樹皮紙
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樹皮紙(じゅひし)は、カジノキなどの木の生皮をビーター(石棒)で打って叩き延ばして作る紙である。
概要
[編集]「樹皮紙」とは、木の皮をたたきのばしたシートであり、繊維を水に分散させたものを漉きあげるという定義を墨守すれば「紙」でないともいいうる。樹皮紙は文字を記す書写材料、いわゆる紙としての用途だけでなく、衣服の素材として、神聖な儀式で用いるものとして、「布」のような用途も持っており、古代では、「紙」と「布」はとても近い存在であり、原料も、製作道具も同じであった[1]。インドネシアでも、白い樹皮を敲打して作った「樹皮紙」と「樹皮布」に同じ語彙が混用されてきた[2]。
特徴
[編集]樹皮紙は透かし模様に適しており、非常に薄く作ることができる。インドネシアのワヤンベベール(樹皮紙絵巻物劇)で用いられている樹皮紙はたいへん薄く、絵が透けて見えるのでダラン(語り手)は絵を裏側から見て語りを行うことができる一方、観客は表側から絵巻を見るので、ダランの顔は見えない[3]。
歴史
[編集]世界最古とされる樹皮布/樹皮紙製作用の石器ビーターは、中国の深圳地域の遺跡から出土しており、7000年前頃のものと言われている。マカオに近い中国の宝鏡遺跡から出土した4000年前頃のものとされる透かし模様加工用と思われるユニークな形状のビーターが2012年に公開された[4]。日本に伝わっている樹皮紙製本としては、唐初時代に書写された古文尚書巻第三夏書禹貢篇(首欠)(国宝)等がある[5]。
脚注
[編集]- ^ “展示案内「新石器時代から花開いたアジアの樹皮紙Beaten Bark Paperの美」”. 紙の博物館. 2014年1月13日閲覧。
- ^ 坂本 (2013)、8頁。
- ^ 坂本勇. “今もジャワに伝わる樹皮紙絵巻物”. 筑波技術大学. 2014年1月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年1月13日閲覧。
- ^ 坂本 (2013)、9頁。
- ^ “財団法人 東洋文庫 所蔵 岩崎文庫 善本 画像データベース”. 東洋文庫. 2014年1月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年1月13日閲覧。
参考文献
[編集]- 坂本勇「南の「海のシルクロード」の紙」(PDF)『鴨東通信』第92巻、思文閣出版、2013年12月。
関連文献
[編集]- 坂本勇「樹皮紙通信 (2) 透かし模様の石器ビーターをナプ渓谷に追って」『百万塔』紙の博物館、2010年10月、137号、87-91頁。NAID 40017371199。