ドラえもん のび太とふしぎ風使い
ドラえもん のび太とふしぎ風使い | |
---|---|
Doraemon: Nobita and the Windmasters | |
監督 | 芝山努 |
脚本 | 岸間信明 |
原作 | 藤子・F・不二雄 |
出演者 |
レギュラー 大山のぶ代 小原乃梨子 野村道子 たてかべ和也 肝付兼太 ゲスト かないみか 愛河里花子 屋良有作 |
音楽 | 堀井勝美 |
主題歌 | またあえる日まで/ゆず |
編集 | 岡安肇 |
制作会社 | シンエイ動画 |
製作会社 |
シンエイ動画 テレビ朝日 小学館 |
配給 | 東宝 |
公開 | 2003年3月8日 |
上映時間 | 83分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
興行収入 | 25.4億円[1] |
前作 | ドラえもん のび太とロボット王国 |
次作 | ドラえもん のび太のワンニャン時空伝 |
『ドラえもん のび太とふしぎ風使い』(ドラえもん のびたとふしぎかぜつかい)は、2003年3月8日に公開されたドラえもんの映画作品。および、岡田康則(藤子・F・不二雄プロ)によって漫画化され、『月刊コロコロコミック』2003年2月号から3月号に掲載された大長編ドラえもんシリーズの作品。映画シリーズ第24作、大長編シリーズ第23作(まんが版▷映画シリーズ6)。特集記事が『月刊コロコロコミック』2002年9月号から2003年4月号まで掲載された。
キャッチコピーは「風のドラえもん、はじまる。」。
同時上映は『Pa-Pa-Paザ★ムービー パーマン』。
概要
本作は、てんとう虫コミックス『ドラえもん』第6巻に収録される短編作品『台風のフー子』を原案としている。ただし原案としての引用はキーキャラクターであるフー子や、大まかなストーリープロットのみに留まっており、作品の舞台、設定などは完全なオリジナルとなっている。原作の短編作品を映画作品としてブラッシュアップし公開するという形式で作られた映画の一つ。
『ドラえもん のび太の大魔境』と同様に、物語の舞台は現代の地球上の秘境とされている(が、大魔境と異なり具体的な場所が明かされていない)。秘境のキャラクターたちの名称や服装などは、アジアのモンゴルやチベットあたりを秘境のモデルとしている。
『ドラえもん のび太と銀河超特急』以来、スネ夫が敵に体を乗っ取られ、一時的にドラえもんたちと敵対する。特に本作のスネ夫は登場当初からフー子をのび太から奪おうとしたりと、他のレギュラーキャラクターたちと異なる不穏な行動を取っており、悪の心から目を覚ました後も、村人たちから悪人と誤解され逆に悪役たちからは崇拝されるなど、終始扱いが特異である。
制作当時、のび太役の声優・小原乃梨子の長年飼っていた猫が危篤に陥っており、のび太がフー子を失う場面では、小原はフー子に愛猫の姿を重ねて号泣していたという[2]。結局その猫は本映画の初日舞台挨拶の後に亡くなったことから、小原はのび太がフー子の最期に呼びかける姿は自分そのものだといい、本映画を『ドラえもん のび太の恐竜』と並んで印象深い作品だと語っている[2]。
本作と次作『ドラえもん のび太のワンニャン時空伝』の主題歌は、映画上映までにTVシリーズで使われたエンディングテーマを選抜する形となっており(当初からTVシリーズと劇場版両方での使用を前提にしていたかは不明)、担当歌手が声優としても出演している(本作ではゆず)。
この作品より制作方式がセル画からデジタル彩色へ全面的に移行した[注 1]。また、作画監督が『ドラえもん のび太の宇宙開拓史』以来担当し続けてきた富永貞義から渡辺歩へと交代となり、キャラクターのタッチも大きく変化した。渡辺は総作画監督を担当。作画監督は加来・金子・藤森・柳田の4人が担当している。なお、富永は併映作の『Pa-Pa-Pa ザ★ムービー パーマン』の作画監督を担当している。また、音響も本作からドルビーデジタル・サラウンドEXに更新されている。
公開当時、試写会用に間に合わせで作成された未完成版と、その後完成した正式版とが混同して全国で上映されていた[3]。未完成版と正式版との違いが顕著に見られるのは、作品後半でストームが正体を現し飛行船に乗って後方へ退くシーン。正式版はハッチを閉めながら退くが、未完成版は編集ミスによりハッチが開いたまま退き、突然閉まるようになっている。
劇中で登場する巨大凧「ドラ・で・カイト」は、本作の公開を記念して実際に畳40畳分の巨大凧として製作され、東京武蔵野市の「武蔵野カイトフェスティバル」に参加して話題となった[4]。
雑誌『藤子・F・不二雄★ワンダーランド ぼくドラえもん』の誌上で開催された特集記事「ドラえもんなんでもランキング 輝け! ドラデミー大賞」の映画部門ではベスト作品賞グランプリを受賞[5]。
あらすじ
この節にあるあらすじは作品内容に比して不十分です。 |
台風一過の朝、のび太は台風の子供と出会い、フー子と名付けて可愛がる。
翌日、ドラえもん、のび太、しずか、フー子の4人は、どこでもドアで大草原に遊びに行き、そこで未開の地である風の村に行き着き、風の民であるテムジンたちと仲良くなった。スネ夫はフー子が自分の家の庭で産まれたことから、自分のものにしようとし、フーコに酷い目に遭わされたジャイアンを味方に付けて、やってくるが、ジャイアンはフー子と和解してしまう。
帰宅するドラえもん一行であったが、フー子を諦めきれないスネ夫に風の民と対立している嵐族の古代の長・ウランダーが憑依。乗っ取られたスネ夫は嵐族と共にフー子を奪おうとする。
舞台
- 風の民の村
- 風を操り風と共に生きる「風使い」と呼ばれる人々が暮す村。地形はチベットを、住民の服装はモンゴルを思わせる。険しい岩山と強い風により外界からほぼ隔絶された地域にあるため、その存在は知られていない。ただし外界との交流が全く無かったわけではなく、大航海時代には大きな帆船に必ず風使いが乗り込み、風を操って航海を助けていたという。
- また、風を扱って生きる風の民の影響なのか、生物も独自の進化を遂げており、周辺には「風獣」という、風を利用して生きる動物が多数生息している。
- マフーガ島
- 赤道付近に位置する島。赤珠と封印の剣が眠る。付近に赤道無風帯がある。島の中心には今にも噴火しそうな活火山がある。
声の出演
- ドラえもん - 大山のぶ代
- のび太 - 小原乃梨子
- スネ夫 - 肝付兼太
- しずか - 野村道子
- ジャイアン - たてかべ和也
- のび太のママ - 千々松幸子
- スネ夫のママ - 横尾まり
- ジャイアンの母 - 青木和代
ゲストキャラクター
風の化身
- フー子
- 声 - かないみか
- 黄色い玉から生まれたのび太を慕う台風の子供。暖かい空気が食料で冷たい空気が苦手。自分に触れた物が風で飛ばないようにひみつ道具の「フリーサイズぬいぐるみカメラ」で作ったぬいぐるみ[注 2]に入っている。その正体はマフーガを封印した時に分けられた三つの玉の一つである。最後は単身でマフーガに激突し、両者ともに消滅した。フー子の亡骸のぬいぐるみは、のび太の部屋の机に大切に保管されている。
- フー子が入っているぬいぐるみの色は、コロコロコミック掲載の最初の予告では薄いピンク色だったが、その後オレンジ色へと変更された。
- 原典のフー子は未来世界の道具から産まれた意志を持った台風であり、作中のようにぬいぐるみに入れられたりはしていない。また日本に襲い来る大型台風とぶつかり合って消滅するという最期を迎えている。
- ゴラド
- 青い玉から生まれたフー子と同じ風の子供でマフーガの一部。フー子とは対照的に凶暴な性格をしている。映画では名前は登場しない。
- マフーガ
- ウランダーの呪術により生み出され、はるか昔に封印された巨大な風の怪物。竜のような姿をしていて、超大型の台風を伴う。ウランダーの霊によってインド洋と思しき場所で復活する。
風の民
- テムジン
- 声 - 愛河里花子
- 風の村に住む風使いの少年で、村の少年たちのリーダー的存在。ドラえもんたちと共に嵐族に立ち向かう。由来はチンギス・ハーンの幼名テムジンから。
- スン
- 声 - 西原久美子
- テムジンの妹。嵐族に襲われたところをドラえもんたちに助けられる。
- テムジンとスンの母
- 声 - 山口奈々
- トムジン、ヤムジン、クンジン
- 声 - 佐藤ゆうこ、北川悠仁、岩沢厚治
- テムジンの友人達。名前はトムヤムクンから。
- ゆずの北川と岩沢がゲスト出演している。
- カンジン
- 声 - 秋元羊介
- 長老
- 声 - 穂積隆信
- 風の村の長老。風の民を率いて嵐族の野望に立ち向かう。
嵐族
- ストーム
- 声 - 屋良有作
- 風の村の侵攻を企む嵐族の族長。マフーガを復活させるべく、フー子に秘められた力を狙っている。その正体は、22世紀から来た考古学者で真の黒幕である。ドラえもんが自分と同じ時代から来たことに気付き、ネズミの幻覚を見せて気絶したドラえもんから四次元ポケットを奪い、どこでもドアも破壊した。ウランダーにマフーガを復活させた後、彼を四次元ペットボトルに吸収させて始末し、マフーガに地上の全てを破壊させた後、自らの手で新世界を構築し、その王になることを目論む。しかし、マフーガがフー子に倒され、自身もタイムマシンで逃亡した所をテムジンと共に追ってきたジャイアン(漫画版ではドラえもん)の放った空気砲で撃墜され、最後はタイムパトロールに逮捕された。
- 嵐族
- 声 - 田中一成、高戸靖広、堀之紀、広瀬正志、小関一、稲葉実
- ストームの手下たち。ウランダーに忠誠を誓っており、風の村を襲撃したり、マフーガを復活させようと協力する。その後、ストームに見捨てられるが、風の民に助けられ、マフーガを倒すべく苦戦するフー子に協力した。事件後は風の民と和解し、共に暮らしている。小柄の部下は宴会に酔っている際、ドラえもんの四次元ポケットを帽子と勘違いして被っている。
- ウランダー
- 声 - 小林清志
- 嵐族の邪悪な呪術師だが、現在は実体を持たず霊魂の姿となっている。かつて風の民の長ノアジンの力で封印されたが、ストームの手により復活し、スネ夫の体を乗っ取る。その後、自らの手でマフーガを復活させるが用済みと見なしたストームの四次元ペットボトルに吸収されてしまった。事件後、嵐族は未だにスネ夫をウランダーと勘違いしていたが、漫画版ではスネ夫がそれを逆手にとって「これからは、風の民と仲良くするように」と命じた。
その他
- ヤーク
- 声 - 小林修
- 白い毛をしたヤクに似た生物で風の村では山神と崇められている。年齢は数千歳。相手の心に話すことができマフーガとフー子に纏わる伝承をのび太に語る。
- タイムパトロール隊長
- 声 - 中庸助
- TVアナウンサー
- 声 - 渡辺宜嗣(テレビ朝日アナウンサー〈当時〉)
- オオカミ
- 風の民の村に生息する狼。復活したウランダーによって体を乗っ取られた。その後、スネ夫の体に乗り移られ姿を消すが、漫画版ではウランダーに引き連れられ風の民の村に戻る。
用語
- ブンブン
- 見た目は木のおもちゃのようなものであり、紐の先に玉が付いている。これを振り回すことで風を操ることができる。
- カゼスビー
- 布と木で作られた円盤状の乗り物。ブンブンで起こした風で浮かび上がらせる。
- 風弾ダーツ
- ブンブンで起こした風の弾で的に当てるゲーム。的は鯉のぼりのような筒状の布。大人でも難しいと言われているが、テムジンは4発中全弾命中しており、のび太も4発中3発命中している。
- マフーガの伝説
- 作中でヤークが語ったマフーガの伝承。はるか昔から風を利用して生活する風の民と風を使って世界を支配しようとする嵐族は対立していた。そして嵐族の呪術師ウランダーは自身の呪術を使いマフーガを生み出した。マフーガは40日間、暴れまわったが風の民の長ノアジンが封印の剣を持ってマフーガとウランダーに挑み遂にウランダーを倒しマフーガは三つに分断しそれぞれ赤色、青色、黄色の玉に閉じ込められた。そして青色と黄色い玉はウランダーの遺体と共に風の村に封じられ最も邪悪な赤い玉は竜の頭の形をした島(原作ではマフーガ島)に封印の剣によって封印された。その後、マフーガ復活の予言を記したペンダントが嵐族によって作られた。
スタッフ
- 原作[注 3] - 藤子・F・不二雄
- 脚本 - 岸間信明
- 総作画監督 - 渡辺歩
- 原作作画[注 3] - 藤子プロ
- 美術設定 - 沼井信朗
- 美術監督 - 清水としゆき
- 撮影監督 - 梅田俊之
- 編集 - 岡安肇
- 録音監督 - 浦上靖夫
- 音楽 - 堀井勝美
- チーフプロデューサー - 山田俊秀、木村純一
- 監督 - 芝山努
- 演出 - パクキョンスン
- 作画監督 - 加来哲郎、金子志津枝、藤森雅也、柳田義明
- 色彩設計 - 松谷早苗、稲村智子
- 色指定 - 下浦亜弓、中島淑子、碓井彩子
- 仕上検査 - 高木理恵、大浦聡子、都甲晃子
- 仕上担当 - 野中幸子
- 特殊効果 - 橋爪朋二
- 仕上スキャン - 田中淑子、柴田邦浩
- デジタル特殊効果 - 三浦里奈
- 基本設定 - 川本征平
- CGI - つつみのりゆき
- デジタル光学録音 - 西尾昇
- 文芸 - 滝原弥生
- 制作事務 - 杉野友紀、服部高弘
- 制作進行 - 吉田成彦、外崎真、吉家康介、大橋永晴、村元克彦、上野弘泰、菅野淳之
- 制作デスク - 吉田有希、大金修一
- プロデューサー - 小倉久美、大澤正享、梶淳、濱田千佳
- 制作協力 - 藤子プロ、ADK
- 制作 - シンエイ動画、小学館、テレビ朝日
主題歌
- オープニングテーマ「ドラえもんのうた」
- 作詞 - 楠部工 / 作曲・編曲 - 菊池俊輔 / 歌 - 山野さと子(コロムビアミュージックエンタテインメント)
- エンディングテーマ「またあえる日まで」
- 作詞 - アドベンチャーキャンプの子供たちと北川悠仁 / 作曲 - 北川悠仁 / 編曲 - 寺岡呼人・ゆず
- 歌 - ゆず(セーニャ・アンド・カンパニー)
参考文献
- 『藤子・F・不二雄★ワンダーランド ぼくドラえもん』第21号 小学館、2005年。
- 藤子・F・不二雄プロ『大長編ドラえもん のび太と翼の勇者たち』小学館〈てんとう虫コロコロコミックス〉、2001年発行。
脚注
注釈
- ^ 同年に公開した「それいけ!アンパンマン」や「名探偵コナン」もそれぞれ同年よりデジタル制作となるなど2003年は毎年公開の連作アニメ映画ではセル画からデジタル彩色へ移行期であった(毎年公開の連作アニメ映画の内、本作と同じくシンエイ動画制作で2002年に公開された映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』、同年公開された「ポケットモンスター」は他より先行してデジタル彩色に移行した)。
- ^ モデルはのび太の部屋にあったマンガ『ドラコッコ』の表紙のキャラクターから作られた。
- ^ a b 「原作」としてクレジットされている藤子・F・不二雄は「キャラクター原作」程度の意味で用いられている。原案となった作品を描いた者ではあるが、この映画作品の原作者ではない。また、ここでの「原作作画」は漫画版を執筆した岡田康則をさすものであり、この映画作品の原作者ではない。
出典
- ^ “2003年(平成15年)興収10億円以上番組” (PDF). 日本映画製作者連盟. 2017年11月18日閲覧。
- ^ a b 『ぼく、ドラえもん』 第12号、小学館、2004年8月、11頁。全国書誌番号:20665658。
- ^ 併映作品『Pa-Pa-Paザ★ムービー パーマン』も同じく未完成版と正式版の2パターンが混同して上映されていた。
- ^ “ドラえもん、大空へと羽ばたく! 「ドラ ・ で ・ カイト」 in 武蔵のカイトフェスティバル”. 東宝 (2003年1月19日). 2016年3月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年9月20日閲覧。
- ^ 『ぼく、ドラえもん』 第7号、小学館、2004年6月、8-9頁。全国書誌番号:20607375。
関連項目
外部リンク
- 漫 - 原作漫画、大長編漫画等の執筆者の頭の1文字または略記号。藤=藤子不二雄。F=藤子・F・不二雄。1987年の独立前のみ「藤」と記載した(ただし『ドラえもん』は連載開始時から藤本単独作)。FP=藤子プロ。それ以外は作画者を記載。括弧付きは藤本以外が執筆した外伝、短編など。詳細は大長編ドラえもん#作品一覧(併映作品は各作品のページ)を参照。