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ハードトップ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Bピラーを持たないハードトップの例:
ランブラー(AMC)マーリン

ハードトップ(hardtop)とは、自動車用語のひとつ。以下2つの意味を持つ[1]

  1. オープンカーに装備される自動車部品。「ソフトトップ」(布製の屋根)の対義語で、金属樹脂製の屋根を指す。 → #自動車部品としての「ハードトップ」
  2. 側面中央の窓柱(Bピラー)を持たないボディスタイル。 → #ボディスタイルとしての「ハードトップ」

自動車部品としての「ハードトップ」

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脱着式ハードトップの例:
布製の幌を持つオープンカーに専用のハードトップを装着。ポルシェ・911・ターボカブリオレ
電動格納ハードトップの例:
ルノー・メガーヌ・グラスルーフ・カブリオレ

硬い材質でできた自動車の屋根のこと。実際的には、オープンカーの屋根構造において、「ソフトトップ」(布製のビニール製の窓)と対照的に使われる。

オープンカーの装備としての脱着式のハードトップ、いわゆる「デタッチャブルハードトップ」の場合、アルミFRPなど、比較的軽い素材で作られていることが多い。本来装備されていることの多いソフトトップに比べ、ハードトップの着脱作業は煩雑であるが、耐候性と耐久性では大きく勝り、室内の快適性とクーペ風のスタイルも得られる。

以前は幌型が基本であったジープタイプの四輪駆動車では、「メタルトップ」や「FRPトップ」という呼称が使われることも多い。いずれも寸法や重量があり、また、メタルトップは複数のパネルで構成されているため頻繁に着脱する類のものではなく、あくまでも「外すことも可能」なハードトップである。また、その後のクロスカントリーカーやスポーツ・ユーティリティ・ビークル(SUV)にもメタルトップと呼ばれるものがあるが、これらはモノコックに準じた車体構造か、完全なモノコック構造の車体を持つ車種であり、屋根を分離することはできない。

車両そのものに電動格納式ハードトップを組み込み、自動的・機械的に屋根を開閉できるオープンカーもあり、クーペカブリオレと呼ばれる。日本では、このような車種の屋根構造を指して、「ハードトップ」の代わりに、「メタルトップ」という表現が使われることがある。

ボディスタイルとしての「ハードトップ」

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元祖ピラーレス・ハードトップ:
キャデラック・シリーズ 62 クーペドゥビル1950
登場時から60年代半ばまでハードトップはサッシ付きのガラスを使用していた:
クライスラーウインザー1956

スリーボックスの形態(エンジンルーム、キャビン、トランクルーム)を持つ自動車のうち、主に側面中央の窓柱(Bピラー)を持たない形状をいう。

車体デザインにスポーティさや開放感を持たせることを主な狙いとしており、固定された屋根を持つボディ形状にもかかわらず、オープンカーに脱着式の屋根を装着した時のスタイルを連想させるデザイン手法である。Faux Cabrioret(フォー・カブリオレ。偽のカブリオレ)とも呼ばれる。なお、オープンカーや一部のSUVに用意されることが多い脱着式の屋根が、元来の意味での「ハードトップ」である(#自動車部品としての「ハードトップ」にて後述)。

ハードトップ・スタイルは、アメリカ1949年に登場したキャデラッククーペドゥビルが初めて採用した[1]。この車は一大センセーションを巻き起こした。こののち、アメリカ車では2ドアクーペ・4ドアセダンともにこの手法が大流行した。前後の窓を全て降ろした際に中央部にはピラーやサッシュが残らず、大きな開口部を見せることで乗員の開放感と共に車体デザイン上の演出となっていた。

この演出は、現在ではメルセデス・ベンツEクラスクーペCLクラスSクラスクーペベントレーコンチネンタルGTブルックランズ[注 1]ロールス・ロイスレイスといった、一部の高級クーペが引き継いでいる。

日本車のハードトップ

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1970年代の日本車を代表するハードトップ:
日産・スカイライン(C110型系)

日本車では1965年トヨペット・コロナハードトップ(T50型系)が初採用である[2]。これは2ドアハードトップ車であった。その後1970年代にはトヨタ・クラウン日産・セドリックのような高級車から、ブルーバードカローラなどの大衆車、さらにはダイハツ・フェローMAXやホンダ・Zといった軽自動車にまで2ドア・ピラーレス・ハードトップが設定されるようになり、4ドアセダンでも、パーソナル需要を主として高級車を中心に4ドア・ピラーレス・ハードトップが流行した(後述)。

ただし、1970年代前半の2ドアハードトップは、ボディ剛性の確保および、アメリカ車から受けたデザイン上の影響によりCピラーが太く処理されており、これに伴いリヤサイドウィンドウは小さくなっていた。このため、Bピラーをなくしたことによる開放感の演出は希薄なものとなっていた。特に斜め後方視界の悪化は顕著であり、オイルショック以後発売された2ドアハードトップ車では、トヨタ・クラウン (S80系)日産・ブルーバード(810型系)に代表されるオペラウィンドウ付きのものが登場した。

ハードトップの多様化

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ピラーレス・4ドアハードトップの例:
トヨタ・カリーナED(ST180系)
ピラード・4ドアハードトップの例:
トヨタ・チェイサー(X80系)

車体側面中央部の柱(Bピラー)がないため、ボディ剛性や側面衝突への安全性を十分に確保するためには、他の部分の補強が必要となり、重量とコストの上昇は避けられない[注 2]。そのため、Bピラーを残したままでハードトップの印象を持たせた形態のものも登場し、日本ではトヨタピラード・ハードトップと名付け、日産との差別化を図った。一方、富士重工業(現SUBARU)は、窓枠(サッシ)を持たないドアという意味で、サッシュレスドアと表現した[注 3]

日本の4ドア車で初めてドアウインドウのサッシを排した車種は、1972年(昭和47年)2月に登場したスバル・レオーネである。これはBピラーを持っており、メーカーではハードトップという表現を用いなかった。日本車初のピラーレス・ハードトップ4ドア車は、同年8月に追加設定された230型系セドリックおよびグロリアである。

この時期は、ピラーレス/ピラード両形式のハードトップ車が市場に存在していた。メーカーにより傾向があり、4ドアのピラーレス・ハードトップは主に日産が好んで採用したのをはじめ、トヨタではカリーナED/コロナEXiVマツダではペルソナユーノス300にも採用した。ピラード・ハードトップはトヨタ(T160系、T180系カリーナED/T180系コロナEXiVを除く[注 4])・マツダ(ペルソナ/ユーノス300を除く)・ホンダ三菱が積極的に採用した。日産でもF30型系レパード、R32型系スカイライン、R10型系プレセアはピラード・ハードトップであった。トヨタ、日産、マツダはピラーレス/ピラード両形式のハードトップ車が存在する自動車メーカーであった。

しかし、ピラーレス・ハードトップ車が安全面で十分な対応をするには、前述のとおり大きなコストアップが必要であり、重量の増加から動力性能も低下する。そのため、それを避けたいメーカーの思惑から徐々にピラード・ハードトップを経て4ドアセダンへと移行し、1993年(平成5年)のローレル(1月)、カリーナED/コロナEXiV(10月)のフルモデルチェンジをもって、日本車におけるピラーレス・ハードトップ車は完全に消滅した。ピラーレス・ハードトップからピラード・ハードトップへの移行を行った車種は、他にセドリックグロリアブルーバード[注 5] などである。また、ピラード・ハードトップ/サッシュレスドアから4ドアセダンへの移行を行った車種はクレスタクラウンマークIIスカイライン[注 6]インスパイアセイバーレガシィB4(旧・レガシィセダン)、インプレッサアネシス/WRX(旧・インプレッサセダン。後に前者はインプレッサG4に改称、後者はWRXとしてインプレッサシリーズから独立)などである。ただし、シーマはピラーレス・ハードトップから4ドアセダンへの移行を行った唯一の車種である。軽自動車では2代目ダイハツ・オプティが唯一の4ドアピラード・ハードトップであった。

欧米でも、かつて大流行したアメリカ車を含め、ピラーレス・ハードトップはほとんど見られなくなっている。オープンカーや一部のショーモデル・コンセプトカーを除けば、現在では上記車種のような高級クーペに採用されるのみである。

2000年代後半以降は、主にサッシ付きのドアを中心とした車種が販売の中心となり、ホンダでは1998年(平成10年)のインスパイアのフルモデルチェンジで、マツダでは2000年(平成12年)のセンティアのモデル廃止で、トヨタでは2001年(平成13年)のウィンダムのフルモデルチェンジで、日産では2004年(平成16年)のセドリック/グロリアのモデル廃止で、三菱では2005年(平成17年)のディアマンテのモデル廃止で、日本車における高級4ドアハードトップは完全に消滅した。

SUBARUも伝統的にセダンとワゴンに採用し続けていたが、2000年代後半からサッシュレスドアの採用をやめる方針をとっており、インプレッサフォレスターレガシィは窓枠付きのドアになった。同社では一貫してハードトップとは呼ばず、「サッシュレスドアを採用したセダン、ワゴン」としている。なお2009年(平成21年)のフルモデルチェンジでレガシィの3タイプ(ツーリングワゴン、アウトバック、B4)全てがサッシ付きドアに変わったことにより、コンセプトカーなどを除き、これ以降の日本車に4ドアハードトップはない[1][3]

4ドアクーペの台頭によるサッシレスドアの復活

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4ドアクーペであるメルセデス・ベンツ・CLSクラス

一時期、クーペ以外にはサッシレス車はなくなっていたが、2004年メルセデス・ベンツ・CLSクラスが発売されたことにより、4ドアクーペというカテゴリが注目を集め[4]、これを皮切りに、メルセデス・ベンツ・CLAクラスシトロエンC6アウディ・A5アウディ・A7BMW・5シリーズグランツーリスモ、BMW・6シリーズグランクーペ、BMW・3シリーズグランツーリスモ、BMW・2シリーズグランクーペ、BMW・4シリーズグランクーペ、マセラティ・ギブリと、欧州車では4ドア・5ドアのサッシレス車が増えつつある[1]。現在販売されているものでは、高い気密性とドア閉まりの確実性を両立するため、パワーウィンドウを利用して、ドア開閉時にドアウィンドウをわずかに上下させる制御を行っている[注 7]

4ドア車においてのサッシュレスドアはドアウィンドウが小さめになることから、特に後席ドアの開口部が狭くなり乗降性に関しデメリットがある。そのため、スタイル(見栄え)を優先するデザインであれば良いが、キャビンを広く設計したい場合はメリットを持たないという点がある。

その他、以下のような特徴がある。

  • 市販を前提としたレベルのコンセプトカーでも、ピラーレスおよびサッシレス構造を採用している例がよく見られる。ただし、市販段階では採用されない傾向がある。
  • かつてはセダンとの差別化や安全性確保のため、ピラーレス構造ではグリーンハウス(Greenhouse)や屋根面積を小さくしており、そのためにキャビン全体が狭くなる場合が多かった。
  • ウェザーストリップの経年変化による硬化や戸当りの変化によって、気密性の低下や雨漏り・水漏れが起こったり、ドアの締まりが悪くなる場合がある。
  • 窓ガラス昇降の際にガイドとなるガラスランを持たない(ウインドウレギュレータのみで昇降する)構造から、サイドガラスの昇降調整や戸当り強さの微調整には熟練の技を要する。またサッシ付きドアに比べてドア自体の重量も嵩む傾向にある。
  • ドアの窓枠がないことによる前方・側方死角の減少や、窓を降ろせば狭い場所でも乗り降りがしやすいなど、見かけのスタイリッシュさとは別の、実用的なメリットも存在する。

脚注

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注釈

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  1. ^ ベントレー・アルナージをベースにした2ドア4シータークーペ。550台の限定生産。
  2. ^ モノコック構造の車体で、床と屋根の両方にほぼ垂直に交わるBピラーを取り払うと、車体を一周する構造材の「輪」が分断され、そのままでは車体剛性と強度や、近年重要視されている側面衝突(Tボーンクラッシュ)に対する安全性も著しく低下する。
  3. ^ ドアパネルと窓枠を一体でプレス加工する「フルプレスドドア」(フルドア)にも「部品としてのサッシ」はないが、ドアウインドウを取り囲む枠はあるため、ハードトップようなスタイルにはならない。
  4. ^ T200系カリーナED/コロナEXiVはピラード・ハードトップである
  5. ^ ブルーバードの4ドアモデルに関しては、910型、U11型、U12型でピラーレス・ハードトップが登場したが、U13型へのフルモデルチェンジでセンターピラーが付き、最終的にはU14型へのフルモデルチェンジをもって4ドアモデルはセダンに一本化された。
  6. ^ スカイラインの4ドアモデルに関しては、R31型で初めてピラーレス・ハードトップが登場したが(R31型は4ドアセダンもラインナップされていた)、R32型へのフルモデルチェンジでセンターピラーが付き(R32型の4ドアモデルはハードトップのみ)、最終的にはR33型へのフルモデルチェンジをもって4ドアモデルはセダンに一本化された。
  7. ^ ドアを開けるとドアウインドウガラスがわずかに下がり、ドアが完全に閉まるとガラスを上げ、車体側のウェザーストリップに圧着させる。

出典

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  1. ^ a b c d 沼田亨 (2020年7月8日). “「日産ローレル」を通して学ぶ 国産ハードトップ車通史”. webCG. 2020年7月8日閲覧。
  2. ^ 世相風俗観察会『現代世相風俗史年表:1945-2008』河出書房新社、2009年3月、134頁。ISBN 9784309225043 
  3. ^ 日本国内で購入出来る車種全体で見た場合、マセラティ・ギブリなどが挙げられる
  4. ^ 4ドアクーペを確立させた、色気あるCLSクラスAllAbout

参考リンク

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関連項目

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