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数学におけるローブ空間(英: Loeb space)は超準解析に基づきピーター・A・ローブ(英語版)(1975)によって導入された測度空間の一種である。
ローブの構成では、はじめに内的集合体
から超準実数
への内的有限加法的測度
を考える。
を
の標準部を与える写像と定義することで、
は
から拡張実数
への有限加法的測度となる。たとえ
が超準的な σ-代数だとしても、
は一般には可算和で閉じないので、通常の意味でのσ-代数になるとは限らない。その代わりに、代数
は「
の元が
の元の可算族の和集合であるならば、その集合は実際にはその族の有限個の元の和集合である」という性質を持ち、したがってとくに、
から拡張実数へのいかなる有限加法的写像(例えば
)も自動的に可算加法的となる。いま
を
で生成されるσ-代数とする。カラテオドリの拡張定理より、
上の測度
は
上の可算加法的測度に拡張される。これをローブ測度と呼ぶ。これをさらに完備化したものもローブ測度と呼ぶ。
を超有限集合とし、
を
の内的部分集合全体の成す集合(*冪集合)とする。このとき、内的な有限加法的確率測度(数え上げ測度)
が
![{\displaystyle \mu (A):=|A|/|\Omega |}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/455d9174f47d98eb5776140619dc836fb4f58d5b)
で定まる。これをもとに作られたローブ測度を
で表す。このとき
は確率空間を成す。
いま
として
なる超有限集合を考える。ここで
は無限大超自然数である。また
を標準部関数(有限超実数をそれと無限に近い実数に写す)とする。このとき
がルベーグ可測であることと、
がローブ可測であることとは同値であり、
![{\displaystyle \lambda (A)=L(\mu )(\mathrm {st} ^{-1}(A))}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/ef6216dd5085f8efabefbda7bd44f18263d3cae8)
が成り立つ。ここで左辺の
はルベーグ測度である。
参考文献[編集]
- Cutland, Nigel J. (2000), Loeb measures in practice: recent advances, Lecture Notes in Mathematics, 1751, Berlin, New York: Springer-Verlag, doi:10.1007/b76881, ISBN 978-3-540-41384-4, MR1810844
- Goldblatt, Robert (1998), Lectures on the hyperreals, Graduate Texts in Mathematics, 188, Berlin, New York: Springer-Verlag, doi:10.1007/978-1-4612-0615-6, ISBN 978-0-387-98464-3, MR1643950, https://books.google.com/books?id=TII-PX_OdloC
- Loeb, Peter A. (1975). “Conversion from nonstandard to standard measure spaces and applications in probability theory”. Transactions of the American Mathematical Society 211: 113–22. doi:10.2307/1997222. ISSN 0002-9947. JSTOR 1997222. MR0390154.
外部リンク[編集]