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休養王座

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

休養王座(きゅうようおうざ)は休暇王座(きゅうかおうざ)とも呼ばれ、プロボクシングの世界王者(通常は正規王者であるが、まれにスーパー王者暫定王者の場合もある)が長期にわたって戦線を離脱し、休養王者: champion in recess、別名:休暇王者)として認定された場合に与えられる王座である。

定義

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世界ボクシング協会(WBA)では、世界王者が医学的、法的、その他の正当な理由で一定期間内にタイトルを防衛することができない場合、戦線を離脱した王者を休養王者と指定した上で、WBAチャンピオンシップ委員会がWBAルールC.22-24の下に暫定王座を争う公認の選手を指名することがある[1]

世界ボクシング評議会(WBC)では、正規王者が医学的な理由で半年間を超えて戦線を離脱する場合に認定される。休養王者が戦線に復帰する際は、正規王者との対戦が優先され、正規王者が不在の場合には上位ランカーと王座決定戦を行い、正規王者を定める[2]

WBAルールにおける休養王座

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最も多くの休養王者を認定しているWBAは、同団体における休養王座を以下の通り規定している[1]

医学的な理由による場合はWBA医事委員会の委員長の同意が得られるように文書を提出する必要があり、同委員長は別途、健康診断を要求することができる。法的な理由による場合はWBA法務理事およびWBAチャンピオンシップ委員会の同意に足る文書を提出する。一般的には、休養王者の地位は適切な防衛期間より長引くことはない(WBAルールC.22)。
いずれの理由による場合も、休養王者がチャンピオンシップ委員会委員長の同意を得て復帰する際、WBAは休養王者に暫定王者、あるいは(暫定王者が存在しない場合などに)委員会によって指定された別のボクサーとのタイトルマッチを命じることがある。医学的な理由による場合には、チャンピオンシップ委員会委員長は医事委員会委員長と意見を交換したり、文書の提出や受診を要求したりすることがある。休養王者が6か月以上戦線を離脱する時には、暫定王者は、暫定王座を獲得した日から6か月以内に防衛戦としてチャンピオンシップ委員会に指定されたボクサーと指名試合を命じられることがある。休養王者は休養王者としてタイトルを防衛することは許されず、暫定王者以外と対戦するとその地位を失うことがある(WBAルールC.23)。
休養王者あるいは暫定王者のいずれかが統一戦を拒否すれば、その王者はタイトルを失い、他方の王者がその階級の正規王者に認定される。両者が拒否すれば双方がタイトルを失う(WBAルールC.24)。
統一戦の興行権が入札となった場合、休養王者と暫定王者のファイトマネーは55:45の比率で支払われる(WBAルールD.9-c、D.14-c)。

上記のルールでは、休養王座の他に、同時に正規王座を設けることは明文化されていないが、実際には休養王座・正規王座・暫定王座が併置されることがある。2012年4月開催の休養王者・清水智信と正規王者・テーパリット・ゴーキャットジムの統一戦では、結果が引き分けとなった場合、両者を正規王者として並立させ、互いに次の試合での再戦を義務付ける方針が発表されている[3]

これまでの事例

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国際ボクシング連盟(IBF)ではテロン・ミレット[4]、世界ボクシング評議会 (WBC) ではロイ・ジョーンズ・ジュニア[5]エドウィン・バレロ[6]ミッケル・ケスラー[7]イスラエル・バスケス[8]ティモシー・ブラッドリー[9][10]エリオ・ロハス[11][12]テレンス・クロフォード[13]レイ・バルガス、世界ボクシング協会 (WBA) ではノエル・アランブレット[14]トラヴィス・シムズ[15]ルスラン・チャガエフ[16][17]ブライム・アスロウム[18][19]クリス・ジョン[20]アンセルモ・モレノ[21]ファン・カルロス・レベコ[22]、清水智信[23]亀田興毅[24]の事例を生んでいる。これらの事例によれば、暫定王者(ファン・カルロス・レベコ)・スーパー王者(クリス・ジョン)が休養王者と認定されることもあり、WBAルールの条文で言及されているように休養王者の状態から返上や剥奪を余儀なくされることもある(イスラエル・バスケスなど)。ミッケル・ケスラーやビタリ・クリチコ[25]などの事例では、休養王者と名誉王者 (: champion emeritus) がしばしば混同される。

脚注

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  1. ^ a b WBA Rules adopted in Managua” (英語). 世界ボクシング協会. pp. 12-13, 22-24. 2011年11月17日閲覧。
  2. ^ 長谷川2階級制覇へ11・26世界フェザー級王座戦 スポーツ報知大阪版 2010年9月16日
  3. ^ WBA、不合理な説明=問われる統括団体の姿勢-Sフライ級王座統一戦 時事通信社 2012年4月3日
  4. ^ Tim Smith (2000年8月5日). “Millett Fighting To Get Belt Back” (英語). デイリーニューズ. 2011年11月17日閲覧。
  5. ^ Michael Katz (1998年7月20日). “Jones Shows How To Take Command” (英語). デイリーニューズ. 2011年11月17日閲覧。
  6. ^ バレロが王座返上! WBCは休暇王者扱いに”. ボクシングニュース「Box-on!」 (2010年2月10日). 2011年11月17日閲覧。
  7. ^ Mark Vester (2011年10月12日). “Mikkel Kessler Will Retire if The Eye Injury Continues” (英語). BoxingScene.com. 2011年11月17日閲覧。
  8. ^ バスケス復帰決定 フェザー級に活路求める”. ボクシングニュース「Box-on!」 (2009年6月6日). 2011年11月17日閲覧。
  9. ^ ブラッドリーは「休養王者」 WBC会長が弁明”. ボクシングニュース「Box-on!」 (2011年8月3日). 2011年11月17日閲覧。
  10. ^ David P. Greisman (2011年8月1日). “Fighting Words: We Can’t Ignore the Sanctioning Bodies” (英語). BoxingScene.com. 2011年11月17日閲覧。
  11. ^ Jhonny Gonzalez (2010年11月9日). “Elio Rojas is Targeting a Ring Return in Early 2011” (英語). BoxingScene.com. 2011年11月17日閲覧。
  12. ^ 長谷川、再起戦で2階級制覇だ 11・26世界戦決定”. スポーツニッポン (2010年9月16日). 2011年11月17日閲覧。
  13. ^ WBCがクロフォードを休養王者に 混沌とするウェルター級の世界王者を整理”. 2024年5月29日閲覧。
  14. ^ Salven L. Lagumbay (2004年1月31日). “Gejon stops Panamanian foe” (英語). SecondsOut.com. 2011年11月17日閲覧。
  15. ^ Robert Ecksel (2007年1月2日). “No More Waiting for Travis Simms” (英語). The Sweet Science. 2011年11月17日閲覧。
  16. ^ AP通信 (2008年12月11日). “Recess over: Chagaev to fight Drumond on Feb. 7” (英語). ESPN. 2011年11月17日閲覧。
  17. ^ Mark Vester (2008年1月8日). “Ruslan Chagaev Training, Eyes Valuev vs. Ruiz Winner” (英語). BoxingScene.com. 2011年11月17日閲覧。
  18. ^ アスロウムが引退を発表”. ボクシングニュース「Box-on!」 (2009年9月8日). 2011年11月17日閲覧。
  19. ^ Anson Wainwright (2009年6月13日). “Who are Boxing’s “Real” World champions” (英語). 15rounds.com. 2011年11月17日閲覧。
  20. ^ Jhonny Gonzalez (2011年2月5日). “Chris John Will Not Wait, Plans To Fight in Jakarta” (英語). BoxingScene.com. 2011年11月17日閲覧。
  21. ^ Gabriel F. Cordero (2011年11月12日). “Moreno could be allowed to defend WBA belt” (英語). Fightnews.com. 2011年11月17日閲覧。
  22. ^ Boxing Bob Newman (2011年11月7日). “Day 1, WBA convention” (英語). Fightnews.com. 2011年11月17日閲覧。
  23. ^ JBCがWBAに王者清水の休養扱い質問”. 日刊スポーツ (2011年11月15日). 2011年11月17日閲覧。
  24. ^ 興毅、「休養王者」認定 スポーツ報知 2012年6月9日
  25. ^ Dan Horgan (2008年12月28日). “Horgan's Heroes 10 Best Heavies” (英語). The Sweet Science. 2011年11月17日閲覧。

関連項目

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