コンテンツにスキップ

ムギツク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ムギツク
ムギツク Pungtungia herzi
なかがわ水遊園飼育展示個体
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: コイ目 Cypriniformes
: コイ科 Cyprinidae
亜科 : カマツカ亜科 Gobioninae
: ヒガイ族 Sarcocheilichthyini
: ムギツク属 Pungtungia
: ムギツク P. herzi
学名
Pungtungia herzi
Herzenstein, 1892
和名
ムギツク
英名
striped shiner

ムギツク(麦突、Pungtungia herzi[1])は、コイ科ムギツク属に分類される淡水魚[2]

分布

[編集]

日本福井県[1]岐阜県[1]三重県淀川水系以西の本州[2]四国香川県徳島県[2]九州北部[2][1])。ただし、琵琶湖内とその流入河川でもまれに見られる(天然分布)。鴨緑江以南の朝鮮半島のほぼ全域[2]

形態

[編集]

全長10-15 cm[1]。体色は背側は褐色で、腹側は白色。吻端から尾鰭の基底まで体軸に沿って1本の太い黒色の縦帯が入る[1]。この縦帯は、10 cm以上の成熟した個体になるに伴い消失する[1]。稚魚は各鰭が橙色に染まる。

吻端は細長く尖り、下顎に1対の髭がある。側線は完全。

生態

[編集]

流れの緩やかな河川用水路等に生息する[2]。数尾から十数尾からなる小規模な群れを形成し生活する。昼行性。性質は臆病で石の下や水草等の物陰に潜んでいることが多い。

食性は動物食傾向の強い雑食[1]水生昆虫藻類などを石をつつきながら食べる[1]

繁殖形態は卵生で、5-6月に石の下や水草などに卵を産みつける[1][2]オヤニラミコウライオヤニラミドンコギギ等の巣に托卵することもある[1][2][3][4]。その他ヌマチチブヨシノボリ類、外来種のブルーギルオオクチバス等にも托卵するとされるが、詳細は不明。受精卵は、水温22-25度で約4-5日で孵化する[2]

人間との関係

[編集]

開発による生息地の改変に伴い、本来の生息地では生息数の減少がみられるところが多い。一方で、人為的に、関東地方に移入されている[1][5][注釈 1]

一般的ではないものの、食用とされることもある[2]。肉は淡白で[2]塩焼き唐揚げ甘露煮などにできる。肉質は良い。ただし、内部寄生虫肝吸虫等)を保持する可能性があり、生食は薦められないとされる。

採集方法としては網を使い水草を掬う他に、釣りで捕らえることもできる。

観賞魚として飼育されることもある。鮮やかな縦帯と橙色の鰭をもつので、日本国内に分布する淡水魚では人気が高く、飼育も容易とされている。本来の生息地ではない地域でも販売されている。加えて、本種を含めた国内移入種コイ・アユ・オヤニラミ・ハスカネヒラ・ドンコなど)による生態系の攪乱が懸念されている。大阪府レッドリスト2014では「絶滅危惧Ⅱ類」に分類されている[2]

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ アユの放流時に混入しているという説や観賞魚店・個人の遺棄によるという説がある。

出典

[編集]
  1. ^ a b c d e f g h i j k l ムギツク / 国立環境研究所 侵入生物DB”. www.nies.go.jp. 国立環境研究所. 2023年2月20日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l ムギツク | 淡水魚図鑑(在来種)|図鑑”. www.knsk-osaka.jp. 大阪府立環境農林水産総合研究所. 2023年2月20日閲覧。
  3. ^ Baba, R. & Karino, K. (1998) Countertactics of the Japanese aucha perch Siniperca kawamebari against brood parasitism by the Japanese minnow Pungtungia herzi. Journal of Ethology Vol.16, No.2, pp.67-72.
  4. ^ Yun, Young-Eun; Yu, Jeong-Nam; Kim, Sang Ki; Hwang, Ui Wook; Kwak, Myounghai (2013-10). “Using Next-Generation Sequencing and Cross-Species Amplification in the Genus Pseudopungtungia” (英語). International Journal of Molecular Sciences 14 (10): 19923–19931. doi:10.3390/ijms141019923. ISSN 1422-0067. PMC 3821594. PMID 24084733. https://www.mdpi.com/1422-0067/14/10/19923. 
  5. ^ 田澤 加奈子,加藤 修一,金澤 道夫, 神流川頭首工ハーフコーン型魚道におけるモニタリング調査について, http://soil.en.a.u-tokyo.ac.jp/jsidre/search/PDFs/09/09008-17.pdf 2012年11月13日閲覧。 

参考文献

[編集]
  • 『原色ワイド図鑑5 魚・貝』、学習研究社、1984年、11頁。
  • 『小学館の図鑑NEO 魚』、小学館、2003年、39頁。
  • 川那部浩哉・水野信彦・細谷和海編『山渓カラー名鑑 改訂版 日本の淡水魚』、山と渓谷社、2001年、300-301頁。
  • 向井貴彦・西田睦「日本産ドンコにおけるミトコンドリアDNAの系統と関東地方への人為移植の分子的証拠」、『魚類学雑誌』第50巻第1号、2003年、71-76頁。

関連項目

[編集]