ピナレロ
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種類 | Società per azioni |
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本社所在地 |
![]() ヴェネト州トレヴィーゾ |
設立 | 1953年[1] |
業種 | 輸送用機械器具製造業 |
事業内容 | 自転車の製造 |
関係する人物 | ジョヴァンニ・ピナレロ |
外部リンク |
pinarello |
ピナレロ(Pinarello)とはイタリアの自転車メーカーである。
ロードバイク、トラックレーサー、シクロクロスバイク、マウンテンバイク、タイムトライアルバイク、シティサイクル、子供用ロードバイク、E-バイク、自社コンポーネントブランド「MOST」を企画・製造・販売している[2]。
概要
[編集]ジョヴァンニ・ピナレロによって創業され、現在は息子のファウストが指揮を執っている。本拠地はヴェネト州トレヴィーゾ。
コルナゴ・ビアンキ・デローザと並び、イタリアの代表的な自転車メーカーである。
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現在のロードバイクでは一般的なインテグラルヘッドの先行採用やカーボンバックを開発したことでも知られており、独特な形状をしたONDAフォークと世界初の左右非対称フレームによって剛性バランスを調整するなど、設計・機能・デザインにおいて他社と一線を画している。比較的近年までホリゾンタルフレームを競技用自転車の上位モデルにラインナップしていた。
炭素繊維を使用するカーボンフレームが競技自転車の主流となっていくなか、アルミニウム合金やマグネシウム合金を使用した金属フレームを得意とする同社は後手に回ることとなったが、東レによるカーボンシートの供給と共同開発を進め[3]、意欲的に新フレームの設計・技術開発に取り組み、第一級のレーシング・ブランドとして企業を維持している。
また、姉妹ブランドとして「オペラ」を製作・販売していた[4]。
歴史
[編集]1952年、従兄弟の自転車工房で働くジョヴァンニ・ピナレロは、自転車競技のプロ選手でもあった。プロ5勝の成績を残して引退し、フレームビルダーとして自らの工房を設立。1953年にピナレロを創業した[5]。
1957年、レースチームにフレーム供給
1960年代から1970年代において、ピナレロの自転車を供給された選手が国際的なビッグレースで勝利することは少なかったものの、1980年代には五輪ロードレース種目の金メダル、ツール・ド・フランス、ジロ・デ・イタリア、ブエルタ・ア・エスパーニャなどでステージ優勝するなど成功をおさめている。
1982年、スペインのチーム、レイノルズにバイクを供給。このチームは後にバネスト、モビスター・チームとなる[6]。
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最初の成功をつかんだピナレロのスチールバイク「Montello SLX」は、チューブ内が螺旋状のColumbus製 SLXやSLを使用したラグ溶接フレームで、エアロクラウンのフォークとステーにはクロムメッキ加工が施され、カンパニョーロ製エンド、リアブレーキワイヤーは内装式を採用していた。現在はタイムトライアルバイクの車名にモンテッロが使用されている。
セカンドグレードには「Treviso」がラインナップされており、フレーム素材はColumbus SLチューブ、リアブレーキワイヤーは年式により外装式と内装式のモデルがある。後にシティバイクの車名となる。
この頃のピナレロ社のフレームには、五輪・アルカンシエル柄のヘッドバッジや、ジョヴァンニ・ピナレロの工房生産を表すGPTロゴと社名・地名がフレームに刻印されており、90年代後半まではトップグレードのバイクにも装飾されていた。
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1990年代には、バネストのミゲル・インドゥラインがツール・ド・フランス5連覇、ジロ2連覇、世界選手権個人TT優勝、オリンピック個人TT優勝、タイムトライアルのアワーレコードを記録するなど多くの大レースで勝利を挙げ、彼の功績によりピナレロの名は日本でも知られるようになっていった。
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この時代のロードバイクは、フレーム素材の進歩とその組み付けなどで製造方法が大きく変化する過渡期であったが、ピナレロ社ではプロのフルオーダーに答えるため職人が作る金属フレームの生産形態を残していく[7]。
ピナレロ最初のフルアルミフレーム「Keral-Lite」が登場。TIG溶接によってラグレス化したセラミックス加工フレーム、クロムメッキ処理が施されたフォーク&ステーのロードバイクは、素材・重量・剛性の革新に努めながらも伝統的なスチールバイクの外見をしていた。
1994年、クロモリのスチールバイクがツール・ド・フランスで優勝した最後の年となる。その勝者ミゲル・インドゥラインが乗るピナレロのロードバイクはORIA製CrMoチューブをTIG溶接したものである。
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またピナレロがフィレンツェの大学と共同開発したTTバイク「ESPADA」は、インドゥラインと共にアワーレコードを記録。この自転車は前輪が650C、後輪が700Cのファニーバイクで金属とカーボンモノコックでつくられた特徴的なエアロ設計であった。
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アルミフレーム「Paris」が発売。「Keral-Lite」を参考に開発され、Dedacciai 7003T6の断面三角チューブを使用しており、当時としては先進的なフォルムの軽量高剛性バイクであった。後年にはフォークの素材を選択することもできた。
1996年、ピナレロの「Paris」「Keral Lite」を使用するチーム・テレコムのビャルヌ・リースがツール・ド・フランスを総合優勝。
1997年には同チームのヤン・ウルリッヒがドイツ人初のツール・ド・フランス総合優勝と新人賞を獲得。
1998年、世界初のカーボンバックフレームを発表。発売された「PRINCE」は乗り味がとても好評であり「Paris」と並びこの時代の名車と表現される。またチーム・テレコムの活躍から世界的な人気車種となって1年待ちのバックオーダーを抱えていた。プリンスにはレアメタルのスカンジウムを添加した超軽量アルミチューブDedacciai SC61.10A、VOLAカーボンフォーク、現在のPロゴ型ヘッドバッジが採用された。
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極薄超軽量チューブDedacciai U2を使用した限定モデル「PRINCE LS」が500台限定で発売。初期プリンスの最軽量モデル。
1999年、ヤン・ウルリッヒがブエルタとタイムトライアル世界選手権で優勝。
2000年、ファッサ・ボルトロにバイクを供給。チームが解散する2005シーズンまで数々の勝利に貢献した。
2002年、世界初の量産マグネシウム合金ロードバイク「DOGMA」を発表。ブランドのアイコンとも言われるONDAフォークが登場。それに伴いフォークを換装した「PRINCE SL」が発売された。
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その後ドグマは3大ツールや2大クラシックなど国際的なビッグレースで多くの勝利を成し遂げた機材となり、現在ではピナレロ社のフラッグシップモデルにつけられる冠名なっている。下位グレードモデルには各世代のドグマから得られた技術やフォルムが引き継がれている。
2003年、ファッサ・ボルトロの名スプリンターアレッサンドロ・ペタッキがグランツールの年間最多ステージ優勝の活躍。使用機材は「DOGMA」で、アシストはTTスペシャリストファビアン・カンチェラーラが担っていた。
2004年、ペタッキらトップスプリンター達の脚力に対応するため大口径ボトムブラケットをMOSTブランドとして独自開発し、その技術を搭載した「DOGMA FP」が発売。
2005年、ピナレロ初の市販フルカーボンロードバイク「F4:13 CARBON」を発表。TTバイクを参考にダウンチューブが太い設計。
2006年「PARIS FP CARBON」がカーボンロードバイクのハイエンドモデルとして登場。
2007年、初代ドグマ系の最終進化モデル「DOGMA FPX」が発売。第1世代のドグマはチューブの溶接からペイントにセットアップまでトレビゾの工房でハンドメイドされていた[3]。
2008年、最上級の素材である東レ50HM1Kを使用して作られた「PRINCE CARBON」を発表。当時の最軽量・高剛性トップモデルで、このプリンスからカタログ上の最上位がカーボンバイクとなる。
2009年、世界初の完全な左右非対称フレーム「DOGMA 60.1」を発表。前年のプリンスをベースに東レの最新カーボンを使用し、アシンメトリー設計をロードバイク開発に持ち込んだ革新的なモデル。2017年のカタログではマグネシウム合金フレームのドグマを第一世代、60.1からを第二世代と呼称している。
2010年に組織されたチームスカイ(スカイ・プロサイクリング、チーム・イネオス)にバイクを提供。クリス・フルームやブラッドリー・ウィギンスを擁するこのチームは2019年までの10年間でツール・ド・フランスの総合優勝7回という圧倒的な成績を残している。
2012年「DOGMA 65.1」を発表。このバイクを駆るウィギンスがツール総合優勝。カヴェンディッシュはジロ区間3勝ツール区間3勝を果たす。
ハイエンドからエントリーまで全てのグレードのロードバイクを左右非対称化。MTBに「DOGMA XC 9.9」が登場。
2014年9月4日、ジョヴァンニ・ピナレロ死去。ジャガーと共同開発した「DOGMA F8」を発表。65.1の型に東レ60HM3Kを使用したバイクが「PRINCE」の名でラインナップに復活。
2015年、石畳やグラベルを想定したサスペンションシステムDSS1.0を備えた「DOGMA K8-S」が発表。F8の技術を引き継いだミドルグレードの「GAN」が登場。
クリス・フルームがツール・ド・フランス総合優勝と山岳賞を獲得。フルームの活躍を称えるマイヨ・ジョーヌカラーのF8 Rhinoも発表される。
2016年、クリス・フルームがツール2連覇達成。
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2016年から2023年6月頃までLVMHグループの投資ファンドであるL Cattertonが株式を保有していた。この会社は非上場企業の株を買い企業価値を高めて売ることで利益を得るPEファンド会社であり、グループ離脱後のファウスト・ピナレロのインタビューからは自転車開発以外の所で負担があったことが伺える。
2017年「DOGMA F10」「DOGMA K10」を発表。重量、剛性、振動吸収性の全てがアップグレードされた。両バイクに乗るクリス・フルームがツール3連覇とブエルタを総合優勝[8]。
2018年、フルームがジロで総合優勝し年を跨いだ形で3大ツール制覇を達成。ゲラント・トーマスがツール・ド・フランスを総合優勝を掴み取る。
2019年「DOGMA F12」発表。このバイクに乗るエガン・ベルナルがコロンビア人初、南米選手初のツール・ド・フランス総合優勝を成し遂げる。
65.1、F8、F10、F12を駆る選手達の活躍により、「DOGMA」は名実ともに最高峰のバイクであることを証明した。
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2023年、L Cattertonはピナレロの株式を資産家アイバン・グラゼンバーグに売却。「新しいパートナーは自転車に情熱のある人」とファウスト・ピナレロは語っており、実際にQ36.5(ピドコックが所属するUCIプロチーム、サイクリングウェアブランド)の出資者とみられている[9]。
脚注
[編集]- ^ “Storia” (イタリア語). CICLI PINARELLO S.p.A.. 2014年10月11日閲覧。
- ^ “PINARELLO PRODUCTS”. ピナレロジャパン オフィシャルサイト. カワシマサイクルサプライ. 2009年12月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年9月22日閲覧。
- ^ a b “スポーツが進化を牽引した“カーボン” 〜トレカ(R) 高強度・高弾性の両立を追う歴史〜”. 東洋経済オンライン (2015年10月20日). 2017年12月14日閲覧。(ピナレロ(伊)インタビュー)
- ^ “OPERA PRODUCTS”. ピナレロジャパン オフィシャルサイト. カワシマサイクルサプライ. 2018年9月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年9月4日閲覧。
- ^ “Pinarello History” (英語). Pinarello. 2025年2月20日閲覧。
- ^ “Reynolds - Galli 1982”. ProCyclingStats. 2025年2月22日閲覧。
- ^ “安井行生のピナレロ論【前編】”. ピナレロ. カワシマサイクルサプライ (2025年1月31日). 2025年2月21日閲覧。
- ^ “タイムライン”. ピナレロ. カワシマサイクルサプライ. 2025年2月20日閲覧。
- ^ “ファウスト・ピナレロ氏インタビュー 「ピナレロがピナレロである理由」 | Bicycle Club, ロードバイク”. FUNQ [ ファンク ] (2024年7月6日). 2025年2月18日閲覧。
外部リンク
[編集]- Pinarello - 公式ウェブサイト
- Pinarello (PinarelloBikes) - Facebook
- PINARELLO (@pinarello_official) - Instagram
- Pinarello (@pinarello_com) - X(旧Twitter)
- Pinarello Official - YouTubeチャンネル
- ピナレロ - カワシマサイクルサプライ
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