コンテンツにスキップ

ビダン・カロキ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ビタン・カロキから転送)
ビダン・カロキ Portal:陸上競技
2012年8月ロンドンオリンピック男子10000mにて(左端・MUCHIRI)
選手情報
フルネーム Bedan Karoki Muchiri
国籍  ケニア
種目 長距離走
所属 トヨタ自動車
生年月日 (1990-08-21) 1990年8月21日(34歳)
出身地 ケニア ニャフルル
身長 170cm
体重 54kg
自己ベスト
3000m 7分37秒68 (2013年)
5000m 13分15秒25 (2014年)
10000m 26分52秒12 (2017年)
ハーフマラソン 58分42秒 (2018年)
マラソン 2時間5分53秒 (2019年)
獲得メダル
陸上競技
アフリカ競技大会
2011 マプト 10000m
編集 テンプレートのヘルプを表示する

ビダン・カロキ・ムチリ(Bedan Karoki Muchiri、1990年8月21日 - )は、ケニア陸上競技選手、専門は長距離走ロンドンオリンピック男子10000mケニア代表。広島県立世羅高等学校入学後は日本を拠点に活躍し、同校卒業後エスビー食品、DeNAを経てトヨタ自動車所属。

経歴

[編集]

ニャフルル近郊の出身。カロキは2002年ごろにケニアの陸上クラブ MFAE Athletic Club に入った[1]。同クラブはかつてサムエル・ワンジルも在籍した強豪クラブチームである[2]。カロキはケニアで過ごした中学時代まで、陸上の目立った実績を残していない[3]。中学卒業後の2007年、ケニアの日本大使館の紹介で来日し広島県立世羅高等学校に留学[3]。同校では広島県代表として全国高校駅伝に3年連続出場し、2007年第58回大会から2009年第60回大会まで3年連続区間賞を獲得。2年時第59回大会は4区を走り区間新記録を樹立、3年時第60回大会は3区で8人を抜き先頭に立って世羅高校を全国優勝へ導いた[4]。2010年に同校生産情報科を卒業[5]

2010年4月にエスビー食品へ入社。千葉国際クロスカントリー大会は、世羅高校2年時の2009年第44回大会からエスビー食品入社後の2011年第46回大会までシニア12000mで3連覇を達成[6]福岡国際クロスカントリー大会は2011年第25回大会シニア10000mで優勝を飾った。2011年9月にマプトで開かれたアフリカ競技大会はケニア代表として10000mに出場し銀メダルを獲得[7]。2012年2月にはケニアクロスカントリー選手権12kmで優勝した[8]。2012年6月1日、ユージーンでロンドンオリンピックケニア代表選考会を兼ねて行われた10000mに出場、ウィルソン・キプロプモーゼス・マサイに次ぐ3位に入り、ケニア代表を掴み取った[9]

2012年8月4日、カロキはロンドンオリンピック10000mに出場した。カロキは中盤、先頭に立って集団を引く形でレースを進める[10][11]。カロキを含めた先頭集団は大人数のまま終盤に突入、残り1000mからペースが上がる。カロキは残り1周で先頭のファラーをかわしに掛かるが及ばず、後続の選手にもかわされたものの、ラップベケレらに続く5位に入った[12]。記録は27分32秒94でケニア勢最上位だった。オリンピック後の8月31日、所属するエスビー食品が年度末での陸上競技部廃部を発表した。同年9月、福岡市で開かれた第60回全日本実業団選手権は5000mに出場し優勝を飾った[13]

2013年3月のエスビー食品陸上競技部廃部に伴い、カロキは瀬古利彦上野裕一郎ら同部に所属する選手・スタッフとともに同社を退社[14]。同年4月、エスビー食品勢の受け入れを表明し陸上競技部を発足したDeNAへ移籍した。同年7月にナイロビで行なわれた世界選手権ケニア代表選考会10000mは、ポール・タヌイ英語版らを抑えて優勝し代表入りを決めた[15]。2013年8月10日、モスクワで開かれた世界選手権10000mは6位入賞の成績を残した。

2013年11月、DeNAは2014年1月の第58回全日本実業団駅伝出場を目指して、東日本地区予選である第54回東日本実業団駅伝に参加。カロキも3区に出場しDeNAは5位で予選通過を決めた[16]。2014年1月1日、第58回全日本実業団駅伝は2区を走り区間2位、ごぼう抜きの新記録である26人抜きを果たした[17]。同年3月のリスボンハーフマラソンは22度まで気温が上昇する中、初のハーフマラソンを走り59分58秒の記録で優勝した[18]。同年5月、カロキは岐阜市で行われたぎふ清流ハーフマラソンに出場し、15km付近から後続との差を広げて大会新記録となる1時間00分02秒で優勝を飾った[19]。同年8月にはアメリカ合衆国・メイン州ケープエリザベスで行われたビーチ・トゥ・ビーコン10K英語版で優勝[20]。同年9月にフィラデルフィアで行われたロックンロールフィラデルフィアハーフマラソンは59分23秒の記録で優勝した。

2015年1月1日、第59回全日本実業団駅伝は2区を走り10位で襷を受け取ると7人抜きの走りでチームを3位にまで押し上げ、前年同区間で区間賞を獲得したNTNのエドワード・ワウエルや2013年のモスクワ世界陸上10000m銅メダリストの九電工のポール・タヌイらを抑え、日清食品のバルソトン・レオナルドと同タイムで区間賞を獲得、DeNA創部2年目での6位入賞に貢献した。各区間で行う区間賞を獲得した選手へのインタビューでは、通訳なしで流暢な日本語で応えた。

2017年4月23日、初のフルマラソンとしてロンドンマラソンに出場。中盤までトップ集団に位置したものの30km過ぎでダニエル・ワンジルのロングスパートに付いていけず、36km過ぎでは5000m、10000m世界記録保持者のケネニサ・ベケレにも交わされ、終盤には大きくペースダウン。それでも、最後はアベル・キルイの猛追を交わして競り勝ち、2時間7分41秒の成績で3位に入った。

2019年3月3日、東京マラソン2019で2時間6分48秒で準優勝。

2020年4月、DeNAからトヨタ自動車へ移籍。

人物

[編集]

ビタン・カロキ (Bitan Karoki) とする表記もある[21][22][23][24][25][26][27]。世羅高校時代は部員で最も早く起床し練習に取り組み、日本人学生と同じ授業を受けて勉学に励んでいた[3]。高校の2学年先輩に鎧坂哲哉がいる。2014年現在、日本語によるスムーズな会話と読み書きができる[15][17]。同年にはTBSの番組『オールスター感謝祭』に出演し、エリック・ワイナイナらと赤坂5丁目ミニマラソンを走っている[28]

主な戦績

[編集]
大会 開催地 種目 順位 記録
2011 アフリカ競技大会 モザンビークの旗 マプト 10000m 2位 28分19秒22
2012 オリンピック イギリスの旗 ロンドン 10000m 5位 27分32秒94
2013 2013年世界選手権 ロシアの旗 モスクワ 10000m 6位 27分27秒17
2015 世界クロスカントリー選手権 中華人民共和国の旗 貴陽 シニア12km 2位 35分00秒
2015 2015年世界選手権 中華人民共和国の旗 北京 10000m 4位 27分04秒77
2016 オリンピック ブラジルの旗 リオデジャネイロ 10000m 7位 27分22秒93
2017 2017年世界選手権 イギリスの旗 ロンドン 10000m 4位 26分52秒12

自己記録

[編集]
種目 記録 年月日 大会
5000m 13分15秒25 2014年7月2日 ホクレンディスタンスチャレンジ北見大会
10000m 26分52秒12 2017年8月4日 ロンドン世界陸上
10km 27分37秒 2014年8月3日 ビーチ・トゥ・ビーコン10K
20km 56分46秒 2014年3月16日 リスボンハーフマラソン
ハーフマラソン 58分42秒 2018年2月9日 ラアス・アル=ハイマハーフマラソン
マラソン 2時間05分53秒 2019年10月13日 シカゴマラソン

脚注・出典

[編集]
  1. ^ 丸川正人 (2011-12-16). ケニアからの手紙 Vol.16冬号 日本ケニア交友会. 2014年11月11日閲覧
  2. ^ SPORT OBITUARIES Samuel Wanjiru Telegraph (2011-05-16). 2014年11月11日閲覧
  3. ^ a b c 過去の記録 大会全記録 2009(平成21)年 男子第60回大会情報 高校駅伝全国高等学校駅伝競走大会. 2014年11月11日閲覧
  4. ^ 全国高校駅伝、女子は豊川が連覇 男子は世羅が3年ぶりV 共同通信 (2009-12-20). 47News. 2014年11月11日閲覧
  5. ^ ビダン・カロキ選手ロンドンオリンピック出場! 広島県立世羅高等学校. 2014年11月11日閲覧
  6. ^ Ken Nakamura (2011-02-13). KAROKI AND NIIYA WIN AT CHIBA CROSS COUNTRY IAAF. 2014年11月11日閲覧
  7. ^ Elias Makori (2011-09-17). RARE MEDALS FOR KENYA AS CURTAIN FALLS ON 10TH ALL AFRICA GAMES IAAF. 2014年11月11日閲覧
  8. ^ James Macharia (2012-02-18). Athletics-Karoki wins Kenyan championship in weakened field Reuters. 2014年11月11日閲覧
  9. ^ Gene Cherry (2012-06-02). Kiprop surges to shock victory in Kenyan trials Reuters. 2014年11月11日閲覧
  10. ^ Owen Gibson (2012-08-04). Mo Farah powers to a sensational 10,000m Olympic gold for Britain Guardian. 2014年11月11日閲覧
  11. ^ Jon Mulkeen (2012-08-04). ENNIS, FARAH AND RUTHERFORD TAKE GOLD FOR BRITAIN ON 'SUPER SATURDAY' - LONDON 2012 DAY TWO REPORT IAAF. 2014年11月11日閲覧
  12. ^ Bob Ramsak (2012-08-04). LONDON 2012 - EVENT REPORT - MEN'S 10,000M FINAL IAAF. 2012年8月4日閲覧
  13. ^ 全日本実業団対抗陸上競技選手権大会公式記録集 北陸実業団陸上競技連盟. 2014年11月15日閲覧
  14. ^ エスビー食品陸上競技部についてのお知らせ エスビー食品 (2013-01-10). 2014年11月11日閲覧
  15. ^ a b ビダン・カロキ選手 第14回世界陸上選手権 ケニア代表選出のお知らせ DeNA (2013-07-18). 2014年11月11日閲覧
  16. ^ 第54回東日本実業団駅伝対抗大会 DeNA (2013-11-03). 2014年11月11日閲覧
  17. ^ a b 実業団駅伝:DeNAカロキ、驚異の26人抜き 毎日新聞 (2014-01-01). 2014年11月11日閲覧
  18. ^ Antonio Manuel Fernandes (2014-03-16). KAROKI MAKES OUTSTANDING HALF MARATHON DEBUT WITH 59:58 WIN IN LISBON IAAF. 2014年11月11日閲覧
  19. ^ Ken Nakamura (2014-05-18). KAROKI BEATS TADESE AND SETS GIFU SEIRYU HALF MARATHON COURSE RECORD IAAF. 2014年11月11日閲覧
  20. ^ Glenn JORDAN (2014-08-02). Kenya’s Bedan Karoki wins Beach to Beacon 10K Portland Press Herald. 2014年11月11日閲覧
  21. ^ 平成20年度メイプル賞(第2回)受賞者一覧 広島県教育委員会. 2014年11月11日閲覧
  22. ^ 男子駅伝 総合成績 石川陸上競技協会. 2014年11月11日閲覧
  23. ^ 第25回福岡国際クロスカントリー大会 日本陸上競技連盟. 2014年11月11日閲覧
  24. ^ Paul Gains (2012-06-02). Eugene: Electric First Night - World Leads for Kiprop & Dibaba in 10k diamondleague. 2014年11月11日閲覧
  25. ^ Gene Cherry (2012-06-02). UPDATE 1-Olympics-Kiprop surges to shock victory in Kenyan trials Reuters. 2014年11月11日閲覧
  26. ^ カロキ3位、上野は7位 男子5000メートル、陸上の国際競技会 日本経済新聞 (2010-08-23). 2014年11月11日閲覧
  27. ^ アルファベット表記・日本語表記ともにかなりばらつきが見られるが本項文中では現在の所属チームDeNAランニングチームにおける表記ビダン・カロキ (Bedan Karoki) としている。
  28. ^ 携帯アップロード Facebook. DeNA Running Club (2014-10-05). 2014年11月14日閲覧

外部リンク

[編集]