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ビッチュウフウロ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ビッチュウフウロ
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : バラ上類 Superrosids
階級なし : バラ類 Rosids
階級なし : アオイ類 Malvids
: フウロソウ目 Geraniales
: フウロソウ科 Geraniaceae
: フウロソウ属 Geranium
: ビッチュウフウロ G. yoshinoi
学名
Geranium yoshinoi Makino ex Nakai (1912)[1]
和名
ビッチュウフウロ(備中風露)[2][3]

ビッチュウフウロ(備中風露、学名: Geranium yoshinoi)は、フウロソウ科フウロソウ属多年草[2][3][4][5]。別名、キビフウロ[1][3]

特徴

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根出葉は少数あり、葉柄は長さ30cmになる。は高さ40-80cmになり、細く、よく分枝し、茎や葉柄に下向きの短い伏した毛が生える。茎はふつう対生し、葉身は円形から腎形で、幅5-12cm、掌状に4分の3から6分の5まで5-7裂し、裂片は菱形になり、さらに切れ込む。葉の表面と裏面の葉脈上に伏した毛が生える。葉柄の基部の托葉は草質、卵形で長さ約4mmになり、ふつう合生する[2][3][4][5]

花期は8-11月。は淡紅紫色で径2cm、細長い茎先または枝先に2個ずつつき、花序柄と花柄に下向きの伏した毛が生える。片は5個あり、長さ5-6mm、縦に3-5脈があり、先端は状にとがり、外面の脈上に伏した毛が生える。花弁は5個あり、萼片より長く、濃色の脈が網の目状に広がり、花弁基部の内側に白色の長い軟毛が散生する。雄蕊は10個あり、葯は青紫色から淡青紫色になる。雌蕊は1個で、花柱合生部の先端の花柱分枝は長さ3-3.5mmになる。果実は分果で、長さ1.5-2cmになり、微細な毛が生える。染色体数は2n=28[2][3][4][5]

分布と生育環境

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日本固有種[6]。本州の福井県[4]長野県東海地方[5]近畿地方北部、中国地方に分布し[4][5]、山地の湿性草地や湿原の周囲[5]、湿地に生育する[2]

名前の由来

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和名ビッチュウフウロは、「備中風露」の意[2][3]岡山県の植物研究者である吉野善介 (1877 - 1964) が1910年に発見し[7]基準標本を採集したのが、旧備中国である岡山県阿哲郡本郷村(同郡哲多町を経て、現新見市)であることからであるが、中井猛之進 (1912) による原著論文によると、はじめ吉野善介によって「ビッチュウフウロソウ」と仮称されていた[8]

種小名(種形容語)yoshinoi は、吉野善介への献名である[9]

種の保全状況評価

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国(環境省)でのレッドデータブックレッドリストの選定はない。都道府県のレッドデータ、レッドリストの選定状況は、次の通りとなっている[10]。福井県-要注目、長野県-絶滅危惧IB類(EN)、岐阜県-準絶滅危惧、愛知県-絶滅危惧IB類(EN)、滋賀県-絶滅危惧増大種、京都府-絶滅危惧種、兵庫県-Aランク、鳥取県-絶滅危惧II類(VU)、島根県-絶滅危惧II類(VU)、岡山県-準絶滅危惧。

類似種

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同属のイヨフウロ Geranium shikokianum Matsum. (1901) var. shikokianum[11]に似るが、生育環境や大きさなどが異なる[2]。イヨフウロは、山地の草地に生育し、茎、花序柄、花柄に開出毛か下向きの長毛が生え、花の径は2.5-3cmと大きく、花弁基部の縁にのみ白色の軟毛が生える[12]。一方、本種は、山地の湿性草地や湿原周囲に生育し、茎、花序柄、花柄に下向きの伏した短い毛が生え、花の径は約2cmで、同種と比べれば小さく、花弁基部の内側に白色の軟毛が散生する[5]

ギャラリー

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脚注

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  1. ^ a b ビッチュウフウロ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  2. ^ a b c d e f g 『広島の山野草』「夏編」、p.103
  3. ^ a b c d e f 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.749
  4. ^ a b c d e 『原色日本植物図鑑・草本編II』p.90
  5. ^ a b c d e f g 門田裕一 (2016)「フウロソウ科」『改訂新版 日本の野生植物 3』p.252
  6. ^ 秋山忍 (2011)「フウロソウ科」『日本の固有植物』p.82
  7. ^ 土岐隆信「明治以降の岡山県における民間の植物研究の軌跡」『岡山県自然保護センター研究報告』第27巻、岡山県自然保護センター、2020年、3-5頁。 
  8. ^ T. Nakai「Notulæ ad Plantas Japoniæ et Coreæ VII」『植物学雑誌 (The Botanical Magazine)』第26巻第309号、東京植物学会、1912年、258-259頁、doi:10.15281/jplantres1887.26.309_251 
  9. ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1520
  10. ^ ビッチュウフウロ、日本のレッドデータ検索システム、2024年9月30日閲覧
  11. ^ イヨフウロ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  12. ^ 門田裕一 (2016)「フウロソウ科」『改訂新版 日本の野生植物 3』p.253

参考文献

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