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埖渡

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
埖渡
埖渡地区の航空写真。
埖渡地区の航空写真。
埖渡の位置(青森県内)
埖渡
埖渡
北緯40度27分26.1秒 東経141度23分44.5秒 / 北緯40.457250度 東経141.395694度 / 40.457250; 141.395694
日本の旗 日本
都道府県 青森県
三戸郡
南部町
面積
 • 合計 6.467 km2
人口
 • 合計 1,019人
 • 密度 160人/km2
等時帯 UTC+9 (日本標準時)
郵便番号
039-0814

埖渡(ごみわたり)は青森県三戸郡南部町に位置する大字である。郵便番号は039-0814[1]2010年平成22年)10月1日時点で人口は323世帯1019人、面積は6.247平方キロメートル[2]1889年明治22年)4月1日三戸郡田部村が発足するまでは同郡埖渡村であった地域である[3]

地理

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八戸市市街地南西、馬淵川右岸内陸部の山地に位置している[4]南部町立福田小学校および南部町立福地中学校の校区に属する。1868年(明治元年)の『新撰陸奥国誌』には「小渓を挿み、高窪の地に住す。土地は下之下。田園共に少し」と記されている[4]

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大字埖渡には以下の字が存在する。

地名

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埖渡地区農村公園の案内看板。

JIS X 0208に収録される「埖」の漢字は、国土行政区画総覧に掲載されたこの地名を典拠とするものである[5]

「埖渡」という地名、および「埖」という漢字の由来は明らかになっていないが、渡し船に乗り降りするときに、当初は挨拶して渡ったということから、「挨渡し」(あいわたし)と呼ばれていたものが変化して「埃渡し」となり、それが現在の「埖渡」になったという説[6][7]、かつて「埖」はグミを表す漢字として用いられており、 それがなまって「ごみ」という読み方になったという説[7]、などが知られるほか、和製漢字研究者である大原望は『和製漢字の辞典2014』において「字源説としては、埃が花のように舞う様から作られたとするものがあるが、『垝』などの漢字を崩したものを、再び楷書化してできた文字とも考えられる」と記している[8]早稲田大学社会科学部社会科学総合学術院教授の笹原宏之はこの漢字について「『塵』の崩しが『⿱花土』と似るため、それがバランスをとって偏と旁に配置されたものであろう」としている[9]

「埖」という漢字を用いる地名としては他に岩手県岩手郡滝沢村大釜字埖溜(北緯39度42分37.7秒 東経141度2分7.7秒 / 北緯39.710472度 東経141.035472度 / 39.710472; 141.035472)、同県遠野市宮守町下鱒沢埖淵(北緯39度19分50.5秒 東経141度21分41.3秒 / 北緯39.330694度 東経141.361472度 / 39.330694; 141.361472)などがあり、この内前者は『増補改訂JIS漢字字典』に用例のひとつとして記載されていたが[10]、土地の所有者からの要請を受ける形で2014年1月1日の市制移行時に地名が「大釜大清水東」に変更された[11][12]

歴史

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縄文時代の遺跡であるカッテウ遺跡[13]、長地嶺遺跡[14]、埖渡遺跡[15]のほか縄文時代および平安時代の遺跡である放森遺跡が存在する[16]。馬淵川にのぞむ河岸段丘には平館跡があり、これは小笠原氏一族である上野氏の居館であったとされている[17][18]1982年昭和57年)時点では館跡の東西にの痕跡らしきものが見られたが、南は耕地化されて原型をとどめていなかったとされる[19]

江戸期当初、埖渡村は盛岡藩に属していたが1664年寛文4年)、八戸藩の創設とともに同藩領に移行している[4][注 1]1697年(元禄10年)の郷村御内所高帳には杉沢村の枝村として村名が掲載されており、石高157.849石、うち畑112.579石とある[4]1696年元禄9年)4月、凶作のため埖渡村の蔵入百姓98名が渇命となり、味噌60貫目の下付を申し出て許されている[20]名久井通に属していた[4]1749年寛延2年)より、八戸藩領内ではの繁殖により耕地が荒廃し、そのため凶作となっていた(猪飢饉)が、翌々年の1751年宝暦元年)2月から6月にかけ、当村の百姓が30匹を射止め、藩より報奨されている[4][3]。『正保郷村帳』『天保郷村帳』には当村名は見えない[3]

明治時代に作成された旧高旧領取調帳には埖渡村の石高が135.198石、と記載されている[19][21]1871年(明治4年)に埖渡村は八戸県弘前県を経て青森県の所管となった[3]1876年(明治9年)には村内に椛木、杉ノ沢、埖渡三村連合埖渡小学校が開校したが1880年(明治13年)には杉沢村木戸口に移転、1886年(明治19年)には杉沢簡易小学校と改名された[3]。埖渡村は連合から離脱し、埖渡八番佐々木甚太郎所有地に校舎を新築し、埖渡簡易小学校を発足させた[3]。埖渡小学校は1949年昭和24年)に杉沢尋常小学校に統合されるも、翌1950年(昭和25年)に埖渡尋常小学校として分離、1984年(昭和59年)に統合福田小学校に併合された[3]

沿革

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  • 1889年(明治22年)4月1日 - 町村制施行に伴い田部村が発足、三戸郡田部村埖渡となる。
  • 1955年(昭和30年)4月1日 - 地引村、田部村が合併し福地村発足、三戸郡福地村埖渡となる。
  • 2006年(平成18年)1月1日 - 南部町、名川町、福地村が合併し南部町発足、三戸郡南部町埖渡となる。

人口の推移

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総数 [戸数または世帯数: 、人口: ]

1879年(明治12年) 49戸
363人[3]
1980年(昭和50年) 74戸
370人[3]
2010年(平成22年) 323戸
1019人[2]

生活

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交通

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南部バスが運行している[22]

施設

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字鮫ノ口に八戸家畜市場[23]、字佐伝窪にサーキットであるモーターランドSP[24]などが存在する。

注釈・出典

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注釈

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  1. ^ 『角川日本地名大辞典』は寛文5年の出来事とする。

出典

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  1. ^ 日本郵便. “青森県 > 三戸郡南部町の郵便番号一覧 - 日本郵便”. 2017年1月25日閲覧。
  2. ^ a b 青森県三戸郡南部町大字埖渡 - 人口総数及び世帯総数 | 人口統計ラボ”. 2017年1月25日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i 平凡社地方資料センター 1982, p. 382.
  4. ^ a b c d e f 「角川日本地名大辞典」編纂委員会 1985, p. 99.
  5. ^ 池田証寿. “国土行政区画総覧典拠のJIS漢字”. 北海道大学. 2022年8月14日閲覧。
  6. ^ 菅原 1993, p. 21.
  7. ^ a b 池田証寿. “JISの地名字(1)---埖[52-34]”. 北海道大学. 2022年8月14日閲覧。
  8. ^ 大原望. “日本語を読むための漢字辞典 『和製漢字の辞典2014 土部』”. 2017年2月4日閲覧。
  9. ^ 笹原 2013, p. 44.
  10. ^ 大原望. “日本語を読むための漢字辞典 和製漢字の小辞典”. 2017年2月4日閲覧。
  11. ^ 日本基盤データベース. “岩手県岩手郡滝沢村の市制施行による住所変更 2014年1月実施 - 住所データ・郵便番号データの日本基盤データベース”. 2017年2月4日閲覧。
  12. ^ 滝沢市. “滝沢市 第2回滝沢村総合計画審議会会議録”. 2017年2月4日閲覧。 “・(回答)事務局 : 一つの例といたしましては、大釜に「埖溜(ごみたまり)」という小字がございます。先日、所有者が役場にいらっしゃいまして、住宅はないのですが、そこで農作物を作っている人が農作物のイメージが非常に悪いということをおっしゃっていまして、市になるにあたって埖溜を新しい別の名称にしたいというお考えでありました。
  13. ^ カッテウ遺跡/カツテウ遺跡:遺跡ウォーカー”. 2017年2月4日閲覧。
  14. ^ 長地嶺遺跡:遺跡ウォーカー”. 2017年2月4日閲覧。
  15. ^ 埖渡遺跡:遺跡ウォーカー”. 2017年2月4日閲覧。
  16. ^ 放森遺跡:遺跡ウォーカー”. 2017年2月4日閲覧。
  17. ^ 館遺跡/平館:遺跡ウォーカー”. 2017年2月4日閲覧。
  18. ^ 「角川日本地名大辞典」編纂委員会 1985, p. 98.
  19. ^ a b 平凡社地方資料センター 1982, p. 381.
  20. ^ 平凡社地方資料センター 1982, pp. 381f.
  21. ^ 国立歴史民俗博物館. “旧高旧領取調帳データベースの検索結果(詳細)”. 2017年2月4日閲覧。
  22. ^ 南部バス. “平成28年10月1日現在 南部バス路線図” (PDF). 2017年2月5日閲覧。
  23. ^ 青森県軽種馬生産農業協同組合. “八戸家畜市場(八戸畜産農業協同組合内)”. 2017年2月5日閲覧。
  24. ^ モーターランドSP -青森県のサーキット-”. 2017年2月5日閲覧。

参考文献

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  • 菅原義三『国字の字典』東京堂出版、1993年。ISBN 4490102798 
  • 笹原宏之『方言漢字』角川学芸出版、2013年。ISBN 4047035203 
  • 平凡社地方資料センター『日本歴史地名大系』 2(青森県の地名)、平凡社、1982年。ISBN 4582490344 
  • 「角川日本地名大辞典」編纂委員会 編『角川日本地名大辞典』 2(青森県)、角川書店、1985年。ISBN 4040010205