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ロバート・トランプラー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ロバート・ジュリアス・トランプラー
Robert Julius Trumpler
生誕 1886年10月2日
スイスの旗 スイス チューリッヒ
死没 (1956-09-10) 1956年9月10日(69歳没)
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
研究分野 天文学
研究機関 アレゲニー天文台
リック天文台
カリフォルニア大学バークレー校
出身校 ゲッティンゲン大学
主な業績 星間赤化の発見によって星間物質の存在を観測的に実証。
散開星団の研究。
プロジェクト:人物伝
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ロバート・ジュリアス・トランプラー[1][2](Robert Julius Trumpler、1886年10月2日 - 1956年9月10日[3][4])は、スイス生まれのアメリカ天文学者[4]散開星団カタログ「トランプラー・カタログ」を作成するとともに、「トランプラー分類」と呼ばれる散開星団の分類法を考案した。また、星間減光(星間赤化)が星間物質によって生じることを発見するなど、散開星団の研究を元にした業績を多く遺している。

生涯

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1886年10月2日、スイスのチューリッヒで生まれた。天文学の道に進むことを父親に反対されたため一度は職に就いたが、学業の道を諦めきれず父親を説得し、1906年にチューリッヒ大学に進学した。1908年にはドイツのゲッティンゲン大学へと進み、そこでフェリックス・クラインダフィット・ヒルベルトカール・シュヴァルツシルトといった当代一流の研究者の教えを受け、1910年10月には博士号を取得した。1913年、アメリカ ピッツバーグにあるアレゲニー天文台の台長フランク・シュレジンジャーの知遇を得たトランプラーは、アレゲニー天文台に助手として招かれた。しかし第一次世界大戦が勃発すると、トランプラーはスイス民兵として動員されてしまい、アメリカ行きの話もご破算となりかけた。何とか軍上層部の許可を得て軍を離れ、アレゲニー天文台に到着したのは1915年5月のことであった[3]

1918年、トランプラーは、カリフォルニア州にあるリック天文台ウィリアム・ウォレス・キャンベルからマーティン・ケロッグ・フェローとして招聘され、そこで働くこととした。1921年に合衆国の市民権を取得。優秀な観測者であることをキャンベルに認められたトランプラーは、1922年9月21日の皆既日食の際にリック天文台の遠征スタッフの一員に選ばれて西オーストラリア州のワラルに遠征し、アインシュタインの一般相対性理論の実験的な検証を行った。キャンベル率いるリック天文台のチームは、皆既日食中に太陽の重力場によって背後の星の光が曲がる現象を観測し、一般相対性理論の正しさを実証した[3]

1938年、リック天文台からカリフォルニア大学バークレー校へと移り、後進の育成を手掛けた。公私ともに相談を受けるなど、教え子から慕われたという。1932年から1949年にかけて、太平洋天文学会英語版の会長を務めた。地域の活動、特にバークレーのユニテリアン教会に精力的に参加していた[3]

1956年9月10日、カリフォルニア州オークランドの病院で死去[3]

業績

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リック天文台で勤務していた時期に、散開星団に関連した研究を元にした業績を遺している。1925年には、散開星団ごとに構成する星の種類が異なることを示し[5]、後の恒星の進化の研究に大きな影響を与えた[1][2]。また1930年には、散開星団を構成する星のスペクトル見かけの等級から推定される散開星団までの距離と、星団の構造と視直径から推定される距離を比較すると、前者のほうが遠方に行くほど大きくなる傾向にあることを示した[6]。これは、散開星団から地球に光が届くまでに減光を受けたものとされ、そのような減光を引き起こすだけの星間物質星間空間に存在することを観測的に実証した初めての研究結果であるとされた[2][4]

トランプラー・カタログ

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1930年にリック天文台の紀要で発表した論文「Preliminary results on the distances, dimensions and space distribution of open star clusters」には、後に「トランプラー・カタログ[7][8] (: Trumpler catalogue)」と呼ばれる334個の散開星団の表が記載されている[9]。このカタログには、それまで知られていなかった散開星団が37個含まれており、これらの星団は現在トランプラー 1 - トランプラー 37 の名前で呼ばれている。

トランプラー分類

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トランプラー・カタログには、「星団中心部の集中度」「星団に属する星々の明暗の幅」「星団に属する星の数」の3つの要素で散開星団を分類する手法が使われていた[9][10]。この分類は、後に「トランプラー分類 (: Trumpler classification)」と呼ばれるようになった[10]

  • 星団中心部の集中度 : IからIVの4段階で評価。中心部に強く星が集中していれば「I」、周囲の星野との差が少なく徐々に星が集まっていれば「IV」となる。
  • 星の明暗の幅 : 1から3の3段階で評価。星団に属する恒星の明るさに差がなければ「1」、明暗の差が大きければ「3」となる。
  • 星団の星の数 : p, m, rの3段階で評価。50個より少なければ「p」、50 - 100個の範囲ならば「n」、100個より多ければ「r」となる。
  • 細長い星団には「E」、非対称形の星団には「U」、星雲に巻かれている星団には「N」が付記される。

トランプラーによる分類では、プレヤデス星団は「II3rN」、ヒアデス星団は「II3m」、かみのけ座 (Mel 111) は「II3p」と分類された[9]

出典

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  1. ^ a b 斉田博 著「トランプラー Trumpler, Robert Julius (1886〜1956)」、中山茂 編 編『天文学人名辞典』(初版第一刷)〈現代天文学講座 別巻〉、1983年3月25日、111頁。 NCID BN00165458 
  2. ^ a b c トランプラー”. 天文学辞典. 日本天文学会 (2022年2月13日). 2022年2月14日閲覧。
  3. ^ a b c d e Weaver, Harold; Weaver, Paul (1957). “Robert Julius Trumpler, 1886-1956”. Publications of the Astronomical Society of the Pacific (IOP Publishing) 69: 304. Bibcode1957PASP...69..304W. doi:10.1086/127076. ISSN 0004-6280. 
  4. ^ a b c "Robert Julius Trumpler". Encyclopedia Britannica. Britannica. 28 September 2021. 2022年2月13日閲覧
  5. ^ Trumpler, R. J. (1925). “Spectral Types in Open Clusters”. Publications of the Astronomical Society of the Pacific (IOP Publishing) 37: 307. Bibcode1925PASP...37..307T. doi:10.1086/123509. ISSN 0004-6280. 
  6. ^ Trumpler, Robert J. (1930). “Absorption of Light in the Galactic System”. Publications of the Astronomical Society of the Pacific (IOP Publishing) 42: 214. Bibcode1930PASP...42..214T. doi:10.1086/124039. ISSN 0004-6280. 
  7. ^ トランプラー・カタログ Trumpler Catalogue(Tr)”. 美星町 星のデータベース. 美星天文台. 2022年2月14日閲覧。
  8. ^ 日本天文学会 編 編『新版 星図星表めぐり その活用百科』(新版)誠文堂新光社、1989年8月1日、94頁。ISBN 4416289073 
  9. ^ a b c Trumpler, Robert Julius (1930). “Preliminary results on the distances, dimensions and space distribution of open star clusters”. Lick Observatory Bulletins (Smithsonian Institution) 14: 154-188. Bibcode1930LicOB..14..154T. doi:10.5479/ads/bib/1930licob.14.154t. ISSN 0075-9317. 
  10. ^ a b Ridpath, Ian. A Dictionary of Astronomy. p. 912. https://books.google.co.jp/books?id=VmZaDwAAQBAJ&pg=PA912