マーク・エスパー
マーク・エスパー Mark Esper | |
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2019年6月20日 | |
生年月日 | 1964年4月26日(60歳) |
出生地 | アメリカ合衆国 ペンシルベニア州ユニオンタウン |
出身校 |
アメリカ陸軍士官学校 ハーバード大学 ジョージ・ワシントン大学 |
所属政党 | 共和党 |
称号 |
工学士 公共経営修士 公共政策博士 |
配偶者 | リア・レイシー |
子女 | 3人 |
在任期間 | 2019年7月23日 - 2020年11月9日 |
大統領 | ドナルド・トランプ |
在任期間 | 2017年11月20日 - 2019年7月23日 |
大統領 | ドナルド・トランプ |
マーク・エスパー Mark Esper | |
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所属組織 | アメリカ陸軍 |
最終階級 | アメリカ陸軍中佐 |
除隊後 |
アメリカ合衆国陸軍長官 アメリカ合衆国国防長官 |
マーク・トーマス・エスパー(英語:Mark Thomas Esper、1964年4月26日 - )は、アメリカ合衆国の政治家。2019年7月から2020年11月まで国防長官を務め、それ以前は陸軍長官であった。
経歴
[編集]1964年4月26日、ペンシルベニア州ユニオンタウンに誕生する。
陸軍時代
[編集]1986年5月に陸軍士官学校を卒業した[1]。後に国務長官となったマイク・ポンペオとは同期に当たる。1990年に第101空挺師団に属して湾岸戦争に従軍した後、国防総省副次官補として軍縮・核不拡散を担当したことがある。2007年に陸軍中佐の階級で除隊[2][3]した。
1995年にハーバード大学ケネディスクールで修士号、2008年にジョージ・ワシントン大学で博士号を取得している。
ロビー活動
[編集]2007年にチャック・ヘーゲル上院議員の政策補佐官を勤めた後、アメリカ航空宇宙産業協会、アメリカ商業会議所などでロビイストとして活動した[4]。2010年7月からは大手軍需産業のレイセオンでロビー責任者・政府交渉担当の副社長を務めるなどして7年間活動した。
政治家への転身
[編集]2017年11月20日、ライアン・マッカーシー陸軍長官代行の後任の陸軍長官に就任した。2018年にジェームス・マティスがシリア撤退を巡ってトランプ大統領と対立、国務長官辞任の意向を示した後、2019年6月18日に国防長官代行を務めていたパトリック・シャナハンが家庭上の都合で次期国防長官への指名を辞退したことから、6月24日付けでエスパーが国防長官代行に就任することが決定し[5]、同年7月15日に陸軍長官を退任した。
2019年7月23日、アメリカ合衆国上院はマーク・エスパーを国防長官に充てる人事を賛成90・反対8で承認し、同日中に宣誓して正式に就任した[6]。
2019年8月3日、オーストラリアを訪問し、中距離核戦力全廃条約の破棄直後のタイミングでアジアに中距離ミサイルの配備を希望するコメントを出したため、後日オーストラリアのスコット・モリソン首相が国内に配備しない旨の釈明を行う記者会見も行なわれた[7]。
2019年8月7日、日本を訪問して岩屋毅防衛大臣と会談し、アメリカが主導する有志連合(ホルムズ海峡周辺での民間船舶の安全を確保する活動)への協力を要請した[8]。8月8日にかけてモンゴルを訪問し、ニャマー・エンフボルド国防相と会談した後[9]に韓国を訪問した。8月9日に鄭景斗国防部長官との会談でホルムズ海峡付近での有志連合への協力要請の他、北朝鮮に対してCVID(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)まで制裁を継続することを確認し、韓国側で独自に制裁緩和を図ろうとする動きを牽制した。また日韓貿易紛争に伴い、韓国内で破棄も取り沙汰されている日韓秘密軍事情報保護協定の必要性について言及したが[10]、韓国側は同月中に同協定の破棄を発表した。8月28日にジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長と共に開いた記者会見で、協定破棄を「極めて失望したし、依然として失望している」と表明した[11]。同協定の継続については同年11月に韓国を訪問した際にも文在寅大統領と面会し、破棄を見直すよう説得に当たっている[12]。
2020年ミネアポリス反人種差別デモ
[編集]2020年5月25日、ミネソタ州ミネアポリスで発生したジョージ・フロイドの死を発端とする2020年ミネアポリス反人種差別デモの一部が暴徒化すると、トランプ大統領は連邦軍の出動を示唆した。これに対してエスパーは6月3日の記者会見で、現時点で連邦軍の出動を可能とする反乱法の適用は支持しないとして一線を引いた[13]。これにトランプ大統領が激怒し、発言直後に解任を検討したと伝えられる[14]。さらに6月11日、反人種差別デモが暴力的に鎮圧された後、ホワイトハウスに隣接するセントジョン米聖公会教会で行われたトランプ大統領の聖書を手にした写真撮影会にエスパーと軍服姿のマーク・ミリー統合参謀本部議長が同行したことは軍の政治的中立性を逸脱するものとして批判された[15]。エスパーは記者会見で「写真撮影があることは知らなかった」と釈明[16]。2020年アメリカ合衆国大統領選挙直後の同年11月9日に解任したことをツイッターで発表した[17][18]。
政権移行妨害の阻止
[編集]2021年1月3日、バイデン政権への移行を妨害するトランプ大統領の試みに国防総省や軍の高官が一切協力しないよう呼びかけるディック・チェイニー、ジェームズ・マティス、レオン・パネッタ、ドナルド・ラムズフェルド、ウィリアム・コーエン、チャック・ヘーゲル、ロバート・ゲーツ、ウィリアム・ペリー、アシュトン・カーターら歴代国防長官10人の共同声明に名を連ねた[19][20]。また国防総省は、トランプ政権時代に米軍の女性将官の昇進をトランプ大統領が妨害する恐れのあることを懸念し、政権移行まで先送りしていたことが明らかになった。
回想録
[編集]2022年5月10日、エスパーは彼の回顧録『聖なる誓い』を出版[21]、2020年のブラック・ライブズ・マターのデモで苛立ったトランプ大統領が、あいつらを撃てないのか、足を撃つとかできないのか、等、反乱法の発動を望んでいた事[22]、トランプ大統領がメキシコの麻薬密輸組織へのミサイル攻撃を提案していたことたことなどを公表、また国際問題に発展することを恐れ、国防総省がこの文言の削除などを働きかけていたことを明らかにした[23]。
家族
[編集]1989年10月にリア・レイシーと結婚し[24]、3人の子女が誕生した。
脚注
[編集]- ^ トランプの「ウェストポイントマフィア」は忠誠心の試練に直面している。
- ^ “米国防長官代行に対北朝鮮強硬派のマーク・エスパー陸軍長官”. 中央日報 (2019年6月20日). 2019年6月22日閲覧。
- ^ “米陸軍長官にエスパー氏、上院が承認”. 産経新聞 (2017年11月16日). 2019年6月22日閲覧。
- ^ “米大統領、陸軍長官に防衛大手幹部のエスパー氏指名へ”. ロイター (2017年7月20日). 2019年6月22日閲覧。
- ^ “米国防長官にエスパー氏指名へ=陸軍長官から昇格”. 時事通信 (2019年6月22日). 2019年6月22日閲覧。
- ^ “米新国防長官、ようやく決定 上院がエスパー氏承認”. フランス通信社 (2019年7月23日). 2019年7月23日閲覧。
- ^ “米国の中距離ミサイル、豪州には配備せず=モリソン首相”. ロイター (2019年8月5日). 2019年8月11日閲覧。
- ^ “エスパー米国防長官 来日 有志連合協力要請 岩屋防衛相「総合的に判断」”. 毎日新聞 (2019年8月8日). 2019年8月8日閲覧。
- ^ “エスパー米国防長官がモンゴル訪問、中ロにらむ”. ロイター通信 (2019年8月8日). 2019年8月8日閲覧。
- ^ “米国防長官「CVIDまで北を制裁」、ホルムズ派兵にも言及”. 朝鮮日報 (2019年8月10日). 2019年8月12日閲覧。
- ^ “米国防長官は「GSOMIA破棄に失望」、米国務次官補は面と向かって「延長すべき」”. 朝鮮日報 (2019年8月30日). 2019年9月1日閲覧。
- ^ “米国の度重なる要求にも「No」、危機に追い込まれた韓米同盟”. 朝鮮日報 (2019年11月16日). 2019年11月16日閲覧。
- ^ “エスパー米国防長官、軍の動員支持せず トランプ大統領と一線”. CNN (2020年6月4日). 2020年6月5日閲覧。
- ^ “トランプ氏、国防長官「解任寸前」で翻意…軍投入巡り対立”. 読売新聞 (2020年6月10日). 2020年6月10日閲覧。
- ^ “米軍制服組トップ、トランプ氏の写真撮影に同行したのは「誤り」”. BBCニュース (2020年6月12日). 2022年5月26日閲覧。
- ^ “米国防長官、軍動員に反対 デモ巡りトランプ氏と相違”. 日本経済新聞 (2020年6月4日). 2022年5月26日閲覧。
- ^ “トランプ氏、エスパー米国防長官の大統領選後の更迭を検討-関係者”. Bloomberg.com. 2022年5月26日閲覧。
- ^ “トランプ氏、エスパー国防長官を解任”. AFPBB (2020年11月10日). 2020年11月10日閲覧。
- ^ “存命の国防長官経験者全10人が公開書簡、大統領選は「終わった」”. CNN (2021年1月4日). 2021年1月5日閲覧。
- ^ “トランプ氏の政権移行妨害に関わるな、国防長官経験者10人が寄稿”. ロイター (2021年1月4日). 2021年1月5日閲覧。
- ^ Mark T. Esper, A Sacred Oath: Memoirs of a Secretary of Defense During Extraordinary Times, William Morrow (May 10, 2022.
- ^ “トランプ氏「デモ隊の足撃て」 前国防長官、回顧録で暴露―米報道:時事ドットコム”. 時事ドットコム. 2022年5月24日閲覧。
- ^ “トランプ氏、メキシコ麻薬組織へミサイル攻撃提案 前国防長官(CNN.co.jp)”. Yahoo!ニュース. 2022年5月24日閲覧。
- ^ 国防長官エスパーはフランクリン郡と密接な関係があります。
外部リンク
[編集]公職 | ||
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先代 リチャード・V・スペンサー (代行) |
アメリカ合衆国国防長官 第27代:2019年7月23日 - 2020年11月9日 |
次代 クリストファー・ C・ミラー (代行) |
先代 パトリック・シャナハン (代行) |
アメリカ合衆国国防長官 代行 2019年6月24日 - 2019年7月15日 |
次代 リチャード・V・スペンサー (代行) |
先代 ライアン・マッカーシー |
アメリカ合衆国陸軍長官 第23代:2017年11月20日 - 2019年7月23日 |
次代 ライアン・マッカーシー |