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モズミヨコエビ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
モズミヨコエビ
Ampithoe valida Smith, 1873
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
亜門 : 甲殻亜門 Crustacea
: 軟甲綱 Malacostraca
亜綱 : 真軟甲亜綱 Eumalacostraca
上目 : フクロエビ上目 Peracarida
: 端脚目 Amphipoda
亜目 : Senticaudata
下目 : Corophiidira
小目 : Corophiida
上科 : ドロクダムシ上科 Corophioidea
: ヒゲナガヨコエビ科 Ampithoidae
: ヒゲナガヨコエビ属 Ampithoe

モズミヨコエビ日本の沿岸に生息する小型の甲殻類である。太平洋側では関東以南,日本海側ではほぼ全域でよく見られ、干潟藻場においてしばしば普通種に数えられる。生息地では緑藻海草の表面に多産する。Ampithoe validaは19世紀にアメリカ マサチューセッツにて記載された種であり、西太平洋の分布は移入された個体群の可能性がある[1]

分布

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生態

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  • 潮間帯から水深30mの潮下帯まで生息する[5]
  • 生息密度は1平方メートルあたり80~100個体に達する[12]
  • 5 - 9月に抱卵する[13]。抱卵したメスはアオサなど大型藻類の端を折り返すようにして分泌物でつづりあわせて巣を作り、その中で卵を孵し、子育てを行う。
  • 好適塩分は4.27~31.76‰,好適水温は18.5~27.5℃[14]
  • 基本的に藻類や付着生物群集の間に棲み込みを行うが、生息基質から追い出された場合などには、腹肢を用いて遊泳することができる。

形態

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  • 体長10-13mm [15],あるいは17mm[16]。雌雄での差は少ないが、雄間闘争を行うためオスが大型化する傾向がある。
  • 体色は鮮緑色あるいは褐色。全身に色素粒をもつ。眼は赤色。
  • ヒゲナガヨコエビ科は、第3尾肢先端が鉤状に屈曲する;尾節板の末端に突起を有する、との特徴により、他の分類群から識別される。
  • ヒゲナガヨコエビ属は、オスの第1咬脚が亜はさみ状を呈し、底節板は三角形で前方へ張り出す;第5底節板が深い(体軸と直角方向に長い);第1尾肢柄部の終端に三角形の突出部がない;第2尾肢柄部後縁は通常形で薄く張り出すような突起はない;尾節板の突起が鉤状にならない、との特徴により、他属から識別される。
  • 第1触角柄部第1節後縁に棘状剛毛を欠く。第2触角の柄部および鞭部の剛毛は短く、密生しない。大顎髭第3節の剛毛は、中ほどから先端にかけて三角形の薄葉状突起を2列生じ、基部は平滑。第1~4底節板後縁に数本ずつ剛毛を具えるが、第5底節板後縁は剛毛を欠く。各腹側板には溝があり、後縁の角のわずかな切れ込みと接続する。
  • オスの第2咬脚は丸太のように長太く発達し、掌縁には台形の突起を具える。

分類

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Ampithoe mitsukurii (Della-Valle, 1893)とAmpithoe shimizuensis Stephensen, 1944は本種のシノニムとされているが、異論[3][17] もある。

産業への影響

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脚注

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  1. ^ w.doi et al.(2010).
  2. ^ Smith (1873)
  3. ^ a b c 久保島(1989).
  4. ^ Watling & Maurer (1972)
  5. ^ a b Chapman (2007)
  6. ^ Alonso et al. (1995)
  7. ^ Martin & Diaz (2003)
  8. ^ Faasse (2015)
  9. ^ Kim & Kim (1987)
  10. ^ 『東京湾のヨコエビガイドブック』
  11. ^ 桑原(1990).
  12. ^ Tzvetkova (1968)の報告に基づく。岩礁に生える褐藻およびアマモ類の生物群集における個体数密度。
  13. ^ Bousfield (1973) による米国ニューイングランドでの記録。
  14. ^ Tzetkova (1968) によるAmphithoe shimizuensisとしての報告に基づく。
  15. ^ Smith (1873) による原記載に基づく。Chapman (2007) などの報告も概ねこの範囲と重なる。
  16. ^ Della-Valle (1893) によるAmpithoe mitsukuriiとしての報告に基づく。
  17. ^ Kim & Kim (1988) においてAmpithoe shimizuensisは、Ampithoe validaの亜種Ampithoe valida shimizuensisとして扱われている。
  18. ^ 向井.岩本(2002).

参考文献

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