作スタジオもライオンズゲート・フィルムズに変更された。
2024年6月にはキャスティングがされ、7月より撮影も開始された。
その他
[編集]- サタデーバリューフィーバー:日本テレビのバラエティ番組。2007年9月1日にこの小説を基にした番組「ロングウォーク〜生きるために歩き続ける〜」を放送。番組では2人一組のウォーカー14人が背中に模擬爆弾を装着して歩き続け、警告累積2回で爆弾が破裂し、死亡認定される。
- バトル・ロワイアル:高見広春の小説。この作品を下敷きにしている[1][要ページ番号]。
- 新自由主義との関係:木澤佐登志はこの作品が出版された1979年が、マーガレット・サッチャーの首相就任の年であることを引き合いに、のちに台頭するサッチャリズムやレーガノミクスの「苛烈な弱肉強食の時代」との関連性を指摘しており、「到来を予見した書」とも評している[2]
脚注
[編集]- ^ 高見 広春, 「バトル・ロワイアル」制作委員会, ギンティ小林 「バトル・ロワイアル・インサイダー」(太田出版)
- ^ 中央公論.jp 木澤佐登志「加速する社会に抗うために」https://chuokoron.jp/society/122038.html