フーリエ積分作用素
数学の解析学の分野におけるフーリエ積分作用素(フーリエせきぶんさようそ、英: Fourier integral operator)は、偏微分方程式の理論において用いられるある重要な作用素である。フーリエ積分作用素の類には、微分作用素や古典的な積分作用素が、特別な場合として含まれる。
フーリエ積分作用素 T は次のように与えられる:
ここで は f のフーリエ変換を表し、a(x,ξ) は x についてコンパクトな台を持つ表象であり、Φ は ξ について次数 1 の実数値同次函数である。また、a の台の上では が成立することも、仮定する必要がある。これらの設定の下で、a の次数がゼロであるなら、T は L2 から L2 への有界作用素であることが示される[1]。
例
[編集]フーリエ積分作用素を研究する動機の一つとして、波動作用素についての初期値問題に対する解作用素が挙げられる。実際、次のような問題を考える:
および
この問題の解は、次のように与えられる:
上式右辺の積分は、一般的に収束するとは限らないので、振動積分として解釈される必要がある。またこの右辺は、形式的には二つのフーリエ積分作用素の和のように見えるが、各積分の係数は原点において滑らかではなく、したがって標準的な記号ではない。カットオフ函数を用いてこの特異性を除去するなら、その結果として得られる作用素は、初期値問題に対して、滑らかな函数を法とする解を提供する。したがって、初期値の特異性の伝播にのみ興味がある場合は、そのような作用素を考えれば十分である。実際、波動方程式において、音速 c が位置によって変動する場合でも、滑らかな函数を法とする解を提供するフーリエ積分作用素を見つけることは出来る。したがって、速度の変化する波動方程式の解の特異性の伝播を研究する際、およびより一般的な別の双曲型方程式を研究する際に、フーリエ積分作用素は有用な道具となる。
関連項目
[編集]参考文献
[編集]- ^ Hörmander, Lars (1970), “Fourier integral operators. I”, Acta Mathematica (Springer Netherlands) 127: 79, doi:10.1007/BF02392052
- Elias Stein, Harmonic Analysis: Real-variable Methods, Orthogonality and Oscillatory Integrals. Princeton University Press, 1993. ISBN 0-691-03216-5
- F. Treves, Introduction to Pseudo Differential and Fourier Integral Operators, (University Series in Mathematics), Plenum Publ. Co. 1981. ISBN 0-306-40404-4
- J.J. Duistermaat, Fourier Integral Operators, (Progress in Mathematics), Birkhäuser 1995. ISBN 0-8176-3821-0