ミトゥンバ (衣類)
『ミトゥンバ』(Mitumba)は、スワヒリ語で「束 (bundles)」を意味する言葉。転じて、先進国で寄付として集められたあと、プラスチックで梱包して送られてくる古着のパッケージ並びに、その衣類自体のことを指す用語として使われる。
ミトゥンバの主要な受入港のひとつとして、タンザニアの都市ダルエスサラームがあり、衣類はそこからアフリカの内陸部へと広く散らばっていく。 ミトゥンバの輸送と販売は、供給企業・売買が行われるアフリカ諸国の双方に雇用を生み出すなど経済活動を刺激し、また経済的な余裕のない人々がファッショナブルな服を着ることができるという点では有益であるとされる[1][2]。ケニアのナイロビでは現地のデザイナーが古着を再利用し、新たな衣服を製造するなどのアップサイクルも見られる[3]。その一方で、安価な衣料品の流入が地元の繊維産業の衰退を招いているとして批判の対象にもなっている[4][5]。多くの衣類にポリエステルなどの素材が使われているため、売れずに廃棄された衣類がプラスチック汚染を引き起こしているとの懸念もある[6]。
一般的にはアフリカへの輸送前にプラスチックによって梱包される。そのほとんどは、アメリカなどの先進国からのものであり、テキサス州のミッドウエスト・テキスタイル・カンパニーのような企業は、グッドウィル・インダストリーズなどの非営利団体に寄付された衣類を購入し[7]、作業員たちが梱包前に選別を行う。アフリカの古着市場でミトゥンバは1個(約50キログラム)が2 - 3万円で取引される[8]。
寄付として取得した衣類を売買するという慣行は批判を受けているが、大量の寄付を受けつける非営利団体が種々の社会的プロジェクトのための資金を調達するには、寄付品の売却が必要であると団体側は主張している。さらに、売却による利益がなければ、団体は存続することも、人々の支援という使命を果たすこともできないと述べる。このような産業は、ピエトラ・リボリ教授がベストセラー『あなたのTシャツはどこから来たのか? 』で取り上げたテーマのひとつである[9]。
関連項目
[編集]- アフリカの衣類
- 古着の国際貿易
- サラウラ - ザンビアで用いられる類似の語[10]。
- en:1990s in African fashion
- en:2000s in African fashion
- en:2010s in African fashion
出典
[編集]- ^ Germany, SPIEGEL ONLINE, Hamburg (8 January 2006). “GLOBALISIERUNG: Das Hemd des toten Weißen - DER SPIEGEL 2/2006” (ドイツ語). Der Spiegel 2017年7月30日閲覧。
- ^ “海を渡る大量の古着、あとを追ってみると…行き着いた先で見た驚きの「古着経済」”. 朝日新聞GLOBE+ (2022年1月10日). 2024年5月27日閲覧。
- ^ “寄付のつもりが廃棄物に? 新たな問題に取り組むベルリンのブランド。”. madameFIGARO.jp(フィガロジャポン) (2023年10月24日). 2024年5月27日閲覧。
- ^ “East Africa's used-clothes trade comes under fire”. The Economist 2017年7月6日閲覧。
- ^ “グローバルビジネスのわな 世界市場との向き合い方” (英語). NIKKEIリスキリング. 2024年5月27日閲覧。
- ^ “衣類回収ボックスの先で起こっていること ケニア・ギコンバの現状を鎌田安里紗がレポート”. ELEMINIST. 2024年5月27日閲覧。
- ^ gloriasb (2017年7月5日). “Do African Nations Want Your Second-Hand Clothes? Yes and No”. AlterNet 2017年7月6日閲覧。
- ^ 星野愛 (2023年10月2日). “あの有名ブランドも…「捨てられた服」の終着地で見た現実”. LIFE INSIDER. 2024年5月27日閲覧。
- ^ Rivoli, Pietra (2009-04-01) (英語). The Travels of a T-Shirt in the Global Economy: An Economist Examines the Markets, Power, and Politics of World Trade. John Wiley & Sons. ISBN 9780470456422
- ^ “アフリカの古着市場と ローカルな流行におけるその影響”. 公益財団法人 京都服飾文化研究財団. 2024年5月28日閲覧。