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宮内菜

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

宮内菜(みやうちな)、別名芯摘菜(しんつみな)[1]は、アブラナ科アブラナ属の野菜。かき菜の一種で[2]、発祥の地は群馬県前橋市[3]

沿革

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昭和30年(1955年)頃の芳賀村(現・前橋市)の農業はコメ・ムギの生産が主体であったが、野菜類の出荷は貴重な現金収入の手段であった。平成5年の『芳賀の町誌』によると、トマト、キュウリ、ナス、ダイコン、ネギ、ジャガイモなどが栽培されていた[4]。昭和31年の『芳賀村誌』にも、水田稲作の裏作に菜種を栽培することがあったと記述がある[5]

ところが、冬から春にかけての現金収入が少なくなるのは農家にとって悩みの種であった。前橋市小神明町の農家・宮内禎一[6]は、いろいろ考えた末「芯つみ菜」の種子を全国から集めて栽培を開始した。すぐに花が咲いてしまい、長い間収穫できるものは見つからなかったので自ら作出しようと取り組み始めた。一応満足できるものが出来ると市場に出したが、3年目あたりから注目を集め、高値で取引された。このため「八百屋殺しの菜っぱ」と呼ばれたこともある[4]

小神明町の近隣の農家も生産するようになり、「宮内の菜っぱ」はいつしか「神明の菜っぱ」と呼ばれていた。現金収入の少ない春をしのげることから「春しのぎ」とも呼ばれた。そんなある日、用事があって立ち寄った役人にこの菜っぱを出したところ、興味を持たれた。これがきっかけとなりカネコ種苗の知るところとなる。カネコ種苗の指導のもと、農林水産省に種苗名称登録の申請をしたところ、3年の審査を経て1974年2月、農林水産省種苗名称登録256号として正式に登録された。栽培を開始してから18年が経過していた[4]。なお、『上毛新聞』によると種子を商品化したのは1972年である[6]

利用

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宮内菜は晩生で、3月下旬から5月まで長い間収穫できる[7]。春の葉物にありがちな苦みよりも甘みがまさり、アクは少ない。おひたし、胡麻和え、一夜漬け、炒め物、味噌汁などに利用される。ビタミンCやカルシウムを豊富に含む[6]

脚注

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出典

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  1. ^ 「<<季節を味わう 野菜ソムリエとともに (58)>>菜花 茎、葉の食感楽しむ」『上毛新聞』2021年3月18日、13面。
  2. ^ 根岸敦生「(お前はまだキタカントウを知らない) かき菜 佐野市」『朝日新聞』2021年3月6日、栃木全県・朝刊、24面。2025年1月28日閲覧。
  3. ^ 「栽培方法や肥料説明 農家と消費者が交流」『上毛新聞』2016年4月22日、19面。
  4. ^ a b c 芳賀の町誌 1993, p. 387.
  5. ^ 芳賀村誌編纂委員会 編『芳賀村誌』前橋市芳賀出張所、前橋市勝沢町、1956年7月10日、199頁。doi:10.11501/2988974 
  6. ^ a b c 北沢 2023, p. 25.
  7. ^ 芳賀の町誌 1993, p. 388.

参考文献

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  • 芳賀村誌改訂並びに町誌編纂委員会, 芳賀地区自治会連合会 編『芳賀村誌 芳賀の町誌』1993年9月1日、387-388頁。 
  • 北沢彩「<<美味!!ブランド>>宮内菜 甘みが勝る“万能選手”」『上毛新聞』2023年4月21日、25面。