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ロスコー・アーバックル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ロスコー・アーバックル
Roscoe Arbuckle
Roscoe Arbuckle
本名 Roscoe Conkling Arbuckle
ロスコー・コンクリング・アーバックル
別名義 Fatty Arbuckle(ファッティ・アーバックル)
デブ君
生年月日 (1887-03-04) 1887年3月4日
没年月日 (1933-06-29) 1933年6月29日(46歳没)
出生地 カンザス州スミスセンター
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
民族 アメリカ人
職業 喜劇俳優映画監督脚本家
ジャンル 映画
活動期間 1909年 - 1933年
配偶者 ミンタ・ダーフィー1908年 - 1925年
ドリス・ディーン1925年 - 1929年
アディー・マクファイル1929年 - 1933年
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ロスコー・アーバックルRoscoe Conkling (Fatty) Arbuckle1887年3月24日 - 1933年6月29日)は、アメリカ合衆国カンザス州スミスセンター生まれの喜劇俳優映画監督脚本家である。サイレント映画の全盛期を支えた俳優の1人である。愛称は「太っちょ」という意味の「Fatty」。日本では「デブ」などの愛称で親しまれていた[注 1]。大柄な体格の割に、機敏な動きを得意にするなどして人気を博した。「Fatty Arbuckle(ファッティ・アーバックル)」と表記・呼称されることもある。身長178cm・体重120kg。

略歴

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生まれつき太っており出生時の体重は5.9kgもあった。1歳の時、家族でカリフォルニア州サンタアナに移った。若くして職に就いた経歴を持つ。この頃、舞台にも立っている。1909年に『Ben's Kid』で映画デビューした後、また舞台の世界に戻ると海外巡業に出てハワイ中国、日本などを訪れた。日本では東京横浜に足を運んだ。

1909年、『Ben's Kid』でスクリーンデビュー[2]

1913年からスラップスティック・コメディの製作者マック・セネット[3]からスカウトされたことがきっかけでキーストン社に在籍。1巻ものの短編映画にキーストン・コップス(大勢の警官がドタバタ喜劇を繰り広げる)の一員として出演した。当時新人だったチャーリー・チャップリンとの共演作品も存在している。その後、自らのプロダクションを設立。メーベル・ノーマンドなどの人気俳優とも共演を繰り返した(『ファッティとメーベル』シリーズが有名)。そして一躍、喜劇を代表する大スターになった。また、評価が急上昇したチャップリンと人気を二分した時代でもある。

相手にパイを投げつける行為、いわゆる「パイ投げ」をハリウッドで早い時期に試みた人物の一人である。その映画は1913年の『A Noise from the Deep』で、メーベル・ノーマンドとの共演作品。多くのアーバックル作品で「パイ投げ」の芸達者ぶりを観ることができる(しかしながら、現存する作品自体あまり多くない)。

1915年の『海辺の恋人たち(デブ嬢の海辺の恋人たち英語版)』では、ロイド眼鏡をかける前のハロルド・ロイドと共演した[4][5]

1916年後半に自身のスタジオであるコミック・フィルム・コーポレーションフランス語版の社長に就任し、20本の2巻ものの喜劇の脚本、監督、主演を務めた[6]。この間の1917年にはバスター・キートンに映画入りを勧め、キートンは『デブ君の女装(ファッティとキートンのおかしな肉屋英語版[7]』でアーバックルの助演としてデビューした[8]。以後、キートンはアーバックルに師事するようになる。

キートンとアーバックル(1920年)

1920年、アーバックルは初の長編作品『一網打尽英語版』に主演した[9]

パラマウント社(当時はフェイマス・プレイヤーズ=ラスキー社)に移籍した1921年、女優ヴァージニア・ラッペへの強姦殺人故殺)容疑で起訴される。これはサンフランシスコの高級ホテルのセント・フランシスホテル(現在のウェスティン・セント・フランシス)のスイートルームで開催されたパーティーの主催者のアーバックルが、駆け出しの女優だったラッペに対して犯行に及んだと報道された事件で、当時のハリウッド、また全米を震撼させた出来事の1つである。パーティの後、3日後にラッペは膀胱破裂に起因する腹膜炎で死亡。これにより様々な情報、憶測が新聞を通じて大々的に報じられた。当初からアーバックルは「そのような事実は無かった」と訴え、結局、証拠不十分により無罪を評決されている。しかし、無罪を勝ち取ったにもかかわらず、悪評を払拭することが出来なかった(当時は金の力で無罪を勝ち得たと見る向きが大半であった。今日では冤罪であったことが証明されている)。この事件により世間のハリウッドに対する風当たりは厳しくなり、アーバックル作品が各都市で上映禁止となり、フィルム自体も破棄された。

上記の事件により、アーバックルは半ば映画界から追放された形になり収入が途絶えた。いったん映画界から離れヴォードヴィルへの出演を経験した後、1924年にキートンに声を掛けられて『キートンの探偵学入門(忍術キートン)』(Sherlock, Jr.) の監督に挑戦した。現場の関係者とは息が合わなかった[10]が、他の作品への監督を紹介されるなどかつての仲間に助けられる形になり、本格的に監督の仕事をこなすようになった。なお、この頃から名前を「ウィリアム(またはウィル)・グッドリッチ」(William(or Will) Goodrich、彼の父の名前) に改めて活動した[11][12]これは「Will be good=きっと良くなる」をもじったもので、キートンが考案した[要出典]

1933年6月29日心臓麻痺によりニューヨークマンハッタンで死亡。46歳。ワーナー・ブラザースで短編映画の製作に取り組んでいる最中だった。遺体は火葬された後、太平洋散骨された。

結婚

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3度の結婚を経験している。

人物

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  • 日本ではチャップリン作品やキートン作品で、本数は少ないながらもアーバックルの姿を見ることができる。またアメリカではアーバックルのDVDなどが発売されている。
  • チャップリン、キートンにハロルド・ロイドを加えた3人で「世界の三大喜劇王」と称されることが一般的だが、更にアーバックルを加えた4人で「世界の四大喜劇王」と稀ながら称される。4人目として、アーバックルの他にもハリー・ラングドン英語版[13]レイモンド・グリフィス英語版の名前が挙がることもある。
  • 1921年の醜聞によって多くの主演作品のプリントが故意に棄てられ消失した。その後、研究者たちによって、作品の捜索、復元が行われ、現在では全てではないもののある程度の作品は見ることが出来る。
  • 同時代に活動し、数々の作品で共演した喜劇俳優のアル・セント・ジョンは甥にあたる[14][15]
  • サタデーナイトライブ出身のクリス・ファーレイはロスコーの伝記映画を企画していたが、その準備の最中にドラッグで死亡した。
  • バスター・キートンは自伝で1921年の醜聞の被害女性について、「どのマスコミもあの女(被害女性)が才能を発揮できなかった可憐な乙女と表したときは、彼女を知る我々ハリウッドの映画人達は首を捻りあったものである。実の処、彼女は仕事を求める他の売れてない女優と大して変わらなかったというところだ」と記している[16]
  • 1922年9月2日に1ヶ月の滞在予定で横浜に到着。[17]

主な作品

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ロスコー・アーバックル(1919)

アーバックル作品を含むアンソロジー作品

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アーバックルを題材にした作品

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関連書籍

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  • サイレント・コメディ全史(新野敏也著、1992年、喜劇映画研究会 ISBN 978-4906409013
  • ハリウッド・バビロンケネス・アンガー著、明石三世訳、2011年、パルコ出版、ISBN 978-4891948818
  • 〈喜劇映画〉を発明した男 帝王マック・セネット、自らを語る(マック・セネット著、石野たき子訳/新野敏也監訳、2014年、作品社 ISBN 978-4861824722

脚注

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注釈

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  1. ^ 権田の著書によれば子供に人気があった事がはっきりわかる[1]

出典

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  1. ^ 権田 1974, pp. 114–115.
  2. ^ Alexander, Radu (2023年9月6日). “Roscoe “Fatty” Arbuckle - The Tragic Story Behind Hollywood’s First Sex Scandal” (英語). Biographics. 2024年8月25日閲覧。
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  4. ^ 株式会社つみき (2024年3月17日). “映画『海辺の恋人たち』の感想・レビュー[18件 | Filmarks]”. filmarks.com. 2024年8月12日閲覧。
  5. ^ デブ嬢の海辺の恋人たち”. www.athenee.net. 2024年8月12日閲覧。
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  10. ^ SHERLOCK JR.” (英語). Le Giornate del Cinema Muto. 2024年9月13日閲覧。 “The rumored participation of Roscoe “Fatty” Arbuckle in a directorial capacity during the making of Sherlock Jr. has become part of cinema lore, and has long been a matter of keen discussion among Keaton scholars and researchers. Thanks to the recollections of people involved (including Keaton), observers, and items in the contemporary press and trade magazines, we know that Arbuckle probably worked on the film early in its production. Due to his 1921 scandal and trials (he was eventually acquitted, with a formal apology by the jury), Arbuckle’s starring film career had come to a halt.Things started to pick up when he signed a contract with the Pantages Circuit for an extensive year-long vaudeville tour, and also began anonymously producing and directing a series of comedy two-reelers featuring Poodles Hanneford and Al St. John. These were shot on the Keaton lot (Sherlock Jr.’s movie theatre interior turns up in the Al St. John comedy Never Again). Almost a century later one would need Holmes himself to piece together the clues. Sherlock Jr. was in production at the beginning of 1924, but Arbuckle was certainly busy with other projects, although he may have contributed gags from time to time. Arbuckle reportedly left the film because things weren’t working out – stories include him being temperamental on the set, not getting along with leading lady Kathryn McGuire, and matriarch Peg Talmadge (Keaton’s mother-in-law) making a fuss about him being there in the first place.”
  11. ^ Roscoe Arbuckle | Silent Film Star, Comedian & Director | Britannica” (英語). www.britannica.com (2024年8月13日). 2024年9月18日閲覧。 “Throughout the 1920s and early ’30s, Arbuckle found work as a film director using the pseudonym William Goodrich (his father’s name) and enjoyed modest success in vaudeville and as co-owner of a popular California nightclub.”
  12. ^ The sexual assault case that shocked Hollywood almost a century ago” (英語). PBS News (2020年9月9日). 2024年9月18日閲覧。 “Arbuckle began working behind the camera, occasionally directing films under the name of William B. Goodrich (or Will B. Good). In 1932, he made a screen comeback by doing a series of “two-reeler” comic films for Warner Brothers.”
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  17. ^ 東京朝日新聞 大正11年9月3日2面
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参考文献

[編集]
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外部リンク

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