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マンサク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
マンサク
Hamamelis japonica
Hamamelis japonica
大阪府2008年2月29日
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 Core eudicots
: ユキノシタ目 Saxifragales
: マンサク科 Hamamelidaceae
亜科 : マンサク亜科 Hamamelidoideae
: マンサク属 Hamamelis
: マンサク H. japonica
学名
Hamamelis japonica Siebold et Zucc.
(1845)[1]
和名
マンサク(満作、万作)
英名
Japanese witch hazel
変種品種[1]
  • アテツマンサク H. j. var. bitchuensis[2]
  • ウラジロマルバマンサク H. j. var. discolor[3]
  • コガネマンサク H. j. var. discolor f. auriflora[4]
  • ニシキマンサク H. j. var. discolor f. flavopurpurascens[5]
  • マルバマンサク H. j. var. discolor f. obtusata[6]
  • ウラジロマンサク H. j. var. glauca[7]
  • オオバマンサク H. j. var. egalophylla[8]
  • シダレマンサク H. j. f. pendula[9]

マンサク(満作[10][11]・万作[11]学名: Hamamelis japonica)は、マンサク科マンサク属落葉小高木

名称

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和名マンサク語源は明らかでないが、早春に他の木に先駆けて花が咲くことから「まず咲く」「真っ先」が転訛した説[12][10][13]、また黄金色の花が多数咲くと豊作になるといわれることから「万年豊作」に由来するなどの説[12][10][14][15]、あるいは花がたくさん咲くから「満咲き」からだとする説がある[13]

葉の形が左右非対称で不整なことから、カタソゲ(片削げ)という俗名がある[16]

分布・生育地

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日本北海道渡島半島[10]本州太平洋側から四国九州に分布する[12]

日本各地の山地に生える[10]山林に多く、山里の雑木林や谷筋の林に自生する[17]。また花木として庭に植えられる[18]

形態・生態

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落葉広葉樹小高木。多くは高さ3メートル (m) ほどの灌木で[16]、生長すると5 - 6 mになる[10]樹皮は灰褐色で滑らか[11]。一年枝は淡褐色で毛がある[11]互生し、短い柄がついた長さ5 - 15センチメートル (cm) の菱形状の円形から広卵形で左右が歪み、葉身が厚く波状の鋸歯がある[12][10][16]。表は濃い緑色でツヤがあり、葉裏の葉脈上に淡褐色の毛が密生して目立つ[16][19]。秋は黄葉して黄色から橙色に色づき、落葉すると褐色に変わる[10][20]。日当たりがよいと、赤っぽく色づく個体もある[18]

開花期は2 - 3月[12]雌雄同株[21]。葉に先駆けて黄色のが房状にたくさん咲いて目立ち[12][16]、ほのかに芳香がある[21]。花の直径は3 - 4 cm[16]がく花弁雄蕊および仮雄蕊が4個ずつあり、雌蕊は2本の花柱を持つ。花弁は長さ10 - 15ミリメートル (mm) 、幅2 mmほどの細長いひも状でねじれる[12][10][16]萼片は長さ約3 mmの暗赤褐色で、円形で反り返る[10]

果期は9 - 10月[10]果実蒴果で、直径約10 mmの卵状球形で褐色の短毛が密生し[10]、黒色の大きな種子を2個含む[11]果実ホウセンカのように、成熟後に乾燥することで先の皮が裂けて種子が飛び散る。

冬芽は互生し、短毛を密生し、2枚の芽鱗は落ちやすく裸芽になる[11]。頂芽は長楕円形で柄がある[11]。花芽は卵球状で、下を向いた柄の先に2 - 4個つく[11]。側芽は葉芽である[11]。葉痕は半円形や三角形で維管束痕が3個ある[11]

利用

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まだ晩冬の寒いうちから開花して、春の訪れを告げる木として印象が深いことから、庭木公園樹として植えられる[10][20]欧米でも人気があり植栽されている[20]。樹皮の繊維が強く、岐阜県白川郷合掌造りに使われる[11]。黄色い花は切り花としても用いられ、花が赤い品種のアカバナマンサク(赤花満作)や、花弁の基部が紅色の品種ニシキマンサク(錦満作)もある[16]

亜種・変種・品種

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オオバマンサク H. j. subsp. megalophylla
本州中部地方以北に分布する亜種
ウラジロマルバマンサク H. j. var. discolor
北陸地方に分布する変種
ウラジロマンサク H. j. var. glauca
近畿・中部地方に分布する変種。
アテツマンサク H. j. var. bitchuensis
中国四国地方愛媛県)に分布する[22]変種。萼片黄色(マンサクの萼片は暗紫色)[22]。葉の両面に星状毛がある[22][23]環境省レッドデータブックでは、準絶滅危惧(NT)[24]。「アテツ」は岡山県の旧阿哲郡から、変種名の bitchuensis備中国から。青龍寺に原木がある。
アカバナマンサク(赤花満作) H. j. f. incarnata
花弁の赤い品種[16]
ニシキマンサク(錦満作) H. j. var. discolor f. flavopurpurascens
ウラジロマルバマンサクの花弁の基部が紅色をしている品種[16]
マルバマンサク(丸葉満作) H. j. var. discolor f. obtusata
ウラジロマルバマンサクの品種とされ、北海道南部から本州の日本海側にかけて分布する。葉の上半分が半円形をしていることからその名がある[25][18]

マンサク属

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マンサク属(マンサクぞく、学名: Hamamelis)は、マンサク科の一つ。東アジア北米に分布し、4ほどに分けられている。

マンサク Hamamelis japonica
日本固有種
シナマンサク Hamamelis mollis
中国原産。花の芳香が強く、枯れ葉まで落ちずに残る特徴があり、日本でも庭などによく植栽される[20]。葉は枯れても春先まで枝に残る[20]。庭木にされ、紅葉は濃い黄色に色づく[18]。日本のマンサクとの雑種 H. x intermedia には多くの園芸品種が作出され、よく栽培されている。
ハヤザキマンサク Hamamelis vernalis
アメリカマンサク (ハマメリス)Hamamelis virginiana
北米原産。マンサクによく似るが、花はに咲く。葉・樹皮のエキス収斂薬化粧水として古くから使われている。

脚注

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  1. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Hamamelis japonica Siebold et Zucc.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年3月29日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Hamamelis japonica Siebold et Zucc. var. bitchuensis (Makino) Ohwi”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年3月29日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Hamamelis japonica Siebold et Zucc. var. discolor (Nakai) Sugim.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年3月29日閲覧。
  4. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Hamamelis japonica Siebold et Zucc. var. discolor (Nakai) Sugim. f. auriflora Satomi”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年3月29日閲覧。
  5. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Hamamelis japonica Siebold et Zucc. var. discolor (Nakai) Sugim. f. flavopurpurascens (Makino) Rehder”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年3月29日閲覧。
  6. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Hamamelis japonica Siebold et Zucc. var. discolor (Nakai) Sugim. f. obtusata (Makino) H.Ohba”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年3月29日閲覧。
  7. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Hamamelis japonica Siebold et Zucc. var. glauca (Koidz.) Kitam.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年3月29日閲覧。
  8. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Hamamelis japonica Siebold et Zucc. var. megalophylla (Koidz.) Kitam.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年3月29日閲覧。
  9. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Hamamelis japonica Siebold et Zucc. f. pendula Okuyama”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年3月29日閲覧。
  10. ^ a b c d e f g h i j k l m 西田尚道監修 学習研究社編 2000, p. 50.
  11. ^ a b c d e f g h i j k 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 220.
  12. ^ a b c d e f g 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 25.
  13. ^ a b 辻井達一 2006, p. 67.
  14. ^ マンサク”. みんなの趣味の園芸. NHK出版. 2021年1月3日閲覧。
  15. ^ 樹木シリーズ③ マルバマンサク - あきた森づくり活動サポートセンター
  16. ^ a b c d e f g h i j 辻井達一 2006, p. 68.
  17. ^ 長谷川哲雄 2014, pp. 10, 39.
  18. ^ a b c d 林将之 2008, p. 29.
  19. ^ 長谷川哲雄 2014, p. 39.
  20. ^ a b c d e 亀田龍吉 2014, p. 113.
  21. ^ a b 長谷川哲雄 2014, p. 10.
  22. ^ a b c 『樹に咲く花 離弁花2』、19頁。 
  23. ^ 波田善夫. “アテツマンサク”. 植物雑学事典. 岡山理科大学. 2011年12月24日閲覧。
  24. ^ 環境省自然環境局生物多様性センター. “絶滅危惧種検索”. 生物多様性情報システム. 2011年12月24日閲覧。
  25. ^ 辻井達一 2006, p. 70.

参考文献

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  • 亀田龍吉『落ち葉の呼び名辞典』世界文化社、2014年10月5日、113頁。ISBN 978-4-418-14424-2 
  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、220頁。ISBN 978-4-416-61438-9 
  • 辻井達一『続・日本の樹木』中央公論新社〈中公新書〉、2006年2月25日、67 - 70頁。ISBN 4-12-101834-6 
  • 西田尚道監修 学習研究社編『日本の樹木』学習研究社〈増補改訂ベストフィールド図鑑 5〉、2000年4月7日、50頁。ISBN 978-4-05-403844-8 
  • 長谷川哲雄『森のさんぽ図鑑』築地書館、2014年3月10日、10頁。ISBN 978-4-8067-1473-6 
  • 林将之『紅葉ハンドブック』文一総合出版、2008年9月27日。ISBN 978-4-8299-0187-8 
  • 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、25頁。ISBN 4-522-21557-6 
  • 茂木透写真「マンサク属 Hamamelis」『樹に咲く花 離弁花2』高橋秀男勝山輝男監修、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2000年、16-20頁。ISBN 4-635-07004-2 
  • 林将之『葉で見わける樹木 増補改訂版』小学館〈小学館のフィールド・ガイドシリーズ〉、2010年、33頁。ISBN 978-4-09-208023-2 

関連項目

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外部リンク

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