大谷ハラスメント
大谷ハラスメント(おおたにハラスメント)は、大谷翔平に関する報道やプロモーションなどの過剰さを揶揄した言葉。略して、大ハラもしくは谷ハラとも。大谷に限定せず、野球の過剰報道などに対する「野球ハラスメント」という語も存在する。大谷ハラスメントはあくまでメディアと視聴者の間の問題であり、大谷や所属チームのドジャースは関与していない。また、「大谷ファンが野球に興味のない人に大谷の話を執拗にして困らせる」などでない限り、特定の誰かが不利益を被っているわけではない点で、パワーハラスメントなどのハラスメントとは異なる。
概要
大谷翔平は現在ロサンゼルス・ドジャースでメジャーリーガーとして活躍しており、日本のメディアでも大谷翔平に関する報道が連日行われている。さらに、2024年には結婚および妻・ペットのデコピン・通訳の水原一平に関する報道が連日行われた。一方で、大谷翔平に関するニュースを長時間にわたり何度も取り上げたり、最重要かのように番組の最初で取り上げたりするメディアもあり[1]、2024年2月下旬ごろからこうした報道に対し、一部の番組の視聴者やネットユーザーらが辟易するようになり、「大谷ハラスメント」の語が出現した[2]。連日の報道や大谷のファンたちによる「大谷を好きでいて当たり前」という風潮に、興味がない人たちは嫌気が差しているという[2]。2024年3月の現代ビジネスの記事で、20代の会社員の女性は、「職場では挨拶代わりに大谷さんの話が出てきます。上司の会話の糸口が大谷さんしかないのか、というくらい。大谷さんが結婚したら『悔しいでしょう』と言われ、まったく悔しくもなんともないのですが、ロスみたいなことを言わないと納得してもらえない。大谷さんを悪く言ったら変な女扱いされるんです」と語っている[2]。
経緯
2024年2月29日、大谷は自身のインスタグラムにて結婚を発表。衆院政治倫理審査会を中継していたNHKは、放送中にテロップを表示し、大谷の結婚を速報で報じた。これについて翌3月1日、ジャーナリストの青木理は、文化放送「大竹まことゴールデンラジオ!」内にて、「政倫審の最中にあのテロップを出せって言ったね、申し訳ないけどNHKの報道の人のセンスにはちょっと疑問だなと思いましたけどね」と苦言を呈した。さらに、「みなさん関心があるのは分かるんだけど、いやいやちょっと…メディアとしてのプライドというかね」と、さも政治報道に優先するかのように大谷の話題を取り上げるメディアの報道姿勢について疑問を呈した[3]。
カンテレ「旬感LIVE とれたてっ!」に出演したタレントの小籔千豊は、大谷の結婚について意見を求められた際、「大谷さんのことは大好きですけど、結婚、そしてお相手のことに関しては興味を持たないように決めていますので、あんまり根掘り葉掘り探って、報道陣の私利私欲によって、大谷さんのストレスがたまり、バッティングが狂うなんてことはあってはならないと思っております」と述べ、過剰な報道のあり方のみならず、大谷のプライバシーまでをも侵しかねない報道姿勢について、抗弁した[4]。
なお、大谷は結婚発表のコメントにて
いつも温かい応援をいただきありがとうございます。
シーズンも近づいておりますが 本日は皆さまに結婚いたしました事を ご報告させていただきます。
(中略)
お相手は日本人女性です。 明日の囲み取材で対応をさせていただきますので 今後も両親族を含め無許可での取材等は お控えいただきますよう宜しくお願い申し上げます。
と記しており、自身や親族に関する報道について節度を持つよう暗に求めていた。さらに、取材に応じた大谷は、結婚を発表した理由を問われると、「皆さん(報道陣)がうるさいので」と述べ[5]、自身をめぐる度を越した報道について、自らも苦慮していることを打ち明けた。
同年10月1日、フリーアナウンサーの徳光和夫は、ニッポン放送「徳光和夫とくモリ!歌謡サタデー」に生出演した際、メディア各社の報道姿勢について「あまりにも日本で報道し過ぎるんでね。もうちょっと日本のプロ野球をつぶさにやってもらいたいなと思うんであります。勝敗のスーパーだけで終わっちゃうこともあるんで。メジャーリーグをやたらやるんだけどそんなにみなさん関心あるかね」と指摘した。大谷の活躍を報じることには、「それじゃぁ野球じゃないじゃん。大谷だけのニュースでしょ。俺はそれを言いたいんです。ただ記録だけとか活躍している姿だけだったらスポーツのニュースじゃないんじゃないかなと思えてなりません」と訴えた[6]。
同年10月4日放送の日テレ系News zero内にて大谷の話題が取り上げられた際、番組に出演していたプロボクサーの那須川天心は、キャスターから「毎日のように報道されていましたけれども同じアスリートとしてはどういう気持ちで見ていましたか」と問われたのに対して、「テレビつければ大谷翔平じゃないですか。みんなどうなんですか、飽きちゃわないですかね?」と答え、加熱するメディア報道に対して異議を唱えた[7]。
同年10月21日には日本テレビがドジャースとメッツの試合の再放送で、同日放送予定だった『しゃべくり007』や『月曜から夜ふかし』の放送が中止された。10月26日には、フジテレビでドジャースとヤンキースによるワールドシリーズ第1戦が放送されたが、午前中に放送された試合のダイジェスト版としての再放送で、同日放送予定だった『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』の放送が中止された。こうした放送内容に対して、
午前中に放送されたばかりなのに夜の再放送は必要なのか
日本シリーズにアメリカの試合を競合させるのはよくない
緊急性のない再放送でレギュラー番組を放送休止する必然性はあるのか
実際そんなに視聴率は獲れないだろう
などの声があがり、「大谷ハラスメント」として一部で批判を浴びた[8]。現に当放送は、日テレもフジも期待したほどの視聴率を獲得することができず、「大谷選手に便乗しすぎ」という批判を正当化するような形になった[9]。
10月22日放送のテレビ朝日系列モーニングショーは、本来放送予定だった台湾有事関連の報道を先送りし、大谷が所属するドジャースのワールドシリーズ進出を特集。国際情勢より、メジャーリーグを優先した[10]。
このように、他の競技も含め国内外で活躍しているアスリートは多いうえに、事件・事故・災害・選挙などのニュースもあるにもかかわらず、各番組の構成が大谷に偏るなどバランスを欠いていることについて辟易する声があがっている[11]。
背景
2024年5月、日本テレビとフジテレビが、大谷が購入したとされる豪邸周辺の空撮映像の使用や、自宅付近からの中継、近所へのインタビュー取材などを行ったところ、これが炎上。大谷本人にとっても看過できるものではなく、2局はドジャースから「メディア資格取り消し」を通達され、事実上の“出禁”状態となった。
フジテレビは、こうした事態の再発防止のため大谷を持ち上げているとの見方がある[8]。また、同局系列の情報番組「Live News イット!」は、視聴率が伸び悩んでいる事情もあり、数字が見込める大谷のニュースを扱うことで、視聴率アップにつなげたいという狙いがあったという[12]。
木村隆志は、大谷ハラスメントについて「テレビ局としても大谷選手をフィーチャーすることはビジネス上の戦略であるうえに、特定の誰かに明確な損害を与えているわけでもなく、よほど批判の声が増えない限り、対応を変えないでしょう」と分析するとともに、「より利益につながりそうな選択をするのはビジネス上、当然の行為」としつつも、「メディアとしての信頼性が薄れかねないリスク」を感じさせるものとして警鐘を鳴らしている[11]。
大谷ハラスメント・ハラスメント
一方で、野球嫌いなどから、適切な範囲の報道や、アニメの野球シーンにも嫌悪感を示す人もおり[13]、「大谷ハラスメント」のハラスメントであるとして大谷ハラスメント・ハラスメントと呼ばれる。
脚注
出典
- ^ “大谷翔平「大谷ハラスメントvs大谷ハラスメント・ハラスメント」歴史的活躍のウラで勃発した争いの正体”. 週刊女性PRIME (2024年10月28日). 2024年10月28日閲覧。
- ^ a b c “「大谷ハラスメント」を知っていますか? 試合以外でもNEWS、SNS、プロモーション…毎日流れる大谷翔平に「うんざりする人々」の本音(週刊現代) @gendai_biz”. 現代ビジネス (2024年3月28日). 2024年10月28日閲覧。
- ^ “青木理氏がNHKに苦言〝大谷翔平結婚〟を政倫審の中継中に速報「センスちょっと疑問」”. 東スポWEB (2024年3月1日). 2024年11月1日閲覧。
- ^ “小籔千豊 過熱する大谷結婚報道に苦言「報道陣の私利私欲でバッティングが狂うなんてあってならない」会見質疑に全ツッコミ”. 東スポWEB (2024年3月1日). 2024年11月1日閲覧。
- ^ “大谷翔平、結婚発表は「皆さんがうるさいので」と報道陣にニヤリ…移籍に影響せず「どこに行っても来るという感じ」”. 読売新聞 (2024年3月1日). 2024年11月2日閲覧。
- ^ “徳光和夫さん、大谷翔平の報道に苦言「あまりにもし過ぎる…もうちょっと日本のプロ野球をやってもらいたい」”. スポーツ報知 (2024年10月1日). 2024年11月1日閲覧。
- ^ “「テレビつけたら大谷選手ばっかで飽きないですか?」那須川天心の正直コメントにSNSでさまざまな反応”. まいどなニュース (2024年10月8日). 2024年11月1日閲覧。
- ^ a b “「みんなが大谷見たいわけじゃない」フジテレビ、ドジャース戦再放送で『ドッキリGP』中止…日テレに続く “大谷ハラスメント” に大ブーイング(SmartFLASH)”. Yahoo!ニュース. 2024年10月28日閲覧。
- ^ “夜の再放送は「ニーズ」か「やりすぎ」か…大谷翔平出場のワールドシリーズ中継をめぐるテレビの思惑と課題”. マイナビニュース (2024年10月29日). 2024年11月1日閲覧。
- ^ “モーニングショー大谷翔平1時間特集で「台湾有事の話は先送りになりました」放送準備も試合経過で「スタッフ揺れました」”. デイリースポーツ (2024年10月22日). 2024年11月2日閲覧。
- ^ a b “「大谷ハラスメント」と騒ぐ人たちに欠けた視点”. 東洋経済オンライン (2024年10月26日). 2024年10月28日閲覧。
- ^ “大谷取材で“出禁”報道のフジテレビ 過剰取材に駆り立てた“肝いり情報番組”の不振”. 女性自身 (2024年6月13日). 2024年11月1日閲覧。
- ^ “大谷翔平「大谷ハラスメントvs大谷ハラスメント・ハラスメント」歴史的活躍のウラで勃発した争いの正体”. 週刊女性PRIME (2024年10月28日). 2024年10月28日閲覧。