コンテンツにスキップ

武蔵野水滸伝

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
武蔵野水滸伝
著者 山田風太郎
発行日 1974年
ジャンル 時代小説
前作 忍法創世記
次作 柳生十兵衛死す
ウィキポータル 文学
[ ウィキデータ項目を編集 ]
テンプレートを表示

武蔵野水滸伝』(むさしのすいこでん)は、山田風太郎の時代小説。1974年に発表された忍法帖シリーズの第27長編[1]

物語

[編集]

天保時代、新たな関八州取締役の選抜が行われ、名高い剣豪が候補に挙がる。候補は16名、なれるのは8名。立ち会い勝った者が関八州取締役になれる。ところが、試験の会場に南無扇子丸という奇怪な人物が乱入した。

登場人物

[編集]

取締役人

[編集]
  • 遠山銀四郎 - 主人公。関八州取締役の元締め。「桜吹雪の金さん」こと北町奉行遠山左衛門尉の息子。
  • お耀 - 南町奉行の息女。銀四郎に惹かれている。

幻法使い

[編集]
  • 南無扇子丸 - 「幻法知行散乱」を使う妖艶な若衆。男女問わず相手と入れ替わる事ができる為、老衰から逃れ江戸開闢から半永久の時を生きる。

任侠

[編集]

剣豪

[編集]
  • 島田虎之助 - 儒教を取り入れた直心影流の剣士。
  • 大石進 - 5尺3寸の長竹刀を使用。強烈な突きを得意とする。
  • 勝小吉(惟寅) - 勝海舟の父。着道楽で、喧嘩を好んだが、『夢酔独言』などの著作もある。
  • 男谷精一郎 - 勝海舟の従兄弟。温厚な人格者で「君子の剣」と称される。麻布の米沢新田藩江戸藩邸近くに屋敷があり道場も開く。
  • 平手造酒 - 酒乱で病気(胸の病)持ちの剣豪。香取の名主宅に道場を開いていた。
  • 千葉周作 - 「技の千葉」。竹刀と防具を用いた打ち込み稽古を重視。北辰一刀流
  • 千葉奇蘇太郎 - 千葉周作の長男。弟に千葉栄次郎らがいる。
  • 斎藤弥九郎 - 「力の斎藤」。強かに渾身の一撃のみを一本として、技ありを採らない。
  • 斎藤新太郎 - 斎藤弥九郎の長男。父より剣術を学び、文学、書画にも秀でていた。神道無念流の立居合も使う。
  • 桃井春蔵 - 「位の桃井」。品格第一の教義を旨とした。
  • 伊庭軍兵衛 - 「家の伊庭」[3]。心形刀流中興の祖。道場「練武館」は老中・大名も門人となった。
  • 浅利又七郎 - 中西派一刀流小浜藩江戸屋敷の剣術指南役。
  • 高柳又四郎 - 「音無しの剣」の使い手。大石進の「長竹刀」に対し、「器械には器械を以て対す」と嘯き、直径が1尺2寸もある鍔で対決する。
  • 樋口十郎左衛門 - 馬庭念流。桃山時代に樋口定次が興した念流を元に、剣術を中心に長刀術(薙刀術)、槍術も伝える古武道の流派。
  • 物外(拳骨和尚) - 曹洞宗の僧侶、武術家。特に鎖鎌柔術を得意とする。
  • 秋山要助 - 扶桑念流(扶桑無念流)の祖。佐野水戸、伊勢崎など各地に道場を開いた。

その他

[編集]
  • 勝義邦 - 若き日の麟太郎(勝海舟)。若山勿堂から山鹿流兵学を習んでいる。生家は旧・吉良義央邸に近い。
  • 海女のお伏 - 時間を超越する扇子丸の前に立ちはだかるラスボス。

作品の題材・原典

[編集]

特徴

[編集]
  • 作中に「幻法」が登場するのは本作と『飛騨忍法帖(飛騨幻法帖)』のみである。

書誌情報

[編集]

脚注

[編集]
  1. ^ 忍法帖シリーズに含めない場合もあるが、作者自身は、対談で「忍法帖」と扱い、さらに採点(評価はC)もしている。
  2. ^ 『実録天保水滸伝』、p.33.(野口政司著、1973年)
  3. ^ 開祖・伊庭是水軒が実子に限らず優秀な人物に剣術を伝える家法を残した事から。