モズミヨコエビ
表示
モズミヨコエビ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Ampithoe valida Smith, 1873
| |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
モズミヨコエビは日本の沿岸に生息する小型の甲殻類である。太平洋側では関東以南,日本海側ではほぼ全域でよく見られ、干潟,磯,藻場においてしばしば普通種に数えられる。生息地では緑藻や海草の表面に多産する。Ampithoe validaは19世紀にアメリカ マサチューセッツにて記載された種であり、西太平洋の分布は移入された個体群の可能性がある[1]。
分布
[編集]- アメリカ(マサチューセッツ州[2],ニュージャージー州,ニューハンプシャー州[3],ジョージア州[4];太平洋岸[5])。
- 南米(アルゼンチン[6],ベネズエラ[7])。
- ヨーロッパ(ポルトガル,オランダ,フランス[8])。
- アジア 韓国(済州島[9])。日本(北海道 渡島半島,本州日本海岸,九州,瀬戸内海,四国,茨城県[3],千葉県[10],神奈川県[11])。
生態
[編集]- 潮間帯から水深30mの潮下帯まで生息する[5]。
- 生息密度は1平方メートルあたり80~100個体に達する[12]。
- 5 - 9月に抱卵する[13]。抱卵したメスはアオサなど大型藻類の端を折り返すようにして分泌物でつづりあわせて巣を作り、その中で卵を孵し、子育てを行う。
- 好適塩分は4.27~31.76‰,好適水温は18.5~27.5℃[14]。
- 基本的に藻類や付着生物群集の間に棲み込みを行うが、生息基質から追い出された場合などには、腹肢を用いて遊泳することができる。
形態
[編集]- 体長10-13mm [15],あるいは17mm[16]。雌雄での差は少ないが、雄間闘争を行うためオスが大型化する傾向がある。
- 体色は鮮緑色あるいは褐色。全身に色素粒をもつ。眼は赤色。
- ヒゲナガヨコエビ科は、第3尾肢先端が鉤状に屈曲する;尾節板の末端に突起を有する、との特徴により、他の分類群から識別される。
- ヒゲナガヨコエビ属は、オスの第1咬脚が亜はさみ状を呈し、底節板は三角形で前方へ張り出す;第5底節板が深い(体軸と直角方向に長い);第1尾肢柄部の終端に三角形の突出部がない;第2尾肢柄部後縁は通常形で薄く張り出すような突起はない;尾節板の突起が鉤状にならない、との特徴により、他属から識別される。
- 第1触角柄部第1節後縁に棘状剛毛を欠く。第2触角の柄部および鞭部の剛毛は短く、密生しない。大顎髭第3節の剛毛は、中ほどから先端にかけて三角形の薄葉状突起を2列生じ、基部は平滑。第1~4底節板後縁に数本ずつ剛毛を具えるが、第5底節板後縁は剛毛を欠く。各腹側板には溝があり、後縁の角のわずかな切れ込みと接続する。
- オスの第2咬脚は丸太のように長太く発達し、掌縁には台形の突起を具える。
分類
[編集]Ampithoe mitsukurii (Della-Valle, 1893)とAmpithoe shimizuensis Stephensen, 1944は本種のシノニムとされているが、異論[3][17] もある。
産業への影響
[編集]脚注
[編集]- ^ w.doi et al.(2010).
- ^ Smith (1873)
- ^ a b c 久保島(1989).
- ^ Watling & Maurer (1972)
- ^ a b Chapman (2007)
- ^ Alonso et al. (1995)
- ^ Martin & Diaz (2003)
- ^ Faasse (2015)
- ^ Kim & Kim (1987)
- ^ 『東京湾のヨコエビガイドブック』
- ^ 桑原(1990).
- ^ Tzvetkova (1968)の報告に基づく。岩礁に生える褐藻およびアマモ類の生物群集における個体数密度。
- ^ Bousfield (1973) による米国のニューイングランドでの記録。
- ^ Tzetkova (1968) によるAmphithoe shimizuensisとしての報告に基づく。
- ^ Smith (1873) による原記載に基づく。Chapman (2007) などの報告も概ねこの範囲と重なる。
- ^ Della-Valle (1893) によるAmpithoe mitsukuriiとしての報告に基づく。
- ^ Kim & Kim (1988) においてAmpithoe shimizuensisは、Ampithoe validaの亜種Ampithoe valida shimizuensisとして扱われている。
- ^ 向井.岩本(2002).
参考文献
[編集]- G. Alonso; A. Tablado; J. Lopez gappa; N. Magaldi (1995). “Seasonal changes in an intertidal population of the amphipod Ampithoe valida Smith, 1873”. Oebalia xxi: 77-91 .
- E.L. Bousfield (1973). Shallow-water gammaridean Amphipoda of New England. Ithaca & London: Cornell University Press.. pp. vii+xii, 312
- J.W. Chapman (2007). The Light and Smith manual: intertidal invertebrates from central California to Oregon. London, England: University of California Press, Ltd.. pp. 545-618 .
- A. Della-Valle (1893). Gammarini del Golfo di Napoli. Faune und Flora des Golfes von Neapel und der angrenzender Meeres-Abschnitte. 20. pp. xi+948pp. atlas (Atlante) of 61 pls .
- W. Doi; S. Watanabe; J.T. Carlton (2010). B.S. Galil. ed. In the Wrong Place - Alien Marine Crustaceans: Distribution, 419 Biology and Impacts, Invading Nature - Springer Series in Invasion Ecology 6. pp. 419-449 .
- M.A. Faasse MA (2015). “New records of the non-native amphipod Ampithoe valida in Europe”. Marine Biodiversity Records 8: 1-4. doi:10.1017/S1755267215000706 .
- H.S. Kim HS; C.B. Kim (1987). “Marine gammatiean Amphipoda (Crustacea) of Cheju Island and its adjacent waters, Korea”. Korean Journal of Systematic Zoology 3: 1-23.
- H.S. Kim; C.B. Kim (1988). “Marine Gammaridean Amphipoda (Crustacea) of the Family Ampithoidae from Korea”. Korean Journal of Systematic Zoology (Special Issue(2)): 107-134.
- 久保島康子「日本におけるAmpithoe属(Ampithoidae)の分類学的研究」『茨城大学大学院理学研究科 修士論文』1989年。
- 桑原連 (1990). “東京湾内湾域の砂泥性底生生物相”. 東京農業大学農学集報 35 (2): 152-166 .
- A. Martin; Y.J. Diaz (2003). “Amphipod fauna (Crustacea: Amphipoda) coastal waters of the eastern region from Venezuela”. Boletín. Instituto Español de Oceanografía 19 (1-4): 327-344.
- 向井哲也、岩本壮平「宍道湖 中海水産振興対策検討調査事業 アオノリ養殖試験」(PDF)『島根県内水面水産試験場事業報告』2002年、55-70頁。
- S.I. Smith (1873). S.F. Baird. ed. United States Commission of Fish and Fisheries. Part I. Report on the Condition of the Sea Fisheries of the South Coast of New England in 1871 and 1872. pp. 295-778
- Н.Л. Цветкова (1968). З.И. Баранова. ed. Биоценозы залива Посьет Японского моря. Исследования Фауны морей. Л.:<<Наука>> Ленинградск отд. 5. pp. 160-195.
- L. Watling; D. Maurer (1972). “Marine shallow water amphipods of the Delaware Bay area, U.S.A.”. Crustaceana, Supplement, 3. Studies on Paracarida (Isopoda, Tanaidacea, Amphipoda, Mysidacea, Cumacea): 251-266 .