ニコライ・カレートニコフ
ニコラーイ・カレートニコフ Николáй Карéтников | |
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生誕 |
1930年6月30日 ソビエト連邦、モスクワ |
死没 |
1994年10月10日(64歳没) ロシア、モスクワ |
学歴 | モスクワ音楽院 |
ジャンル | 現代音楽 |
職業 | 作曲家 |
ニコラーイ・ニコラーイェヴィチ・カレートニコフ(ロシア語: Николáй Николáeвич Карéтников / Nikolai Nikolayevich Karetnikov, 1930年6月30日 モスクワ – 1994年10月10日 モスクワ)は、ロシアの作曲家。旧ソ連邦の反体制派の音楽家の1人に数えられている。
略歴
[編集]1942年から1948年まで中央音楽学校に学び、その後1953年までモスクワ音楽院でヴィッサリオン・シェバリーンに作曲を、イーゴリ・スポソビンとヴィクトル・ツッケルマンに音楽理論を、エカテリーナ・ニコラーエワにピアノを師事。アルバン・ベルクとアントン・ヴェーベルンの門弟であるフィリップ・ヘルシュコヴィチから個人指導を受ける。
カレートニコフは新ウィーン楽派の音楽に影響され、十二音技法の熱心な支持者となった。バレエ音楽《ヴァニナ・ヴァニニ》や《地質学者》は、ナターリア・カサートキナとウラジーミル・ワシーリエフの振り付けによって、ボリショイ劇場で上演された。しかしながらカレートニコフの音楽は、ソヴェト当局に受け容れがたいと判定され、数十年もの間ソ連での上演を禁止された。
《交響曲 第4番》(1963年)は、1968年にプラハで初演された。ソ連軍が「プラハの春」を弾圧するためチェコスロバキアを蹂躙する直前のことである。バレエ音楽《Little Zaches Called Zinnober》は、1971年にハノーファー歌劇場で作曲者不在のまま上演された。外国旅行の許可が下りなかったためである。当時のカレートニコフの主な活動は、劇付随音楽や映画音楽、テレビ音楽など、機会音楽の作曲だった。
芸術音楽の作曲や出版も秘密裏には続けていた。2つの大作オペラ《ティリ・ウーレンシュピーゲリ》(1965年 - 1985年)と《使徒パウロの神秘劇》(1970年 - 1986年)を完成させたが、これらの作品が公開上演されるという見込みが立たなかったため、モスクワ映画オーケストラに自分のために内密に録音してくれるように説得して、数年がかりで部分ごとに録音を重ねた。テープが出来上がると、今度は声楽パートを多重録音した。これは、反体制オペラが録音されたおそらく唯一の実例である。ついに1993年に、《ティリ・ウーレンシュピーゲリ》がビーレフェルト歌劇場においてジェフリー・マウルの指揮で初演を迎えた。カレートニコフの死の翌年、1995年8月4日にハノーファーで《使徒パウロの神秘劇》も初演された。
1990年に自叙伝的な回想録『主題と変奏(ロシア語: Темы с вариациями)』をロシアで出版しており、同年フランス語版も出版されている。日本語版は題名を変えて1996年に出版された。
主要作品一覧
[編集]歌劇
[編集]- 2幕の歌劇《ティリ・ウーレンシュピーゲリ(Тиль Уленшпигель)》(作曲:1965年-1985年、初演:1993年ビーレフェルト)
- 10幕のオペラ=オラトリオ《使徒パウロの神秘劇》(1970年-1986年作曲、1995年8月4日 ハノーファー初演)
バレエ音楽
[編集]- 1幕のバレエ《ヴァニナ・ヴァニニ(Vanina Vanini)》(スタンダール原作、1961年作曲、1962年モスクワにて初演)
- 1幕のバレエ《地質学者》(1964年モスクワにて初演)
- 3幕のバレエ《(The Chronicle of Zaches, Called Zinober)》(E.T.A.ホフマン原作、1967年初演)
声楽曲
[編集]- 独唱、合唱、管弦楽のためのオラトリオ《ユリウス・フチーク(Julius Fučík)》(1953年)
- 合唱と吹奏楽のための《5つの風の唄》 (1969年)
- 男声合唱曲《ボリス・パステルナーク追悼の8つの詩篇》(1969年 - 1989年作曲)
- 6つの宗教的歌曲 (1993年作曲)
管弦楽曲
[編集]- 交響曲 第1番 (1951年)
- 交響曲 第2番 (1956年)
- 交響曲 第3番 (1959年)
- 交響曲 第4番 (1963年)
- 交響曲 第5番
- 交響曲 第6番 (1990年)
- 楽器のための室内交響曲 (1968年)
- 32の管楽器のための協奏曲 (1965年)
- 弦楽合奏のための協奏曲 (1992年)
- 吹奏楽のための音楽 (1992年)
- 管弦楽のための《劇的な詩曲》 (1958年)
- 室内オーケストラのための演奏会用組曲《ショロム・アレイヘムより》(1987年)
室内楽曲
[編集]- ヴァイオリンとピアノのためのソナタ (1962年)
- 弦楽四重奏曲と祈りと瞑想 (1963年)
- フルート、クラリネット、バスクラリネットとピアノのための《小夜曲》 (1968年)
- ピアノ五重奏曲 (1990年)
ピアノ曲
[編集]- レント・ヴァリエーション (1961年)
- 演奏会用小品 (1969年)
- 2つのピアノ曲 (1974年)
機会音楽
[編集]著作
[編集]- (杉里直人・訳)『モスクワの前衛音楽家――芸術と権力をめぐる52の断章』(新評論、1996年、ISBN 4-7948-0326-5。『主題と変奏』の日本語版)
参考文献一覧
[編集]- Mikhail Tarakanov: A drama of non-recognition: a profile of Nikolai Karetnikov's life and work, List of Nikolai Karetnikov's principal works; in "Ex oriente...II", Nine Composers from the former USSR: Andrei Volkonsky, Sergei Slonimsky, Alemdar Karamanov, Valentin Silvestrov, Nikolai Karetnikov, Roman Ledenyov, Faraj Karaev, Victor Ekimovsky, Vladimir Tarnopolsky. Edited by Valeria Tsenova English Edition (studia slavica musicologica, Bd. 30), 245 pp. ISBN 3-928864-91-2
- Nikolai Karetnikov: Two Novellas, Translated by Rosamund Bartlett in Tempo. A Quarterly Review of Modern Music, Soviet issue, 173 (1990), pp. 44-47
- Karetnikov, Nikolay by David Fanning, in 'The New Grove Dictionary of Opera', ed. Stanley Sadie (London, 1992) ISBN 0-333-73432-7