ホワッツ・ニュー (リンダ・ロンシュタットのアルバム)
『ホワッツ・ニュー』 | ||||
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リンダ・ロンシュタット の スタジオ・アルバム | ||||
リリース | ||||
録音 |
1982年6月30日 - 1983年3月4日 ロサンゼルス (The Complex) | |||
ジャンル | トラディショナル・ポップ | |||
時間 | ||||
レーベル | アサイラム・レコード | |||
プロデュース | ピーター・アッシャー | |||
リンダ・ロンシュタット アルバム 年表 | ||||
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『What's New』収録のシングル | ||||
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『ホワッツ・ニュー』(What's New) は、アメリカ合衆国のシンガーソングライターでプロデューサーであるリンダ・ロンシュタットが、トラディショナル・ポップの楽曲を集めた1983年のアルバム。バンドリーダーで編曲家のネルソン・リドルと組んで1980年代に制作したトリロジー(三部作)の1作目。三部作のアルバム・カバーはいずれもジョン・コッシュが担当した。
制作
[編集]このアルバムは、当時代表的なロック系の女性ボーカリストと見なされていたロンシュタットにとって、大きな方向転換となった[1][2][3]。レコード会社も、マネージャーだったピーター・アッシャーも、このアルバムの制作に乗り気ではなかったが、最後にはロンシュタットが自分の意思を貫き、このアルバムは、スウィング・ジャズ以前の時代やスウィング・ジャズ時代のサウンドを、全く新しい世代に露出することになった[4]。一世を風靡した、フランク・シナトラ、エラ・フィッツジェラルド、トニー・ベネット、ローズマリー・クルーニー、ペギー・リーなどの時代の歌手たちは、1960年代から1970年代にはラスベガスのクラブに出演いていたり、エレベーター・ミュージックになっていた。後にロンシュタットは、彼女が「芸術表現の小さな宝石たち (little jewels of artistic expression)」と呼ぶ楽曲たちを「エレベータの中で昇降しながら余生を過ごす状態から (spending the rest of their lives riding up and down on the elevators)」救出するのに一役買ったのだと述べた[5]。このアルバムからの2枚目のシングル「クラッシュ・オン・ユー (I've Got a Crush on You)」は、既に何年もの間ロンシュタットのレパートリーとして取り上げられており、1980年に『マペット・ショー』に出演した際にも、この曲を披露していた。
評価
[編集]専門評論家によるレビュー | |
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レビュー・スコア | |
出典 | 評価 |
AllMusic | [6] |
ロバート・クリストガウ | C-[7] |
『ローリング・ストーン』誌 | [8] |
『タイム』誌 | [9] |
『ホワッツ・ニュー』は、1983年9月にリリースされ、『ビルボード』誌のアルバム・チャートに81週間とどまった。本作のリリースは、『Music of Your Life』のような番組制作コンセプトから生まれ、ロック以前のポピュラー音楽や、いわゆるグレイト・アメリカン・ソングブックに含まれるような歌曲をアメリカ合衆国における放送に流そうとする、アダルト・スタンダードというラジオ・フォーマットが始まる時期に当たっていた。このアルバムは、マイケル・ジャクソンの『スリラー』とライオネル・リッチーの『オール・ナイト・ロング』がアルバム・チャートの1位と2位に居座る中で、アルバム・チャートの3位に5週間とどまった。また、ジャズ・アルバムのチャートでは2位まで上昇した。アメリカレコード協会 (RIAA) はアメリカ合衆国内における売り上げが300万枚を超えたとしてトリプル・プラチナを認定した。世界全体における売り上げは500万枚を超えた。このアルバムによってロンシュタットは、第26回グラミー賞においてグラミー賞最優秀女性ポップ・ヴォーカル賞にノミネートされ、同じくノミネートされたドナ・サマー、ボニー・タイラー、アイリーン・キャラ、シーナ・イーストンとともに1984年のグラミー賞授賞式のテレビ放送でパフォーマンスをおこなった。タイトル曲「ホワッツ・ニュー」と「クラッシュ・オン・ユー」の2曲はシングル化され、アダルト・コンテンポラリー系のラジオ局でヒットし、タイトル曲「ホワッツ・ニュー」は、Billboard Hot 100 でトップ50入りした。
1986年にアサイラム・レコードからリリースされた編集盤『'Round Midnight』には、このアルバムのすべてのトラックが収録された[10]。
スティーヴン・ホールデンは、『ニューヨーク・タイムズ』紙で、このアルバムの大衆文化に対する重要性を指摘し、『ホワッツ・ニュー』は「ロック歌手がポップの黄金時代を敬意を表した最初のアルバムではないが、... ポップの理念を再生させようとする最も真剣な試みであり、それは1960年代半ばのビートルマニアやティーンエージャー向けのロックLPのマス・マーケティングがおこなわなかったことであった。ビートルマニア現象以前の十年間には、1940年代から1950年代にかけての偉大なバンドの歌手たちやクルーナーたちの多くが、20世紀前半のアメリカン・ポップ・スタンダードというまとめ方で、何十枚ものアルバムが制作されていたが、その多くは今では廃盤になっている。」と記した[11]。
トラックリスト
[編集]LP盤では、A面に5曲、B面に4曲が収録されている。
パーソネル
[編集]- リンダ・ロンシュタット – ボーカル
- ドン・グロルニック – ピアノ
- トミー・テデスコ – ギター (1-4, 6, 8, 9)
- デニス・バディミール – ギター (5, 7)
- レイ・ブラウン – ベース (1-4, 6, 8, 9)
- ジム・ヒューハート – ベース (5, 7)
- ジョン・ゲラン – ドラムス
- プラス・ジョンソン – テナー・サックス・ソロ (4)
- ボブ・クーパー (Bob Cooper) – テナー・サックス・ソロ (6, 7)
- チョーンシー・ウェルシュ (Chauncey Welsch) – トロンボーン・ソロ (8)
- トニー・テラン – トランペット・ソロ (2)
- ネルソン・リドル – 編曲・指揮
- レナード・アトキンス (Leonard Atkins) – コンサートマスター
- ネイサン・ロス (Nathan Ross) – コンサートマスター
制作スタッフ
[編集]- ピーター・アッシャー – プロデューサー
- ジョージ・マッセンバーグ – エンジニア、ミキシング
- バーバラ・ルーニー (Barbara Rooney) – レコーディング・アシスタント、ミックス・アシスタント
- ロバート・スパノ (Robert Spano) – レコーディング・アシスタント、ミックス・アシスタント
- ダグ・サックス – マスタリング (The Mastering Lab (Hollywood, California))
- グロリア・ボイス (Gloria Boyce) – アルバム・コーディネーション
- ジョン・コッシュ – アート・ディレクション、デザイン
- ロン・ラーソン – アート・ディレクション、デザイン
- ブライアン・アリス – 写真
- ジェニー・ショール (Genny Schorr) – 衣装スタイリスト
脚注
[編集]- ^ “Rolling Stone”. Rock's Venus. 2007年5月4日閲覧。
- ^ “The Daily News”. Work's out fine,best female voice in rock and roll. 2007年5月4日閲覧。
- ^ “Time”. The Linda Ronstadt Interview. 2007年4月9日閲覧。
- ^ “Jerry Jazz Musician”. The Peter Levinson Interview. 2007年5月4日閲覧。
- ^ “NPR”. Wait Wait...Don't Tell Me!, April 28, 2007 · Music legend Linda Ronstadt plays a game called "They Said We Were Mad at the Academy! Mad I Tell You!" Three questions about strange, but real, patents in recent years. 2007年5月28日閲覧。
- ^ Allmusic review
- ^ Robert Christgau review
- ^ Rolling Stone review
- ^ Time review
- ^ Linda Ronstadt – 'Round Midnight - Discogs (発売一覧)
- ^ Scott, A. O.. “The New York Times”. LINDA RONSTADT CELEBRATES THE GOLDEN AGE OF POP, By Stephen Holden Published: September 4, 1983 2007年5月10日閲覧. "(What's New) isn't the first album by a rock singer to pay tribute to the golden age of pop, but is ... the best and most serious attempt to rehabilitate an idea of pop that Beatlemania and the mass marketing of rock LPs for teen-agers undid in the mid-60s. In the decade prior to Beatlemania, most of the great band singers and crooners of the 40s and 50s codified a half-century of American pop standards on dozens of albums, many of them now long out-of-print"