トゥルークの海賊
トゥルークの海賊 | |
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ジャンル | SFファンタジー |
小説 | |
著者 | 茅田砂胡 |
イラスト | 鈴木理華 |
出版社 | 中央公論社 |
レーベル | C★NOVELSファンタジア |
刊行期間 | 2012年 - 2014年 |
巻数 | 全4巻(本編4巻) |
テンプレート - ノート | |
プロジェクト | ライトノベル |
ポータル | 文学 |
『トゥルークの海賊』(トゥルークのかいぞく)は、茅田砂胡の小説。全4巻。『天使たちの課外活動』と並行する時間上の話で、登場人物も一部共通している。
『天使たちの課外活動』とは異なり、『スカーレット・ウィザード』の登場人物が主に登場する話である。なお、ケリーとジャスミンの夫婦がトゥルークへ赴くことになった経緯は『大いなる闇が来た』と題する短編として、中央公論新社の公式サイト「C★NOVELS.com」内の特集ページに掲載されていたが、第3巻に収録された。
あらすじ
[編集]ケリーたちは、マヌエル一世の友人であるバックマンを通じて、トゥルーク周辺の海賊問題の解決を頼まれる。ところがトゥルークは一般人には渡航が認められていない惑星だった。実際に飛んでみたケリーたちは、そこで貨物輸送艦の護衛として連邦軍から派遣されてきている軍艦に察知され、警告を受ける。その直後、跳躍反応を感知したケリーたちは個人所有の快速船が跳躍してきて、しかもそれを追うように海賊船が現れたのを目撃する。しかも、その海賊たちはあろうことか二代目シェンブラックと二代目グランド・セヴンを名乗ったのであった。さらに最近セントラルを中心に出回っている謎の薬物「パーフェクション」の材料となるものが、トゥルークでは僧侶が使う香の原料ともなる名産品であったことから事態はややこしくなっていく。
一方、セントラルから帰国したサリース・ゴオランは、往路で寄った連邦大学惑星(ティラ・ボーン)で「『大いなる闇』が顕現し、弟子と友人関係を築いた」という事実を本山に報告。合わせて「大いなる闇」ルウの言葉を受けロムリス夫妻の僧籍回復および昇格を本山に進言、しかし事実が「白か黒か」判断がつかない本山の大師たちはロムリス夫妻の還俗からして啓示を受けたものか怪しかった、と言い出し、サリース・ゴオランは僧籍剥奪の危機に直面する。それを兄・エクルンドから知らされたライジャは帰国を決断、そこへ「ルウが行かなきゃ話が収まらない」とリィが言い出し、シェラと共にルウをある手段で強引に連れ出すことに。渡航禁止惑星への渡航となるため、移動の手段はもちろんケリーの船《パラス・アテナ》である。
手作りのキャラメルを利用してルウをなだめながら、リィは31人の大師たちやロムリス夫妻との会談を進める。しかしトゥルーク行政府の関係者ロムリス夫妻の娘・エレクトラが乗った貨物船が海賊団の人質となったこと、さらに貨物船の乗員乗客を人質としたことを海賊団が声明として発表したのを機に事態は一変。かつて本家シェンブラック海賊団およびグランド・セヴンの船に乗っていた老船乗りたちが、二代目を名乗る不届き者を倒すべく次々と集結する。そしてトゥルーク上空の宙域で50年に一度の周期で起こる怪現象「大潮」までも発生し、トゥルーク上空は微惑星と“門”だらけになってしまう。
そこへトゥルーク地上からやってきたのは旧型の海賊船、その名も《アルベルティーナ》。グランド・セヴン最後の生き残り“特攻ランバルト”とその仲間たちだった。さらにもう一隻、本家グランド・セヴンの船《ブルーライトニング》まで合流し、トゥルーク上空の特殊な宇宙空間は本家グランド・セヴンとケリーおよびジャスミン、偽海賊団、連邦軍の乱戦となる。一方のトゥルーク地上でも、大潮に備えて各地の寺院に配備されているミサイルやビーム砲を僧侶たちが隕石と化した微惑星目がけて放ち、狙いを過たずそれらを撃破していくという、連邦関係者が目を疑う光景が広がっていたのである。そして、偽海賊団とセントラルで「パーフェクション」を売りさばいている総元締めが繋がっていることに気づいたケリーたちによって中央政府関係者まで糸が繋がり、ようやく事件は解決したのだった。
事件終息後、《アルベルティーナ》は戦闘の後であることと、大気圏突入時に微惑星の直撃を受けたりしたためボロボロの状態で何とか地上に着陸、その後をなんとかついていった《パラス・アテナ》も無事着陸することが出来、ダイアナは感応頭脳同士でセンサーや船外、船内のカメラを一時的に共有して《アルベルティーナ》関係者とコンタクトする。そしてリィやルウ、シェラがライジャやケリー、ジャスミンと共に国内線の飛行機に乗ってタルボット村にやってきた。その日はソンダイク寺院で宴会となり、ダイアナはケリーとコンタクトを取れずイライラさせられる羽目になった。
1週間ほど後、連邦大学惑星(ティラ・ボーン)に戻ったリィとシェラは、出されていた宿題「トゥルークの様子をまとめて生徒たちの前で発表」を行うが、シェンブラック海賊団の過去の話を交えたため、校内で騒ぎを引き起こす。そしてしばらく後、仕事で宇宙空間を移動中のダンは、義父や義母、果ては両親から息子ジェームスが高等部へ進学せず宇宙に出ようとしていると聞かされ、頭を悩ませた末にケリーの手を借りることでこの事態を収拾する。
後日、ダレスティーヤおよびエルヴァリータの就任式が大々的に開かれることになり、ケリーたち夫妻に招待状が届いた。ジャスミンは数少ない女友達の晴れ姿を見るべく乗り気だが、夫ケリーの相棒であるダイアナは「あの星の環境が落ち着かない」と嫌がっていた。一方「大いなる闇のおかげで僧籍回復及び昇格に至ったので」という理由から、ライジャ経由で知らされたルウは「神様扱いされるのと環境が良すぎて嫌」とごねていた。そこで共謀した1人と1隻は「駆け落ちあるいは不倫旅行」と称して逃げ出す。翌日、《パラス・アテナ》の行方が知れなくなったケリーと、相棒の居所を探しているリィは連絡を取り、さらにダン・マクスウェルの船《ピグマリオンII》とも連絡を取ってダイアナとルウの居場所を特定。そこはかつてケリーが惑星軌道上に存在する公転型“門”を発見したミニヨン連星だった。
ダンの協力の下、学業に支障が出ないように週末に外泊許可を取ったリィとシェラ、そしてケリーは、ランバルトからの通信による援護射撃に乗せられたダイアナのおかげで互いの相棒を連れ戻し、さらにダンにもダレスティーヤから直々に招待する旨の通信が入って、就任式当日を迎える。ルウは僧侶たちに拝まれるのを避けるため、会場である寺院の本殿に衝立を立ててもらい、その後ろでリィやシェラと一緒に、ケリーたちはエクルンドとエレクトラの兄妹やエルヴァリータの従兄であるシノーク首相、招待客であるマグナス連邦副主席らと境内の隅の方に設えられた椅子で式を見守るのだった。
そして季節が巡り、タルボット村は新たな住人を迎え、惑星トゥルークのあるカトラス星系には幽霊船が出るという噂が連邦軍の警備部隊に広がっていた。
登場人物
[編集]主な登場人物は『スカーレット・ウィザード』『暁の天使たち』『クラッシュ・ブレイズ』および、『天使たちの課外活動』と共通。
- 声はドラマCD『紅蓮の夢』より。
主要人物
[編集]- ケリー・クーア
- 声 - 藤原啓治
- 『スカーレット・ウィザード』の主人公。身長2m近い大男ながら、引き締まった肉体を持つ絶世の美男子。かつてはクーア財閥3代目総帥として活躍していたが、現在は一般人として生活している。
- その過去は本家グランド・セヴンからも一目置かれ、一匹狼ながら「海賊王(キング)」と呼ばれたほどの海賊で、二代目を名乗る海賊団が本家を貶めていることに腹を立てる。
- ジャスミン・クーア
- 声 - 皆川純子
- 『スカーレット・ウィザード』のもう一人の主人公。191cmという長身と赤い髪が特徴の、元連邦軍人にしてクーア財閥2代目総帥。現在は財閥の監査役として本社内にオフィスを持つが、ほとんど一般人。
- しかし、夫とのつながりからかつての事件で本家グランド・セヴンに協力を仰いだこと、父マックスが財閥を起業するまではシェンブラックとも親しかったことから、ケリー同様に本家を貶める自称二代目に腹を立てる。そのグランド・セヴンのランバルトと《ブルーライトニング》のサブジェイからは「お嬢」と呼ばれる。
- 刺青が目立つため外部の人間と顔を合わせづらいロムリス夫妻に、茶色系とベージュ系の2色を肌の色に合わせて混ぜ合わせるだけでいいファンデーションを渡し、動きやすくした。
- 事件解決後、夫婦でロムリス夫妻の就任式に招待され、数少ない女友達であるエルヴァリータのためにもトゥルークへ行きたいと主張する。しかし、「あの環境が落ち着かない」というダイアナがへそを曲げてしまい、騒動を起こす。
- ルウ(ルーファス・ラヴィー)
- 声 - 立花慎之介
- ラー一族の「闇」。トゥルークの僧侶たちからも「大いなる闇」と同一視され、困惑している。トゥルークへは、リィが強引に連れてきた。トゥルークの環境は、自分との相性が良すぎて何もしていなくても勝手に髪の毛が動き出すなど、僧侶以外にも悩まされることになる。そのためロムリス夫妻の就任式に招待された際も嫌がり、ダイアナと共謀して家出を決行する。
- リィ
- 声 - 桑島法子
- ルウの相棒にして「白い太陽」。ライジャの師匠が僧籍剥奪の危機に直面したと知らされ、嫌がる相棒を麻袋に詰めて強引に連れ出した。帰国後はシェラ(声 - 小林ゆう)と2人で首都パーヴァルの様子などをレポートにまとめるよう、教師から指示を受けていたが、その場が高等部校舎の視聴覚教室という700人以上収容可能な部屋だったことに驚きながらもライジャやシェラと相談して決めた内容を報告する。
- ライジャ・ストーク・サリザン
- 連邦大学惑星のキャンベル大学に留学中のトゥルークの高僧。ルウとは大学は違うが、同い年。僧侶となる前の姓はロムリス。彼が師に宛てた手紙で「大いなる闇」ルウの存在を告げたことが遠因となって、ルウが渡航禁止のトゥルークへ赴くことになった。
トゥルークの僧侶
[編集]- アドレイヤ・サリース・ゴオラン
- ライジャの師匠にして、ライジャの父ダレスティーヤの弟子であった高僧。国際的な用事のため、一時セントラルへ行っていた。その際の往路で連邦大学惑星へ寄り道し、ルウやリィと知り合った(詳細は『天使たちの課外活動 2』収録の「お師匠さんが来た!」参照)。彼がルウを指して「大いなる闇が顕現した」と本山に報告したため、ルウやリィやシェラがライジャとともにトゥルークへやってくる羽目になった。
- ナッシュ・ルテラス・オージェン
- オルサム寺院の住持職。かつてはダレスティーヤの弟子であった。
- ジルダ・アルヴィン・ドルガン
- ヴィルジニエ僧院の大師。かつてダレスティーヤとエルヴァリータが天啓に従って互いに求婚し合った際、驚愕するが二人が真実を告げていることを見抜いた為、異例ではあるが二人の還俗を認めた上で結婚を祝福した。
- ファビオ・ボラール・シュヴァリン
- ヴィルジニエ僧院の僧侶。アドレイヤがセントラルを訪問した際に同行し、マヌエル一世との会談にも同行したことでルウの姿を目撃した上に、彼の爆弾発言を聞くことになる。
- チムニー・クローム・セリオン
- オルサム寺院の僧で、ルテラス・オージェンの弟子。ケリーたちに首都パーヴァルの案内をした。2年前に僧となり、最初に入った寺院であるソンダイク寺院のラテール・ザンテスの勧めで寺院を移ったという。母と妹のため、たまにタルボット村にある実家に顔を出しており、ある時、寺院でラテール・ザンテスから「ビーティが飛ぶ」と知らされ、数日分の保存食を手に《アルベルティーナ》内に隠れていた。実はラテール・ザンテスとジャック・ライメリン、およびイシュザーク・ランバルトとヴァネッサ・リーヴスの孫にあたり、僧侶になる前の名前はチムニー・ライメリン。兄にクインシーとルパート、妹にメアリーがいる。
- キダム・フォルカン
- オルサム寺院の僧。ケリーとジャスミンとチムニーの食事中に喜捨を求めてきた。
- ジョアナ・ラテール・ザンテス
- タルボット村のソンダイク寺院の住持職。12歳までにザンテスの位を授かり、一度はサザールへ昇格するも、ある事情から40年以上前に位を降りた女僧で、その証に皺の増えた額には刺青がある。パミール・シオンが海賊であったことを知る数少ない人物で、10代のころから彼に好意を持っている。作中の事件終息後、ルウの言葉を受けてかつての位であるサザールやシュヴァールより上位のディマントへ昇格し、ソンダイク寺院に帰還する際にはゴラーナへ昇格した。
- パミール・シオン
- ソンダイク寺院に籍を置く老僧で、本名はイシュザーク・ランバルト。実は伝説の海賊シェンブラックの元部下で本家グランド・セヴンの1人“特攻ランバルト”その人。かつてトゥルーク上空に開いた“門(ゲート)”を利用した際に門のそばの微惑星に激突しタルボット村に不時着、修理代代わりに畑仕事を手伝ったという。以降はこの星を拠点にしていたが最後は海賊業から足を洗い、仲間たちとともに隕石がやたら落ちてくるこの星を補給基地として狙う海賊船の迎撃を担当していた模様。自身の船《アルベルティーナ》はソンダイク寺院付近の地下にあった移民時代の遺産であるドックのような基地を改造して隠していたが、必要に応じて発着できるようにしていた。あまり僧院へ行かなかったため階位は低いが、豪放磊落な性格と人当たりで地元の人たちには人気があり、上位の僧たちからも一目置かれる。特技は麦酒を作ること。作中で起こった「大潮」に対応するため、宇宙で散る覚悟で船を飛ばす。その際に師匠であるラテール・ザンテスに破門を申し入れ、還俗しているが、僧服での生活が長かったためか、地元の人たちには還俗後も僧侶時代の名で呼ばれる。
- 100年前の「大潮」の際に不時着した過去を持つシェンブラックから「からくり仕掛け」「だまし絵のような宇宙(うみ)」と評されたトゥルーク周辺の宙域を熟知しており、ケリーたちが遭遇した、自分たちの二代目を名乗るゴロツキ相手に、生き残っている仲間たちと超が付く旧型の(とはいえ多々改良されている)《アルベルティーナ》で応戦し、電磁錨を応用した得意技で二代目ランバルトを名乗る海賊船を撃破するなど、老齢ながらかつての面影を垣間見せる。
- 同じくシェンブラックの元部下でグランド・セヴンの1人“ブルズアイジャック”ことジャック・ライメリンが、彼が不時着する3年ほど前(作中時間で50年前)に「大潮」に遭遇し、同じように不時着してタルボット村に居ついており、船の修理後、次に来た時に隕石と間違われないようにする合図として、船の外部灯を光らせることにした。以降、全僧侶に「青く光るもの(=外部灯を青く光らせた船)が地上に接近してきたら隕石ではないから撃ち落とすな」という暗黙のルールが制定されたという。
- なお、ランバルトとはシェンブラックの部下になる前から因縁を持ち、数奇な経歴の持ち主であるジャック本人は早々に海賊業に見切りをつけていた上、『スカーレット・ウィザード外伝』のケリー死亡より前に亡くなっているが、彼の船《ブルーライトニング》は持ち主の死より前に機能停止状態で小惑星帯に隠してあり、今回の大潮に対応するため、ランバルトの手で改良されていた。
トゥルーク行政
[編集]- ダレスティーヤ・ロムリス
- ライジャの父親で、アドレイヤの師。髪色はライジャと同じ白で、現在も長く伸ばしておりうなじで括っている。25歳のとき、天啓を受けてエルヴァリータと結婚、還俗した元高僧。かつての僧侶としての名前はクレイス・ゴオランで、就任式の後はクレイス・ドルガン。若くして高位に上った「神童」であり、当時「最も若い大師となる」と目されていたほどの僧だったという。妻が射撃の名手なら、こちらは棒術の名手。現在は首都パーヴァルの市庁職員[1]。ルウがある手段でトゥルークに連れてこられたことがきっかけとなり、夫婦で異例の在宅出家と最高位への昇格が認められた。
- エルヴァリータ・シノーク
- ライジャの母親。黒髪の美女で、ケリーより頭一つ背が低い。20歳のとき、天啓を受けてダレスティーヤと結婚、還俗した元高僧。かつての僧侶としての名前はマリス・ゴラーナで、就任式の後はマリス・ドガール。僧となった当時から「神童女」の異名を取るほどの優秀さを見せ、射撃の腕は随一。現在は首都パーヴァルの市庁職員[1]。
- クロエ・ブレメル
- エルヴァリータの秘書。エルヴァリータを追って還俗した元僧侶。かつての僧侶としての名前はウリル・サザール[1]。
- レミンスター・シノーク
- 惑星トゥルーク首相。エルヴァリータの従兄[2]。元僧侶で僧侶としての名はゼクス・ルシエン[3]。
- ラルス・バックマン
- 惑星トゥルークの外務大臣であり、航空総省の長官。マヌエル一世の友人[1]。
トゥルークの一般人
[編集]- エレクトラ・ロムリス
- ライジャの姉。愛称は「エレ」。パーヴァル大学の大学生で、短期講習のために度々星を離れセントラルへ行っている。結婚を約束した恋人キースがいるが、自分勝手に物事を運ぼうとするので辟易していた。また、幼い頃に母から聞かされた話が原因で、愛情表現の仕方にこだわる節がある。
- 短期講習のためセントラルへ向かう貨物船に乗ったところ、それが海賊に拿捕され、さらに「核を落とす」という内容の会話を漏れ聞いてしまうが、母が来るまで誰にも言わなかった。海賊事件が解決した後、キースの本性を知り母親の腕の中で泣き崩れた。その後、両親の就任式にエクルンドと共に列席した。
- エクルンド・シノーク
- ライジャの兄。エレクトラとは双子の兄妹で「エック」と呼ばれる。友人のジークが妹に好意を抱いていることに気づいている。その後、両親の就任式にエレクトラと共に列席した。
- ジークムント・ハイネン
- 強面の青年で、エクルンドの友人。パーヴァル大学の学生で、夜はバー『クレセント』で中年の強面のマスターと共にバーテンダーをしている。エレクトラとは同じ大学の友人だが、同時にエレクトラに好意を抱いている。しかし、当のエレクトラ本人には全く気付かれていない。
- キース・ドンナー
- エレクトラの恋人。パーヴァル西区でカフェの店長をしている。しかし、エレクトラの両親に既婚者であること、同じように結婚の約束をしている女性が複数いることを見抜かれて、慌ててその場を去っていった。
- ドロシー・ライメリン
- チムニー(クローム・セリオン)の母親。僧侶だった頃の名前はテミス・ユーリヤ(男性ではユーリンにあたる階級と思われる)。実はラテール・ザンテスがサザールだったころに啓示を受け、ある人物との間にもうけた娘で、「不義の子」とされるよりはと、母親のいない子として僧院で育ったが、その事実は伏せられている。本人は母親の素性については気づいているが、父親の素性は知らない。なお父親を知る人には、父親を女性にしたような印象を与える美女で、チムニーを合わせて3男1女の母だが、40代半ばには見えない。ダレスティーヤとエルヴァリータの就任式の後、季節が変わってタイラーが移住してきた頃に就任式でのルウの言葉を聞いたことで、師匠でもあったラテール・ゴラーナに在宅出家を願い出て許可された。
- ブライアン・リーヴス
- ドロシーの夫。科学者で、トゥルークに微惑星などが落ちてきた時に使用する電磁シールドの開発者。実はランバルトの息子で、若い頃のランバルトに生き写しの容貌。父親が元海賊だったことは知っている。また、ドロシーより7つも年下の37歳だが、ドロシーの方が若く見える。ランバルト曰く、8歳からドロシー一筋。
- ヴァネッサ・リーヴス
- ブライアンの母親で、パーヴァル大学の教授を務める女性科学者。ランバルトとの間に息子ブライアンを儲けたが、正式な結婚はしていない。
連邦軍
[編集]- ガストン・ヘネカー
- 大佐。連邦第八軍845駆逐隊司令。
- ピアーズ・クロスビー
- 大佐。連邦第八軍845駆逐隊次席指揮官。
- ローレンス・タイラー
- 共和宇宙連邦軍の中将にして、連邦主席補佐官。偽シェンブラック海賊団討伐のために編成された連邦軍の戦隊司令官でもある。しかし、幼い頃に半年間ランバルトの《アルベルティーナ》に乗艦していたことがあり、当時の符牒を用いてランバルトに連絡を取って、カトラス星系に異変が起こる事を知った。事件が解決した後、タルボット村を訪れてランバルトと再会した。ダレスティーヤとエルヴァリータの就任式の後、季節が変わった頃に軍を退役し、連邦主席補佐官の職も辞してタルボット村に移住する。
その他
[編集]- ビーティ
- 海賊船《アルベルティーナ》の感応頭脳。応答時の音声は中性的。あまり長い言葉をしゃべることはないが、普段は教師代わりとして村の子供たちの相手をしているらしい。ダイアナとの相性はあまりよくないのか、感応頭脳同士の回線を通して意味の通りにくい口喧嘩を繰り広げる。
- サブジェイ
- 海賊船《ブルーライトニング》の感応頭脳。とある国の軍の研究によって艦長であるジャック・ライメリンの人格を投射された感応頭脳で、製造時の指令によって、ジャックの死後は統合されたジャック本人の記憶も持つ。ジャックが死ぬより前に、合意の上で機能を停止し小惑星帯に隠されていたが、大潮の発生、および二代目グランド・セヴンの登場で、ランバルトによって作中で主流のワープ装置であるショウ駆動機関などを突貫で追加された状態で再起動。“ブルズアイジャック”としての意識も人格も残しながら、感応頭脳として《ブルーライトニング》を操る。
- 《アルベルティーナ》に乗っていたチムニーから家族写真を見せられて、自分の娘とランバルトの息子が結婚していたことを知り、最後はランバルトの計らいでジャックの娘・ドロシーと会話し、《アルベルティーナ》と《パラス・アテナ》を微惑星群から守るため盾となって爆散した。
トゥルークの僧侶について
[編集]トゥルークの僧侶には「異性と同じテーブルに同席してはならない」、「異性の身体に触れてはならない」などの独特の戒律が数多く存在する。これは相手の年齢を問わず、また家族が相手であっても適用される(のちにルウの言葉を受けて一部緩和された)。また、非常に目がよく、惑星に衝突する軌道を飛んでくる隕石を各種火器による地上からの砲撃で撃ち落とす。
また、僧侶自身に階級が存在し、僧となった者は僧侶としての姓を与えられ、一般的に「(名前+)僧侶としての姓+階級名」で呼ばれる。この階級は修行の練度によるもので、飛び級はないが、ある階級の修行を1日で終えたと認められて昇級するなどの事情があるとライジャやその両親のように若くして高位へ至ることもある。
なお、家族であっても僧となった以上は名前だけで呼びかけることはないが、「大いなる闇が来た」に於いてエルヴァリータがライジャを名前のみで呼んでいる(これは「親子なのに名前で呼べないのは変」というルウの言葉を受けたもの)。
31箇所ある本山の長「大師」は、最高位であるドルガンの中から選ばれる。高位になればなるほど通常は還俗しない。下位の者が還俗する際はその師匠の許可だけで済むが、高位の者の場合、31ある本山の大師全員の承認が必要。
僧位 | 男性 | 女性 | 該当する登場人物(初登場時のもの) | |
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高位[4] | ドルガン | ドガール | ||
ゴオラン | ゴラーナ | サリース・ゴオラン(アドレイヤ) | ||
ディマント | ||||
シュヴァリン | シュヴァール | ボラール・シュヴァリン | ||
サリザン | サザール | ストーク・サリザン(ライジャ) | ||
- | ザンテス | ラテール・ザンテス | ||
32階位 | 1 | ライカーン[5] | ライカール[6] | |
32階位 | 2 | 不明 | 不明 | |
32階位 | 3 | 不明 | 不明 | |
32階位 | 4 | 不明 | 不明 | |
32階位 | 5 | ヴァルカン[7] | 不明 | ティルミ・ヴァルカン |
32階位 | 6 | 不明 | 不明 | |
32階位 | 7 | ナディアン[7] | 不明 | アーリン・ナディアン |
32階位 | 8 | ソーニャン[7] | 不明 | ラス・ソーニャン |
32階位 | 9 | オージェン[5] | 不明 | ルテラス・オージェン |
32階位 | 10 | ダチェン[8] | 不明 | |
32階位 | 11 | クレメン[8] | 不明 | |
32階位 | 12 | ウダイン[8] | 不明 | |
32階位 | 13 | アルジン[7] | 不明 | トーニェス・アルジン |
32階位 | 14 | 不明 | 不明 | |
32階位 | 15 | ユーリン[9] | ユーリヤ[10] | テミス・ユーリヤ |
32階位 | 16 | フォルカン[5] | 不明 | キダム・フォルカン |
32階位 | 17 | 不明 | 不明 | |
32階位 | 18 | 不明 | 不明 | |
32階位 | 19 | 不明 | 不明 | |
32階位 | 20 | 不明 | 不明 | |
32階位 | 21 | 不明 | 不明 | |
32階位 | 22 | 不明 | 不明 | |
32階位 | 23 | 不明 | 不明 | |
32階位 | 24 | ルシエン[3] | 不明 | |
32階位 | 25 | 不明 | 不明 | |
32階位 | 26 | 不明 | 不明 | |
32階位 | 27 | セリオン[5] | セリーヌ[11] | クローム・セリオン |
32階位 | 28 | ルクセン[5] | ルクセール[11] | |
32階位 | 29 | フェイノン[5] | フェイノア[11] | |
32階位 | 30 | シオン[5] | シオナ[11] | パミール・シオン |
32階位 | 31 | エルロン[5] | エロール[11] | |
32階位 | 32 | ディグラン[5] | ディガール[11] | |
僧見習い | ソワント[5] |
作品リスト
[編集]中央公論新社より刊行。カッコ内の日時は発売日。
- トゥルークの海賊(2012/7/24) ISBN 978-4125012087
- トゥルークの海賊2(2013/7/27) ISBN 978-4125012551
- トゥルークの海賊3(2013/12/19) ISBN 978-4125012735
- トゥルークの海賊4(2014/11/29) ISBN 978-4125013213 (3巻で完結と銘打つものの4巻が出た)
出典
[編集]- ^ a b c d 「大いなる闇がきた」
- ^ 1巻135p
- ^ a b 1巻140p
- ^ 1巻10p図
- ^ a b c d e f g h i j 1巻96p
- ^ 1巻157p
- ^ a b c d 4巻57p
- ^ a b c 1巻110p
- ^ 1巻104p
- ^ 2巻206p
- ^ a b c d e f 1巻186p
外部リンク
[編集]- 『大いなる闇が来た トゥルークの海賊序章』 - C★NOVELS.com(現在は閉鎖されている)