ミオミール・ブコブラトビッチ
人物情報 | |
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生誕 |
1931年10月1日 ユーゴスラビア王国・ズレニャニン |
死没 |
2012年3月11日(80歳没) セルビア共和国・ベオグラード |
居住 | セルビア[注釈 1] |
出身校 | ベオグラード大学 |
学問 | |
研究分野 | ロボット工学 |
研究機関 | ミハイロ・ピューピン研究所 |
主な業績 |
ゼロモーメントポイント ロボットの動力学と制御 |
影響を与えた人物 | 加藤一郎 |
主な受賞歴 |
AVNOJ賞(1982年) 聖サヴァ勲章(1994年) エンゲルバーガー賞(1996年) |
ミオミール・ブコブラトビッチ(Miomir Vukobratović、Serbian Cyrillic: Миомир Вукобратовић、1931年10月1日 – 2012年3月11日)はセルビアのロボット研究者。二足歩行において重要な概念となるゼロモーメントポイントを世界で初めて提唱した[1]。ミハイロ・ピューピン研究所において、ロボティクス・FA研究所、ロボティクス研究所でディレクターを歴任。1等聖サヴァ勲章受章者、エンゲルバーガー賞(教育部門)受賞者。
来歴・人物
[編集]ベオグラード大学機械工学科において、1957年に学士号、1964年にPh.Dを取得する[2]。
1968年からユーゴスラビア社会主義連邦共和国のコンピュータを設計製造していたミハイロ・ピューピン研究所[注釈 2]において、生物力学科長や、ロボティクス・FA研究所ディレクター、ロボティクス研究所ディレクターを歴任する[2]。
ブコブラトビッチは主にロボットの動力学の研究に従事し、パワードスーツのような歩行補助の機器を開発していた[3]。マニピュレータの動力学に加え、歩行ロボットのモデリングと制御について研究を進めた[2](#著書の節も参照)。1970年にはゼロモーメントポイントを世界で初めて提唱する[2]。
日本のロボット研究者である早稲田大学の加藤一郎教授と親交があり[4][5]、加藤研究室によりゼロモーメントポイント規範制御による二足動歩行が実現されている[6][7]。なお、日本のロボット研究者からは「ブコさん」と呼ばれ[7]、梶田秀司によると、「研究の議論となれば若造であろうと容赦しない厳しさ」と「暖かな包容力」を備えていたという[4]。
1972年にはソ連科学アカデミーMashinovedeniya研究所からD.Sc.を授与されている[2]。また、「能動機構学」も提唱した[8]。2012年3月にベオグラードで死去[2]。
主な受賞歴
[編集]- 1976年 - 7月7日賞[注釈 3](セルビア)
- 1979年 - 10月賞[注釈 4](ベオグラード)
- 1982年 - AVNOJ賞[注釈 5](ユーゴスラビア)
- 1996年 - エンゲルバーガー賞 教育部門(国際ロボット連盟(ISR))[10]
- 2002年 - The Karic Brothers Award[11]
- モスクワ大学[注釈 8]
- ノヴィ・サド大学(セルビア)
- ティミショアラ技術大学(ルーマニア)
主な著作
[編集]著書
[編集]- ミオミール・ブコブラトビッチ 著、加藤一郎、山口忠 訳 編『歩行ロボットと人工の足』日刊工業新聞社、1975年。ISBN 978-4526008023 。
- ミオミール・ブコブラトビッチ 著、加藤一郎 監訳 編『ロボットの手―力学と運動』日刊工業新聞社、1979年8月。ISBN 978-4526010750 。
- M. ブコブラトビッチ、V. ポトコニャック 著、古田勝久 訳 編『ロボット工学の基礎―マニピュレータの動力学』シュプリンガー・フェアラーク東京、1986年1月。ISBN 978-4431705123 。
- Miomir Vukobratović, B. Borovac, D. Surla, and D. Stokić (1990-4). Biped Locomotion ―Dynamics, Stability, Control and Application―. Springer-Verlag. ISBN 978-0387174563
論文
[編集]- Miomir Vukobratović and J. Stepanenko (1972). “On the Stability of Anthropomorphic Systems”. Mathematical Biosciences 15: 1-37.
- “Is Dynamic Control Needed in Robotic Systems, and, if So, to What Extent?”. The International Robotics Research 2 (2): 18-34. (1983).
- MIOMIR VUKOBRATOVIC´ and BRANISLAV BOROVAC (2004). “ZERO-MOMENT POINT — THIRTY FIVE YEARS OF ITS LIFE”. International Journal of Humanoid Robotics 1 (1): 157–173 .
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 正確には、国名がユーゴスラビア王国、ユーゴスラビア民主連邦、ユーゴスラビア連邦人民共和国、ユーゴスラビア社会主義連邦共和国、ユーゴスラビア連邦共和国、セルビア・モンテネグロ、セルビア共和国と変遷している。
- ^ ミハイロ・プピン研究所とも言われる。読み方はミカエル・ピューピンを参照。
- ^ the 7th July Award、ロボティクスにおける優れた業績に対して[2]。
- ^ the October Prize of Belgrade、ブコブラトビッチとD.ストキッチのマニピュレータの動的制御の研究、論文に対して[2]。
- ^ the AVNOJ Awardはユーゴスラビアの最高の賞。ロボティクスとサイバネティクスにおける顕著な業績に対して[2]。
- ^ リハビリテーションロボティクスにおける、世界のパイオニアたる成果に対して。
- ^ 「A member of Serbian Academy of Sciences and Arts in the Department of Technical Sciences」[2]の和訳。
- ^ 正式名称はM.V.ロモノーソフ・モスクワ国立総合大学。
出典
[編集]- ^ 梶田秀司 編著『ヒューマノイドロボット』 オーム社、2005年4月、158-159頁。ISBN 4-274-20058-2。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n “Academician Dr. Miomir Vukobratović, Founder”. Robotics Laboratory. Mihajlo Pupin Institute. 2018年7月1日閲覧。
- ^ Vukobratovic, Miomir M. (2007-02-07). "When Were Active Exoskeletons Actually Born?" (PDF). Robotics Laboratory.
- ^ a b 梶田秀司「編集後記(特集:二足歩行ロボット)」 、『日本ロボット学会誌』第30巻第4号、2012年5月、390頁。
- ^ “ブコブラトビッチ教授ご逝去”. トップページ“What’s new”. 日本IFToMM会議 (2012年3月18日). 2015年1月14日閲覧。
- ^ 高西淳夫、石田昌巳、山崎芳昭、加藤一郎「2足歩行ロボットWL-10RDによる動歩行の実現」、『日本ロボット学会誌』第3巻第4号、1985年、 325-336頁。
- ^ a b 高西淳夫「宇宙時代におけるロボティックスの役割 人間生理・心理との関係」『Biological Sciences in Space』第19巻第3号、2005年、200-221頁。
- ^ 「二足歩行ロボット研究の現状」、『日本ロボット学会誌』第1巻第3号、1983年、204-212頁。
- ^ a b c d “Miomir Vukobratović (1931-2012)”. ヴレメ (2012年3月12日) 2018年7月1日閲覧。(セルビア語)
- ^ “Joseph F. Engelberger Robotics Awards Past Recipients By Country”. 国際ロボット連盟. 2018年7月1日閲覧。
- ^ “Academician MIOMIR VUKOBRATOVIĆ”. The field of science and research work. The 'Karic Brothers' Award Laureates in 2002. 2018年7月1日閲覧。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- Publications (Selected research monographs, Chapters in research monographs, Textbooks, Chapters in the handbooks, Selected papers published in international journals)]、2014年2月9日閲覧。
- Miomir Vukobratović (1931-2012) - ヴレメ(セルビア語)
(講演動画)
- Nagrada Braca Karic 2002 The Karic Brothers Award - YouTube(47分 - 50分頃)