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ホンキートンク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
米国テネシー州ナッシュビルにあるホンキートンクのトゥッツィーズ・オーキッド・ラウンジ英語版

ホンキートンク: honky tonk)は、カントリー・ミュージックを演奏するバーの一種。「ホンカトンク」または「トンク」とだけ呼ばれることもある。ホンキートンクの名の由来は不明である[1]

概要

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20世紀のアメリカ音楽の様々な様式に付けられている。カントリー・ミュージックが人気であるアメリカ合衆国南西部およびアメリカ合衆国南部で一般的に見られる。ロレッタ・リンマール・ハガード英語版パッツィー・クラインアーネスト・タブなど多くのカントリーのレジェンドがアマチュア・ミュージシャンとしてホンキートンクで活動を始めた。

ホンキートンクの成り立ちは大まかに、労働者階級の客に酒類を出す店で演奏されるアメリカ中の音楽からである。ピアノ演奏または小規模のバンドに合わせたダンスをすることもある。カトリーナ・ハザード・ゴードンはホンキートンクについて「都会での安酒場の登場」とし、「その名は音楽のスタイルも表す」と記した。ホンキートンクという言葉は元々アメリカ合衆国西部 (オクラホマ準州インディアン準州テキサス州) の粗野なバラエティ・ショーやその会場を指していた。ホンキートンク、サルーン、ダンスホールの違いは、特に西部の酪農[2][3][4][5][6][7]炭鉱、軍事要塞、油田の街でははっきりしていなかった。

1950年代、ホンキートンクはウエブ・ピアス英語版ハンク・ロックリン英語版レフティ・フリッツェル英語版ファロン・ヤング英語版ジョージ・ジョーンズハンク・ウィリアムズなどの大ヒットにより黄金期を迎えた。

起源

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ホンキートンクの名の由来は不明とされている[1]。印刷物で確認できる最古のものは、1889年1月24日、テキサス州フォートワースの日刊紙『デイリー・ガゼット』で「メイン通りのホンキートンクの店の再開が議会へ申し立てられた」と記されたものであった[8]。ただし大文字で書かれていたため店名であった可能性もあるが、その場合この店名は何を由来にしているのか不明である。

続いて1890年、テキサス州ダラスの『モーニング・ニュース』[9]、1892年、テキサス州ガルベストンの『ガルベストン・デイリー・ニュース』[10] (フォートワースでの成人向け施設について言及)、1894年、オクラホマの『デイリー・アードモアライト』[11]で「ホンク・ア・トンク」との記述があった。初期の使用ではテキサス州ダラス/フォートワースからオクラホマ中南部の、カウボーイたちが牛を市場に運ぶロングドライブの通りからこの言葉が広がっていった。

「トンク」の部分はピアノのブランド名から来ているとされる。1881年創業の[12]、アメリカのあるアップライト・ピアノの大きなメーカーは「ウイリアム・トンク&ブラザーズ」といって[13]、ピアノに「アーネスト・A・トンク」と記載されている。1889年までにはこれらのピアノは製造されなくなり、またこの頃にはすでに「ホンキートンク」という言葉は使用されていた[14]。1873年、ウイリアムとマックスのトンク・ブラザーズはトンク・ブラザーズ製造会社を創立し、ここから「トンク」の言葉が広がった可能性がある[15][16]

「ホンカトンク (honkatonk)」が初期に使用されたのは1900年の『ニューヨーク・サン』で、以降他の新聞でも広く使用されるようになった[17]。しかしこれは伝説や物語の記事であり、言葉の由来としては疑問が残る。

ホンキートンクの歴史

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1929年7月28日、『ロサンゼルス・タイムズ』で『「ホンキートンク」の起源が語られる』の記事でソフィ・タッカー英語版のミュージカル映画『Honky Tonk』の記事で以下のように記された:

ホンキートンクとは何か知っていますか?

数年前までの船舶業の男たちはサンフランシスコのバーバリー湾のホンキートンクがもっとも活気あふれる場所であることをよく知っていた。

著名なバーバリー湾を起点とするこの名はダイヴ・バーで受け入れられた。大規模なバーが多く、混雑した店内のテーブルで酒が注がれることが多かった。ただし店の奥のステージで演奏された音楽の質は疑わしかった。

ホンキートンクは現在のキャバレーやナイトクラブの原型ともいえるが、決定的な違いは低価格で上品ぶっていないことである[18]

ホンキートンクはディープサウスや南西部の労働者階級に酒類を出す店のカントリー・ミュージックから発展していった。音調の構成はクラシック・ブルースに関連しているが、ホンキートンクはややテンポが速い。またアフリカ系アメリカ人のダンスにリズムがよく合う[19]

1916年、クリス・スミスとチャールズ・マカロンはヒット曲『Down in Honky Tonk Town 』の中で「地下で全ての楽しみを見つけた」と記した。

確立の起源

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言葉の起源は不明だが、西部の粗野なバラエティ・ショーやその会場のことを呼んでいた。ただし初期の頃はこの会場を「バラエティ・シアター」[20]、ショーは「バラエティ・ショー」と呼んでいた[21]。これらの会場はバーが備えられ、ギャンブル場が設置されていることもあった。

開拓時代が終わり長い時間が経過した回想において、ワイアット・アープやE・C・アボットなどは1870年代から1880年代のカンザス州ネブラスカ州モンタナ州などの酪農の街でのホンキートンクについて言及した[22]。彼らの回想には下品で暴力的なショーについても含まれていた。しかしこれらのショーはハーディ・ガーディと呼ばれ、これが「ホンキートンク」の由来になった可能性もある。大道芸などで演奏される手回しオルガンのことも「ハーディ・ガーディ」と呼ばれることもあった。

1913年後期、元第1合衆国義勇騎兵隊司令官エドウィン・エマーソン大佐はニューヨークでホンキートンク・パーティを開催した[23]。この義勇騎兵隊はテキサス州、ニューメキシコ州、オクラホマ準州、インディアン準州から集められ、米西戦争の間「ホンキートンク」という言葉はよく使われていた。

ホンキートンク・ミュージック

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ハンク・ウイリアムズ

「ホンキートンク・サウンド」はリズム・セクションがバックビートと共に2ビートで演奏する。スティール・ギターフィドルが主な楽器である[24]

音楽のジャンルとしてホンキートンク・ミュージックが使われるようになったのはラグタイムのピアノ演奏で、メロディやハーモニーよりリズムを強調したものだった。よく調律されておらず、調子がずれて鍵盤がうまく動かないピアノから発展していった。

ホンキートンク・ミュージックはブギ・ウギのピアノ演奏スタイルに大きな影響を与え、1938年のジェリー・ロール・モートンのレコード『Honky Tonk Music』、ミード・ルクス・ルイスの大ヒット曲『Honky Tonk Train Blues』が代表される。ルイスはこの曲を1927年から1950年代にかけて何度もレコーディングし、またオスカー・ピーターソンなど多くのミュージシャンにカバーされた。

しなやかなサクソフォーンのメロディ・ラインと共にスロービートの、ビル・ドジェット英語版・コンボによるブルース形式器楽曲Honky Tonk』は初期のロックンロール・ヒットとなった。ルイジアナ州ニューオリンズ生まれのファッツ・ドミノもホンキートンクのピアノ演奏者で、『Blueberry Hill』、『Walking to New Orleans』がポピュラー・ミュージック・チャートでヒットした。

第二次世界大戦前、音楽業界ではテキサス、オクラホマ、西海岸で演奏されるホンキートンクの音楽を「ヒルビリー・ミュージック」と呼ぶようになった。以降、カントリー・ミュージックの初期のサウンドとされ、テネシー州ナッシュビルでウエスタン・スウィングとして発展していった。元々ギター、フィドル、コントラバスハワイから導入されたスティールギターを特徴としていた。ヴォーカルはフロイド・ティルマン英語版ハンク・ウィリアムズのように元々は雑で鼻にかかっていた。しかし後にジョージ・ジョーンズやファロン・ヤングのように鮮明でシャープなサウンドに発展していった。歌詞は労働者階級に合わせ、失恋、不倫、孤独、アルコール依存症、自己嫌悪など悲劇的なテーマがしばしば登場する。

1941年、アーネスト・タブにとってデッカ・レコードでの6枚めとなる『Walking the Floor Over You』がリリースされ[25][26]、ホンキートンクのスタイルの確立に助力し、また彼自身ホンキートンクの最初の実現者となった[27]。テキサス州クリスプ出身のタブはジミー・ロジャーズのファンで、ウエスタン・スウィングを融合し、カントリーのサウンドにエレキギターを使用した[28]

彼はこのサウンドをナッシュビルに持ち込み、『グランド・オール・オープリー』で初めてエレキギターを使用した。1950年代、ホンキートンクはウエブ・ピアス、ハンク・ロックリン、レフティ・フリッツェル、ファロン・ヤング、ジョージ・ジョーンズ、ハンク・ウイリアムズの大ヒットにより黄金期を迎えた。1950年代中期から後期、ホンキートンクとリズム・アンド・ブルースを融合したロカビリーナッシュビル・サウンドの洗練されたカントリーがホンキートンクの時代を終わらせた。

1969年、ローリング・ストーンズは1940年代のハンク・ウイリアムズのようなホンキートンクのアーティストのサウンドをベースにした『ホンキー・トンク・ウィメン』で第1位を獲得し、ゴールド・レコードに認定された[29][30]。1970年代には、ウェイロン・ジェニングスウィリー・ネルソンクリス・クリストファーソンジョニー・キャッシュ、ジェリー・ジェフ・ウォーカー、マイケル・マーフィー、マール・ハガード、ガイ・クラーク、トムポール・グラスター、ジョー・イーライ、ハンク・ウィリアムス・ジュニア、ジョニー・ペイチェック、ジェシー・コルター、サミィ・スミス、タニヤ・タッカー、ゲイリー・スチュアート、デイヴィッド・アラン・コー英語版、ビリー・ジョー・シェイヴァーなどのミュージシャンにより、ホンキートンクをワイルドにしたアウトロウ・カントリー英語版が登場した。

関連項目

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脚注

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  1. ^ a b The Oxford English Dictionary
  2. ^ Merriam-Webster Dictionary entry for cowtown”. Merriam-Webster Dictionary. April 16, 2015閲覧。
  3. ^ Based on the Random House Dictionary, © Random House, Inc. 2015. entry for cowtown”. Dictionary.com, Based on the Random House Dictionary, © Random House, Inc. 2015.. April 16, 2015閲覧。
  4. ^ WordNet 3.0, Farlex clipart collection. S.v. "cowtown." Retrieved April 16, 2015 from http://www.thefreedictionary.com/cowtown”. WordNet 3.0, Farlex clipart collection. S.v. "cowtown." Retrieved April 16, 2015 from http://www.thefreedictionary.com/cowtown.+April 16, 2015閲覧。
  5. ^ Oxford University Press entry for cowtown”. Oxford University Press. April 16, 2015閲覧。
  6. ^ WordSense.eu Dictionary entry for cowtown”. WordSense.eu Dictionary. April 16, 2015閲覧。
  7. ^ Vocabulary.com entry for cowtown”. Vocabulary.com. April 16, 2015閲覧。
  8. ^ Daily Gazette (Fort Worth, Texas), Jan. 24, 1889.
  9. ^ Morning News (Dallas, Texas), 6 Aug. 1890 "Myself and him set and talked awhile and he got up and said he wanted to go to the honk-a-tonk (variety show)."
  10. ^ Galveston Daily News (Texas), July 26, 1892, p. 6. " "FORT WORTH, Tex. (...) A youth named Goodman, who arrived here from Wilbarger county entered Andrews' honkatonk on Fifteenth street and was ordered out on account of his age." (Honky Tonk (not from Tonk pianos), retrieved July 9, 2006)
  11. ^ The Daily Ardmoreite (Oklahoma), February 26, 1894, pg. 2, col. 1. (Oklahoma Historical Society, Microfilm #110). "The honk-a-tonk last night was well attended by ball heads, bachelors and leading citizens. Most of them are inclined to kick themselves this morning for being sold."
  12. ^ Piano Manufacturers New York State 1789 - 1911”. 11 July 2015閲覧。
  13. ^ Pierce, Pierce Piano Atlas.
  14. ^ Honky Tonk World Wide Words
  15. ^ [1] WorldCat
  16. ^ [2] Memoirs of a Manufacturer
  17. ^ Reno Evening Gazette (Nevada), 3 February 1900, p. 2, col. 5.
  18. ^ "Honky-Tonk" Origin Told." Los Angeles Times. Jul. 28, 1929. p. 16.
  19. ^ Jookin'. Katrina Hazzard-Gordon. Temple University Press. 1990. page 84 ISBN 0-87722-613-X
  20. ^ The Daily Oklahoman, Sunday, September 5, 1915, pg. 1., col. 1. "There is scarcely an old-time gambler in the United States who does not remember the Reeves gambling house and 'honkytonk' in Guthrie. ...a stage and rows of curtained boxes, was built as an addition for the purposes of a free-and-easy variety show."
  21. ^ Reno Evening Gazette (Nevada), 3 February 1900, pg. 2, col. 5. "The programme is made up largely of specialties. Whatever the feeling of a long-suffering public, the honkatonk vocalists never will permit "Sweet Rosie O'Grady" and "Just One Girl" to perish from the earth, and coon songs are sung as May Irwin never did and never will sing them. Always at least one drama is presented, the entire company, vocalists, dancers and all, participating. Among the most popular plays are "The Dalton Boys" and "Mildred, the She-Devil of the Plains," for the old traditions still are respected to a certain extent, though the participation of the audience is no longer solicited."
  22. ^ Hunter, Trail Drivers of Texas, pg. 832. "I went to Dodge City, the honkatonk town, cleaned up an bought a suit of clothes, and left for San Antonio, reaching home July 1, 1885."
  23. ^ "COL. EMERSON'S NOVEL PARTY; Rough Rider Veteran Gives 'Old Forty-niners' Honky-Tonk Fandango'." New York Times, New York, N.Y., February 23, 1913. pg. C7
  24. ^ Popular Music in America: The Beat Goes On. Michael Campbell. Cengage Learning. 2011. page 127
  25. ^ http://www.freehandmusic.com/search.aspx?all=ernest+tubb&prodid=391479 Sheet music with copyright notice at Solero Music
  26. ^ http://www.countrymusichalloffame.com/site/inductees.aspx?cid=192 Ernest Tubb at Country Music Hall of Fame
  27. ^ Go Cat Go! Craig Morrison. 1952. University of Illinois Press. page 28. ISBN 0-252-06538-7
  28. ^ Honky Tonk Angel: The Intimate Story of Patsy Cline. Ellis Nassour. page 39.
  29. ^ Steve Appleford (1997), The Rolling Stones: It's Only Rock and Roll: Song by Song, Schirmer Books, p. 88, ISBN 0-02-864899-4 .
  30. ^ Melissa Hope Ditmore, ed. (2006), Encyclopedia of prostitution and sex work, Volume 2, London: Greenwood Publishing Group, p. 407, ISBN 0-313-32970-2 .

参考文献

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