コンテンツにスキップ

ドロシー・ドネガン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ドロシー・ドネガン
Dorothy Donegan
ドロシー・ドネガン(1950年代)
基本情報
生誕 (1922-04-06) 1922年4月6日
出身地 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 イリノイ州シカゴ
死没 (1998-05-19) 1998年5月19日(76歳没)
ジャンル ジャズブルースクラシックブギウギ
職業 ミュージシャン
担当楽器 ピアノ、ヴィブラフォン、ボーカル
活動期間 1936年 - 1998年
レーベル MGMキャピトル
グレート・レイクスの海軍訓練所内のキャンプ、ロバート・スモールズでアメリカの水兵たちと演奏しているドネガン(1943年)

ドロシー・ドネガンDorothy Donegan1922年4月6日 - 1998年5月19日[1][2]は、アメリカクラシック音楽の手ほどきを受けたジャズピアニスト。時折、ボーカリストとしても活動し、主にストライドや、ブギウギビバップスウィング、クラシックの演奏で知られている[3][4]

略歴

[編集]

生い立ち

[編集]

ドネガンはイリノイ州シカゴで生まれ育ち[4]1928年ピアノを習い始めた[2]。最初のレッスンは、クリーオ・ブラウンの指導も受けた西インド諸島出身のピアニスト、アルフレッド・N・シムズから受けた[5]。ドネガンはデュセイブル高校を卒業。そこでは、ダイナ・ワシントンジョニー・グリフィンジーン・アモンズヴォン・フリーマンと活動してきた教師のウォルター・ダイエットに師事した[1] 。また、シカゴ音楽大学[4]南カリフォルニア大学[6]でも学んだ。

業績

[編集]

ドネガンはシカゴのナイトクラブで活躍したことで知られていた[3]。1942年にレコーディング・デビューを果たす。キャブ・キャロウェイ、ジーン・ロジャース、W・C・フィールズとともに映画『Sensations of 1945』に出演した[3]。彼女はアート・テイタムの弟子で、テイタムは彼女を「私に練習をさせることができる唯一の女性」と呼んでいた[7](テイタムは「盲目だったはずなのに……女性が見えていたのは知っている」と彼女は言った[5])。1943年、ドネガンはシカゴのオーケストラホールで演奏した最初のアフリカ系アメリカ人となった[7][4]。彼女は後にこの画期的なパフォーマンスについて次のように語っている:

前半はラフマニノフグリーグを演奏し、後半は泥沼に引きずり込まれてジャズを演奏しました。クラウディア・キャシディが「シカゴ・トリビューン」紙の1面でコンサートを評してくれました。彼女が言うには、私のテクニックは素晴らしく、トゥールーズ=ロートレックのリトグラフのようだったそうです[5]

1983年5月、ドネガンはビリー・テイラーミルト・ヒントンアート・ブレイキーマキシン・サリヴァンジャッキー・バイアードエディ・ロックとともに、ニューヨークのセント・ピーターズ福音ルーテル教会で行われたアール・ハインズの追悼式で演奏した[8]。彼女の最初の6枚のアルバムは、演奏での成功に比べると無名だった。彼女の作品がジャズ界で注目されるようになったのは1980年代に入ってからのことだった[3]。特に、1987年のモントルー・ジャズ・フェスティバルでの録音と、1991年のライブ・アルバムは絶賛された。それでも、彼女はライブ・パフォーマンスで最もよく知られていた。彼女は、多様なスタイルと華やかな性格で観客を魅了した。ベン・ラトリフは「ニューヨーク・タイムズ」紙で「彼女の華やかさは、女性に敵対的な業界のなかで仕事を見つけるのに役立った。ある意味では、それが彼女の没落でもあった。彼女のコンサートは個性が強すぎると批判されることが多かったのだ」と論じた[1]。1992年、ドネガンは国立芸術基金から「アメリカン・ジャズ・マスターズ」フェローシップを授与され[9]、1994年にはルーズヴェルト大学から名誉博士号を授与された[6]

私生活と死

[編集]

ドネガンは、性差別を訴え、男性ミュージシャンと同じ賃金を要求したことにより、自身のキャリアが制限されたという意見を率直に表明した[1]。ドネガンは、1998年に76歳でカリフォルニア州ロサンゼルスにて癌のため亡くなった[6]

ディスコグラフィ

[編集]

リーダー・アルバム

[編集]
  • 『ドロシー・ドネガン』 - Dorothy Donegan (1955年、Jubilee)
  • 『セプテンバー・ソング』 - September Song (1956年、Jubilee)
  • At The Embers With Dorothy Donegan (1957年、Roulette)
  • Dorothy Donegan Plays For Jazz-30 (1958年、Jazz-30)
  • Live (1959年、Capitol)
  • 『ドニーブルック・ウィズ・ドネガン』 - Donnybrook With Donegan (1959年、Capitol)
  • It Happened One Night (1961年、Roulette)
  • Swingin' Jazz In Hi-Fi (1963年、Regina)
  • The Many Faces Of Dorothy Donegan (1975年、Mahogany)
  • Dorothy Donegan (1976年、Four Leaf Clover)
  • Makin' Whoopee (1980年、Black And Blue)
  • Live! (1980年、CNR)
  • Dorothy Donegan Live (1981年、Jaylin's Live) ※with Jimmy Woode, Ed Thigpen
  • 『エクスプローシヴ』 - The Explosive Dorothy Donegan (1981年、Progressive)
  • Sophisticated Lady (1982年、Ornament)
  • Dorothy Donegan Solo & Duo With Jay McShann - Hans van der Sys Solo & Duo With Dick Wellstood (1982年、Swingtime)
  • Dorothy Donegan Plays DIA Caught Live At The Design Institute America House, High Point, NC (1984年、Design Institute America)
  • I Walk Along (1989年、Estúdio Eldorado, Black And Blue)
  • 『ライヴ・アット・ザ・ウィダー・バー』 - Live At The Widder Bar 1986, Zürich (1989年、Timeless)
  • 『ライヴ・アット・ザ・フローティング・ジャズ・フェスティヴァル』 - Live At The 1990 Floating Jazz Festival (1991年、Chiaroscuro)
  • 『ライヴ・ウィズ・ディジー・ガレスピー』 - Live At The 1991 Floating Jazz Festival (1992年、Chiaroscuro) ※with ディジー・ガレスピー
  • Live At The Floating Jazz Festival 1992 (1993年、Chiaroscuro) ※with クラーク・テリー
  • I Just Want To Sing (1995年、Audiophile)
  • Live In Copenhagen 1980 (1996年、Storyville) ※1980年録音
  • 『ライヴ・アット・リヴィング・ルーム』 - Live at Hollywood's Living Room (1997年、Norma) ※1963年録音
  • Live At The King Of France Tavern (2015年、LiSem) ※1978年録音

フィルモグラフィ

[編集]
  • Sensations of 1945 (1944年) – musical performer, United Artists
  • North Sea Jazz Classics 1980 (1980年) – live performance registration by NOS/NPO
  • Jazz at Newport '95 (1995年) – featured performer, concert for PBS
  • Dorothy Donegan: Pandemonium (2008年)

脚注

[編集]
  1. ^ a b c d Ratliff, Ben (May 22, 1998). “Dorothy Donegan, 76, Flamboyant Jazz Pianist”. The New York Times. https://www.nytimes.com/1998/05/22/arts/dorothy-donegan-76-flamboyant-jazz-pianist.html September 14, 2011閲覧。. 
  2. ^ a b Travis, Dempsey J. (1983). An Autobiography of Black Jazz (1st ed.). Chicago: Urban Research Institute. ISBN 0-941484-03-3. https://archive.org/details/autobiographyofb00trav 
  3. ^ a b c d Dorothy Donegan”. AllMusic. 1 September 2011閲覧。
  4. ^ a b c d Scheinman, Ted (January–February 2021). “Fascinating Women”. Smithsonian (Smithsonian Institution): p. 20 
  5. ^ a b c Balliett, Whitney [in 英語] (15 February 2006). "Dorothy Donegan". American Musicians II: Seventy-One Portraits in Jazz. University Press of Mississippi. pp. 232–238. ISBN 978-1-57806-834-0. 2011年9月14日閲覧
  6. ^ a b c “Dorothy Donegan, Famed Jazz Pianist, Dies”. Jet: pp. 38–39. (June 8, 1998). ISSN 0021-5996. https://books.google.com/books?id=2MMDAAAAMBAJ&pg=PA38 September 14, 2011閲覧。 
  7. ^ a b Waldron, Clarence (December 1983). “Dorothy Donegan: Bouncy as ever at age 61”. Ebony. pp. 87–90. September 14, 2011閲覧。
  8. ^ Earl Hines Memorial Service”. The New York Times (5 May 1983). 9 November 2017閲覧。
  9. ^ Dorothy Donegan | Pianist, Vocalist, Educator”. NEA Jazz Masters. National Endownment for the Arts. April 5, 2021閲覧。

参考文献

[編集]

外部リンク

[編集]