ナチュラル・ウーマン (小説)
『ナチュラル・ウーマン』は、松浦理英子の小説。1994年に『ナチュラル ウーマン』のタイトルで映画化された。本項ではこれらに加え、映画のリメイク作品となる『ナチュラル・ウーマン2010』についても併せて扱う。
タイトルは1967年に発表された同名の楽曲(アレサ・フランクリン)に由来し、1994年版映画の主題歌に使われている。
概要
[編集]漫画家の容子、その恋人であった花世、夕記子、由梨子の恋愛物語。
大学生の容子と花世の恋愛と別れを描いた表題作「ナチュラル・ウーマン」、花世との再会、夕記子との恋愛と別れ、由梨子との新しい恋の予感を描いた「いちばん長い午後」、由梨子との旅行を描いた「微熱休暇」の3つの物語からなるが、順番は「いちばん長い午後」「微熱休暇」「ナチュラル・ウーマン」に並べ替えられている。
松浦自身が「傑作」「間違いなく何物かである小説」と自賛する作品だが、発売当初は中上健次など一部からの評価を除いてほぼ無視され、商業的にも成功しなかった。
1987年にトレヴィルより出版、のち1991年に河出書房新社から河出文庫、さらに同社より新版が発売されている。1994年には映画化もされ、2010年には『ナチュラル・ウーマン2010』というタイトルで再映画化されている。
登場人物
[編集]- 村田容子(私)
- 主人公で語り手。同人誌での活躍を経てプロの漫画家になる。
- 諸凪花世
- 『ナチュラル・ウーマン』『いちばん長い午後』に登場。容子の同人誌時代の仲間で、激しい恋愛関係に陥る。容子と別れたあと、親戚が経営するマンション「諸凪ハイツ」内の喫茶店で働く。天才的な漫画の才能を持っている。
- 森沢由梨子
- 『いちばん長い午後』『微熱休暇』に登場。容子のアルバイト仲間だったが、テキスタイルの経験があったことから容子のアシスタントになる。快活な性格で容子を魅了する。
- 夕記子
- 『いちばん長い午後』に登場。国際線のスチュワーデスだが、行く国行く国すべてを嫌いになる。容子と恋愛関係になる。
- 圭以子
- 『ナチュラル・ウーマン』に登場。容子の同人誌時代の仲間。容子と花世の恋愛を見守り応援する。
映画
[編集]1994年版
[編集]ナチュラル ウーマン | |
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監督 | 佐々木浩久 |
脚本 |
松浦理英子 佐々木浩久 |
原作 | 松浦理英子 |
出演者 |
嶋村かおり 緒川たまき |
音楽 | 梅林茂 |
撮影 | 渡部眞 |
編集 | 掛須秀一 |
製作会社 | ケイエスエス |
配給 | ケイエスエス |
公開 | 1994年12月17日 |
上映時間 | 83分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
嶋村かおり主演による初映画化作品。タイトルは原作と異なり、中黒「・」なしの『ナチュラル ウーマン』。原作者の松浦自身も脚本で参加している。VHSは1995年8月4日にリリースされ、タイトル表記は原作同様に『ナチュラル・ウーマン』となっている。2003年4月25日には「ナチュラル」と「ウーマン」を区切らない『ナチュラルウーマン』のタイトル表記でDVDが発売された。原作を忠実に映画化したわけではなく、かなりの部分が異なっている。
- ストーリー
- 清掃員のアルバイトをしている漫画家の村田容子は、同じアルバイトの由梨子に惹かれている。だが容子は、自殺したかつての恋人・花世のことを忘れられずにいた。
- キャスト
- スタッフ
- 主題歌
- アレサ・フランクリン「(You Make Me Feel Like) A Natural Woman」
2010年版
[編集]ナチュラル・ウーマン2010 | |
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監督 | 野村誠一 |
脚本 | 木浦里央 |
原作 | 松浦理英子 |
出演者 |
亜矢乃 汐見ゆかり |
音楽 | 遠藤浩二 |
撮影 | 大沢佳子 |
編集 | 目見田健 |
製作会社 | softgarage |
配給 | ゴー・シネマ |
公開 | 2010年4月17日 |
上映時間 | 104分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
『ナチュラル・ウーマン2010』のタイトルで再映画化されたリメイク作品。4月17日にシアターイメージフォーラムにて独占公開。上映時間は1時間44分。監督はグラビア写真家の野村誠一。キャラクターの設定や科白は大幅に変更され、主人公の職業もフォトグラファーとなっていたり、原作においてラディカルに掘りさげられたジェンダーやセクシャリティの問題も描かれてはいない。また、原作において重要な場面はほとんど使用されておらず、映画オリジナルの場面が過半を占め、なかばオリジナル作品的な仕上がりとなっている。
作者の松浦は「正直、欠点も数多い映画」と厳しい意見を寄せた一方で、容子と花世の別れた理由について「この映画は一つの説得力ある解釈を示している」とコメントを寄せ、キャストおよびスタッフに感謝の意を示している[1]。
2010年8月27日にDVDが発売され、1994年版とのセット版である『ナチュラル・ウーマン2010+1994』も同日発売された。
- 監督・撮影監督:野村誠一
- 原作:松浦理英子
- 企画:伊藤靖浩
- 総監修:伊藤秀裕
- 脚本:木浦里央
- プロデューサー:堤昇一
- 音楽:遠藤浩二
- ラインプロデューサー:鷲頭政充
- 撮影:大沢佳子
- 照明:金沢正夫
- 録音:沼田和夫
- 美術:大庭勇人
- 編集:目見田健
- 音響効果:丹雄二
- 助監督:佃謙介
- 制作担当:野崎竜一
- 製作:softgarage
- 配給:ゴー・シネマ
- キャッチコピー
-
- 新しい自分に出会いたい、と願うすべての人に贈る愛と別れの物語
- 女性にしかワカラナイ別れがある
脚注
[編集]外部リンク
[編集]- ナチュラル・ウーマン2010公式サイト
- 1994年版 - allcinema
- 1994年版 - KINENOTE
- 1994年版 - IMDb
- ナチュラル・ウーマン2010 - allcinema
- ナチュラル・ウーマン2010 - KINENOTE
- ナチュラル・ウーマン2010 - IMDb